【Globali】
英・仏・中国メディア;中国習主席、英国は心から訪英歓迎?(2015/10/20)
中国の習近平(シー・チンピン)国家主席(62歳)が10月19日、英国への訪問に出発した。今回は、英国だけを訪問するための訪欧で、通常考えられない日程であるが、英国が今年3月、欧州主要国に先駆けて、中国主導のアジアインフラ投資銀行(AIIB)への参加を表明したことへの返礼の意味があるとみられる。習主席の訪英について、中国メディアは熱烈歓迎ニュース一辺倒だが、英・仏メディアは一部で冷やかに報道している。
10月19日付
『ザ・テレグラフ』紙(英国)は、「英国の中国首脳熱烈歓迎は高くつく」と題して、「19世紀の中国東部において、英国が仕掛けたアヘン戦争のために清王朝は瓦解し、多くの犠牲者が生み出された。しかし、当時の中国人の恨みを覆い隠すように、英国のキャメロン首相(48歳)は習主席の訪英を国賓待遇で歓迎した。同首相とオズボーン財務相(44歳)は、米国の反対を押し切ってAIIBに参加し、AIIBを見事船出させた。...
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10月19日付
『ザ・テレグラフ』紙(英国)は、「英国の中国首脳熱烈歓迎は高くつく」と題して、「19世紀の中国東部において、英国が仕掛けたアヘン戦争のために清王朝は瓦解し、多くの犠牲者が生み出された。しかし、当時の中国人の恨みを覆い隠すように、英国のキャメロン首相(48歳)は習主席の訪英を国賓待遇で歓迎した。同首相とオズボーン財務相(44歳)は、米国の反対を押し切ってAIIBに参加し、AIIBを見事船出させた。そして今回の習主席訪英に当たり、中国の資金力で原子力発電所の建設や高速鉄道プロジェクトを推し進めようとしている。米国や欧州連合が、中国の投資を脅威と捉えている最中、英国は逆に中国に市場を開放しようとしている。」とし、「しかし、中国の経済成長減速は予想以上に急激で、世界銀行は、現在の中国共産党の一党独裁が続く限り、やがてかつての日本のように長く厳しい景気停滞に陥るおそれがあると警告している。従って、同首相の中国偏重政策は危ういのではなかろうか。」と報じた。
同日付
『UKニュース』(英国)は、「批判渦巻く中、中国習主席訪英を歓迎」と題して、「今回の習主席訪英は、英国王室も歓迎するもので、キャメロン首相としては、英国が西側諸国の中で最も緊密な関係にあることを知らしめる意図とみられる。しかし、野党労働党のコービン党首(66歳)も、また、アムネスティ・インターナショナル代表も、中国の人権問題について厳しく問い質すとしている。中国のウィグル族代表は、英国が習主席のために用意したレッド・カーペットは、彼の指示の下に虐殺されたウィグル族の犠牲者の血で染まった赤であると非難した。」と伝えた。
10月20日付
『フランス24』オンラインニュース(仏)は、「中国主席の訪英で300億ポンドの商談」と題して、「英国政府は10月20日、今回の習主席訪英中に、300億ポンド(約5兆5,700億円)超の商談がまとまる見込みであると表明した。内容は、商業、電力エネルギー、金融及び宇宙開発の分野で、3,900職種を新たに誕生させるとする。また、ロンドンと英国北部都市を結ぶ高速鉄道建設計画の競争入札への参加も促している(編注;日本も参画しており、インドネシア高速鉄道と同様の競争となる)。ただ、経済協力のみに力点が置かれることは、中国が犯している人権侵害問題を軽んじることになるとの批判がある。」とし、10月19日付同オンラインニュースでは、「ウィリアム王子、中国側に象の保護をアピール」と題して、「習主席の訪英の機会を捉えて、ウィリアム王子は10月19日の中国人向けテレビ番組にビデオ出演し、象牙やその他の動物の装飾品などを世界で最も多く珍重している中国人に対して、アフリカ象やサイが絶滅の危機に瀕しているので、乱獲につながる行為は慎むよう訴えた。」と伝えた。
一方、10月20日付
『人民日報』(中国)は、「熱烈歓迎にみる英国の新たな考察」と題して、「10月19~23日にかけての習主席の訪英について、英国側は最大級のもてなしで歓迎している。この機会を経て、中英関係は黄金期に入ると期待される。そもそも、今回の習主席訪英は、今年3月に、エリザベス女王の英国への招待状を携えてウィリアム王子が訪中したところから始まっている。英国としては、中英関係を強化・発展させることで、かつての英国の勢いを復活させたいと考えている。」と報じた。
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