米韓両政府は昨年、北朝鮮の核・ミサイル開発の脅威が一段と増したことから、これに対抗する手段として、終末高高度迎撃ミサイルシステム(THAAD)を2017年中に韓国配備することで合意した。しかし、かねて反対していた中国の対韓国圧力が増しただけでなく、朴槿恵(パク・クネ)大統領が職務停止に追い込まれて政権内の統制が取れない状況に陥っていることから、THAAD配備時期について混沌としてきている。ただ、対中国強硬派のトランプ氏が大統領に就任することもあり、在韓米軍幹部は、可及的速やかにTHAAD配備を取進めるべく韓国に対してプレッシャーをかけている。
1月16日付米
『ボイス・オブ・アメリカ』:「THAADが韓国大統領選の争点に」
「●昨年9月の北朝鮮による5度目の核実験を受けて、米国はミサイル防衛のためにTHAADの韓国配備を急ぐことを決定。
●そして昨年12月、韓国国防部(省に相当)はTHAADを今年5月に配備すべく、候補地の韓国南東部にあるゴルフ場所有者のロッテ・グループと協議中と発表。
●しかし1月16日、同部の文盛瑾(ムン・ソングン)報道官は、ロッテ・グループの取締役会での承認取得に時間を要しており、配備時期遅延の可能性を示唆。...
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1月16日付米
『ボイス・オブ・アメリカ』:「THAADが韓国大統領選の争点に」
「●昨年9月の北朝鮮による5度目の核実験を受けて、米国はミサイル防衛のためにTHAADの韓国配備を急ぐことを決定。
●そして昨年12月、韓国国防部(省に相当)はTHAADを今年5月に配備すべく、候補地の韓国南東部にあるゴルフ場所有者のロッテ・グループと協議中と発表。
●しかし1月16日、同部の文盛瑾(ムン・ソングン)報道官は、ロッテ・グループの取締役会での承認取得に時間を要しており、配備時期遅延の可能性を示唆。
●ただ実情は、THAAD配備問題が、春に予定されている、朴大統領後任選出の大統領選挙の争点になりつつあることからの遅延の可能性。
●なお、大統領選候補のひとりとされている、国連前事務総長の潘基文(パン・ギムン)氏は1月15日、THAAD配備は韓国の防衛上必要不可欠と発言。
●一方、12月の世論調査の結果では、配備反対が51%(前回7月は38%)に対して賛成が34%(同44%)と、反対派が優勢。」
1月19日付ロシア
『スプートニク・インターナショナル』オンラインニュース:「米マケイン議員-中国は韓国防衛体制強化を阻害するべきではないと表明」
「●米議会のジョン・マケイン上院議員(アリゾナ州選出)は1月19日、中国は、韓国の防衛力強化のためのTHAAD配備を妨害する行為を慎むべきだと声明。
●同議員は、中国が韓国に対して、韓国からのチャーター便のキャンセルや、化粧品等の韓国製品の中国向け取引の禁止等で揺さぶりを掛けていると説明。」
1月20日付韓国
『聯合(ヨナプ)ニュース』:「THAAD問題がクラシック音楽業界にまで波及」
「●THAAD配備問題の影響か、クラシック音楽業界関係者が1月20日に明らかにしたところによると、2月19日から広州(クワンチョウ)・北京・上海で公演を予定している、韓国ソプラノ歌手のビザ発給が大幅遅延。
●マネジメント会社は、通常中国ビザは申請後10日以内に発給されているが、今回は5週間以上経っても音沙汰がないため、対応策を検討中。
●また、3月18日に、貴陽(クイアン)シンフォニー・オーケストラ(貴州省)と協演予定だったトップ・ピアニストは、ビザ発給が拒否されたため、公演をキャンセル。
●同ピアニストは、2000年9月に、韓国初の芸術家として中国より招待されて公演。
●上記以外、THAAD配備決定に反発してか、中国側より、韓国からのチャーター便のキャンセルや、韓国ポップスターらの中国公演受け入れ拒否等が連続して発生。」
同日付中国
『環球時報』(
『新華社通信』配信):「日米韓、北朝鮮ミサイル攻撃想定の共同海上訓練を実施」
「●韓国
『聯合(ヨナプ)ニュース』は1月20日、日米韓による共同海上訓練を1月20~22日の間実施すると報道。
●これは北朝鮮の核・ミサイルの脅威に備えるためとして、2014年12月に3ヵ国が同意したもので、第1回は昨年6月に、第2回は11月にそれぞれハワイ島海域で実施。
●3ヵ国からそれぞれイージス駆逐艦が参加する本格的な訓練。
●米韓両政府は昨年7月、中国とロシアの反対を押し切って、対北朝鮮防衛強化のためとして、THAADの韓国配備を決定済み。
●一方、米韓情報筋の話として、北朝鮮は既に、移動発射台搭載の大陸間弾道ミサイル(ICBM、注後記)2発を開発済みと推測。」
(注)ICBM:米国と旧ソ連の間で締結された「戦略兵器制限条約(SALT)」によって、大西洋を挟んだ米本土の北東国境と、旧ソ連本土の北西国境を結ぶ最短距離の5,500キロメーター以上を有効射程と定義された弾道ミサイル。
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欧州中央銀行(以下ECB)は、デフレ回避と経済成長を促進するために、さらなるマイナス金利と量的緩和の規模拡大を敢行した。中銀預金金利を-0.30%から-0.40%へ、借換え金利を0.05%から0%へ、限界貸付金利を0.30%から0.25%へと主要政策金利を引下げた。金利引下げは専門家が予測していたが、量的緩和の範囲の拡大は世界を驚かせた。フランス各メディアは次の通り報じる。
仏最大経済紙
『レゼコー紙』は「ECBバズーカ砲」を「量的緩和の革命」と評する。ECBは毎月の額を600億ユーロから800億ユーロに増額したが、今回の目玉は次の二つと見る。
●範囲の拡大:格付け機関の「投資」部門に含まれる優良社債を購入政策の対象とする。4月以降企業の信用取引市場にも介入する予定。「レゼコー紙」は「真の革命」と好感する。
●長期融資の借換え政策:4年債の借換えはゼロ金利となり、融資が一定量を超えたら、その銀行は0.4%までのマイナス金利を享受する。...
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仏最大経済紙
『レゼコー紙』は「ECBバズーカ砲」を「量的緩和の革命」と評する。ECBは毎月の額を600億ユーロから800億ユーロに増額したが、今回の目玉は次の二つと見る。
●範囲の拡大:格付け機関の「投資」部門に含まれる優良社債を購入政策の対象とする。4月以降企業の信用取引市場にも介入する予定。「レゼコー紙」は「真の革命」と好感する。
●長期融資の借換え政策:4年債の借換えはゼロ金利となり、融資が一定量を超えたら、その銀行は0.4%までのマイナス金利を享受する。これにより銀行はECBの現金を貸付金として入手出来る。「レゼコー紙」はECBが景気刺激策を持つ事を示したと評価する。
仏二番手経済紙
『トリビューン紙』も、政策金利引下げよりも量的緩和の範囲拡大に注目する。「レゼコー紙」の指摘の他に、資産購入の範囲拡大について、次の通り分析する。
●範囲拡大で市場に債券発行を促す事で、ECBは実体経済に直接働きかける。銀行経由だったこれまでの金融政策の経路を外す「ショック療法」である。
●一方中小企業や経営危機の企業向けには、前述の銀行向け長期融資の借換え(TLTRO)を開始して、直接介入と使い分ける。
日本のマイナス金利の例から、株価上昇をで成否を判断するのは時機尚早とみる。
『フィガロ紙』は債券需要が爆発的に高まる傾向が既にみられると指摘し、金利が再上昇する時に債券バブルがはじけると懸念する。また「ECB政策は需要不足からくる低インフレにしか作用sない」ので、金融政策の効力に懐疑的である。「そのインフレが金融現象か実質経済なのかECBは検証しない。2,3年前に顕著だったユーロ圏の需要不足や失業率が緩和策で低下していない」と指摘する。
『ルモンド紙』も金融政策の有効性に疑問を呈する。ECBが大規模緩和を続けてもインフレ目標は3年間2%以下である。今回はECBの信頼性も試される反面、インフレ対策は中央銀行の範疇を超えるとも指摘する。
デフレ回避をどこまで金融政策に頼るのか。今回の成否が金融政策の有効性も占うだろう。
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