トランプ前大統領及びその支持者は、2020年の大統領選で票が盗まれた等、根拠のない主張を繰り返して、形振り構わずに勢力維持に拘泥している。そしてこの程、米領空に侵入してきた中国の偵察気球に関しても、前大統領が“即刻撃ち落とせ”と言えば、強烈なトランプ信奉者も、“トランプ政権下であったなら、同偵察気球の米領空内侵入など起こり得ない”等々と主張している。しかし、これは全くの虚偽で、トランプ政権下で3度も侵入を許していたことが米メディア報道で明らかになっている。
2月4日付
『メディアITE』オンラインニュース(2009年設立の政治及びメディア報道チェック専門ニュース)は、「トランプ信奉者、トランプ政権下だったら偵察気球が米領空内侵入前に撃墜していたと主張するも、事実無根」と題して、バイデン政権の弱腰姿勢を批判するために、トランプ信奉者が、トランプ政権下だったら当該気球を即刻撃墜しただけでなく、侵入さえも許さなかった等と表明するも、事実無根の主張だと報じている。
米領空内に侵入した中国の偵察気球は2月4日、米南東岸サウスカロライナ州沖上空で撃ち落とされた。
これに関し、極右派のトランプ信奉者のマージョリー・テイラー・グリーン下院議員(48歳、ジョージア州選出共和党員、2020年初当選)が早速、もしトランプ氏が大統領だったら、当該気球の米領空内侵入を決して許さなかっただろうとして民主党政権に嚙みついた。
同議員は、トランプ氏と会話した上での話として、“トランプ氏が大統領だったら、当該気球が米軍基地や関係施設上を飛行することなど許さなかったし、米領空内に侵入してくる前に撃ち落としていただろう”とツイートした。
また、トランプ政権下で国務長官を務めたマイク・ポンペオ氏(59歳、2018~2021年在任)も2月3日、『Foxニュース』の政治会談番組司会者ショーン・ハニティ氏(2009年放送開始)のインタビューに答えて、“もしトランプ政権が続いていたら、当該気球はもうとっくに撃ち落とされていた”と発言していた。
しかし、いくつかの米メディア報道によると、事実は全く違っていた。
まず、経済誌『フォーブス』(1917年創刊)は2月4日、作家マット・ノバク氏のコメントを引用して、国防総省が今週発表した声明によると、“偵察気球飛来という事例は、トランプ政権時代含めて過去に何度か起こっていた”と報じ、グリーン議員のツイート内容を否定している。
また、『AP通信』(1846年設立)も2月4日、米シンクタンク・民主主義擁護財団(2001年設立)のクレイグ・シングルトン上級研究員のコメントを引用して、“中国の偵察気球は直近5年間で、ハワイ在の軍事施設上空含めて何度も視認されている”と報じている。
同メディアは更に、米高官の話として、“中国の偵察気球はトランプ政権下で3度、また、バイデン政権になったばかりのときに1度、米領空上を飛行しているのが確認されている”とした上で、“ただ、今回ほど長い間飛翔してはいなかった”と引用している。
(編注;今回の偵察気球は1月28日にアラスカ州領空内に侵入し、1月30日にカナダ上空を飛翔した後、1月31日にアイダホ州領空内に再侵入)
かかる報道から言えることは、偵察気球が飛翔した長さや侵入場所に関係なく、トランプ政権下でも侵入していたということと、それらを撃墜したという公式発表は一切なされていないことから、グリーン議員のツイートは、事実に基づいたものではないということが明らかである。
なお、テッド・クルーズ上院議員(52歳、テキサス州選出共和党員、2012年初当選)は、民間人の目撃によって公に報道されることにならない限り、バイデン政権は当該気球を撃墜することはしないだろうと、習近平国家主席(シー・チンピン、69歳、2012年就任)は高を括っていたと考えられる、と示唆している。
一方、ロイド・オースティン国防長官(69歳、2021年就任)は2月3日、中国の偵察気球は明らかに米国の“戦略上重要な施設”を偵察する目的で飛行していたと明言している。
当該気球が通過したモンタナ州には、核弾頭搭載ミサイル等の軍事施設がある。
同日付『Foxニュース』(1996年開局)は、「中国の偵察気球が撃墜された理由」の記事中でトランプ政権下での件について触れている。
偵察気球は今に始まったものではなく、原始的なものは数世紀前から存在していて、第二次大戦が起こってから多くの頻度で使われるようになったものである。
なお、今回の中国の偵察気球について、複数の米高官が2月4日、当該気球はトランプ政権下で少なくとも3度、バイデン政権に移行したばかりのときに1度確認されていると証言している。
ただ、今回ほど長い間(米領空上を)飛翔したことはなかったともコメントしている。
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ナチスドイツ軍が設けていた、悪名高いアウシュビッツ強制収容所は1945年1月27日、赤軍(当時のソ連地上軍、注1後記)によって解放された。しかし、今年の解放78周年記念式典にはロシア代表が招待されないことになっている。
1月26日付米
『Foxニュース』は、「今年のアウシュビッツ強制収容所解放記念式典にロシアは招待されず」と題して、78年前に当時のソ連地上軍が解放に尽力したにも拘らず、今年の記念式典にはロシア代表は一切招待されていないと報じている。
1月27日は、赤軍によってナチスドイツが営む悪名高いアウシュビッツ=ビルケナウ強制収容所(注2後記)が解放された記念日である。
同収容所では、主にユダヤ人ら100万人以上が虐殺されており、毎年犠牲者を悼み記念式典が開催されてきた。
しかし、78周年となる今年の式典には、ロシア代表は一切招待されていない。
何故なら、欧州諸国にとって、ロシアが仕掛けたウクライナ戦争の惨状を鑑みるに、ロシアを招待しない程度では済まされないからである。
アウシュビッツ=ビルケナウ記念博物館のパウェル・サビッキ広報担当は『Yahooニュース』のインタビューに答えて、“ロシアが一方的に独立国のウクライナを攻撃している現状より、今年の式典には(解放に尽くしたソ連軍の後継とは言え)ロシア連邦代表を招待することはできない”と明言した。
ポーランドのアンジェイ・ドゥダ大統領(50歳、2015年就任)が同記念式典を仕切っているが、ポーランドは特に隣国のウクライナを強く支援していて、これまで数十万人のウクライナ難民を受け入れているばかりか、西側諸国が提供する武器等の搬送に手を貸している。
同記念博物館には、ナチスドイツ軍が設けたガス室や粗末な木造収容施設が残されており、毎年約230万人が訪れている。
同館のピオトル・シウィンスキー館長(50歳、2006年就任)は、“人類にとって忘れてはならない遺物を示すために同館が存在していることを考えた場合、目下ロシアがウクライナで犯している戦争犯罪を決して許すことはできない”と記念式典冒頭に表明した。
これに対してロシア側が直ぐに反発し、外務省のマリア・ザハロア報道官(47歳、2015年就任)はSNS上に、“欧州の「パートナーでも何でもない」国々が歴史を塗り替えようとしても、ソ連軍のはたらきによってナチスドイツ軍の収容所が解放されたという事実は消えない”と投稿している。
赤軍による絶え間ない攻撃によって、ポーランドを含む東欧からナチスヒットラー軍を後退させ、その結果アウシュビッツ=ビルケナウ強制収容所が解放されるに至っている。
赤軍は更に、その余勢を駆って2ヵ月後にベルリンに進軍し、最終的にナチスドイツ軍を打ち破った。
第二次大戦を通じて、ソ連では戦闘員・民間人併せて2,600万人余りが犠牲になっている。
そこでザハロア報道官は、“ファシズムから世界を救ったのはソ連軍兵士”だということを忘れてはならないと強調している。
当時のソ連側の主張は、米国や英国の統治者は、アウシュビッツで何が行われていたか承知していたにも拘らず、収容所から駆り出されたユダヤ人が鉄道工事に従事している場所に空爆を繰り返し、毎日数千人ものユダヤ人を殺害したとしている。
一方、ウラジーミル・プーチン大統領(70歳、2000年就任)はウクライナ軍事侵攻の理由について、ウクライナ政権の“ナチ化を防ぐ”ためだと主張しているものの、ウォロディミル・ゼレンスキー大統領(45歳、2019年就任)がユダヤ人であることを見落としている。
1月27日付英国『ジ・インディペンデント』オンラインニュースは、「欧州の平和が脅かされる中、アウシュビッツ解放記念式典開催」と詳報している。
1945年1月27日にソ連軍によって解放されるまで、アウシュビッツ=ビルケナウ強制収容所に収容されていたユダヤ人ら約110万人が犠牲になっていた。
大半がユダヤ人であったが、その他ポーランド人、ロマ族、更にはソ連軍捕虜も含まれている。
そしてこの程、解放から78周年を記念すべく、同収容所の生存者が再び同式典に参席した。
同収容所跡に設立された記念博物館には、ガス室や粗末な木造収容所のみならず、犠牲者の服・靴等の遺物も展示されていて、“(ナチスドイツ軍がもたらした悲惨な事態は)二度と繰り返さない”と訴えている。
しかし、アウシュビッツから僅か300キロメートル(185マイル)東方のウクライナでは、ロシアによる一方的な軍事侵攻に端を発した戦争が繰り広げられていて、約80年前と同様多くの戦争犠牲者が出ている。
2005年に開催された60周年記念式典には、プーチン大統領が招待されて演説していたが、今年の式典には招待されていない。
同記念博物館の公式発表では、ロシア側代表は誰も招待していないという。
(注1)赤軍:1918年1月から1946年2月までロシア帝国及びソ連に存在した軍隊。十月革命後に勃発したロシア内戦の最中である1918年1月に、労働者・農民赤軍(略称:労農赤軍)として設立。1937年12月にソ連海軍が赤軍から独立した後は、ソ連地上軍(陸軍)を指す呼称となった。
(注2)アウシュビッツ=ビルケナウ強制収容所:1940~1945年の間に、ナチスドイツ軍占領下にあったポーランド南部クラクフ近郊に造られた強制収容所。収容されていた110万人余り(9割がユダヤ人、他にポーランド人、ロマ族(ジプシー)、ソ連軍捕虜)の9割以上が虐殺(ホロコースト)されている。
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