世界大手コーヒーチェーンのスターバックス(1971年創業)は、直近の1~3月期で過去最高売上高を達成した。しかし、1999年に進出以来、本拠の米国(世界全店舗の45%)の次を占める中国(同16%)における「ゼロコロナ政策」に伴う操業不調に鑑み、2022年度(2021/10~2022/9期)の見通しの発表は控えている。
5月4日付
『Foxニュース』(
『AP通信』記事引用)は、「スターバックス、四半期最高売上高を達成するもコロナ禍による中国事業悪化のために通期見通し不透明」と題して、世界大手コーヒーチェーンのスターバックスが、第2四半期(1~3月期)において過去最高売上高を記録するも、世界全店舗(3万4,630店)の約16%(5,654店)を占める中国事業の操業不調に鑑み、2022年度の通期見通しの発表を控えたと報じている。
スターバックスのハワード・シュルツ最高経営責任者(68歳)は5月4日、直近四半期の売上高が過去最高の76億ドル(約9,880億円)と、前年同期比+15%を達成したと発表した。
北米(世界全店舗の49%)の売上高が+12%、また北米外の世界合計で+8%と好調であったが、北米に続く拠点の中国においては、中国政府の「ゼロコロナ政策」等の影響もあって、▼23%も落ち込んだという。
同社は、中国で再び猛威を振るっている新型コロナウィルス感染問題と、それに伴う中国政府の厳格な「ゼロコロナ政策」による同社事業への影響に鑑み、2022年度通年の業績見通しについての発表を控えた。
ただ、シュルツ氏は、“中国におけるスターバックス事業規模は米国のそれより大きく、その将来に期待している”と同社投資家らに説明している。
一方、純益は6億7,400万ドル(約876億円)と僅か+2%の伸びに止まっていて、経済アナリストの予想値を若干下回っている。
伸び鈍化の要因は労務費の上昇であるが、同社内における労組化の動きを抑えるために更に賃金アップで対抗する必要に迫られている。
同社の5月3日発表では、従業員の賃金及び福利厚生向上のために今年度2億ドル(約260億円)を費やすとしている。
ただ、同社は、昨年末に組合を立ち上げた米国内の50店舗は適用外とした。
そこで、組合側は米国家労働委員会(NLRB、注後記)に対して異議申し立てを行っている。
(注)NLRB:団体交渉や不当な労働慣行に関連して米国の労働法を施行する責任を負う米国連邦政府の独立機関。1935年制定の国家労働関係法に基づいて設立され、労働組合代表選挙を監督し、不当な労働慣行を調査し、改善することが主業務。
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マイク・ペンスは、2016年時に副大統領候補として選挙キャンペーンを進めていた際、大統領候補だったドナルド・トランプが女性にセクハラを迫るビデオが公開されたときも、目をつぶって選挙キャンペーンを継続した。
ホワイトハウスでの執務時、新型コロナウィルス感染問題で米国が危機に陥ったときも、副大統領としてトランプ政権の政策を賛美する姿勢を貫いた。
更に、2021年1月初め、米議事堂乱入事件を起こした暴徒から殺害予告をされたにも拘らず、米国憲法修正第25条(注1後記)に基づいてトランプ大統領の解任を求める下院議会からの嘆願を受け入れることはしなかった。
しかし、何年もトランプの従属的相棒を務めてきたものの、ペンスはいよいよトランプから距離を置く対応を取り始めている。
これは、取りも直さず、彼自身が次期大統領選に打って出ることを睨んでのことと思われる。
例えば、ペンスは先月、トランプの実名を挙げて、2020年の大統領選の結果を覆す権限を副大統領が有していると主張した前ボス(トランプ)は“間違っている”と非難した。
更に、ペンスは別の機会に、共和党支持者らの前で行ったスピーチの中で、トランプが以前にウラジーミル・プーチン大統領(69歳)を“天才”だと褒めていたことを引き合いに出して、“(ウクライナ軍事侵攻を強行した)プーチンを擁護するような人物は共和党内に居場所はない”と断罪し、共和党はトランプと決別すべきだと訴えている。
ただ、ペンスが前ボスと袂を分かつとの戦略は、依然共和党内にトランプ支持者が多く、かつ、トランプが言う2020年大統領選は盗まれたものだとの虚偽の主張がまかり通っていることから、大きなリスクを伴うものである。
しかし、もしペンスのかかる戦略が奏功すれば、共和党員にとって、トランプがこれまで取ってきた様々な有害な行動で地方票を失うという事態を再びみることなく、共和党候補を応援できることになるのは有益であろう。
ペンスが副大統領時に首席補佐官として仕えたマーク・ショート(52歳)は、“副大統領職にあっては、自身に裁量が許される場合もあるが多くの場合制約がある”とし、“大統領とは違った独自性を有していても、ともかく4年間は大統領を支えるのが仕事であった”として、ペンスの今回の動向を擁護した。
他の側近も、ペンスは何十年も保守的な政治姿勢を貫いてきており、主義・主張もトランプと異なる見かたをしていたことも明らかであり、従って、この機会にペンスがトランプと決別して自身の原理・原則に則って活動していくことを望んでいる。
更に彼らは、ペンスが以前からプーチンを非難してきたことを良く理解しており、実際ペンスは、ロシアによるウクライナ侵攻後間もなく、周囲に大っぴらにせずにポーランドのウクライナ国境地区を電撃訪問して、同国からの避難民に食糧を供給している。
米福音派伝道師でサマリンダ・パース(注2後記)代表のフランクリン・グラハム尊師(69歳)が、ペンスのウクライナ国境地区訪問をお膳立てしたものであるが、同尊師は、ペンスが表明した姿勢は彼の本来の姿であると言及している。
ペンスは直近数ヵ月、米国内を行脚して彼の政策を説いて回り、また中間選挙の候補者用の選挙資金の支援を獲得する活動を行っている。
また、彼の政策グループ「先進の米国自由主義」は、1千万ドル(約11億9千万円)のキャンペーン資金を拠出して、ロシアによるウクライナ侵攻に伴うエネルギー危機に対応するため、米国内産エネルギー政策の充実に向けて活動を続けると発表している。
更にペンスは、強力な支援者との面談を繰り返している。
ウクライナ国境地区を訪問する前にイスラエルを訪ね、ナフタリ・ベネット首相(49歳、2021年就任)と会談して連携強化を図っている。
また、大富豪の共和党支援者であるミリアム・シェルダン(76歳、イスラエル系米国人医師)と直近で2度も面談している。
なお、2024年大統領選の共和党予備選挙の候補予定者をみた場合、共和党内では依然トランプの支持率が非常に高く、2番目はフロリダ州のロン・ディサンティス知事(43歳、2019年就任)が続く。
また、マイク・ポンペオ前国務長官(58歳、2018~2021年就任)も、直近で台湾の蔡英文総統(ツァイ・インウェン、65歳、2016年就任)を電撃訪問したりして、存在感をアピールしている。
ただ、ペンス自身は2024年大統領選への出馬については言葉を濁しており、『Foxニュース』の番組に出演した際も、“目下は2022年の中間選挙における共和党候補の応援に注力している”とし、“2023年になって、共和党としての2024年選挙対応の戦略が整い始めたら、家族や支持者とも相談の上で、自身の対応を明確にしたい”と述べるに留まっている。
一方、トランプは先週、『ワシントン・イグザミナー』(2005年発刊の保守系週刊誌)のインタビューに答えて、“次期大統領選を考えた場合、トランプ・ペンスという組み合わせは有権者から支持されないと思う”とし、仮にトランプが再度立候補する場合、別の副大統領候補を指名する考えであることを仄めかしている。
(注1)米国憲法修正第25条:米国憲法第2条第1節第6項の曖昧な語句を部分的に置き換え、米国大統領の承継を取り扱い、副大統領が欠員の場合にそれを埋める方法と、大統領がその職務上の権限と義務を遂行することができない場合の対処法を規定。
(注2)サマリンダ・パース:米国福音派のキリスト教徒が運営する緊急援助支援団体。1970年設立。日本においても、2011年東日本大震災を契機に活動開始し、同年7月に一般社団法人格を取得。
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