サッカーのワールドカップ・カタール大会で23日、日本と対戦したドイツの選手たちが試合前の写真撮影で口を塞ぎ、多様性や差別撤廃などを訴えるアームバンド「ONE LOVE」の着用を禁止した国際サッカー連盟(FIFA)に抗議を表した。FIFAは21日、着用した選手には制裁を科すと発表し、欧州7カ国が合同声明で、アームバンドをつけないよう呼びかけていた。日本に敗戦したドイツのファンからは、「政治問題に気を取られすぎで負けた」と批判する声もある。
11月24日付豪
『ABCニュース』:「番狂わせとなった日本勝利前、ドイツが”ONE LOVE”アームバンドの禁止でFIFAに抗議」:
ワールドカップ・カタール大会で、日本が2対1でドイツに逆転勝利。試合前ドイツ選手は、カタールの人権問題に目をつぶろうとするFIFAへの抗議として、口を手で塞いだチーム写真で注目された。この抗議が、順当に勝利に向かうとみられていた今夜のドイツチームのハイライトとなってしまった。
だが、この抗議は試合にはつながらず、前半33分、イルカイ・ギュンドアン選手がペナルティーキックを決めた後は、後半残り15分、交代で入ったサムライブルー堂安選手と浅野選手に勝利のゴールを与え、あえなく勝利を逃した。
キャプテンのGKマヌエル・ノイアー選手は、信じられないといった様子で、「前半2点目を急ぐ前に日本が調子を取り戻した。後半は前半のような自信を保てなかった」と話している。
この試合のキックオフ前、ドイツチームは、チーム写真撮影で口をふさぎ抗議。FIFAは主催国カタールでの人種差別に抗議をしめす「One Love」のアームバンドをつけたらイェローカードを出すとチームのキャプテンに警告を発していた。カタールは人権軽視や、同性愛を犯罪とする法で、調査対象となっている。
ドイツサッカー連盟(DFB)は、選手を支持する姿勢をみせ、「アームバンドは、多様性と相互理解を重んじるドイツナショナルチームの価値観を表している。他国と共に我々は声をあげていきたい。これは政治的メッセージではない。人権は当然守られるべきものだが、そうでない国もある。アームバンドの禁止は、言論の自由の禁止だ。」との声明を出した。
ドイツのナンシー・フェイザー内務相がアームバンドをつけ、FIFAのジャンニ・インファンティーノ会長の隣に座り関係者と話す場面もあった。以前同氏は、罰則の警告は受け入れられない」とFIFAを批判していた。「サッカーに政治をもちこんではいけない」、
11月23日付英『デイリー・メール』:「フリック監督のドイツチームが口をふさぎFIFAに抗議、ドイツの敗戦は政治問題に気を取られた結果」:
ドイツ選手がプレー以外の場で政治的コメントをみせる一方、日本に逆転負けしたことで、ドイツのファンはプレーで物を言えなかったと批判。
多くのファンは、ハンジ・フリック監督のチームが、「政治にのみ」集中し、気が散っていたのだから負けて当然だと批判している。ネット上では、「ドイツはレインボーアームバンドや政治的問題を気にしすぎ」、「政治に偏らずサッカーに集中すべき」、ドイツは「カタールの文化を尊重すべき」という意見もあった。
ドイツ選手は、日本戦前のチーム写真で、FIFAによる人種差別反対のアームバンド着用禁止に対して、口を手で塞ぎ抗議を示した。
選手の抗議のあと、ドイツサッカー連盟も声明で、「アームバンドの禁止は、言論の禁止のようなもの」とした。また、スタンドから観戦したドイツの内務相は、ピンクの上着に隠していたが、試合が始まるとハート型ロゴの入った腕のアームバンドをみせ、その後、堂々とFIFAのインファンティーノ会長の隣に座り、冷ややかな会話をしているようだった。
FIFAが、アームバンドをつけた選手にペナルティを与えると警告したことから、ドイツやイングランド、ウェールズ、ベルギー、オランダ、スイス、ドイツ、デンマークが21日、FIFAの圧力により、カタールでアームバンドをつけるのを断念したと発表している。
ペナルティは当初、アームバンドをつけた選手にイエローカードを出すものだと報じられたが、後に選手やチームにさらなるペナルティを与えるものだと報じられている。選手のみならず、ファンもLGBTAを支持する姿勢を公に表現できなくなる。
ドイツサッカー連盟(DFB)は22日、FIFAに法的手段で訴えることを検討していると発表した。バンドをつけることは、9月にはじまった一年に及ぶキャンペーンの一貫で、特にカタールでは重要なシンボルとなっている。
欧州ではアームバンド着用をやめているが、イランは、国内で多発するデモや国家による弾圧への抗議をとして、試合前の国家斉唱を辞退。アームバンド禁止をうけ、ドイツ食品チェーンReweが、ドイツサッカー連盟の広告を掲載を中止。
ドイツでは開催国カタールへの否定的ムードが顕著となっている。ネット上でも、「#BoycottQatar2022」がトレンド入り、また国内のスタジアムでカタール移民の死者数とされる2万本のキャンドルを点灯するなど、抗議が広がっている。
ホーエンハイム大学の世論調査によると、ドイツ国民の約半数が、スポンサー企業や政治家によるワールドカップのボイコットに賛成しており、3分の2以上が、ショルツ首相の現地訪問は必要ないとしている。
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11月18日付
『ロイター通信』は、「TO元CFO、TO脱税行為に繋がる同社幹部宛の小切手をトランプが切ったと証言」と題して、トランプ前大統領が実質オーナーとなっているTOで長年金庫番を務めていたワイゼルバーグ元CFOが、ニューヨーク地裁において、自身のみならずTOの脱税行為までも認めたものの、トランプ一家は不関与だったと証言したと報じている。
TOで長年金庫番を務めたアレン・ワイゼルバーグ元CFOは11月17日、TOの脱税容疑について行われたニューヨーク地裁の審理において、TOの役員に対するクリスマス賞与の支払いに関し、彼らが独立した取引先と偽って発行した小切手にドナルド・トランプ前大統領(76歳)が署名していたと証言した。
しかし、同元CFOは、当該脱税行為に関して同前大統領は関与していないとも陳述した。
TOを刑事訴追したニューヨーク州マンハッタン地区検察局は、税務当局を欺いてTO経費をごまかす行為を15年間も続けてきたと訴えた。
同検察局は、TO従業員の私的経費についても同様の手口でごまかしていたとも言及している。
同元CFOは今年8月、当局と司法取引を行う過程で、罪を認めていて、また、裁判で証言することも同意していた。
ただ、当局はトランプ自身を訴追対象とはしていない。
同元CFOの証言によると、各個人及びTOに関わる税負担を逃れるため、自身、ジェフリー・マッコーニー経理担当責任者及び他数名のTO幹部に対するクリスマス賞与支払について、会社外関係者への支払いと偽る行為を2005~2017年の間に実施していたという。
同元CFOは、“トランプ氏は、賞与用の小切手への署名をいつも好んで行っていた”とした上で、スーザン・ホフィンガー検事からの、トランプ氏はこれらの小切手がTO従業員向けのためだったことを理解していたかとの質問に答えて、“そのように理解していた”とも証言した。
しかし、TO代理人のアラン・フターファス弁護士(61歳)の反対尋問に答えて、同元CFOは、マッコーニーと共謀して行ったもので、トランプ一家の誰とも相談していないと証言している。
同元CFOは更に、“自身の強欲さによって行われたものだ”とも証言した。
ワイゼルバーグ元CFOは既に、自身の176万ドル(約2億4,600万円)に関わる所得税をごまかした罪を認めている。
また、マッコーニーは、当局が同元CFO及びTOを脱税容疑で起訴する前に罪を認めていたことから免責扱いとなっている。
一方、TO自身は、会社としての脱税行為を否認し、ワイゼルバーグ元CFOが自身の利益のために独断で行ったものだと主張している。
なお、同元CFOは会社側のフターファス弁護士の尋問に答えて、“トランプ氏の大統領就任が確定したことから、2017年にはTOにおける全ての不正行為を終わらせ、経理関連の健全化を図った”と証言した。
その上で、同元CFOは、会社からの信頼を裏切ってしまったとして、“恥ずかしく、猛省している”と言及している。
11月19日付『ABCニュース』は、「TO元CFO、会社からの手当て支給が停止された後も20万ドルの給与アップを認められていたと証言」として、TOにおける経費処理の不適切さについて詳報している。
TO元CFOのワイゼルバーグ被告は11月18日に行われた裁判で、会社からの手当てを簿外扱いとして自身の確定申告を偽り、脱税行為を行っていたことが判明した後の2019年にも、TO幹部のエリック・トランプ氏(38歳)から20万ドル(約2,800万円)の給与アップを認められていたと証言した。
同元CFOは、トランプ氏が大統領に就任した後にTO代表となっていたエリック氏が2017年に、同元CFOの豪邸家賃やその他経費をTOが負担していることを隠した上で確定申告を行って所得税をごまかしていたことを知ることになったと語った。
その上で同元CFOは、トランプ氏の大統領就任で、TO内の“経理関係の健全化”を図ることになり、それまでTOが負担していた同元CFOの家賃、車のリース代、孫の学費等の支払いが停止されたため、エリック氏に陳情してその代替として20万ドルの給与アップを認めてもらったと証言した。
更に、同元CFOは、ホフィンガー検事からの“2021年7月に、被告人が脱税行為等15に及ぶ罪で訴追された後も、TOは114万ドル(約1億6千万円)の給与を支給していたのか”との質問に答えて、“その通りだ”とも証言した。
そこで同検事は、かかる経緯から、同元CFOの違法行為をTO自身も容認していたことが明らかだと訴えた。
なお、同検事が、TOからの給与や賞与を少なく計上することでTOにどのような便益をもたらすか、と尋問したことに対して、同元CFOは、会社にとって“給与税の節税となる”ことを認めている。
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