ASEAN首脳、米中貿易摩擦問題を懸念し、より中印両大国との関係強化を追求【米・英国・シンガポールメディア】
東南アジア諸国連合(ASEAN)は、32回目となる首脳会議を開催した。議長国のシンガポール首相が、米中間の貿易摩擦問題を含め、台頭する保護貿易主義によるASEAN地域経済への悪影響を懸念して、アジアの両大国である中印との関係強化を推し進めていくとの議長声明を発表した。なお、南シナ海問題については、中国の実効支配に改めて懸念するとの表現を用いたものの、ASEAN・中国間での行動規範合意に漕ぎ着けることに努めるとした。
4月28日付米
『AP通信』:「シンガポール首相:ASEANは中印両国との関係強化を追求と声明」
シンガポールのリー・シェンロン首相は4月28日、同地で開催されたASEAN首脳会議の議長声明を発表した。
同首相は特に、現在発生している米中間貿易摩擦問題を大いに懸念しているとし、世界で台頭しつつある保護貿易主義がASEAN地域の経済成長を危うくしかねないとした。
そこで同首相は、世界の勢力バランスが転換しつつある現在、ASEANとしては“新たな大国”である中印両国との協力関係強化を望んでいるとした。...
全部読む
4月28日付米
『AP通信』:「シンガポール首相:ASEANは中印両国との関係強化を追求と声明」
シンガポールのリー・シェンロン首相は4月28日、同地で開催されたASEAN首脳会議の議長声明を発表した。
同首相は特に、現在発生している米中間貿易摩擦問題を大いに懸念しているとし、世界で台頭しつつある保護貿易主義がASEAN地域の経済成長を危うくしかねないとした。
そこで同首相は、世界の勢力バランスが転換しつつある現在、ASEANとしては“新たな大国”である中印両国との協力関係強化を望んでいるとした。
具体的には、“東アジア地域包括的経済連携(RCEP)”構想に基づき、今年中に関係国である日本・中国・インド・韓国・豪州・ニュージーランドとの交渉を纏めていきたいと言及した。
一方、中国が実効支配を進める南シナ海問題について、改めて“懸念”との表現を用いたものの、ASEAN・中国間でのルール策定交渉に努めていくと、ASEAN首脳が再確認したと言及した。
同日付英『デイリィ・メール・オンライン』(『ロイター通信』配信):「シンガポール首相、ASEANが米中貿易摩擦問題を大いに懸念すると発表」
リー首相は4月28日リリースの議長声明で、米中間貿易摩擦問題を含めて、世界において保護貿易主義が台頭しつつあることを大いに懸念すると強調した。
一方、領有権争いのある南シナ海問題については、ASEANが中国との間で“行動規範”作りの交渉を先月開始したことを明らかにした上で、早期解決に向けて努めていくとした。
なお、シンガポールが米朝首脳会談の開催地の候補と報道されていることに関し、ASEAN首脳会議閉幕後の記者会見で同首相は、どこからも要請はきていないと語った。
同日付シンガポール『ザ・ストレーツ・タイムズ』紙:「ASEAN首脳、保護貿易主義の台頭を大いに懸念し、急ぎRCEP交渉妥結に向け努力すると声明」
シンガポールで4月25~28日、32回目となるASEAN首脳会議が開催された。議長国となったシンガポールのリー首相は議長声明の中で、ASEAN首脳は台頭する保護貿易主義に対抗するため、多国間自由貿易協定締結に向けて努力していくことを再確認したと言及した。
更に同議長声明の中で、ASEAN首脳は関係大臣・高官らに対して、RCEP交渉を進捗させるため“全力を挙げて”取り組むよう指示を出したと付言した。
また、リー首相はASEAN首脳会議閉幕後の記者会見で以下のように述べた。すなわち、米国の離脱で“環太平洋経済連携協定(TPP)”が立ちいかなくなり、残された11ヵ国は急ぎ“包括的かつ先進的環太平洋経済連携協定(CPTPP)”締結に向けて動いた。そしてASEANとしては、これと同様の事由から、RCEP構想の中で自由貿易協定の制定に向けて急ぐ必要がある。
閉じる
ドゥテルテ比大統領、国際刑事裁判所(ICC)から脱退宣言するも、捜査逃れとの批判の声【米・ロシア・シンガポールメディア】
3月11日付Globali「フィリピン、国連人権特別報告者を“テロリスト”として起訴したことで国連人権理事会と全面戦争」の中で触れたとおり、国連人権理事会の国連人権高等弁務官が、ドゥテルテ比大統領は精神科医の診断を受ける必要があると激しく非難している。これへの反発のためか、同大統領は先週、国際刑事裁判所(ICC、注後記)から脱退する旨宣言した。これに対して、フィリピン識者等からは、ICCからの捜査逃れだとの批判の声が上がっている。
3月19日付米
『ボイス・オブ・アメリカ』:「フィリピンのICC脱退宣言により、反って麻薬撲滅運動への猜疑心惹起」
ロドリゴ・ドゥテルテ大統領は3月14日、ICCから脱退すると宣言した。ICCや国連が、同大統領を人権蹂躙の鬼等と根拠のない非難をしているからだとする。
しかし、フィリピン大学のジェイ・バトンバカル教授(法律・国際海洋問題)らは、ICCによる超法規的殺人の違法性捜査から逃れるためだと批判している。...
全部読む
3月19日付米
『ボイス・オブ・アメリカ』:「フィリピンのICC脱退宣言により、反って麻薬撲滅運動への猜疑心惹起」
ロドリゴ・ドゥテルテ大統領は3月14日、ICCから脱退すると宣言した。ICCや国連が、同大統領を人権蹂躙の鬼等と根拠のない非難をしているからだとする。
しかし、フィリピン大学のジェイ・バトンバカル教授(法律・国際海洋問題)らは、ICCによる超法規的殺人の違法性捜査から逃れるためだと批判している。
ICCは2月8日、麻薬撲滅運動に関わる超法規的殺人について、予備捜査に着手する旨発表していた。
ニューヨーク本拠の人権監視団は今年1月、麻薬撲滅運動の名の元、約1万2千人の被疑者が殺害されていると非難している。
なお、フィリピン大統領府のハリー・ローク報道官は3月15日、超法規的殺人の違法性の有無を判断するのはICCではなく、フィリピンの裁判所であるべきだが、ICCが越権行為をしようとしているため、脱退せざるを得ないと説明した。
更に同報道官は、フィリピンの脱退がアジアの他国にも影響を及ぼさないか、ICCは気が気でないであろうとも付言した。
3月18日付ロシア『スプートニク・インターナショナル』オンラインニュース:「ドゥテルテ比大統領、ICC脱退に当り、ICCは同国に何ら裁判権を有せずと強調」
ドゥテルテ大統領は3月18日、フィリピン陸軍士官学校卒業生を前にしての演説で、ICCは裁判権がないのに、同大統領の麻薬撲滅運動に関わり難癖を付けてきていることから、ICCから脱退することにしたと発言した。
これに関して、フィリピン人権委員会のチト・ガスコン委員長は、ICC脱退宣言で、反って超法規的殺人の違法性について嫌疑が濃厚となるばかりであるとした上で、ICC脱退は大統領の専権事項ではなく、議会上院の承認が必要であるとコメントしている。
3月19日付シンガポール『ザ・ストレーツ・タイムズ』紙(『AFP通信』配信):「ドゥテルテ比大統領、他国にもICC脱退を推奨」
ドゥテルテ大統領は3月18日、フィリピン陸軍士官学校で、ICCが主張していることは理不尽等としてICCから脱退することを決めたが、他国も疑義があるなら躊躇なく脱退すべきだと表明した。
同大統領は更に、所詮ICCは欧州の息のかかった団体で、“黒人差別”のように差別が起こり得る裁判所だとも非難した。
なお、フィリピンは3月16日、人権問題を政治問題化して同国を一方的に非難していることを理由として、ICCから脱退する旨正式に国連に通知している。
(注)ICC:1998年7月、国連全権外交使節会議において採択された国際刑事裁判所ローマ規程に基づき、2003年3月にオランダのハーグに設置された裁判所。判事・検察官などは、締約国会議によって選出。管轄は、個人による集団殺害犯罪、人道に対する犯罪、戦争犯罪、侵略犯罪など、国際人道法に対する重大な違反を対象。締約国 は 121ヵ国で、日本は2007年7月加入。
閉じる
その他の最新記事