親中に舵を切った労働党政権下の豪州市民、中国脅威への懸念は相変わらず高く、一方対日信頼関係は依然良好【豪州メディア】(2024/06/04)
既報どおり、2022年に9年振りに返り咲いた豪州労働党政権は、2020年に最低となった豪中関係を改善すべく、対中親和政策に舵を切っている。そうした中、豪州シンクタンクが直近で行った世論調査の結果、依然豪州市民の過半数が、中国は経済的パートナーというより安全保障上の脅威国であると考えていることが判明した。なお、日本がアジアにおいて最友好国であるとする評価は変わりなかった。
6月3日付
『ABCニュース』は、直近の世論調査の結果、豪州市民の過半数が依然中国を安全保障上の脅威と考えていることが判明したと報じている。
2022年に9年振りに返り咲いた豪州労働党政権は、保守党政権下で最低となった豪中関係を改善すべく中国に歩み寄る対応を取ってきている(2022年末の豪中国交樹立50周年記念式典に外相派遣、2023年10月に首相の中国表敬訪問等)。
しかしながら、外交政策シンクタンクのローウィ・インスティテュート(LI、2003年設立)が直近で行った世論調査によると、豪州市民の過半数(53%)が依然、中国は経済的パートナーというより安全保障上の脅威国であると考えていることが分かった。...
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6月3日付
『ABCニュース』は、直近の世論調査の結果、豪州市民の過半数が依然中国を安全保障上の脅威と考えていることが判明したと報じている。
2022年に9年振りに返り咲いた豪州労働党政権は、保守党政権下で最低となった豪中関係を改善すべく中国に歩み寄る対応を取ってきている(2022年末の豪中国交樹立50周年記念式典に外相派遣、2023年10月に首相の中国表敬訪問等)。
しかしながら、外交政策シンクタンクのローウィ・インスティテュート(LI、2003年設立)が直近で行った世論調査によると、豪州市民の過半数(53%)が依然、中国は経済的パートナーというより安全保障上の脅威国であると考えていることが分かった。
LIのライアン・ニーラム世論調査担当部門長(元駐香港副総領事)は、“豪州市民の対中懸念は僅かに改善(2021・2022年脅威懸念63%、2023年53%)したかも知れないが、それまでの数年間に豪州に対して行った中国の理不尽な政策(石炭・鉄鉱石等の輸入制限、牛肉・ワイン等への不当関税賦課)を決して忘れていないということだ”とコメントした。
更に同部門長は、“中国が南シナ海における領有権問題で、フィリピン等に対して行っている威圧的対応も大きな懸念材料になっている”とも付言した。
<対中国意識調査>
・中国は経済的パートナーというより安全保障上の脅威:53%(2021・2022年調査63%、2023年53%)
(2018年調査結果では、対中経済関係重視が82%、また中国の脅威懸念は僅か12%)
・今後20年間における中国の軍事的脅威への懸念:71%(2022・2023年調査75%)
一方、対米関係については、依然大多数が同盟堅持を重視しているものの、11月の米大統領選の結果、民主党か共和党かどちらが政権を取ることになるのか不透明であることもあってか、世界において米国が担っている責任について疑問視する声が上がりつつある。
<対米意識調査>
・米国との同盟関係を重視:83%
・豪米同盟関係によって中国脅威に対応可能:56%
・米国が世界において果たしている責任を評価:56%(2022年の66%より低下)
なお、日本との関係については、依然アジアにおける信頼度が最も高い国という評価となっている。
LIのニーラム氏は、“従来から民主主義に対する認識を共有してきているだけでなく、経済連携や、両国間の観光客受け入れ増の事態等からも、パートナーシップが底堅いものと評価している結果だ”と分析している。
<対日意識調査>
・アジアにおける友好国評価順位:日本42%、シンガポール16%、インドネシア15%、中国11%
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インドのエビ養殖問題(2024/03/21)
市場に多く出回っているインド産の養殖エビに関して、他のアジア地域同様、労働搾取や環境への影響が問題視され始めているという。
3月21日付米
『ABCニュース』(AP通信):「インドの海老産業:AP通信の報道より」:
米国で消費されているエビのシェアはインド産がトップで、米国内の殆どの大型食料品店や飲食店で取り扱われている。その一番の理由は消費者にとって低価格なことだが低価格には訳がある。
2月AP通信がインド南東部のアーンドラ・プラデーシュ州の労働環境を取材。シカゴの人権団体「コーポレート・アカウンタビリティ・ラボ」が20日発表した調査報告書では、危険な労働者の搾取状況が伝えられている。...
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3月21日付米
『ABCニュース』(AP通信):「インドの海老産業:AP通信の報道より」:
米国で消費されているエビのシェアはインド産がトップで、米国内の殆どの大型食料品店や飲食店で取り扱われている。その一番の理由は消費者にとって低価格なことだが低価格には訳がある。
2月AP通信がインド南東部のアーンドラ・プラデーシュ州の労働環境を取材。シカゴの人権団体「コーポレート・アカウンタビリティ・ラボ」が20日発表した調査報告書では、危険な労働者の搾取状況が伝えられている。
米国では、一人あたり一年間のエビ消費量は5ポンド(約2.3キロ)を超え、魚介類の中でも最も人気がある。多くの米国人は米国産の食品を好んで買うが、エビの場合は国内産の割合がわずか5%で、あまり店頭に並ばず値段も高い。
1970年代、米国は世界でエビの養殖が最も盛んな国だった。その後エビはご馳走となり、20年の間にアジアで養殖技術が発展し、市場には輸入品が出回った。
インドが主要なエビ供給国となったのは、メディアがタイの魚介産業の荒れた実態を報じてからだった。2015年当時市場を占めていたタイ産エビの禁輸運動により、2千人が強制労働から開放された。現在、インド産エビは、米国で消費されるエビの40%を占めている。
インド南東部アーンドラ・プラデーシュ州では、エビ養殖のため新たに作られた孵化場や池が地域の水や土壌を汚染し、米など作物が育たないという。池からトラックで運ばれたエビは、加工所に運ばれ、女性従業員が素手か不清潔な手袋をで、冷えたエビの皮むき作業をする。多くのインド人は、地域的貧困、借金、失業に喘いでおり、このような仕事の機会しか貧困から抜け出す手段がない人も多い。
米国向けが労働搾取に関係があるかは断定はできないが、インド産エビを販売する米大手企業は、人権侵害や環境的ダメージを遺憾とし調査の意向を示している。
米国側で、低価格のエビが生産者を搾取している点も指摘されている。「コーポレート・アカウンタビリティ・ラボ」は、インド企業は生活が成り立つ賃金を支払い、労働安全衛生法を遵守すべきで、米国企業へはエビの価格見直しを、インドと米国政府へは現行法の遵守を求めている。
同日付『AP通信』:「インドのエビ産業の危険な労働環境に関する報告書」:
米国ではエビが最も消費されている魚介類だが、消費者の間でインド産エビへの懸念が高まっているという。
殆どの米国人は国内産を選ぶのだが、実際店頭に並ぶ国内産は5%のすぎず、強制労働や環境へのダメージとなる生産をさけるシステム上の欠陥が多い。
インドでも、大手企業の加工施設は衛生管理や労働基準が満たされているが、一方、米国輸入業者からは見えないところで、非常に狭い不衛生な施設があるのだ実態で、インド当局による環境への影響や規制違反への調査が十分でない。
メキシコ湾では多くのエビが取れるが、アジアに比べ、人的、環境標準が厳しく、費用がかさむ問題がある。昨年地域当局は、市場の95%を占める輸入低価格のエビと競争できないとの理由で、漁業災害宣言による財政支援を求めた。ルイジアナ州などの小規模経営の養殖業者はかつないほど倒産の危機に追い込まれているという。
米国税関国境警備局は、強制労働による輸入品規制しており、近年では、中国の綿製品、コンゴ民主共和国の金、ドミニカ共和国の砂糖の輸入を規制しているが、インド産への規制はない。
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