米連邦準備制度理事会(FRB)の金融政策を決める連邦公開市場委員会(FOMC)は7月27日、雇用の急減速や英国の欧州連合(EU)離脱決定の影響に鑑み、追加利上げの見送りを決めた。ただ、米国内個人消費などの経済指標は良好で、米国の株価が最高値圏で推移していることから、9月のFOMCでは追加利上げに踏み切る可能性が高まっている。一方、7月29日の日銀の金融政策決定会合で決定された追加緩和策は、市場の予想を下回る小規模のものだったとして、日本及び世界市場の評価は総じて低い。
7月29日付米
『CBSニュース』(
『AP通信』記事引用):「日銀、世界経済の不透明さもあり、追加刺激策決定」
「●日銀の7月29日の金融政策決定会合において、株価指数に連動する上場投資信託(ETF)の買い入れ額を現在の年3兆3千億円からほぼ2倍の6兆円(570億ドル)に増やすことを決定。
●今週初め、安倍首相が28兆円(2,670億ドル)に上る新たな経済対策を発表していることから、日銀としても連動する積極策を打ち出す必要性。...
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7月29日付米
『CBSニュース』(
『AP通信』記事引用):「日銀、世界経済の不透明さもあり、追加刺激策決定」
「●日銀の7月29日の金融政策決定会合において、株価指数に連動する上場投資信託(ETF)の買い入れ額を現在の年3兆3千億円からほぼ2倍の6兆円(570億ドル)に増やすことを決定。
●今週初め、安倍首相が28兆円(2,670億ドル)に上る新たな経済対策を発表していることから、日銀としても連動する積極策を打ち出す必要性。
●但し、この金融緩和策は市場の予想より小規模のものとの評価から、日経平均株価は最初2%近く下落で取引(終値は、前日比+0.6%の16,569.27円)、また、円も前日の104.80円から+1.2%の103.55円に上昇。
●黒田東彦総裁は、マイナス金利政策の変更はしなかったものの、追加の金融政策が必要な場合には、更に追加政策を実施する余地はあるとし、また、目標の消費者物価2%上昇についても早期に実現したいと発言。」
同日付米
『ニューヨーク・タイムズ』紙:「日銀、強烈な刺激策導入には抵抗」
「●日銀は、ヘリコプター・マネー(注後記)と呼ばれる強烈な刺激策はとらず、市場が期待するより比較的小規模な政策決定であったため、7月29日の円相場は一時的に約3%上昇。
●黒田総裁は、日銀の金利や総量規制緩和政策が限界にきているとの指摘は否定し、過去3年の大胆な金融緩和政策を一度レビューする時期だと発言。」
同日付英
『ロイター通信英国版』:「米国GDP増が矮小でドル安に、一方、日銀の限定的緩
和策で日本の国債は下落」
「●米国の第二四半期(4~6月期)の国内総生産(GDP)の上昇率は、企業による設備投資や住宅投資が5年振りに落ち込んだことから、専門家の予想より遥かに低く、7月29日の市場はドル安に移行。
●一方、日銀の7月29日決定の追加緩和策が小規模だったことから、日本の国債価格は下落(利回りは上昇)。」
7月30日付ロシア
『ロシア・ヘラルド』紙:「日銀の刺激策に投資家失望、円・国債利回り・
株価は上昇」
「●日銀の追加刺激策が小規模だったことに投資家が失望し、7月29日の円相場は一時1.9%上昇の103.31円を付け、一方ドルは今月最大の下落で他主要通貨に対しても同様全面安。
●日本の10年国債も2008年4月以来一日としては最大の利回り上昇(価格は下落)。
●日経平均株価は、一時1.8%下落したが、終値は+0.6%上昇。
●世界の株式市場は、上海総合指標は▼0.5%、香港ハンセン指数は▼1.3%、韓国▼0.2%、MSCI(モルガン・スタンレー・キャピタル・インターナショナル指数)のアジア太平洋地域株式指数は▼0.64%下落、一方、FTSユーロ300指数は+0.4%、ドイツ株価指数(Dax)も+0.4%上昇。」
同日付中国
『上海日報』:「日銀追加刺激策決定も投資家は失望」
「●日銀の追加刺激策は、全審議委員9名の内、賛成7票、反対2票による採択。
●ある金融エコノミストは、ETF買い付け額の倍増だけでは、日銀目標の物価2%上昇の達成はおぼつかず、また、量的緩和やマイナス金利政策も限度に近づいていると厳しい評価。」
(注)ヘリコプター・マネー:あたかもヘリコプターから現金をばらまくように、中央銀行あるいは政府が、対価を取らずに大量の貨幣を市中に供給する政策。米国の経済学者フリードマンが著書「貨幣の悪戯」で用いた寓話に由来。中央銀行による国債の引き受けや政府紙幣の発行などがこれにあたる。
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7月13日付米
『AP通信』:「中国とEU、ダンピング問題対応のため、鉄鋼製品過剰生産検討ワーキンググループ組成で合意」
「・北京で開かれた中国・EUサミットに出席していたユンケル欧州委員長は7月13日、中国の鉄鋼製品過剰生産に伴うダンピング問題対応のため、共同ワーキンググループにて精査することで、中国の李克強(リー・コーチアン)首相と合意したと発表。
・EUは中国の最大の貿易相手であるが、過剰生産に伴う鉄鋼製品ダンピング疑惑で、EU域内鉄鋼業界から猛烈なクレームが上がっており、中国・EU間の最大の関心事。...
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7月13日付米
『AP通信』:「中国とEU、ダンピング問題対応のため、鉄鋼製品過剰生産検討ワーキンググループ組成で合意」
「・北京で開かれた中国・EUサミットに出席していたユンケル欧州委員長は7月13日、中国の鉄鋼製品過剰生産に伴うダンピング問題対応のため、共同ワーキンググループにて精査することで、中国の李克強(リー・コーチアン)首相と合意したと発表。
・EUは中国の最大の貿易相手であるが、過剰生産に伴う鉄鋼製品ダンピング疑惑で、EU域内鉄鋼業界から猛烈なクレームが上がっており、中国・EU間の最大の関心事。
・一方、EUから中国向け輸出ビジネスについては、中国国営企業の構造改革が進んでいないことから、大きな進展がないことに苛立ち。」
7月14日付英
『ロイター通信英国版』:「EU、中国市場開拓への積極政策」
「・北京の中国・EUサミット後に香港を訪問しているEU委員会のカタイネン副委員長(雇用、経済成長、投資、競争力担当)は7月14日、EUは自由貿易を標榜し、中国市場も積極的に開拓したいと考えるが、国家政策による過剰生産容認等、阻害要因が多いと懸念。
・また、英国のEU離脱は影響ないとするも、中国資本のEU進出については不確実性が高いとコメント。」
同日付中国
『人民日報』:「中国・EU共同ワーキンググループが中国の鉄鋼製品過剰生産問題に対応」
「・中国の鉄鋼製品過剰生産問題について、EUのユンケル委員長は、今年第1四半期の輸出量は28%増なのに、販売価格は31%減少しており、中国側統計よりもダンピング疑惑は明白だ、と第11回中国・EUサミット後の記者会見で指摘。
・一方、李首相は、中国鉄鋼製品の90%は国内の近代化やインフラ整備のために供給され、輸出は僅かだとコメントするも、中国・EU共同ワーキンググループで本件精査することに同意。
・なお、今年5月、中国外交部の華(ホァ)報道官は、中国の鉄鋼製品輸出量のうち欧州向けは僅か7.6%で、また、EUにおける鉄鋼製品輸入量のうち中国が占める割合も僅か14%であるため、欧州鉄鋼業界が中国側を責めるのは不当だとコメント。」
中国が最も頼りにしていた英国(中国主導のアジアインフラ投資銀行へ欧州から最初に参
加表明、また、同国原発建設・操業を中国国営企業に業務委託決定等)がEUから離脱す
ることとなり、中国の対EU並びに対欧州戦略が影響を受けるのも必至とみられる。一方、
EU側にとっても、鉄鋼製品ダンピング疑惑や南シナ海問題に象徴されるような国際法軽視
の中国政策に対して、どれ程真剣に向き合っていくべきか、EU内でのコンセンサス作りが
大きな課題となろう。
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