ロシアのウクライナ侵攻により、世界の小麦輸出の30%を占める黒海地域からの供給が途絶えるのではないかという懸念が広がっている。こうした中、世界第2位の小麦生産国であるインドは、小麦の不足分を補うために、積極的な増産と主要な輸出国になるための施策を進めている。
『ロイター通信』によると、インドは中国に次ぐ世界最大の小麦生産国で、国内での余剰在庫と世界的な価格の急騰を利用し、輸出取引を進めているという。世界最大の小麦輸出国であるロシアと、もう一つの主要供給国であるウクライナの紛争による混乱は、世界市場で小麦を販売するチャンスになっている。インドの小麦輸出は昨年、前年度の約110万トンから610万トン強に増加した。関係者によると、今月から始まる新シーズンの収穫後、輸出量が1000万トンに増加することが期待されている。
インドからの輸出が増えれば、農民の所得を上げるだけでなく、インド政府が地元の生産者を支援するために購入している国産小麦への負担を減らすことができる。
ただし『ロイター通信』は、主要輸出国となるためには、政府認定の研究所が輸出用小麦の品質を検査すること、輸送用の鉄道貨車を余分に用意すること、港湾当局と協力して穀物輸出を優先させることなど様々な課題もあると伝えている。
『ブルームバーグ』によると、シンガポールに拠点を置く国際的な商社アグロコープ・インターナショナルの会長兼マネージングディレクターであるアイイェンガー氏は、紛争が長引けば、インドの輸出量は2021-22年に過去最高の700万トンを超える可能性があると指摘している。「市場の誰もが、インドの小麦の需要増がどの程度になるかを見極めようとしている」と述べている。年間約1200万トンの穀物を取引しているアイイェンガー氏は、主にアジア諸国からの需要が見込まれるとしている。「アジア市場は7月から8月以降の供給が不足する」と推測している。なお、ウクライナ産小麦の最大の買い手の一つであるインドネシアは、代替品を探し始め、アルゼンチン、ブラジル、インド、その他のヨーロッパ諸国からの供給を視野に入れているという。
インド日刊紙『エコノミック・タイムズ』は、世界の小麦価格が今週、14年ぶりの高値を記録する中、インドは、国内での大量の余剰在庫のおかげで、現時点では唯一の世界的な小麦の主要供給国となっていると伝えている。小麦価格の上昇とインドルピーの対ドルでの記録的な下落も、売り手としてのインドの小麦の出荷を魅力的なものにしているという。
インドは過去5年間、連続して記録的な収穫を経験している。これは主に、好天、高収量品種の導入、生産者支援のための国による価格設定のおかげである。また、最近ではインドの科学者たちがパスタやピザの生地に適した高タンパク品種の小麦を数多く発表しており、インドは小麦の品質に関する懸念を払拭することができるようになったという。
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スイスで13日、国民投票がおこなわれ、青少年をたばこ広告から守る規制案が可決した。国民投票で賛成となれば、実質的に完全禁止の方向となる。また、動物実験禁止案や、法人株式発行への課税廃止案は反対多数で否決された。
2月13日付米国
『ブルームバーグ』:「スイス国民投票で青少年向けタバコ広告規制承認」:
スイス国民投票で、青少年をたばこ広告から守る規制案が可決。動物実験禁止案や、法人株式発行への課税廃止案は否決された。
スイスはたばこ業界との結びつきが強く、日本たばこ産業(JT)の本社や、フィリップモリスの研究施設の拠点もスイスにある。政府の発表によると、たばこ広告規制案は56.6%で可決し、国民投票で賛成が得られたイニシアチブは今回でわずか25回目だという。...
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2月13日付米国
『ブルームバーグ』:「スイス国民投票で青少年向けタバコ広告規制承認」:
スイス国民投票で、青少年をたばこ広告から守る規制案が可決。動物実験禁止案や、法人株式発行への課税廃止案は否決された。
スイスはたばこ業界との結びつきが強く、日本たばこ産業(JT)の本社や、フィリップモリスの研究施設の拠点もスイスにある。政府の発表によると、たばこ広告規制案は56.6%で可決し、国民投票で賛成が得られたイニシアチブは今回でわずか25回目だという。
政府内では、投資費用を軽減し雇用成長に効果があるとして、株式発行による資金調達時に1%の課税をする「発行税」の廃止案が議論されてきた。経済協力開発機構(OECD)で昨年、国際法人税率を最低15%とした合意を受け、スイスは国内企業支援策を推し進めている。また、国民投票では政府のメディア支援政策の一環として助成金増額案も問われたが54.6%の反対で否決された。
同日付『BBC』:「他国に遅れていたスイス、国民投票でたばこ広告禁止案に賛成」:
青少年の目に触れる場所からたばこ広告を廃止する案に賛成が得られた。国民投票で賛成となれば、実質的に完全禁止の方向となる。
健康的で環境にやさしいイメージとは異なり、スイスは、たばこに関して非常に法律的に緩い国であった。イギリス、フランス、ドイツでは既にパブやレストランでの喫煙は違法とされてきたが、スイスでは以前として、たばこが認められていた。スーパーマーケットではしばしば若い女性がにこやかに最新のたばこ製品の無料サンプルを配っている光景がみられており、数年前にこれが禁止されてからも広告掲示は依然として規制対象外だった。
13日の結果を受け、スイス社会民主党のフラビア・ワッサーフォールン議員は、広告禁止を訴えてきた医師会や教員連盟に賛辞を送った。たばこの規制に関する世界保健機関枠組条約(FCTC)は約20年前にジュネーブで発行された。スイスもこれに署名したが、国内法に適合しないとの理由から欧州で唯一批准されてこなかった。 他の欧州国と比較し、スイスではたばこは安価で、成人の喫煙率も欧州平均より高く27%となっている。
議会では再三にわたり規制強化を求める法案が否決されており、キャンペーンで十分な署名が集められても、政府が反対をするよう呼びかける有様であった。禁止支持派は、フィリップモリス、ブリティッシュ・アメリカン・タバコ(BATS)、日本たばこ産業が全てスイスに本社機能を置くように、たばこ企業がスイスに集中していることを懸念している。たばこ産業は年間60億ドル市場、1.1万人の雇用を担いスイス経済への影響が大きい。懸念されたとおり、企業が反対票集めに資金を回していたことが投票の直前に発覚した。
反対派は、合法商品の広告を禁止はおかしい、健康に害があると見なされるなら、砂糖やアルコール等の規制にも繋がるだろうと主張したが、国民は賛成を貫いた。スイスでは1年間のたばこ関連死が9千人とされている。また、たばこ関連疾病治療費は保健制度へも重い負担となっており、喫煙者のみならず国民全体の健康保険料への負担も増している。
スイスのあるコメンテータは規制賛成の結果を受け、「経済活動の自由と人々の健康のどちらかを選ぶとすると、大多数は後者に賛成するだろう。広告禁止だろうと、喫煙禁止だろうと、高額たばこ禁止だろうと、喫煙は、国民に支持されない」と述べている。
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