インドでは来春、5年振りに連邦下院議員の総選挙が行われる。3期目を目指すナレンドラ・モディ首相(73歳、2014年就任)は、与党・インド人民党(BJP、注後記)のヒンドゥー至上主義との党是を横においても、一大勢力となったイスラム教徒(約2億人)を取り込もうと躍起になっている。
11月10日付欧米
『ロイター通信』、パキスタン
『Bolニュース(ウルドゥー語で話すの意)』等は、3選を目指すナレンドラ・モディ首相が、党是を横においても今や一大勢力となったイスラム教徒の支持を取り付けようとしていると報じている。
インドでは来春、2019年以来の連邦下院議員総選挙(543議席)が行われる。
そこで3期目を目指すナレンドラ・モディ首相率いるBJP(現303議席)は、ヒンドゥー至上主義という党是を横においても、今や一大勢力となっているイスラム教徒を取り込もうと躍起になっている。
まず、2万5千人以上のコミュニティリーダーやインフルエンサーであるイスラム教徒を“モディ信奉者”として抱え込み、BJPが推進する全コミュニティへの福祉対策を織り込んだ経済政策をイスラム教徒の有権者に訴える運動を展開している。
BJPのマイノリティ部門の責任者であるジャマル・シディキ氏は、『ロイター通信』のインタビューに答えて、“BJPは、教育者、起業家、聖職者、退職した公務員など、モディ首相を「客観的に」評価するコミュニティのリーダーを仲間に加えている”と述べた。
BJPはこれまで反イスラム感情を助長していると批判されているが、次回総選挙を睨んでイスラム教徒の支持を増やすべく、特に弱者を救済するとして、イスラム教徒で虐げられている女性や性的マイノリティ(ジェンダーギャップを抱える人)等、貧困層に属している人たちをターゲットにしている。
具体的には、高い経済成長率達成を追い風に経済的支援提供を呼びかけ、更には、個人保護法改正案を立案して、結婚年齢・一夫多妻制・相続上の差別で虐げられているイスラム教徒の女性の権利保護を目指すとアピールしている。
かかる具体的戦略によってBJPは、イスラム教徒の有権者の支持票が過去2回の総選挙で9%だったことから、それを16~17%に大幅上昇させることによって、与党連合(国民民主同盟、NDA)で合計して過半数(272議席)を大幅に超える65議席を追加で確保したいと考えている。
イスラム教徒とインド最大勢力のヒンドゥー教徒(約11億人)間の暴力は“根深い”問題であり、2014年にBJPが政権を奪取してからは、政府データによれば暴力的衝突件数は減少してきているものの、依然緊張関係にある。
モディ首相は、インドにおける宗教差別の存在を否定しており、政敵である野党連合(統一進歩同盟、UPA)が与党を批判するために殊更問題視しているだけだと主張している。
直近の世論調査では、モディ首相の支持率が依然最も高いが、UPAが新たに同盟政党を増やし、また、最近の州選挙で与党勢力を打ち負かしている。
これについて、元ドイツ銀行インド支店長だったBJP幹部は、UPAはイスラム教徒の投票が当然得られるものだとして、肝心のイスラム教徒の福祉政策をないがしろにしていると批判し、BJPの対イスラム教徒政策の意義を訴えている。
(注)BJP:1980年前身設立のヒンドゥー至上主義政党。インドでは、ヒンドゥー教徒が約80%(約11億人)を占めるが、イスラム教徒も全体の約15%(約2億人)と一大勢力となっている。この背景もあって、国連人権理事会による人権審査では、BJPが人権活動家・ジャーナリスト・平和的デモ参加者らを訴追しているだけでなく、イスラム教徒や宗教的少数派への差別・攻撃等を行っていると非難。
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ジョー・バイデン大統領(80歳、2021年就任)も岸田文雄首相(65歳、2021年就任)も3年目を迎えているが、共に自国内の支持率低迷に喘いでいる。ところが、直近の調査データによると、主要国首脳の中では夫々8位、11位と善戦していることが分かった。
6月23日付米
『ABCニュース』、
『ディジタル・ジャーナル』、インド
『エコノミック・タイムズ』等は、データ収集企業「モーニング・コンサルト」(2014年設立)の直近の調査データに基づき、主要国首脳の国内支持率ランキングを報道している。但し、“独裁国家”と言われる中国・ロシア・北朝鮮等の首脳の支持率は含めていない。
【1位】ナレンドラ・モディ首相(インド、72歳、2014年就任)
支持率:76%、不支持率:19%
・コロナ禍後の経済再活性化等の政策評価で高支持率維持。
・但し、台頭するイスラム教徒に対するヒンドゥー教徒の暴力行為が頻発するも、沈黙して具体的対応を取らなかったことが影響してか、直近の地方選で与党・インド人民党(1980年設立)が敗北。
・2024年予定の総選挙に向けて、野党勢力の拡大を憂慮。
【2位】アラン・ベルセ連邦大統領(スイス、51歳、2023年就任)
支持率:62%、不支持率:26%
・国民発議、国民投票という直接民主制を導入していて、国民が法制定・改定等につき直接関与。
・連邦大統領は連邦参事会(最高機関たる連邦議会から選出の7人で構成、内閣に相当)の議長を務め、1年毎の持ち回りで前年度副大統領が今年度の大統領職に就く。職務権限も儀礼的。
【3位】アンドレス・マヌエル・ロペス・オブラドール大統領(メキシコ、69歳、2018年就任)
支持率:59%、不支持率:36%
・制度的革命党(1929年設立)が結党以来一党独裁を演じてきたが、汚職蔓延を厳しく批判してオブラドール氏が2014年に立ち上げた国民再生運動(MORENA)が2018年総選挙で大勝。
・同国大統領の任期は6年で再選禁止であり、目下、同大統領も与党・MORENAとも信任は厚い。
【4位】アンソニー・アルバニージー首相(豪州、60歳、2022年就任)
支持率:56%、不支持率:33%
・2022年の総選挙で同首相率いる労働党が9年振りに政権奪還。
・アボリジニー等の先住民の地位確立のための憲法改正の是非を問う国民投票が年内に行われるが、与党は改憲案に自信。
【5位】ルイス・イナシオ・ルーラ・ダ・シルバ大統領(ブラジル、77歳、2023年就任)
支持率:53%、不支持率:41%
・コロナ対策の失政等で支持率が低下した、極右のジャイール・ボルソナーロ前大統領(68歳)を破ってダ・シルバ氏が当選。
・前大統領支持者による一部暴動は起こったものの、米国ほどの事態に至らず鎮静化。
・現大統領は、貧困廃絶・アマゾン熱帯雨林保護・先住民の権利擁護促進を誓約。
【6位】ジョルジャ・メローニ首相(イタリア、46歳、2022年就任)
支持率:50%、不支持率:44%
・極右政党と目される「イタリアの同胞(2012年設立)」を率いて2022年に政権奪取。
・核家族主義を標榜することから、LGBTQや同性婚に反対の立場を取り、また、コロナ禍に伴う経済停滞・失業率増等もあって、非欧州系移民受け入れや多文化主義に反対。
・欧州連合(EU)にあっては手強い首脳とみられ、国内で高い支持率を維持。
【7位】ジャスティン・トルドー首相(カナダ、51歳、2015年就任)
支持率:42%、不支持率:52%
・2019年及び2021年総選挙への中国介入疑惑が持ち上がっているが、与党・自由党(1861年設立)はいずれも過半数議席を維持。
・最大野党の保守党(2003年、右派カナダ同盟と進歩保守党が合併して誕生)のピエール・ポワリエーブル党首(44歳、2022年就任)が盛んに与党攻撃を仕掛けるも、有権者説得には至らず。
【8位】ジョー・バイデン大統領(米国、80歳、2021年就任)
支持率:41%、不支持率:53%
・直近の最大関心事だった米国債務上限問題を解決に導いたことから、バイデン政権の評価向上。
・但し、野党・共和党との闘争で米国が二つに分裂しているばかりか、与党・民主党内でも現大統領への支持も分断。
・2024年の大統領選への再出馬を表明している同大統領への支持率は僅か3分の1。
【9位】アレクサンダー・デ・クロ―首相(ベルギー、47歳、2020年就任)
支持率:40%、不支持率:45%
・公用語が3つ(フランス語・ドイツ語・オランダ語)で、各々の言語帯間での文化の違いもあり、連邦議会ではどの政党も主導権を握れずに暫定政権の状態がしばしば現出。
・現政権も、2020年10月に7政党による連立政権が漸く樹立。
【10位】ペドロ・サンチェス首相(スペイン、51歳、2018年就任)
支持率:38%、不支持率:56%
・今年5月の統一地方選で与党・社会労働党(1879年設立)が大敗。
・止む無く、現首相が今年7月に総選挙を実施して信任を問うことを決定。
・従って、政権維持できるかどうか未定。
【11位】岸田文雄首相(65歳、2021年就任)
支持率:34%、不支持率:53%
・中国や北朝鮮の脅威に対抗するための防衛力強化に資する関係法案を制定する等で若干支持率持ち直し。
・しかし、苛烈な物価上昇継続で実質賃金が13ヵ月連続で下落しており、国民の不満は鬱積。
【12位】ウルフ・クリステルソン首相(スウェーデン、59歳、2022年就任)
支持率:33%、不支持率:54%
【13位】リシ・スナク首相(英国、43歳、2022年就任)
支持率:33%、不支持率:55%
【14位】マテウシュ・モラビエッキ首相(ポーランド、54歳、2017年就任)
支持率:33%、不支持率:60%
【15位】オラフ・ショルツ首相(ドイツ、65歳、2021年就任)
支持率:32%、不支持率:61%
【16位】レオ・バラッカー首相(アイルランド、44歳、2022年就任)
支持率:30%、不支持率:58%
【17位】ヨーナス=ガール・スト―レ首相(ノルウェー、62歳、2021年就任)
支持率:29%、不支持率:63%
【18位】マルク・ルッテ首相(オランダ、56歳、2010年就任)
支持率:29%、不支持率:65%
【19位】カール・ネーハマー首相(オーストリア、50歳、2021年就任)
支持率:27%、不支持率:64%
【20位】尹錫悦大統領(ユン・ソンニョル、韓国、62歳、2022年就任)
支持率:24%、不支持率:69%
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