ジョー・バイデン大統領(80歳、2021年就任)も岸田文雄首相(65歳、2021年就任)も3年目を迎えているが、共に自国内の支持率低迷に喘いでいる。ところが、直近の調査データによると、主要国首脳の中では夫々8位、11位と善戦していることが分かった。
6月23日付米
『ABCニュース』、
『ディジタル・ジャーナル』、インド
『エコノミック・タイムズ』等は、データ収集企業「モーニング・コンサルト」(2014年設立)の直近の調査データに基づき、主要国首脳の国内支持率ランキングを報道している。但し、“独裁国家”と言われる中国・ロシア・北朝鮮等の首脳の支持率は含めていない。
【1位】ナレンドラ・モディ首相(インド、72歳、2014年就任)
支持率:76%、不支持率:19%
・コロナ禍後の経済再活性化等の政策評価で高支持率維持。
・但し、台頭するイスラム教徒に対するヒンドゥー教徒の暴力行為が頻発するも、沈黙して具体的対応を取らなかったことが影響してか、直近の地方選で与党・インド人民党(1980年設立)が敗北。
・2024年予定の総選挙に向けて、野党勢力の拡大を憂慮。
【2位】アラン・ベルセ連邦大統領(スイス、51歳、2023年就任)
支持率:62%、不支持率:26%
・国民発議、国民投票という直接民主制を導入していて、国民が法制定・改定等につき直接関与。
・連邦大統領は連邦参事会(最高機関たる連邦議会から選出の7人で構成、内閣に相当)の議長を務め、1年毎の持ち回りで前年度副大統領が今年度の大統領職に就く。職務権限も儀礼的。
【3位】アンドレス・マヌエル・ロペス・オブラドール大統領(メキシコ、69歳、2018年就任)
支持率:59%、不支持率:36%
・制度的革命党(1929年設立)が結党以来一党独裁を演じてきたが、汚職蔓延を厳しく批判してオブラドール氏が2014年に立ち上げた国民再生運動(MORENA)が2018年総選挙で大勝。
・同国大統領の任期は6年で再選禁止であり、目下、同大統領も与党・MORENAとも信任は厚い。
【4位】アンソニー・アルバニージー首相(豪州、60歳、2022年就任)
支持率:56%、不支持率:33%
・2022年の総選挙で同首相率いる労働党が9年振りに政権奪還。
・アボリジニー等の先住民の地位確立のための憲法改正の是非を問う国民投票が年内に行われるが、与党は改憲案に自信。
【5位】ルイス・イナシオ・ルーラ・ダ・シルバ大統領(ブラジル、77歳、2023年就任)
支持率:53%、不支持率:41%
・コロナ対策の失政等で支持率が低下した、極右のジャイール・ボルソナーロ前大統領(68歳)を破ってダ・シルバ氏が当選。
・前大統領支持者による一部暴動は起こったものの、米国ほどの事態に至らず鎮静化。
・現大統領は、貧困廃絶・アマゾン熱帯雨林保護・先住民の権利擁護促進を誓約。
【6位】ジョルジャ・メローニ首相(イタリア、46歳、2022年就任)
支持率:50%、不支持率:44%
・極右政党と目される「イタリアの同胞(2012年設立)」を率いて2022年に政権奪取。
・核家族主義を標榜することから、LGBTQや同性婚に反対の立場を取り、また、コロナ禍に伴う経済停滞・失業率増等もあって、非欧州系移民受け入れや多文化主義に反対。
・欧州連合(EU)にあっては手強い首脳とみられ、国内で高い支持率を維持。
【7位】ジャスティン・トルドー首相(カナダ、51歳、2015年就任)
支持率:42%、不支持率:52%
・2019年及び2021年総選挙への中国介入疑惑が持ち上がっているが、与党・自由党(1861年設立)はいずれも過半数議席を維持。
・最大野党の保守党(2003年、右派カナダ同盟と進歩保守党が合併して誕生)のピエール・ポワリエーブル党首(44歳、2022年就任)が盛んに与党攻撃を仕掛けるも、有権者説得には至らず。
【8位】ジョー・バイデン大統領(米国、80歳、2021年就任)
支持率:41%、不支持率:53%
・直近の最大関心事だった米国債務上限問題を解決に導いたことから、バイデン政権の評価向上。
・但し、野党・共和党との闘争で米国が二つに分裂しているばかりか、与党・民主党内でも現大統領への支持も分断。
・2024年の大統領選への再出馬を表明している同大統領への支持率は僅か3分の1。
【9位】アレクサンダー・デ・クロ―首相(ベルギー、47歳、2020年就任)
支持率:40%、不支持率:45%
・公用語が3つ(フランス語・ドイツ語・オランダ語)で、各々の言語帯間での文化の違いもあり、連邦議会ではどの政党も主導権を握れずに暫定政権の状態がしばしば現出。
・現政権も、2020年10月に7政党による連立政権が漸く樹立。
【10位】ペドロ・サンチェス首相(スペイン、51歳、2018年就任)
支持率:38%、不支持率:56%
・今年5月の統一地方選で与党・社会労働党(1879年設立)が大敗。
・止む無く、現首相が今年7月に総選挙を実施して信任を問うことを決定。
・従って、政権維持できるかどうか未定。
【11位】岸田文雄首相(65歳、2021年就任)
支持率:34%、不支持率:53%
・中国や北朝鮮の脅威に対抗するための防衛力強化に資する関係法案を制定する等で若干支持率持ち直し。
・しかし、苛烈な物価上昇継続で実質賃金が13ヵ月連続で下落しており、国民の不満は鬱積。
【12位】ウルフ・クリステルソン首相(スウェーデン、59歳、2022年就任)
支持率:33%、不支持率:54%
【13位】リシ・スナク首相(英国、43歳、2022年就任)
支持率:33%、不支持率:55%
【14位】マテウシュ・モラビエッキ首相(ポーランド、54歳、2017年就任)
支持率:33%、不支持率:60%
【15位】オラフ・ショルツ首相(ドイツ、65歳、2021年就任)
支持率:32%、不支持率:61%
【16位】レオ・バラッカー首相(アイルランド、44歳、2022年就任)
支持率:30%、不支持率:58%
【17位】ヨーナス=ガール・スト―レ首相(ノルウェー、62歳、2021年就任)
支持率:29%、不支持率:63%
【18位】マルク・ルッテ首相(オランダ、56歳、2010年就任)
支持率:29%、不支持率:65%
【19位】カール・ネーハマー首相(オーストリア、50歳、2021年就任)
支持率:27%、不支持率:64%
【20位】尹錫悦大統領(ユン・ソンニョル、韓国、62歳、2022年就任)
支持率:24%、不支持率:69%
閉じる
トランプ政権は、選挙戦時の公約に基づき、いよいよカナダ・メキシコと北米自由貿易協定(NAFTA)改定交渉を開始する。外交面では、環太平洋経済連携協定(TPP)及び気候変動抑制に関する多国間の国際協定(パリ協定)からの離脱に続く公約履行となる。しかし、専門家の評価では、雇用面含めてNAFTA改定交渉の優位性は認めがたいと厳しい。
8月14日付米
『CNNニュース』:「トランプ政権、8月16日よりNAFTA改定交渉開始」
ドナルド・トランプ大統領は選挙戦を通して、NAFTAは数百万人の米国人雇用喪失をもたらした最悪の協定だと非難し、必ず米国民にとってより良いものに改定すると宣言していた。
しかし、米商工会議所によると、カナダとメキシコとの貿易業務に携わる米国人労働者は約1,400万人に上るが、1997~2013年の間に、メキシコ人に奪われた雇用は約80万人に過ぎないという。
また、国際貿易専門家によれば、トランプ政権がNAFTA改定の目標としているところは、トランプ大統領が離脱を決めたTPP条項に近似しているという。更に、例えば、自動車部品のNAFTA当事国産供給率を現行の62%より上げるとなると、米国内自動車販売価格が値上がりすることになると批評している。
なお、トランプ政権は、いよいよ8月16日からNAFTA相手国のカナダ・メキシコと改定交渉を開始することとなった。メキシコ側は、来年の大統領選挙にかからないよう、年末までの5ヵ月間で決着を付けたいと望んでいる。しかし、NAFTA成立交渉に数年を要した結果から、改定交渉を年末までに目処を付けることは至難の業であろう。
同日付英
『デイリィ・メール・オンライン』(
『ロイター通信』配信):「トランプ政権のNAFTA改定交渉に自動車業界が猛反発」
トランプ政権が目指すNAFTA改定交渉において、目玉のひとつとされるのが、自動車関連通商条項の見直しである。米連邦国勢調査局によると、昨年、メキシコからの自動車及び同部品取引に関わる貿易赤字額が740億ドル(約8兆1,400億円)に上るという。
そこで、ロバート・ライトハイザー通商代表は、メキシコ生産の自動車について、安価なアジア製部品使用率を大幅に削減させることで、結果として米国内雇用を高めることを狙っている。
しかし、自動車業界は、北米産部品供給率を現行の62.5%より更に上げられると、これまで築き上げられた国際部品供給網が立ち行かなくなると猛反発している。すなわち、この結果、アジアや欧州製自動車に価格競争力で大きく劣ることになるからだという。
また、米自動車推進政策会議(フォード、GM、フィアット・クライスラー3社が組織した対議会陳情団体)のチャールズ・アザス副議長は、NAFTAで認められた無税枠がなくなることは大問題だとしている。すなわち、もしトランプ大統領が、NAFTA改定交渉結果に満足がいかないとして、NAFTAそのものから離脱するとしてしまうと、当該無税枠の喪失で、結果として40~50億ドル(約4,400~5,500億円)のコスト上昇をもたらすことになってしまうからという。
同日付カナダ
『ディジタル・ジャーナル』オンラインニュース:「米・カナダ・メキシコがNAFTA改定交渉開始」
1994年に成立したNAFTAの改定交渉がついに始まる。
トランプ大統領は、特にメキシコ貿易での貿易赤字額640億ドルの大幅削減を目論んでいる。しかし、メキシコ経済にとってNAFTAは基盤であり、米国向け輸出額は同国の総輸出額の80%を占める。従って、特にメキシコの製造業・農家にとって、米国との関係悪化は死活問題となる。
なお、カナダとの貿易収支はそこそこバランスが取れているが、酪農製品・ワイン・穀物貿易では、米国にとって不利となっているとする。
閉じる