ロシアがウクライナに軍事侵攻して11ヵ月が過ぎようとしている。ロシアは短期決戦で制圧できると踏んでいたから、大変な思い違いである。そして、北大西洋条約機構(NATO、1949年設立)加盟国から、第3局面とされる戦車等実戦兵器の提供が増えるに連れて、ロシアとしても戦況拡大を懸念せざるを得ず、いよいよ首都モスクワにおける対空攻撃に備えて初めて防衛訓練を実施している。
1月21日付米」
『ニューヨーク・ポスト』紙(1801年創刊の保守系メディア)は、「ロシア、ドイツ製戦車のウクライナへの提供が協議される中、首都モスクワで対空防衛訓練実施」と題して、ドイツを含めたNATO加盟国がウクライナ軍に更なる兵器提供を実施していることから、ロシアとしても首都攻撃の可能性を懸念して、ウクライナ軍事侵攻以来初めてモスクワでの対空防衛訓練を実施したと報じている。
ロシアは1月21日、首都モスクワで初めて対空防衛訓練を実施した。
NATO加盟国がこの程、ドイツ製最新鋭戦車のウクライナ軍への提供の可能性について討議しているのに鑑み、ウクライナ軍による首都への攻撃の恐れを懸念した表れとみられる。
ロシア国防省は、“西部軍管区(WMD、注1後記)のミサイル防衛大隊が、首都圏の重要な軍事施設及び司令部への空爆に備え、兵士150人及びS-300長距離地対空ミサイルシステムを投入して対空防衛訓練を実施した”と発表している。
ただ、訓練地については“モスクワ地区”としただけで、具体的な場所は明かしていない。
『モスクワ・タイムズ』紙(1992年創刊の独立系英字紙)によると、ロシア政府は、首都が攻撃を受けると懸念しているのかとの質問への回答を拒否したという。
ロシアが11ヵ月前にウクライナに軍事侵攻して以来、ウクライナ軍のものと思われる無人攻撃機によってロシア領土内の軍事施設が何度か攻撃され、核兵器搭載可能な爆撃機が損傷したりしていたが、これまでロシア領土内で大規模攻撃を受けたことはない。
一方、ドミトリー・メドベージェフ元大統領(57歳、2008~2012年在任、2020年ロシア安全保障会議副議長就任)は1月21日、“ウクロナチス(注2後記)や西欧諸国がロシアと戦闘しようとしている”とし、“しかし、ロシアはかつて1812年にナポレオン軍を、また1945年にはナチス・ヒトラー軍を打ち破ったように、今回も我々が勝利する”とツイートしている。
同氏はこのツイート前の1月19日、“通常戦力による核保有国の敗北は、核戦争の引き金になる可能性がある”と、欧米を牽制する脅しと取られる発言をしている。
同氏は同時に、ダボス(スイス)で開催されていた世界経済フォーラム(WEF、注3後記)に出席した多くの政財界幹部が、ロシアを打ち負かすためにもっと戦車等の武器をウクライナに送るべきだと発言していることに対して、嘲笑うコメントもしている。
なお、同氏が1月21日にツイートした前日に、ウクライナのオレクシー・レズニコウ国防相(55歳、2021年就任)が、ドイツ西南部のラムシュタイン米空軍基地で開催されたNATO加盟国国防相会議において、西側諸国から更にウクライナに武器を提供するよう直訴していた。
同日付ロシア『タス通信』(1902年前身設立)は、「国防省、S-300地対空ミサイルを投入してモスクワ近郊で対空防衛訓練実施と発表」と詳報している。
ロシア国防省は1月21日の公式ウェブサイト上で、S-300地対空ミサイルシステム含め30以上の武器及び150人以上の将兵を投入して、モスクワ地域における対空攻撃防衛訓練を実施したと発表した。
同省によると、同ミサイルシステムが配置された作戦地帯に将兵が集結し、装甲車編隊搭乗の仮想敵を撃退したという。
なお、今回の訓練は、モスクワ地域の重要な軍事施設・作戦本部等への攻撃を防御するために実施されたものだとする。
(注1)WMD:ロシア連邦軍の西部における軍管区。従来のモスクワ軍管区、レニングラード軍管区、北方艦隊、バルト艦隊(カリーニングラード特別区を含む)を統合して、2010年9月に発足。司令部はサンクトペテルブルクに所在。
(注2)ウクロナチス:ウクライナのナチスを意味する造語。特にロシア軍と敵対するウクライナ人を攻撃的に呼称するロシアの俗語。
(注3)WEF:経済、政治、学究、その他の社会におけるリーダーたちが連携することにより、世界、地域、産業の課題を形成し、世界情勢の改善に取り組むことを目的とした国際機関。1971年に経済学者クラウス・シュワブにより設立された。独立かつ非営利団体であるとされている。
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12月18日付
『AP通信』:「北朝鮮が日本を射程内とする弾道ミサイル2発を発射」:
北朝鮮が18日、日本を射程内とする弾道ミサイル2発を発射した。北朝鮮と中国に対する新たな防衛戦略強化に対抗する狙いがあるとみられる。
2日前にも北朝鮮は、移動性が高く、より威力となる大陸間弾道ミサイルの試射を誇示する主張をしていた。韓国と日本政府によると、ミサイルは北西部のトンチャンリ一から高度最大550キロで発射され、朝鮮半島と日本の間の日本海に落下した。...
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12月18日付
『AP通信』:「北朝鮮が日本を射程内とする弾道ミサイル2発を発射」:
北朝鮮が18日、日本を射程内とする弾道ミサイル2発を発射した。北朝鮮と中国に対する新たな防衛戦略強化に対抗する狙いがあるとみられる。
2日前にも北朝鮮は、移動性が高く、より威力となる大陸間弾道ミサイルの試射を誇示する主張をしていた。韓国と日本政府によると、ミサイルは北西部のトンチャンリ一から高度最大550キロで発射され、朝鮮半島と日本の間の日本海に落下した。
韓国軍によると、高角度で発射された中距離ミサイルとみられ、標準的軌道で発射されれば、更に距離が伸びるものとみられる。今回のミサイルは、新型の中距離ミサイルとの味方もある。
北朝鮮は通常では、中・長距離ミサイルを隣国を避けるよう高角度に発射。10月には日本を超える大陸間弾道ミサイルが発射され、日本では避難警報が発動され、電車が停止する事態となった。
韓国国防省は緊急会議で、市民が寒さと食糧難で苦しむ中での北朝鮮の挑発を批判し、米国や日本との三国間安保体制を強調した。猪野敏郎国防副大臣も、日本と周辺地域、国際コニュニティの安全を脅かす北朝鮮を批判した。米インド太平洋司令部は、北朝鮮の大量破壊兵器と弾道ミサイル計画を批判し、日韓の防衛へのコミットメントを強調した。
日本政府は16日、防衛先制攻撃と防衛費増額に関する防衛戦略への転換を決定した。防衛のみに限定されていた戦後の体制への大きな変革となる。戦略では、北朝鮮やロシアよりも中国を「最大の脅威」と位置づけている。
同日付米『ニューヨーク・ポスト』:「北朝鮮、日本が射程内の弾道ミサイル2発発射」:
北朝鮮が18日、日本を攻撃射程内とする弾道ミサイル2発を発射した。韓国は、朝鮮半島で高まる脅威を強く非難している。
ミサイルは高角度に発射され、通常の軌道だとより遠くに飛行したとみられる。韓国軍は緊急会議を招集し、このミサイル発射を強く非難している。日本の猪野防衛副大臣も、日本の安全に脅威を与える北朝鮮を批判した。
米インド太平洋司令部は、米国民や同盟国へ「差し迫った脅威を与えるものではない」とするも、北朝鮮のミサイル開発計画を非難し、韓国と日本の防衛へのコミットメントを強調した。
北朝鮮は数日前、高出力固体燃料エンジンの実験を行っており、金正恩氏もミサイル発射を視察した。専門家の間では、これが実用されると、移動性が高く、迅速なミサイル発射が可能となると懸念されている。
18日のミサイルは「Pukguksong2」とみられ、通常の軌道で発射されれば、日本や米軍施設も射程内となる1240マイル(約1995キロ)飛行するとみられている。
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