ロシア、反戦を叫ぶ市民ばかりかロシア正教会司祭もプーチン政権から迫害【米・英国・ロシアメディア】
プーチン政権は、ウクライナ戦争の長期化はもとより西側諸国からの圧力に辟易しているとみられる。何故なら、国内から反政権運動の派生の芽を摘み取るべく、野党勢力や反戦活動家らを益々厳しく取り締まるばかりか、即時停戦を表明するロシア正教会(注後記)司祭らに対しても強硬な政治圧力をかけているからである。
8月12日付
『ニューヨーク・ポスト』紙、
『AP通信』、英国
『ジ・インデイペンデント』紙、ロシア
『ロシア・ヘラルド』紙等は、ウクライナ戦争即時停戦を表明しているロシア正教会司祭らが、正教会のみならずプーチン政権からも厳しい迫害を受けていると報じている。
ロシア正教会の司祭らが2022年3月初め、前月下旬に始まったロシアによるウクライナへの軍事侵攻の即時停止と和解を求める公開書簡を発表した。
同書簡には、約4万人いる聖職者のうち、長司祭や司祭、輔祭ら286人が署名している。
しかし、それから1年5ヵ月経過した現在でも、ウクライナ戦争は収まる気配がみえない。
そうした中、依然ロシア正教会の少なくとも30人の司祭が即時停戦を求める声を上げ続けている。
ただ、人権団体「反戦キリスト教徒の会」まとめ役のナターリア・バジレビッチ氏(ベラルーシ正教会所属)によると、この司祭らに対して、ロシア正教会のみならずプーチン政権から強硬な圧力がかけられているという。
何人かの司祭は、更なる報復を恐れて口を閉ざさざるを得なくなっているとする。
例えば、ロアン・コーバル司祭は、昨年9月にロシア正教会のキリル1世首座主教(76歳、2009年着座)から、“正教会の全ての聖職者は「勝利」を祈る”ようにとの命令が出された後も、ウクライナに平和をと祈ったことから、降格させられてしまったという。
同司祭は、“戦争の惨さを目の当たりにしているのに、聖職階級制度下の上意下達に唯々諾々と従うことはできない”と吐露している。
リトアニアのビリニュス大(16世紀設立)言語学専攻で長らくロシア正教会を研究してきたアンドリュー・デスニツキ―教授は、“ウラジーミル・プーチン大統領(70歳、2000年就任)が戦争批判する活動家らを新たな立法化によって厳しく取り締まっていることを真似て、キリル1世も同様の締め付けを行っている”とし、“彼は、忠誠を尽くせない者には教会での居場所はないとして脅しをかけている”とコメントした。
一方、ロシア正教会のバフタン・キプシゼ副報道官は、“戦争反対と叫ぶ聖職者は政治活動に加担し、教会での聖職活動を停止したと見做されるので、教会法に基づいて罰が下されることになる”と表明している。
なお、バジレビッチ氏によると、戦争支持を表明した聖職者は、教会のみならず政権からも評価されているという。
(注)ロシア正教会:ギリシャ正教もしくは東方正教会とも呼ばれる、キリスト教の教会(教派)の一つで、1488年独立教会の宣言、1589年正式に承認されている。信徒数は約9千万人。正教会は原則的に、1ヵ国にひとつの教会組織をそなえていて、ロシア正教会以外にウクライナ正教会(2018年宣言、2019年承認)、ギリシャ正教会、ジョージア正教会、ルーマニア正教会、ブルガリア正教会、日本正教会などがある。これら各国ごとの正教会が異なる教義を信奉している訳でわけではなく、同じ信仰を有している。
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中国、米国による南太平洋への再躍進を阻止すべく差し当たってソロモン諸島との関係を更に強化【米・英国・中国メディア】
5月23日付GLOBALi「
米国、中国の南太平洋地域での影響力拡大阻止のため、まずパプアニューギニアと防衛協力協定締結」で触れたとおり、米国は、同地域で影響力拡大を目論む中国を厳しく牽制するため、手始めにパプアニューギニア(1975年豪州より独立)との防衛協力協定を締結した上、同地域島嶼国首脳との国際会議を開催している。そこで中国は、米国によるかかる動きに対抗すべく、昨年安全保障協定を締結しているソロモン諸島(SI、1978年英国より独立)との関係を強化する意向である。
7月11日付米
『AP通信』、英国
『ジ・インデイペンデント』紙、中国
『新華社通信』等は、中国がこの程、SIとの間で「法執行及び治安維持協定」を締結したと報じている。
SIは7月11日、中国との間で「法執行及び治安維持協定」を締結した旨発表した。
この前日、マナセ・ソガバレ首相(67歳、2019年就任)が訪中し、李強首相(リー・チャン、63歳、2023年就任)と会談して合意に至った。...
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7月11日付米
『AP通信』、英国
『ジ・インデイペンデント』紙、中国
『新華社通信』等は、中国がこの程、SIとの間で「法執行及び治安維持協定」を締結したと報じている。
SIは7月11日、中国との間で「法執行及び治安維持協定」を締結した旨発表した。
この前日、マナセ・ソガバレ首相(67歳、2019年就任)が訪中し、李強首相(リー・チャン、63歳、2023年就任)と会談して合意に至った。
同協定詳細は明らかにされていないが、双方は“法執行及び治安維持での協力を強化”し、そのために中国側は引き続き、SIが治安維持のために必要な装備提供や警察部隊等を派遣するとしている。
SIは現首相が2019年に政権を奪取して以来、従来の台湾との国交を断絶し、代わって中国との国交を結び両国間の関係強化を図ってきており、昨年には中国と安全保障協定を締結している。
SIはこれまで、豪州、NZ、更には米国との関係を続けてきたが、2019年を以て親中国に舵を切ったことになる。
かかる連携強化の基、SIは既に中国輸出入銀行(1994年設立)から6,600万ドル(約92億4千万円)の融資を受けて、中国通信機器大手の華為技術(ファーウェイ、1987年設立)と計161基の移動通信用鉄塔の建設・保守業務契約を締結している。
なお、ソガバレ首相は7月10日、習近平国家主席(シー・チンピン、70歳、2012年就任)とも会談し、同国家主席が主導する「一帯一路経済圏構想」の下で両国が更に“上質な”関係を築いていくことで合意している。
一方、米国は、中国が南太平洋地域で影響力を拡大しつつあることに警戒している。
そこでジョー・バイデン大統領(80歳、2021年就任)は今年9月、太平洋島嶼国首脳を米国に招待して、気候変動、海洋安全保障、乱獲防止対策等を協議するための国際会議を開催することを決定している。
更に、米国は、1億3千万ドル(約182億円)の気候変動対策資金含め、総計8億1千万ドル(約1,134億円)の支援金を供与することを約している。
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