先週報じたとおり、トランプ政権発足後1ヵ月近くが経っても、閣僚15人のうち、依然6人の人事案が承認されない異例の事態となっている。その最中、トランプ大統領最側近の大統領補佐官(国家安全保障担当)が辞任したり、労働長官候補が突然指名を辞退したりと、相変わらず逆風が吹いている。そうした中、2月18日付【
風の流れ:プルイット氏が環境保護局長官に・パリ協定は?】で述べられているとおり、オクラホマ州司法長官のスコット・プルイット氏の環境保護局(EPA)長官就任が上院本会議で承認された。ただ、オバマ前大統領の環境保護対策に批判的で、EPAを相手取り訴訟を繰り返してきたプルイット氏をボスに迎えることになる、EPA約1万8千人の職員の気持ちは複雑であろう。
2月18日付米
『Yahooニュース』(
『マッシャブル』オンラインニュース配信):「EPAを訴えるという不快な趣味を持つ男が当該役所のトップに就任」
「●オクラホマ州の元司法長官のスコット・プルイット氏は2月17日、上院本会議において52:46票の僅差でEPA長官指名の承認獲得。
●同氏はこれまで、バラク・オバマ前政権が掲げた種々の環境保護政策に批判的で、その政策を実行しようとしたEPAを幾度となく訴えた人物。...
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2月18日付米
『Yahooニュース』(
『マッシャブル』オンラインニュース配信):「EPAを訴えるという不快な趣味を持つ男が当該役所のトップに就任」
「●オクラホマ州の元司法長官のスコット・プルイット氏は2月17日、上院本会議において52:46票の僅差でEPA長官指名の承認獲得。
●同氏はこれまで、バラク・オバマ前政権が掲げた種々の環境保護政策に批判的で、その政策を実行しようとしたEPAを幾度となく訴えた人物。
●同氏は上院の指名公聴会においても、多くの環境保護専門家が、温室効果ガスが地球温暖化を引き起こしているとの主張に異議を唱えると表明。
●民主党上院議員らは、NGO全米自由人権協会オクラホマ支部による、プルイット氏が州司法長官だったときの化石燃料企業との3千本近くのメール記録の開示を求める訴訟結果を踏まえて、同氏の指名否認工作を行っていたが、上院多数派の共和党議員らは、オクラホマ州裁判所からの開示命令が出た僅か数時間後に、当該判決を考慮せず上院本会議の承認投票実行。
●なお、同氏のEPA長官就任によって、ドナルド・トランプ大統領がかねて主張していたパリ協定(編注;2020年度以降の地球温暖化対策の枠組みを取り決めた協定)離脱が促進される可能性大。」
同日付英
『インターナショナル・ビジネス・タイムズ』オンラインニュース:「トランプ氏の気候変動諸規制緩和方針の意を汲むスコット・プルイット氏がEPA長官に就任」
「●2月17日の上院本会議(党勢は共和52:民主48)において、1人の共和党議員(メーン州選出)が造反したものの、エネルギー産業が基幹の2人の民主党議員(ウェストバージニア及びノースダコタ州選出)が賛成票を投じたことから、プルイット氏の指名を可決承認。
●なお、同氏のEPA長官就任により、POTUS(編注:米大統領を表す略語で、120年程前から使用)はこれで、22人の閣僚及び閣僚級高官人事のうち14人を確保。」
同日付ロシア
『スプートニク・インターナショナル』オンラインニュース:「スコット・プルイット氏がEPA長官就任」
「●プルイット氏はオクラホマ州司法長官時代、EPAの実施した数々の気候変動対策を疑問視し、石油産業が基幹の同州を守るため、EPA規制に対抗して十数件の訴訟を提起。
●同氏は就任演説で、環境保護対策のみならず、米国産業の規制緩和にも尽くすと表明。」
同日付台湾
『チャイナ・ポスト』(
『AP通信』配信):「米上院、何とかプルイット氏のEPA長官指名を可決承認」
「●プルイット氏はオクラホマ州司法長官だった際、同州エネルギー企業から70万ドル(約7,900万円)の政治献金を得ていたこと等から、全米自由人権協会オクラホマ支部が2月初め、2015~2016年の間のこれら企業との交信メールなどの公開を求めて提訴。
●オクラホマ地裁のアレティア・ヘインズ・ティモンズ判事は2月17日、プルイット事務所側の400通の文書は確認済みとの主張に対して、同判事は3,000余りの交信メールが未提出だとして、同メール等を10日以内に公開するよう命令。
●一方同氏は、EPAが実施した環境規制に対して、14件もの訴訟を提訴していたこともあり、数百人の元EPA職員が同氏の長官指名に反対表明。
●なお、同氏は就任に当り、同氏が関わる対EPA訴訟案件について、EPA倫理委員会の提言に沿って提訴人から外れる等、案件毎に判断するとコメント。」
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中国の主張が全面否定された、国際仲裁裁判所(PCA)裁定直後に開かれる国際会議、「アジア欧州会合(ASEM、注後記)」において、中国は、南シナ海問題を同会議での話題にしないよう躍起になっている。
7月12日付米
『Yahooニュース』:「中国、PCA裁定への反対行動激化」
「・中国外交部の孔(コン)副部長は7月12日、7月15~16日にウランバートル(モンゴル)で開かれるASEMサミットにおいて、南シナ海問題を話題にしないよう要求。
・同副部長は、南シナ海問題で緊張が高まっているとしたら、日米等同海域に無関係の国が干渉してきた結果であり、米国が主張し強行している“航行の自由”などの軍事行動について、ASEMで討議するのは相応しくないと強調。...
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7月12日付米
『Yahooニュース』:「中国、PCA裁定への反対行動激化」
「・中国外交部の孔(コン)副部長は7月12日、7月15~16日にウランバートル(モンゴル)で開かれるASEMサミットにおいて、南シナ海問題を話題にしないよう要求。
・同副部長は、南シナ海問題で緊張が高まっているとしたら、日米等同海域に無関係の国が干渉してきた結果であり、米国が主張し強行している“航行の自由”などの軍事行動について、ASEMで討議するのは相応しくないと強調。」
同日付台湾
『チャイナ・ポスト』紙:「中国、ASEMサミットで南シナ海問題を話題にしないよう要望」
「・今回のASEMサミットは、7月12日公表のPCA裁定直後に開かれる国際会議であるが、中国は、フィリピンの他、同じく領有権を争うベトナム、マレーシア等も参加する同サミットでそれを話題にしないよう、アジア・欧州の参加関係国に要請。」
同日付モンゴル
『モンゴリア・ニュース』:「安倍首相、モンゴル訪問」
「・安倍首相は7月14日、モンゴルのエルベグドルジ大統領の招待で自身3度目のモンゴル訪問。
・主目的は、第11回ASEMサミットに参加するためで、今年創設20年目を迎えるASEMは、“相互連携による未来へのパートナーシップ”がテーマ。
・ASEMには、アジア及び欧州から50ヵ国以上が参加するが、うち34ヵ国からは首脳が出席。」
同日付中国
『チャイナ・デイリィ』(
『新華社通信』記事引用):「中国、アジアと欧州間の連携強化を目指す」
「・7月15~16日のASEMサミットに出席予定の李克強(リー・コーチアン)首相は、同会合を通じて、アジアと欧州間の連携強化に努める意向。
・中国は、1996年のASEM第1回会議より参加しているが、今やASEMはアジア・欧州の53ヵ国・機関が加盟する国際会議に発展しており、世界経済第2位の中国への期待が増々増大。
・なお、同首相は、英国の欧州連合(EU)離脱問題、及び、南シナ海領有権争いに関し、フィリピン提訴の一方的な仲裁裁定問題等を討議するものと予想。」
引用記事中にあるとおり、中国側としては、予めASEM参加各国に、PCA裁定等南シナ海問題を話題にしないよう釘を刺しているが、一方で、万一提起された場合には、PCAの非管轄権や、フィリピンの一方的な提訴は国際法違反である等、自らの主張をまくし立てるものとみられる。
(注)ASEM:1996年、シンガポール首相の提唱で創設された、アジア(東アジア・東南アジア)と欧州における経済、政治、社会・文化などの分野の対話と協力のための会合。アジア参加メンバー(21ヵ国とASEAN事務局)及び欧州参加メンバー(30ヵ国と欧州委員会)にて構成。首脳会議は、2年に1度、アジアと欧州で交互に開催。
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