中国の軍事力アピール;陸軍がインド国境付近で実弾演習し、海軍はバルト海でロシアとの合同海上演習【米・英・ロシア・インドメディア】
7月12日付Globali「日米印共同海上演習の仮想敵は中国の潜水艦」の中で、“日米印共同軍事演習には初めて米軍空母打撃群が参加し、インド洋に潜伏・航行する中国潜水艦の脅威に対抗することに焦点が当てられている”と報じた。仮想敵とされたことに激怒したためか、中国は、かねてから国境紛争で揉めていたインド国境付近で実弾演習を実施したかと思えば、昨年に引き続いて今年も、バルト海においてロシアとの合同海上演習を実行して、西側諸国にその軍事力をアピールしている。
7月18日付米
『NYSEポスト』オンラインニュース:「中国、インド国境付近で“敵国の航空機”を標的とした実弾演習を実施」
7月17日の中国国営メディア報道によると、中国人民解放軍が、インドと長らく国境問題で揉めているチベット自治区のヤルンツァンポ川(チベット内呼称、インド内ではブラマプトラ川)流域で、兵員4,000~7,000人の規模で実弾演習を展開したという。
更に、中国メディアは、インド軍は、中国と国境問題でもめている地域に20万人近くの部隊を駐留させており、今年の6月18日に起きたシッキム州(インドの北東部で、西がネパール、東がブータン、北が南チベット)国境付近での小競り合いは、インド軍兵士の中国領への侵入が引金になったものと報じている。...
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7月18日付米
『NYSEポスト』オンラインニュース:「中国、インド国境付近で“敵国の航空機”を標的とした実弾演習を実施」
7月17日の中国国営メディア報道によると、中国人民解放軍が、インドと長らく国境問題で揉めているチベット自治区のヤルンツァンポ川(チベット内呼称、インド内ではブラマプトラ川)流域で、兵員4,000~7,000人の規模で実弾演習を展開したという。
更に、中国メディアは、インド軍は、中国と国境問題でもめている地域に20万人近くの部隊を駐留させており、今年の6月18日に起きたシッキム州(インドの北東部で、西がネパール、東がブータン、北が南チベット)国境付近での小競り合いは、インド軍兵士の中国領への侵入が引金になったものと報じている。
なお、同州での中印部隊の睨み合いは、5週間経った現在も続いている。
7月17日付英『インターナショナル・ビジネス・タイムズ』オンラインニュース:「中国、緊張が高まる中でチベットのインド国境付近で実弾演習実施」
『中国中央テレビ』は7月14日、中国人民解放軍が南チベットのインド側アルナチャル・プラデシュ州(インド北東端で、西がブータン、東がミャンマー、北が南チベット)国境近辺で、11時間に及ぶ実弾演習を実施したと報道した。
同メディアは、いつ実弾演習が行われたかを明らかにしていないが、敵航空機に見立てた飛翔体をレーダーで捉え、地対空砲で撃墜する映像を流している。
中国は、インド側アルナチャル・プラデシュ州のほとんどの部分を、南チベット(チベット自治区)として中国領土と主張しており、インド側と絶えず紛争問題を起こしている。
(編注;インドと中国が接する国境は約3,540キロメーターに及ぶが、その4分の1がアルナチャル・プラデシュ州と南チベットとの間にあり、未だに国境が確定していない。)
同日付インド『デカン・ヘラルド』紙:「中国陸軍がチベット高原で実弾演習」
中国国防部は7月17日、チベット自治区のインド側と国境紛争が続いている地域で、チベット地区駐留部隊による実弾演習を11時間実施したと発表した。今回の演習は、5,000メーターを超える高地で行われた、初めての大規模訓練であり、中国側が、インドとの実戦に備えるとともに、インド政府への警告的意味合いがあるとみられる。
なお、6月中旬に発生した、インド側シッキム州の中国国境付近で発生した中印間の睨み合いは、依然一触即発の事態が継続している。
一方、7月18日付ロシア『RT(ロシア・トゥデイ)テレビニュース』:「中国の最新鋭駆逐艦、バルト海でのロシアとの合同海上演習に参加」
ロシア国防省は7月17日、バルト海において7月21日から、中国と合同海上演習を実施すると発表した。両軍から、戦闘機やヘリコプターに加えて、艦船10隻以上参加するといい、中国側は、2年前に就役したばかりの、最新鋭のミサイル駆逐艦を1隻参加させるという。
同省によると、ロシア海軍と中国人民解放軍海軍部隊との友好及び連携強化が目的だという。
なお、中国軍艦隊は先週、バルト海への航海途上、地中海で実弾演習を実施している。
なおまた、ロシアと中国は今年9月、中ロ合同軍事演習第2弾として、日本海とオホーツク海でも合同海上演習を実施する予定である。
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南シナ海仲裁裁定から1年、中国による裁定無効化が実現?【米・英・ロシア・フィリピン・中国メディア】
常設仲裁裁判所(PCA)が、南シナ海における中国主張を全面的に退ける裁定を下してから、7月12日で1年が経過した。中国は当初より、一方的な仲裁裁定は無効であると強く宣言し、また、国際世論の反対を鎮めるため、東南アジア関係各国との対話による問題解決のポーズを前面に押し出していた。実際には、中国自身の理屈付けで人工島建設継続はおろか、軍事拠点化を見据えての種々の恒久施設を同島に建設している。また、周辺関係国との対話を継続するに当り、大規模経済援助をちらつかせ、中国主導の話に黙って続くよう迫ってきている。従って、PCA裁定で勝訴したフィリピンも、政権が代わったこともあって、もはやPCA裁定は絵空事になりつつあるとみられる。
7月12日付英
『インターナショナル・ビジネス・タイムズ』オンラインニュース:「南シナ海:フィリピンは中国主張を退けたPCA裁定を有効に活用している?」
南シナ海領有権問題で、中国主張を全面的に退けたPCA裁定が下ってから1年が経つに当り、フィリピン大統領府のアーネスト・アベーラ報道官は7月11日、(ロドリゴ・ドゥテルテ大統領方針に沿って)現在中国と対話を継続している、と語った。しかし、PCA裁定で勝訴したフィリピンは、この1年間で同裁定結果を有効に活用していないことは明白である。...
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7月12日付英
『インターナショナル・ビジネス・タイムズ』オンラインニュース:「南シナ海:フィリピンは中国主張を退けたPCA裁定を有効に活用している?」
南シナ海領有権問題で、中国主張を全面的に退けたPCA裁定が下ってから1年が経つに当り、フィリピン大統領府のアーネスト・アベーラ報道官は7月11日、(ロドリゴ・ドゥテルテ大統領方針に沿って)現在中国と対話を継続している、と語った。しかし、PCA裁定で勝訴したフィリピンは、この1年間で同裁定結果を有効に活用していないことは明白である。
既報どおり、米シンクタンクの6月報道では、中国は南シナ海での海洋活動を更に進めていて、ファイアリー・クロス礁・ミスチーフ礁・スビ礁上に築いた人工島に、軍事拠点化を可能とする恒久施設を建設している。この結果、フィリピン初め同海域の領有権を主張する周辺国にとって、中国側の軍事的圧力は益々頑強なものとなっている。
しかし、アキノ前政権下で外相としてPCA仲裁裁定を進めたデル・ロサリオ氏が、中国は裁定を無視して、南シナ海での軍事化と違法行為を続けている、と強くアピールしても、同盟国米国と距離を置き、逆に親中路線をひた走っているドゥテルテ大統領の下では、PCA裁定を有効活用する余地は全くないと言える。
更に、同大統領は、訪中した際に中国首脳から、もしフィリピンが同海域で勝手に石油探査活動を始めたら、中国と戦争になると覚悟するよう脅されてしまっている。
ただ、デル・ロサリオ氏ら反対派としては、目下東南アジア諸国連合(ASEAN)と中国が、南シナ海行動規範(COC)の締結に向けて協議していること、更に、フィリピンが今年のASEAN首脳会議の議長国となっていることから、中国の活動を制限するCOCの締結に期待している。
同日付ロシア
『RT(ロシア・トゥデイ)テレビニュース』:「フィリピン、中国との貿易拡大のため中国との衝突は望まず」
PCA裁定から一周年に当り、フィリピンのラモン・ロペス通商産業相は7月12日、ドゥテルテ大統領が以前より表明しているとおり、フィリピンとしては中国との関係改善・拡大に注力していく方針であると語った。
同大統領の方針表明もあって、中国は(理由不詳で)輸入を差し止めていたフィリピン産バナナ・マンゴーを解禁したことから、今年1~5月の間で、同貨物の中国・香港向け輸出高は昨年比+34%も伸びている。
7月13日付フィリピン
『マニラ・ブルティン』紙:「南シナ海領有権問題でのフィリピン・中国間緊張関係が緩和」
フィリピンと中国両国は現在、南シナ海における安全保障強化の一環で、様々な分野において、現実的な相互協力関係を構築していくことで合意している。
PCA裁定から1年を経た7月12日、中国外交部の耿爽(ガァン・シャン)報道官は定例会見で、両国が以前の関係に戻り、建設的な対話と交渉を継続していることから、両国関係は以前にも増して良好になっていると表明した。更に、同報道官は、ASEAN関係国とも同様の対応を取っていくことによって、結果として南シナ海の平和と安定が構築できるものと信じるとも語った。
同日付中国
『中国新聞電子版』:「フィリピン、南シナ海問題で“建設的な対話”を歓迎」
フィリピンのドゥテルテ政権は、PCA裁定が下ってから一周年の7月12日、フィリピンは中国と“建設的な対話、協力及び開発協議”ができる関係が構築されたことを評価しているとの声明を発表した。
この声明に答えて中国外交部の耿報道官は、フィリピンと以前の友好関係が再構築できているとした上で、中国のPCA裁定に対する方針には全く変更なく、(同裁定に依らず)領有権問題を関係国間の対話によって解決していく意向であると表明した。
一方、7月12日付米
『Yahooニュース』(
『ロイター通信』配信):「フィリピン高官、領有権争いのある海域での石油探査を年内に再開と表明」
フィリピンのエネルギー資源開発庁のイスマイル・オカンポ理事は7月12日、南シナ海のリード礁(注後記)における天然ガス・石油探査の掘削を、年内中に再開する予定であることを明らかにした。
フィリピンは同礁において探査活動を始めていたが、2014年末、当時の政権が進めていたPCAへの仲裁提訴を優先して、一時的に中断していた。そして同理事は今回、同礁の探査活動を請け負う企業の入札を今年12月に実施するとした。同理事によると、フィリピン外務省の指示の下、同海域での天然資源探査活動を再開する意向であるという。
フィリピンは急速な経済発展を遂げていく上で、輸入に大きく頼っているエネルギー資源の国内供給源の確保が重要となっており、更に、現在天然ガスの供給元として依拠しているマランパヤ・ガス田が、今後10年内に枯渇する恐れがあるからである。
(注) リード礁:南沙(スプラトリー)諸島の海域にある堆の一つ。面積8,866km2、最大水深45m。同礁付近には、天然ガスや石油等の天然資源が豊富に埋蔵されていると見られ、中国、台湾、フィリピンが主権を主張している。
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