ニューデリー空港の崩壊事件は一般のインド人たちの憤慨を買うことになり、モデイ首相に対する反対派は、‘トランプの城’のように崩壊したことに対して手抜き工事で危険な空港を建てたのは犯罪的だとつかさず非難した。
同様に、ジャバルプル空港、ルックノウ空港、ラジコット空港などでも6月末の豪雨の影響で建物の崩壊がみられたという。インド北東部ビハール州では、1か月の間に建設途中のものも合わせて合計14か所の橋が崩壊し、地方政府が原因究明に乗り出している。...
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ニューデリー空港の崩壊事件は一般のインド人たちの憤慨を買うことになり、モデイ首相に対する反対派は、‘トランプの城’のように崩壊したことに対して手抜き工事で危険な空港を建てたのは犯罪的だとつかさず非難した。
同様に、ジャバルプル空港、ルックノウ空港、ラジコット空港などでも6月末の豪雨の影響で建物の崩壊がみられたという。インド北東部ビハール州では、1か月の間に建設途中のものも合わせて合計14か所の橋が崩壊し、地方政府が原因究明に乗り出している。この結果、15人のエンジニア達が停職させられ、インド北東部ビハール州の全ての老朽化した橋にたいする検査が義務付けられた。
この一連の事故災害により、ナレンドラ・モデイ首相のインフラ強化政策に対し、信頼喪失を招く結果となった。2014年以来、ヒンドゥ国家主義を掲げて政権を担ってきたモデイ首相は、猛スピードで、インフラ建設(道路網、空港、橋梁、鉄道網近代化など)を推し進めてきた。インド政府としては、どんなにお金がかかっても、インフラの遅れを取り戻したいと考えていることが背景にある。さらに、モデイ首相としては、2047年までにインドを発展国に成長させると約束している。
一方、インドの英字新聞『デカン・ヘラルド』7月11日付けの社説では、一連の事故災害の原因が、政府と工事業者間の癒着構造が原因していると論説している。それにも関わらず、モデイ首相のインフラ整備計画の熱は、一向に収まる気配がないという。
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8月1日付Globali「習主席、中国固有の領土・領有権は“1ミリたりとも”譲らないと決意表明」で触れたとおり、中国の習近平(シー・チンピン)国家主席は、今秋開かれる「中国共産党第19回党大会」を控え、国内における統率力の基礎固めを意図して、強い決意表明を行った。同指導部の意思の固さを反映してか、長い間国境問題を抱えているインドのヒマラヤ地方で6月に発生したインド軍との睨み合いは、これまでになく一歩も引かない状況である。そしてこの程、中印間の緊張を苦々しく思っていたインド人プロボクサーが、ダブル・タイトル戦において僅差の判定で破った中国人ボクサーに対して、両国間の平和を願って、二つのうちひとつのベルトを返上したいとの申し出を行った。海外メディアが挙って称賛している。
8月6日付米
『ワシントン・ポスト』紙:「“平和へのメッセージ”:中印間が国境問題で揺れる中、インド人プロボクサーが判定負けの中国人ボクサーにベルト返上を申し出」
インド人プロボクサーのヴィジェンダー・シン選手(31歳)は8月5日、中国人ボクサーのズルピカー・マイマイティアリ選手(23歳)と世界ボクシング機構(WBO、注後記)のアジア太平洋スーパー・ミドル級王者防衛戦及び同東洋スーパー・ミドル級王者決定戦のダブル・タイトル戦を行った。...
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8月6日付米
『ワシントン・ポスト』紙:「“平和へのメッセージ”:中印間が国境問題で揺れる中、インド人プロボクサーが判定負けの中国人ボクサーにベルト返上を申し出」
インド人プロボクサーのヴィジェンダー・シン選手(31歳)は8月5日、中国人ボクサーのズルピカー・マイマイティアリ選手(23歳)と世界ボクシング機構(WBO、注後記)のアジア太平洋スーパー・ミドル級王者防衛戦及び同東洋スーパー・ミドル級王者決定戦のダブル・タイトル戦を行った。
結果、僅差の判定でシン選手の勝利となり、二つのタイトル保持者となった。しかし、6月末からインドのヒマラヤ地方で両国間の睨み合いが続いていることから、“平和を望むメッセージ”として、これまでマイマイティアリ選手が保持していた東洋スーパー・ミドル級のチャンピオンベルトを返上したいと申し出た。
中印間では、1962年に起こった国境紛争以来、中印国境2,174マイル(約3,480キロメーター)の主だったところで緊張状態が続いている。そして中国は、インドの好敵手のパキスタンと同盟強化した上で、武器も供給していることから、中印間国境問題は益々混沌としてきている。
同日付英『ザ・テレグラフ』紙:「インド人プロボクサー、平和の象徴として、中国人ボクサーから奪取したWBOチャンピオンベルト返上を提案」
ムンバイ(インド)で行われたダブル・タイトル戦で勝利した後、元北京オリンピック銅メダリストのシン選手は、“中印友好の印”として、WBO東洋スーパー・ミドル級チャンピオンベルトをマイマイティアル選手に返したいと申し出た。
インドのヒマラヤ山麓のドクラム(インド北東部のシッキム州の東、北は中国、西はネパール、東はブータンに挟まれた地域)におけるインド・中国両軍の睨み合いは、ほぼ2ヵ月が経過する。そもそも、中国軍が国境付近の道路の拡幅工事を一方的に進めたもので、インド側は、安全保障が脅かされるとして一歩も引かない構えである。
シン選手の申し出に多くのメディアが称賛したが、インド国粋主義者はこれを支持せず、ヨガのババ・ランデヴ尊師は、ボクシングのタイトル戦だけでなく、ドクラムの攻防でもインドが勝利することになるとツイートしている。
同日付ロシア『スプートニク・インターナショナル』オンラインニュース:「インド人プロボクサー、敗者の中国人ボクサーにチャンピオンベルトを返すと申し出」
8月5日にムンバイのナショナル・スポーツ・クラブで行われたタイトル戦は、3人の審判の判定が、96:93、95:94、95:94と非常に僅差の勝負であった。
なお、『インディアン・エクスプレス』紙によると、シン選手の申し出は、WBO本部に判断が委ねられることになり、どうなるか明らかではないという。
8月7日付インド『デカン・ヘラルド』紙:「ヴィジェンダー選手にとっては国境での緊張緩和が重要」
ヴィジェンダー・シン選手にとって、WBOアジア太平洋スーパー・ミドル級及び同東洋スーパー・ミドル級二つのタイトルを獲得したことより、ヒマラヤ山麓国境付近で揉めている中印間の緊張が緩和することの方が重要だとする。
なお、両選手はお互いのファイトを称え合い、両者の間にはわだかまりも何もない。
8月6日付中国『チャイナ・ナショナル・ニュース』:「ヴィジェンダー・シン選手、中印緊張緩和のため“アジア激戦区”の勝利を捧げると表明」
ヴィジェンダー・シン選手は、2016年7月からWBOアジア太平洋スーパー・ミドル級王者となっている。キャリアは30ラウンド(デビューは2015年6月)で、これまでのタイトル戦は9戦全勝。一方、マイマイティアル選手は24ラウンド(同2015年4月)で、キャリアではシン選手が一歩先んじていた。
(注)WBO:プロボクシングの世界王座認定団体の一つ。世界ボクシング協会(WBA、1962年設立、本部はパナマ)から分裂して1988年に設立された。本部はプエルトリコのサンフアン。その他、世界ボクシング評議会(WBC、1963年設立、本部はメキシコシティ)、国際ボクシング連盟(IBF、1983年設立、本部はニュージャージー州スプリングフィールド)がある。
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