豪印暫定FTA協定:インドは中国に代わる主要貿易国になれるのか
オーストラリアとインドは4月2日、暫定的な自由貿易協定(FTA)について合意したことを発表。「豪印経済協力・貿易協定(ECTA)」と題されたこの協定は、両国間の貿易を飛躍的に増加させるだけでなく、オーストラリアの中国へのサプライチェーン依存を解消することを目的としている。しかし、一部のメディアは、インドは中国の代わりにはなれないと報じている。
香港の
『サウスチャイナモーニング・ポスト』は、オーストラリアとインドとの協定は、地政学的変化の中で、オーストラリアが切望していた貿易の多様化と安全保障上の同盟国であるインドとの関係を深める手段として有効だと見られていると伝えている。オーストラリアのモリソン首相は、豪印協定は民主主義諸国がサプライチェーンの安全性を確保するために協力するというメッセージであり、パンデミックが中国を中心とした供給網に大混乱を招いて以来、その必要性がより一層高まっていると述べている。...
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『サウスチャイナモーニング・ポスト』は、オーストラリアとインドとの協定は、地政学的変化の中で、オーストラリアが切望していた貿易の多様化と安全保障上の同盟国であるインドとの関係を深める手段として有効だと見られていると伝えている。オーストラリアのモリソン首相は、豪印協定は民主主義諸国がサプライチェーンの安全性を確保するために協力するというメッセージであり、パンデミックが中国を中心とした供給網に大混乱を招いて以来、その必要性がより一層高まっていると述べている。
シドニー工科大学教授でチーフエコノミストのティム・ハーコート氏は、今回の協定は「経済的というより地政学的」なものであり、総選挙を控えている豪政府は有権者に対して複数の主要貿易相手国を持つことを示す必要があったと述べている。一方で「インドが新しい中国になることはあり得ない」と指摘している。豪シンクタンク「パースUSAsiaセンター」の政策研究員で豪印関係を専門とするソニア・アラクカル氏は、「オーストラリアは、インドであれ中国であれ、一つの貿易相手をやみくもに優遇することはできず、多様化戦略を追求しなければならないことを学んだ」と述べている。
アデレード大学国際貿易研究所のピーター・ドレイパー事務局長は、完全な貿易協定を結んだとしても、オーストラリアにとってインドは中国に取って代わることはできない、と主張している。インドは汚職や「制度的空白」など、国内の制度的な弱点を抱えており、より規制の厳しい環境に慣れている起業家にとっては、インドでのビジネスは困難なものだという。
オーストラリアの政治アナリストで米誌「ディプロマット」のコラムニストであるグラント・ワイス氏は、インドは中国共産党政府が過去20年にわたって行ってきたような開発を指示できる中央集権的メカニズムに欠けていると指摘している。
米『インターナショナル・ビジネス・タイムズ』によると、ロングアイランド大学のウダヤン・ロイ教授も、「インドの市場の非効率性は、商品市場や資源市場において非常に根深く、近い将来に改善されるとは思えない。例えば、労働市場では、10人以上の企業は解雇ができない。これは、企業が大きくなり、規模の経済を実現するための阻害要因になる」と指摘している。さらに、公共事業、通信、運輸、エネルギー、銀行など経済のいくつかの分野で、政府と大企業の癒着があり、競争を制限し、資源を浪費しているという。例えば、「銀行は経済的な基準ではなく、政治的な基準に従って企業に資源を配分している」という。
シンクタンク「Sibylline」のアジア太平洋地域担当リードアナリストであるGuo Yu博士は、「インドと中国は発展段階が異なるため、一方が他方に取って代わるという考え方をするのは助長的(あるいは有益)ではない。」と述べている。また、「インドは若い人口を大量に抱え、労働集約的な製造業でますます優位に立ち、その民主的な政治制度から多くの欧米諸国から好まれるパートナーとなっている。これとは対照的に、中国はここ数年、中国と米国の戦略的対立の激化に支えられ、敵対的とは言えないまでも厳しい地政学的環境に直面している。欧米の多くの政府は中国に対して強硬な姿勢をとり、中国の貿易や投資に対する監視を強化している。」それでも、「中国は比較的よく整備されたインフラ、高度なスキルを持つ労働力、急速に拡大する中間層を抱える広大な市場により、政治的・地政学的な課題にもかかわらず、国際ビジネスにとって魅力的な経済国であり続けている。」そのため、インドが中国に代わる存在になることは難しいと見ている。
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中国、NYタイムズスクウェアの広告スクリーンでコロナ対応をめぐる宣伝を開始
中国国営メディアの新華社通信は最近、ニューヨークの観光名所として知られるタイムズスクエアの広告スクリーンに、中国が新型コロナウイルスとの戦いで積極的に動いているという旨の内容の広告を流し始めた。
米ニュースサイト
『インターナショナル・ビジネス・タイムズ』は、アメリカでは中国政府の政治活動団としても見なされている国営メディア新華社通信が、ニューヨークの観光名所タイムズスクエアの広告スクリーンに、中国政府による新型コロナウイルス対策に関する宣伝を流していると報じている。
「シャーウッド・アウトドア」が所有し、リースしているこの広告スクリーンは、通常、中国製品や中国旅行の宣伝を流している。...
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米ニュースサイト
『インターナショナル・ビジネス・タイムズ』は、アメリカでは中国政府の政治活動団としても見なされている国営メディア新華社通信が、ニューヨークの観光名所タイムズスクエアの広告スクリーンに、中国政府による新型コロナウイルス対策に関する宣伝を流していると報じている。
「シャーウッド・アウトドア」が所有し、リースしているこの広告スクリーンは、通常、中国製品や中国旅行の宣伝を流している。しかし最近、新型コロナウイルスに対する戦いにおける中国政府の努力について宣伝されるようになった。新型コロナウイルスの回復率が48.52%であること、また、いくつかのクルーズ船が衛生検査に合格したなどの宣伝が流されている。
さらには、「中国は80を超える国と地域を支援してきた。」というメッセージや、中国が「これからも国際社会と手を携えてウイルスと戦い続けていく。」というメッセージが流されるようになった。
米ニュース専門放送局『フォックスニュース』によると、広告スクリーンには、支援した国または協力国としてイタリア、韓国、日本などの写真が流されているという。
フォックスニュースは、世界保健機関(WHO)が武漢に派遣した調査団に対し、中国政府が患者の生データを提出することを拒否する一方で、アメリカで新型コロナウイルス対策の為に団結と協力のメッセージを宣伝していることには違和感があると報じている。
米政府国家安全保障顧問のジェイク・サリバン氏は、WHOによる中国での調査で、「初期調査結果がどのように伝えられたのか、また、結論に到達するために取られたプロセスに深い懸念を抱いている」と述べ、「WHOの報告書は独立したものである必要があり、中国政府の介入や改ざんのない、専門家による調査結果であることが不可欠である」と指摘している。
新華社通信はこのタイムズスクエアの広告スクリーンを2011年からリース契約しており、その契約期間は明らかにされていない。
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