プーチン大統領;約束した特別手当も払わずにこき使うだけとウィルス禍最前線の医療従事者らが猛反発【米メディア】(2020/05/28)
5月18日付Globali「
ウィルス禍最前線で働く日本の医師、医療用マスク使い回しの上、特別手当もない惨状」で報じたとおり、安倍晋三首相の新型コロナウィルス(COVID-19)感染対策措置にほころびが目立ち、直近の支持率急低下の原因の一つとなっている。同じく、主要国の中で支持率低下に喘ぐ数少ないリーダーにウラジーミル・プーチン大統領がいるが、こちらもCOVID-19最前線で奮闘する医療従事者から、大見えを切った特別手当など全然支給されておらず、ただこき使われるだけだと怒りの声が浴びせられている。
5月26日付
『ニューズウィーク』誌:「プーチン大統領に対し、COVID-19最前線で働く医療従事者から怒りの声」
COVID-19最前線で働く医療従事者らが、感染防止保護具不足や約束された特別手当の未支給等を理由に、ウラジーミル・プーチン大統領に対して怒りの声を上げている。
同大統領は4月初め、最前線で働く医療従事者らに対して、医師には特別手当として月約8万ルーブル(1,000ドル、約10万7千円)、看護師、医療補助者、救急車の運転手らには月2万5千~5万ルーブル(300~600ドル、約3万2千~6万4千円)を支給すると発表していた。...
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5月26日付
『ニューズウィーク』誌:「プーチン大統領に対し、COVID-19最前線で働く医療従事者から怒りの声」
COVID-19最前線で働く医療従事者らが、感染防止保護具不足や約束された特別手当の未支給等を理由に、ウラジーミル・プーチン大統領に対して怒りの声を上げている。
同大統領は4月初め、最前線で働く医療従事者らに対して、医師には特別手当として月約8万ルーブル(1,000ドル、約10万7千円)、看護師、医療補助者、救急車の運転手らには月2万5千~5万ルーブル(300~600ドル、約3万2千~6万4千円)を支給すると発表していた。
しかし、ソーシャルメディアに上げられている情報によると、1ヵ月経っても全く支給されていないか、支給されたとしても大統領発表の1%以下だという。
更に、かかる不満の声を公に上げた人たちのところには、警察が事情聴取に押し掛けてきたという。
モスクワ本拠の医師擁護同盟のサイモン・ガルペリン代表は『ニューズウィーク』誌のインタビューに答えて、“COVID-19に感染する医師が他国に比べて非常に多いことを懸念している”とした上で、“しかし、連邦や地方自治政府の役人は、COVID-19治療従事による感染とは認めようとせず、従って責任を取ろうともしない”と非難した。
そして、COVID-19に感染したミハイル・ミシュスチン首相の側近も、特別手当が支給されていない問題を表だって明らかにし、更に、プーチン大統領発令詳細が明確にされていないことから、地方自治政府の役人らが、支払わなくて済む抜け道を探していると不満の声を上げている。
ガルペリン代表も、“地方自治政府の首相や保健相は、特別手当支払いを何とか回避しようと画策している”と同調した。
「プーチンの神秘」の著者で、国際危機グループ(ICG、注1後記)ロシア支部のアンナ・アルトゥニアン上級アナリストも『ニューズウィーク』誌のインタビューに答えて、“大統領令が発令されても、地方自治政府に十分な資金も管理担当要員も提供されていないことが問題”だとした上で、“長い間、ロシアでは医師らは労働者扱いされてきた歴史があり、そのために政府からも手厚い待遇がされない状況にある”とコメントしている。
従って、プーチン政権に抵抗する民主化運動とは異なる形で、特別手当未払いや個人用防護具不足の問題から、医療従事者らによる同政権や地方自治当局に対する深い恨みが倍加してきている。
Change.org(注2後記)プラットフォームで展開された、医療従事者宛に特別手当支給を求める署名運動には11万6千人以上が署名しており、署名者の多くは、“ロシアの医療従事者は、薄給の中から自前の防護具を買うか、買えない場合は感染リスクをおして治療に当たっている“と嘆いている。
『ニューヨーク・タイムズ』紙の報道によると、プーチン大統領が電話会議で、地方自治政府高官らに対し、医療従事者への特別手当未払いについて“官僚的な怠慢”だと叱責したという。
しかし、ロンドン本拠のシンクタンク、チャタム・ハウス(王立国際問題研究所、1920年設立)のニコライ・ペトロフ上級調査員は『ニューズウィーク』誌に対して、“プーチン大統領の統治システムにほころびが見えてきた証し”とのコメントを寄せている。
(注1)ICG:現場調査に基づいた分析と高度の政策提言を通して、致命的紛争を解決する目的で設立された、国際的非政府組織。1995年に米国で設立され、本部はブリュッセル(ベルギー)。活動主要支部は、ワシントンDC、ニューヨーク、ロンドン、モスクワに置かれ、現地支部が世界18ヵ所に置かれている。
(注2)Change.org:2007年に米国で設立され、現在世界中で4000万人以上のユーザーを持つ、世界最大のオンライン署名プラットフォーム。社会問題などについて、誰もが簡単に署名募集のキャンペーンをサイト上に立ち上げることができ、時には世界中で数十万以上の署名賛同を集め、一国の政府を動かすほどの影響力を持つ。アムネスティ・インターナショナルや動物愛護協会といった団体が請願活動を主催するためのサイトを置いている。
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新型コロナウィルス感染問題;中国当局が昨年末よりネット検閲をして情報操作をしていたとカナダ研究機関が公表【米・英国メディア】(2020/03/05)
依然世界中で猛威を振るう新型コロナウィルス感染問題について、中国の習近平(シー・チンピン)国家主席が初めて流行の深刻さを認めて緊急事態宣言をしたのは1月20日であった。しかし、カナダ研究機関がこの程明らかにした報告によると、中国当局が既に昨年12月末以降、国内のインターネット上の新型コロナウィルスに関わる検閲を始め、情報操作をしていたという。中国では、政府に対する批判や抗議を含めて、政治的にセンシティブと見做されるワード・表現等を、ソーシャルメディア企業に削除させる体制となっており、今回も新型コロナウィルス感染問題を隠蔽しようとした疑いがある。
3月3日付米
『ボイス・オブ・アメリカ』(
『ロイター通信』配信):「中国のインターネット企業が新型コロナウィルス感染初期段階で関連ワードや批評を検閲していたとの調査報告」
カナダのトロント大学の研究機関シチズン・ラボ(2001年設立、ネット検閲などを監視)は3月3日、中国のインターネット企業が既に昨年12月、新型コロナウィルス感染に関わるワードや政府批判につながる表現について検閲していたと発表した。...
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3月3日付米
『ボイス・オブ・アメリカ』(
『ロイター通信』配信):「中国のインターネット企業が新型コロナウィルス感染初期段階で関連ワードや批評を検閲していたとの調査報告」
カナダのトロント大学の研究機関シチズン・ラボ(2001年設立、ネット検閲などを監視)は3月3日、中国のインターネット企業が既に昨年12月、新型コロナウィルス感染に関わるワードや政府批判につながる表現について検閲していたと発表した。
同社報告書によると、中国のメッセージ・アプリ微信(WeChat、テンセント社運営、ユーザー10億人超)及びライブストリーミング・アプリ歓聚時代(YY、ジョイ・インク運営、ユーザー3億人超)が、新型コロナウィルス感染の初期段階で、これに関わる習近平国家主席、地方政府及びその方針について批評するワード・表現等を検索し始めていたという。
更に、同報告によれば、批判には当たらずとも、“移動の禁止”や“ヒトからヒトへの感染”等、公衆衛生や地方条例に関わるワードも検索がブロックされていたとする。
すなわち、同ラボが12月から2月の間の両アプリの検索やブロック状況を調査した結果、新型コロナウィルス感染初期段階で、当局からの“公式な検閲指示”に基づいて関連ワード等の検索、削除、あるいはブロックが行われていたことが判明したという。
中国においては、国家インターネット情報弁公室(2014年に組織されたネット検閲機関)の監視の下、インターネット企業は、“社会の安定を揺るがす”、あるいは中央政府を批判するワード・表現等を検閲して削除するよう義務付けられている。
新型コロナウィルス発生源とされる武漢(ウーハン)では、昨年12月30日、同市の李文亮(リー・ウェンリャン)医師が、WeChat上で新型コロナウィルス感染流行の懸念を発信していたが、当局から“デマを流した”として処罰され、同医師自身も2月初めに新型コロナウィルス感染のために命を落としている。
しかし、同ラボがYYの「警戒対象一覧」を調査したところ、既に12月31日の段階で、“武漢の未知の肺炎”や“武漢海鮮市場”のワードが検索対象とされていた。
更に、同ラボが、同医師死亡後の2月に調査した時点においても、“ウィルス”、“李文亮”、“中央政府、“集団感染”というワードも検索対象とされていた。
3月4日付英国『BBCニュース』:「中国のアプリWeChatが1月1日以降新型コロナウィルス関連表現を検閲」
カナダのシチズン・ラボの調査報告によると、中国のアプリWeChatが、1月1日以降に既に新型コロナウィルスや習近平国家主席批判につながるワード等を検索し始めていたという。
そして、新型コロナウィルス感染が拡大するにつれて、同アプリの検索対象は更に広げられたとする。
すなわち、同報告によれば、習国家主席が、公式に新型コロナウィルス感染問題を深刻に受け止めて緊急事態宣言を発信した1月20日よりも3週間も前に、当局の指示の下か、あるいはインターネット企業の自らの判断からか、いずれにせよ、新型コロナウィルス感染の初期段階で、関連情報を検閲する体制が敷かれていたことが明らかだという。
国際人権団体アムネスティ・インターナショナルのパトリック・プーン調査員は『BBC』のインタビューに答えて、“政府批判のみならず、決してセンシティブでないワード等も検索対象とすることは最悪”だとした上で、“中国当局は、かような手段を用いて国民の情報収集や表現の自由を奪っている”と非難した。
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