習近平(シー・チンピン)指導部は2015年7月、政権基盤を盤石化するため、反政府運動を徹底的に取り締り始めた。200人以上の人権派弁護士・活動家らが拘束され、多くが懲役刑や執行猶予付き禁固刑などを科せられた。そしてこの程、同時期に拘束され、裁判も開かれず、また、生死も明らかにされなかった最後の人権派弁護士に対して、非公開の裁判によって国家転覆罪で4年半の実刑判決が下された。人権蹂躙はもとより、立憲主義や司法の独立をも脅かす事態だとして、国際社会から非難の声が上がっている。
1月28日付
『ニューヨーク・タイムズ』紙:「習指導部の取締りで一斉検挙されていた人権派弁護士に4年半の実刑判決」
天津人民法院(地裁に相当)は1月28日、2015年夏の一斉取り締まりで拘束されていた人権派弁護士に対して、国家転覆罪で有罪とし、4年半の実刑判決を下した。
習指導部が行った取り締りでは、拘束した弁護士・活動家らを一斉に裁判にかけ、国家転覆を企てたり、海外の敵国の便益のために働いたと、罪を認めて悔いる模様をテレビ中継していた。...
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1月28日付
『ニューヨーク・タイムズ』紙:「習指導部の取締りで一斉検挙されていた人権派弁護士に4年半の実刑判決」
天津人民法院(地裁に相当)は1月28日、2015年夏の一斉取り締まりで拘束されていた人権派弁護士に対して、国家転覆罪で有罪とし、4年半の実刑判決を下した。
習指導部が行った取り締りでは、拘束した弁護士・活動家らを一斉に裁判にかけ、国家転覆を企てたり、海外の敵国の便益のために働いたと、罪を認めて悔いる模様をテレビ中継していた。
ところが、人権派弁護士の王全璋(ワン・チュアンチャン、42歳)氏については、家族はおろか代理人弁護士の面会も許されず、長い間生死さえも不明であった。
王氏は、政治活動家や、政府が禁止している気功集団「法輪功(フォールンゴン、注後記)」の信者らを弁護してきており、人権派弁護士の中では突出している存在であった。
そして、昨年12月26日に突然、同法院で非公開の裁判が開かれることになったが、王氏妻の李文足(リー・ウェンズー)氏はもとより、代理人弁護士も傍聴を認められなかった。
李氏はツイッターで、当局の不当判決には断固反対し、また、王氏が無事に釈放されるまで闘い続けると言及している。
これに関して、国際社会からも多くの非難の声が上がっている。
ドイツの人権擁護委員会のバーベル・コフラー委員長は、王氏が拘束されて以降、家族や代理人との接見も許されないのは問題であるし、更に、非公開の裁判で裁かれるなど言語道断だと一刀両断にした。
王氏を見知っている、キングス・カレッジ・ロンドンのエバ・パイルス法学部教授は、王氏が正義のために頑なに貫いた弁護活動のため、中国当局が見せしめとしてかかる非公開裁判で処罰したものだとし、今はただ王氏の心身の健康を祈るばかりだとコメントした。
専門家の分析では、政治活動家や土地接収に抗う農民などを擁護する弁護士に無言の圧力を加えるため、今回の王氏の判決となっているとみる。
なお、人権団体アムネスティ・インターナショナル香港支部のドリアン・ロー中国研究員も、ただ裁判を開いたとの“見せかけ”でしかないと非難し、また、王氏への当局処遇によって、中国国内で活動を続ける人権派弁護士や活動家らが委縮してしまうことを懸念するとした。
(注)法輪功:中国の伝統的な健康法である気功を、李洪志が1990年ごろに仏教や道教の教えを取り入れ独自に系統化した気功法、及びその団体。宗教的な側面も持ち合せていたため、1999年6月より江沢民政権は、法輪功を邪教(危険なカルト宗教)と指定し禁止しており、法輪功の会員はそれを不当な弾圧であると国内外で抗議活動をしてきている。なお、これまで当局に拘束された500人余りの信者や法輪功学習者らが、虐待・拷問を受けたり、臓器狩り(臓器移植等のため強制的に臓器摘出)に遭っているとして、西側諸国から厳しい非難の声が上がっている。
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公判は4週間の予定で審議されるが、将来、北京政府の下で香港の民主化が達成できるかを占う上で極めて重要な意味を持っている。 9人の被告の中で、特に3人が先導者と目されていて、2人がカリスマ的な大学教授で、もう1人が人権運動家で英国国教会の牧師である。
公判の結果次第では、9人の被告は、いずれも最大7年間の懲役刑を宣告される危険があるという。
この運動は、今から4年前の2014年秋に、香港での議員選挙を北京政府の主張する方式、すなわち共産党のみから議員を選ぶ方式に反対し、民主主義的な選挙方式を要求して起こり、数十万人の学生が参加して主要道路をブロックアウトする事態に至った。...
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公判は4週間の予定で審議されるが、将来、北京政府の下で香港の民主化が達成できるかを占う上で極めて重要な意味を持っている。 9人の被告の中で、特に3人が先導者と目されていて、2人がカリスマ的な大学教授で、もう1人が人権運動家で英国国教会の牧師である。
公判の結果次第では、9人の被告は、いずれも最大7年間の懲役刑を宣告される危険があるという。
この運動は、今から4年前の2014年秋に、香港での議員選挙を北京政府の主張する方式、すなわち共産党のみから議員を選ぶ方式に反対し、民主主義的な選挙方式を要求して起こり、数十万人の学生が参加して主要道路をブロックアウトする事態に至った。 さらに運動の終結まで79日間を要し、香港の交通網が運動期間中、麻痺状態となった。
この運動で数百人の学生たちが逮捕され、そのうち数十人は検挙され、リーダー格の学生はすでに実刑判決を受け、投獄されている。しかし、今回の公判を受ける9人の市民は、第1審で暴力行為では起訴されていないが、公の秩序の混乱を策謀、および公の秩序の混乱を扇動した責任が問われている。しかし、9人の被告の弁護士によれば、これらの起訴は憲法違反であるという。
アムネスティ・インターナショナルを含めた多くの人権擁護団体は、9人の被告に対する起訴を無効にするように主張している。
いずれにせよ4週間後の公判結果が注目される。
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