ドナルド・トランプ前大統領(77歳、2017~2021年在任)は、不可解なことに訴訟被告人とされればされる程、共和党内の大統領選予備選候補の中で支持率を伸ばしている。しかし、議事堂襲撃事件(注後記)を扇動した容疑で起訴された事件では、自身が不利となることを自覚しているのか、審理担当裁判官を“偏向”等の屁理屈を付けて忌避しようと画策している。
8月7日付
『ロイター通信』、
『ハフポスト』は、議事堂襲撃事件の扇動者として起訴されたドナルド・トランプ前大統領が、審理担当裁判官を忌避すべく画策していると報じた。
ドナルド・トランプ前大統領は、選挙資金不正使用、機密情報不正持ち出し容疑等で起訴されているが、この程、議事堂襲撃事件を扇動した容疑でも起訴されている。
そしてこの程、当該事件の裁判では己が不利と思ったのか、審理担当の連邦地裁ワシントンDC巡回区裁判官を“偏向”等の理由によって担当から外すこと、それと同時に、審理そのものを別の地裁に変更させるべく画策している。
今回担当することになったのはタニヤ・チャトカン裁判官(61歳、ジャマイカ生れ)で、トランプ側が問題視しているのは以下の点である。
● オバマ政権時代に任命された裁判官であること
・2013年にバラク・オバマ大統領(当時52歳、2009~2017年在任)から任命されたことから、民主派とみられること。上院での指名に当たり、共和党側反発があり、2014年に漸く承認されている。
・同地裁で3人目の黒人裁判官であることから、白人至上主義者らの支持を受けているトランプにとって不利と判断されること。
● 2020年大統領選に関わるその他訴訟案件でトランプ側に不利な判決
・2021年にトランプ側が求めた、下院特別委員会(議会襲撃事件調査が主務)によるホワイトハウスに残る記録等の入手・閲覧を差し止めるとの訴えを却下。
・同判決文で、“大統領は王様ではないし、また当該事件の原告は大統領でもない”と言及していたが、後に最高裁も同判決を支持。
・議会襲撃事件で起訴された被疑者らの審理を担当し、検察側から出された一部減刑の請求を拒否。その際、“暴力による政府転覆の罪は重く、自宅軟禁という軽い刑罰は相応しくない”と言及。
なお、トランプは8月6日、自身が立ち上げたSNS「トゥルース・ソーシャル」に投稿して、担当裁判官の名前に言及せず、かつ証拠も提示せず、“自分が公平な裁判を受けられる余地はないので、担当裁判官を忌避すること、また、審理裁判所の変更を要求する”旨訴えている。
(注)議事堂襲撃事件:2021年1月6日にワシントンDCで起きた政治的な暴動事件。当時大統領であったドナルド・トランプの支持者らが、「2020年の大統領選挙で選挙不正があった」と訴えて、連邦議会が開かれていた議事堂を襲撃。暴動側・警察側併せて犠牲者5人、負傷者148人、そして800人以上が訴追。
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米ウォール街(金融・証券業界)富豪は、2020年大統領選時、ドナルド・トランプ前大統領(77歳、2017~2021年在任)の政策等を嫌気して、ジョー・バイデン大統領(80歳、2021年就任)を支援すべく巨額献金をした。そして2024年選挙に臨み、バイデン政権に失望したため共和党支援に鞍替えするも、反トランプの姿勢は変えず、反トランプ立候補者への支援を打ち出している。
7月16日付
『NBCニュース』は、米ウォール街の富豪らが、2024年大統領選に臨むに当たって、早くも反トランプの姿勢をみせてトランプ以外の共和党予備選候補者支援を表明していると報じた。
米ウォール街の富豪らは、2024年大統領選に臨むに当たって、反トランプの姿勢を示し、トランプ以外の共和党予備選候補者への献金を挙って行っている。
『NBCニュース』(1940年開局)と『CNBCニュース』(1989年開局)が共同で、直近の連邦選挙委員会(FEC、注1後記)報告データを分析したところ、十数名のウォール街富豪がドナルド・トランプ前大統領以外の共和党予備選候補者に献金していることが分かった。
FECの規制で、1人当りの個人候補者宛の献金は3,300ドル(約46万円)、また、候補者支援の政治行動委員会(PAC、注2後記)を通じての献金は6,600ドル(約92万円)が上限とされている。
ウォール街富豪やその他財界人は2020年大統領選時、トランプ前大統領の政策等を批判して、民主党・バイデン候補に計7,400万ドル(約103億6千万円)もの献金を行っていた。
その時、トランプが得ていた献金は1,800万ドル(約25億2千万円)に止まっていた。
なお、共和党予備選候補者のうち、今年4~6月期にウォール街富豪らから多くの献金を集めたのは以下の候補者で、いずれも支持率でトランプを下回っているものの、支援の勢いが増している。
●ロン・デサンティス現フロリダ州知事(44歳、2019年初当選)
・同四半期で、少なくとも15人の富豪らから計2千万ドル(約28億円)の献金を獲得。
・主な献金者は、大型ヘッジファンド創設者のポール・チューダー・ジョーンズ氏(68歳)で、同四半期に同候補者PAC宛に上限の6,600ドルを献金。
なお、同氏は2012年選挙時、ミット・ロムニー共和党候補(現76歳、2019年ユタ州選出上院議員就任)支援のスーパーPAC(注3後記)宛に20万ドル(約2,800万円)を献金していたが、同候補はバラク・オバマ民主党候補(現61歳、2009~2017年大統領就任)に敗退。
また、2016年時には、ジェブ・ブッシュ共和党予備選候補(現70歳、1999~2007年フロリダ州知事在任)及びクリス・クリスティ候補(現60歳、2010~2018年ニュージャージー州知事在任)に献金したが、いずれもトランプ候補に敗退。
・ベンチャーキャピタル実業家のジョー・ローンズデール氏(40歳)、そして米金融大手ゴールドマンサックス(1869年設立、本社ニューヨーク)のジャスティン・シーゲル副社長も、同四半期に少なくとも各々3,300ドルを寄付。
●実業家ビベック・ラマスワミィ氏(37歳)
・同四半期で7百万ドル(約9億8千万円)余りの献金獲得。
・彼の事業方針が、ウォール街が標榜する環境・社会・ガバナンス投資(ESG投資、注4後記)に反対するものだが、今回少なくとも10人余りの富豪からの献金を受領。
・ヘッジファンド、パーシング・スクエア・キャピタル(2004年設立)のビル・アックマン最高経営責任者(57歳)が同四半期初めに3,300ドルを献金。ただ、同氏は同時に民主党予備選候補者のロバート・F.・ケネディJr.弁護士(69歳)にも献金。
・投資家のグレン&エバ・ダビン夫妻(66歳、62歳)は6,600ドルを献金。
・投資コンサルタント会社、エバコアISI(1995年設立)のエド・ハイマン会長は3,300ドル献金。
●ニッキー・ヘイリィ元国連大使(51歳、2017~2018年在任)
・同四半期に500万ドル(約7億円)余りの献金を獲得。
・ヘッジファンド、AQRキャピタル・マネジメント(1998年設立)共同創設者のクリフ・アスネス氏(56歳)、ベンチャーキャピタル投資家ティム・ドレイパー氏(65歳)他十数名の富豪より献金受領。
(注1)FEC:連邦選挙に関わる献金・運動資金の適法性を監視する独立行政機関。1974年設立。本部ワシントンDC。
(注2)PAC:当該候補者の当選や立法議案の成立を援助するため組織された、政治資金団体。
(注3)スーパーPAC:「ある候補者やその選挙運動から独立した団体」で、選挙運動に直接資金援助をしたり、候補者と連携して行動することは許されないが、集めた資金は広告宣伝を中心とする、特定の候補者への支援活動に投じられることが容認されている団体。企業・個人からの献金上限はない。
(注4)ESG投資:地球温暖化などの環境的な課題、労働や人権などの社会的課題、コンプライアンスなどの企業統治の課題といった、企業が果たすべき社会的責任を重視し、その取組みや成果に着目して企業を評価し、投資の意思決定を行う手法。
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