6月18日付
『BBCニュース』は、コンビニエンスストア(CS)での恵方巻大量廃棄の実態を例に挙げて、日本における食品ロス問題について詳報している。
米ジャーナリストのレイチェル・ナウアー氏は、日本の食品ロス問題について、食品廃棄問題活動家兼ジャーナリストの井出留美氏(56歳)らへのインタビュー等に基づいて以下のように報告している。
まず、顕著な食品ロスの一例は、毎年2月3日の節分の日の夜に大量廃棄される恵方巻である。
井出氏のグループが、全国のCS101軒を回って得たデータを基に分析したところ、日本全国の5万5,657軒のCSに照らすと、合計94万7千本、総額7~8億円の恵方巻が廃棄されたと推定されるという。
この直接的な理由は以下が考えられる、とする。
① CSの本社からフランチャイズチェーンの各CS店舗に対して、毎年末に翌年の節分の日に売り上げるべき恵方巻を前年比+10~30%増しで引き取るよう指示(クリスマスケーキも同様の問題)。
② CS本社の指示は絶対で、多くのCS店舗では本社から供給される商品を全て買い取り、店舗の責任で販売する必要があり、売れ残り品の処分についても店舗負担という取り決め。
③ 日本の顧客は賞味期限ぎりぎりのものは買わない傾向が強く、一方、CS本社は値引き販売等を禁止しているため、CS店舗としては廃棄処置とせざるをえない(売れ残ったおにぎり、サンドイッチ等も同様)
④ セブン-イレブン・ジャパン(1973年設立)広報担当は、『BBC』の取材に対して、食品廃棄費用の15%を負担していることを認めている(すなわち、85%はCS店舗負担)。
井出氏グループのかかる分析報告に関し、セブン-イレブン・ジャパン従業員組合の河野雅史会長(50歳)も、以下のように問題点を指摘している。
⑤ CS店舗では、本社からの指示に基づき、日用品の過剰引き取りや季節限定商品の販売増を達成する必要がある。セブン-イレブン・ジャパンの例で言えば、毎年12月、各店舗に対して前年の1.5倍の恵方巻を本社に注文するよう通達していたことを確認済み。
⑥ 上記②で触れたとおり、CS本社では、(食品が無駄になるかどうかに拘らず)CS店舗により多くの商品を供給することで利益を上げるという「CS会計システム」が採用されている。
⑦ CS店舗オーナーの何人かは、本社との契約が打ち切られないようにするため、売れ残った商品を自腹で購入したりする場合があるとする(廃棄処分費用より安い場合があるため)。
⑧ 中には、寒い時期に売られるおでんを十分売れなかったこと等による本社からの叱責に悩んで自殺したオーナーもいる(但し、セブン-イレブン・ジャパン広報担当は『BBC』の質問に対して、フランチャイズのノルマの存在を否定)。
⑨ ただ、従業員組合の活動も奏功してか、セブン-イレブン・ジャパンは2024年、2023年比で僅か95%の恵方巻販売目標とすることを受諾。
なお、井出氏のグループは、CSにおける食品ロス問題改善のためには、「CS会計システム」の抜本的変更が必須としているが、『BBC』のインタビューに対して、セブン-イレブン・ジャパンもローソン(1975年設立)も、当該システムの変更は検討していないと回答している。
また、両社とも、全国のCS店舗で廃棄される食品廃棄物の量を公表していないとし、更に、ファミリーマート(1981年設立)は『BBC』の取材に応じなかった(但し、同社のHP上では、同社傘下の店舗合計で一日当たり5万6,367トンの食品廃棄物が発生していると記載)。
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英国のシンクタンク「オックスフォード大学ロイタージャーナリズム研究所」の「デジタルニュースレポート」によると、世界はニュース離れの傾向にあり、また誤情報拡散のリスクから、AI生成ニュースへの懸念が高まっているという。
6月16日付
『Yahooニュース』(英BBC):「ニュース離れが加速」:
世界的な調査報告書によると、多くの人々が暗く、止むことのない、飽き飽きするニュースから目を背ける傾向の拡大が続いているという。
オックスフォード大学ロイター研究所の報告書によると、2017年の29%より増加し、39%が「時々または頻繁に、ニュースを能動的に避けている」と回答している。ウクライナや中東での紛争により、人々はニュースを見るのを避けようとしているとみられ、その数は現在最も高いレベルにある。
47カ国約9万人を対象とし、デジタルニュース・レポートの年次報告のため、今年1月と2月にYouGovが調査を行った。当時は各地で総選挙や地方選挙が盛んに行われていたため、米国など、選挙によりニュースに関心が高まっていた国もみられたが、全体では関心が低い傾向は続いていたという。
世界では、ニュースに非常に関心があると回答したのは46%で、2017年の63%から減少した。英国では、2015年比で約半数に減少している。
報告書の筆頭著者ニック・ニューマン氏は、「近年取り扱うニュースは非常に難しくなっている。パンデミックや戦争により、人々がニュースから目を背けているのは、メンタルヘルスを保つためや、日常生活を続けるためであれ当然の反応である」としている。
また、積極的にニュースを避けている人々の間では、世界で起こっていることに対して自分が主体的にできることがないと「無力」に感じていることもニュースを避ける理由となっていると指摘。
ニュースに圧倒され、混乱する人がいる一方、政治に疲れを感じる人々もいる。女性や若者では、ニュースの量に疲れを感じる傾向が高い。一方、ニュースの信頼性は、パンデミックで信頼性が高まった時期より4%下げ、40%に留まった。英国では今年ニュースの信頼性が36%とやや高まったが、EU離脱を巡る国民投票前の2016年より約15%低い。
テレビや新聞等といった伝統的なニュースソースを使う人は、過去10年で急減。若者はオンラインやソーシャルメディアからニュースを見る傾向にあり、英国ではネットニュースが73%、テレビが50%、新聞等が14%となった。
ニュースで最も利用されているのは、「フェースブック」で、ユーチューブやワッツアップもニュース源として人気継続、ティックトックの人気も高まっており、旧ツイッターの「X」を初めて抜いた。
この変化に関連して、特に若者の間で、動画がより重要なニュースソースとなりつつある。ショート動画が最も注目されており、「消費者は使用が簡単な動画を使い始めている。しかし、テキストベースの文化では、伝統的なニュース機関も未だ健在でその伝える力を活かそうと奮闘している。ポッドキャストも注目されるが、教育レベルの高い人向けの「少数派」となる。
一方、報道における人工知能(AI)の利用に関しては、多くの人が、政治や戦争など硬派記事について疑問に思っているとの結果となっている。AIは記者にとって代わる存在というより、補う存在としての活用が望まれており、字幕や翻訳など、二次的利用の方が安心感があると考える人が多いとの結果となった。
同日付米『ETAQ』:「世界の視聴者はAI生成ニュースを不安視」:
ロイター研究所が公表したジャーナリズム研究報告書によると、ニュース製作や誤情報が拡大する中でのAI活用に関して、世界的に懸念が広がっている。
17日に発表された同研究所の年次「デジタルニュースレポート」は47カ国約10万人を対象とした調査に基づく報告書で、収入増や経営継続で、ニュース機関が直面する課題を示している。
世界の報道機関は、グーグルやオープンAI等のIT大手やスタートアップ企業が、情報の要約や、交通情報収集ツールを開発する中、生成AIにより新たな挑戦に取り組んでいる。その一方、報告書によると、消費者は、AIが政治等のニュースコンテンツを作成することを不安視していることがわかった。
米国の52%、英国の63%が、AI作成のニュースに安心できないと回答。調査では各国2千人が回答したが、AIは、記者の裏方作業に利用するほうが好まれる傾向がみられた。
ネット上の誤情報への懸念では、昨年比3%上昇し59%が不安を抱いていると回答。この数字は、今年選挙年となった南アフリカでは81%と米国で72%で高い傾向がみられた。
報道機関にとってのもう一つの課題は、有料購読である。パンデミックでやや増加し、20カ国で17%がオンラインニュースを有料購読しているが、この数字は過去3年変化していないという。米国の購読者の大半はトライアルやプロモーションによるディスカウント購入のため、46%が全額購読料未満という結果となった。
主流メディアより、ティックトックなどのプラットフォームでのニュースインフルエンサーの影響も大きくなっている。アプリでニュースを見ると回答したティックトックユーザー5600人を対象とした調査では、57%が個人パーソナリティに注目しており、ジャーナリストや報道機関を見る人は34%に留まった。
この結果から、報道機関は「視聴者との直接的な関係」を築く必要があり、若者視聴者にアピールするには、プラットフォームを戦略的に使う必要があるといえる。
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