ドイツ3つの州議会議員選挙、右派ポピュリズム政党が大躍進(2016/03/14)
昨年秋ごろまでは、ドイツは難民受け入れに対し寛容な政策をとり続けてきた。好調な経済成長を続けるドイツは、国内の労働力不足を解消すべく周辺国から労働者を受け入れており、難民の受け入れは労働力の確保にも一役買うとの目論見もあったのかもしれない。しかしながら、難民の流入はドイツの思惑に反し、とどまるところを知らず、増加の一途をたどっていった。難民の流入により職を失う自国民が出て、挙句の果てには昨年大晦日にドイツ西部の都市ケルンでアラブ、北アフリカ人を中心とした集団による、大規模なドイツ人女性への強盗や性的暴行事件が発生し、治安の悪化を招いている事態も報告されている。そんな中、メルケル首相が難民受け入れを打ち出してから初めての議会議員選挙がドイツの3つの州で行われた。難民問題は国政の問題であり、地方議会の選挙とは無関係にも見えるが、選挙活動の中でも難民問題は大きなウェイトを占めて取り沙汰されており、事実上国の難民問題への是非を問うものとして注目を集めいていた。結果は右派ポピュリズム政党で、難民排斥を謳う「ドイツのための選択肢」(AfD)が獲得議席数を大幅に伸ばしている。今後のドイツの難民政策はどのように変化していくのか、各メディアは以下のように報じている。
3月13日付
『ザ・ガーディアン』(英)はバーデン・ヴェルテンベルク州、ザクセン・アンハルト州、ラインラント・プファルツ州の3州で議会議員選挙が行われ、メルケル首相率いるキリスト教民主同盟(CDU)が獲得議席数を大幅に減らし、代わってAfDが第一党ではないものの大幅に議席数を伸ばし躍進したと報じている。特にバーデン・ヴュルテンベルク州は、第二次世界大戦以降CDUが多数派を占めてきたが、今回の選挙でその座を30.5%の票を獲得した「緑の党」に明け渡す結果となった。...
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3月13日付
『ザ・ガーディアン』(英)はバーデン・ヴェルテンベルク州、ザクセン・アンハルト州、ラインラント・プファルツ州の3州で議会議員選挙が行われ、メルケル首相率いるキリスト教民主同盟(CDU)が獲得議席数を大幅に減らし、代わってAfDが第一党ではないものの大幅に議席数を伸ばし躍進したと報じている。特にバーデン・ヴュルテンベルク州は、第二次世界大戦以降CDUが多数派を占めてきたが、今回の選挙でその座を30.5%の票を獲得した「緑の党」に明け渡す結果となった。ドイツの週刊誌「デア・シュピーゲル」はこれを「保守派の黒い日曜日」と報じた。
AfDは2013年に結成された右派ポピュリズム政党であり、結成当初ユーロの廃止を謳っていた。その後設立者が党首を辞任後、党の方針を難民排斥にシフトし、国民の支持を少しずつ集めてきた。特にザクセン・アンハルト州では「ペギーダ」(西洋のイスラム化に反対する欧州愛国者)活動と相まって勢いを伸ばし、出口調査で24.4%を獲得し第二党に躍り出るという快挙を成し遂げている。発足3年足らずの党が第二党になるのは驚きだと同記事は記している。AfDは残り2州でも12~15%の票を獲得し、まずまずの結果を出している。
他方「緑の党」はドイツ議会で4番目に大きい政党であり環境政党とも呼ばれている。「緑の党」はバーデン・ヴュルテンベルク州以外では議席数を減らしており、今回の選挙の焦点と言われた難民問題では「蚊帳の外」の存在になった。
このようなAfDの大躍進は、CDUの難民政策に失望した票がAfDに流れたためとみられている。AfDはTTIP(環大西洋貿易パートナシップ)での国民投票実施やロシアへのウクライナ問題に関する経済制裁の停止など様々な政策を謳っているが、これらに国民はほとんど注目しておらず、難民問題に関するメルケル首相への国民の意思表示がAfDの躍進につながったとみてよいだろう。
同日付
『ロサンゼルス・タイムズ』(米)はAfDの支持者層が、米大統領候補者ドナルド・トランプ氏のそれと類似すると指摘する。同記事によれば、AfDの支持者は難民に経済的地位を脅かされていると感じている、とりわけ低所得者層で教育レベルの低い男性が多いとされる。そして、その状況を改善するために国内に流入する難民を排除することが必要と感じている点が両者の共通点だというのである。そして現にAfDは「反難民」という政治的、道徳的に見て正しいとは言えない、いわば「タブー」とされるスローガンを掲げて多くの支持者を集めることに成功している。現時点ではAfDと組む政党は現れておらず、ドイツの難民政策が直ちに変更されることは考えづらいが、この先の動向は予測が難しいともいえる。
同日付
『ウォールストリート・ジャーナル』(米)もメルケル首相が難民政策に関してドイツ国境を閉鎖するのではなく、トルコと協力して難民の流入数を減らす方針を堅持する方針を変えるつもりはないと明言していると報じる。事実今回の選挙結果にもかかわらず、メルケル首相の支持率は54%と、昨年夏の67%からの落ち込みはみられるものの、他のヨーロッパの政治家と比べても高い数字を出している。AdFが急進的に勢いを伸ばしてはいるものの、ドイツ国民の大多数は静かにメルケル首相の難民問題に対する手腕を見定めているのかもしれない。
今回のAdFの躍進は難民政策をめぐる一時的なものと見る見解が多数を占めるものの、今後の政府の打ち出す方針如何によっては政権がAdFにとって代わるという事態も絶対に無いとは言い切れないだろう。この先のメルケル首相の手腕が問われるところである。
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アメリカ人として宇宙最長滞在記録達成(2016/03/04)
オバマ大統領が2030年代半ばまでに火星での10年にわたる滞在を可能にする方針を打ち出し、NASA(アメリカ航空宇宙局)も、その目的を達成するための3つのステップを発表するなど、宇宙での長期滞在が現実味を帯び注目を集めている。火星に一人置き去りにされた宇宙飛行士の生存劇を描いた映画も公開されている。そんな中、アメリカ人としては最長の宇宙滞在記録を達成した宇宙飛行士が、ロシア人の宇宙飛行士らとともに地球に帰還した。このアメリカ人宇宙飛行士には、一卵性双生児の双子の兄がおり、彼は元宇宙飛行士である。一卵性双生児は遺伝子が原則同じであることから、彼らを比較することで様々な点が明らかされると注目が集まっている。各メディアは次のように報じている。
3月1日付
『ロサンゼルス・タイムズ』(米)は、米国人スコット・ケリー氏(52歳)が、ソユーズで340日間の宇宙滞在を終えて、ロシア人の宇宙飛行士らとともに地球に帰還したことを報じている。宇宙飛行士らは、カザフスタンに現地時間今月2日午前10時26分に着陸したという。スコット・ケリー氏はその後ヒューストンにあるジョンソン宇宙センターに向かい、そこで双子の兄である元宇宙飛行士のマーク・ケリー氏と共に様々な検査を受けることになっている。...
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3月1日付
『ロサンゼルス・タイムズ』(米)は、米国人スコット・ケリー氏(52歳)が、ソユーズで340日間の宇宙滞在を終えて、ロシア人の宇宙飛行士らとともに地球に帰還したことを報じている。宇宙飛行士らは、カザフスタンに現地時間今月2日午前10時26分に着陸したという。スコット・ケリー氏はその後ヒューストンにあるジョンソン宇宙センターに向かい、そこで双子の兄である元宇宙飛行士のマーク・ケリー氏と共に様々な検査を受けることになっている。
冒頭で述べたように、一卵性双生児は一つの卵からできており、遺伝子が原則同じである。そのため、地球にいた兄と宇宙に一年以上滞在していた弟を様々な角度から比較、観察することにより、宇宙での長期滞在が人体にもたらす影響について、今までより、より正確なデータが集められると注目されている。
NASAは火星での人類の長期滞在の実現を目指しており、そのためにも今回集められるデータは重要な意義を持つ。
兄弟は10種類の調査を受けるが、その関係者は「無重力の宇宙では血液が頭に集中しがちである。そのため頭蓋内圧の上昇、視力低下、心臓血管の病気など様々な健康障害が懸念される。兄弟のデータを集めることにより、問題の対策が講じられれば」と語っている。
3月2日付
『BBCニュース』(英)は、宇宙での長期滞在による問題には、身体の各器官の退化、睡眠障害、骨粗しょう症の危険、放射能による悪影響など様々なものが挙げられるとしつつ、最大の問題は精神への影響だと指摘する。スコット・ケリー氏も宇宙滞在中生中継された地球との交信で、「身体的にはいたって好調だが、最もつらいのは社会との接触が全く無いということだ」と語っている。メンタル面への対策はとかく軽視されがちだが、宇宙長期滞在には重要なポイントになってくるかもしれない。
火星に人類を送った場合、地球から他の星よりは近いとはいっても7800万キロもある。火星に滞在する宇宙飛行士が体調を崩したり負傷した場合、地球からの援助は期待できない。そこで、怪我を防ぐ方法論の確立や体調回復を早める方法が模索されている。
3月4日付
『CNN』(米)では、ちょっとした小話として、スコット・ケリー氏の身長が以前より1.5インチ(約3.8センチ)伸びたことを取り上げている。では、なぜ宇宙では身長が伸びるのか。これは脊椎の椎間板が重力から自由になり伸びるためとされる。1つの椎間板あたり約1ミリ伸び、人間には23の椎間板があるため、3センチ近くは確実に伸びるようだ。ただし、帰還後は再び地球の重力の影響を受け、身長は元に戻るという。
今回は340日の滞在記録であったが、今までの世界の最長記録は1990年代半ばにロシアのポリャコフ宇宙飛行士が樹立した437日である。
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