イラク軍モスル奪還まであとわずか(2016/11/02)
モスルはイラク北部に位置する都市で、IS(イスラミック・ステイト) がイラク国内の拠点としていた場所である。近年イラク国内の都市はISに支配され、ISから奪われた都市を奪還することが急務とされてきた。昨年からイラクはISから、ティクリート、ファルージャなどの都市を奪還し、2週間前にはIS最後の砦ともいえるモスルを奪還する大規模な作戦を発表し、実行に移していた。作戦は長期化することも懸念されていたが、イラクのアバディ首相はこの度モスル奪還まであとわずかだと宣言した。モスル奪還が成功すれば、ISの大きな拠点が失われることになり、今後のISの活動を大きく減速させることにもつながる。各メディアは次のように報じている。
11月1日付
『アルジャジーラ』(カタール)では、イラク軍はアメリカ空軍や陸軍の支援を受け、クルド人自治区の治安部隊、イスラム教スンニ派の部族兵、シーア派の兵士らと共にモスル近くのバズワヤ村を取り戻すことに成功したと報じている。昨日には同村とモスルとの境界線から3キロ、ISの支配が最も強いモスル中心部へ8キロの距離まで兵を進めているという。それまでには3回の自爆テロ攻撃を受けたものの、イラク軍はこれに影響を受けることはなかった。...
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11月1日付
『アルジャジーラ』(カタール)では、イラク軍はアメリカ空軍や陸軍の支援を受け、クルド人自治区の治安部隊、イスラム教スンニ派の部族兵、シーア派の兵士らと共にモスル近くのバズワヤ村を取り戻すことに成功したと報じている。昨日には同村とモスルとの境界線から3キロ、ISの支配が最も強いモスル中心部へ8キロの距離まで兵を進めているという。それまでには3回の自爆テロ攻撃を受けたものの、イラク軍はこれに影響を受けることはなかった。
バズワヤ村では、村民たちは窓から白い旗をたらして、政府軍に従う意思があることを示していたという。イラク軍は自爆テロの発生を警戒して、村民に家の中で待機するよう指示している。村には数百の家族が住んでいるものと思われるが、人はほとんど戸外に出てこないため、実際の数は分かっていない。
地元メディアは今回のモスル奪還作戦を「名誉をかけた戦い」と称して報道している。
ただ、今回の報道はモスル東部到着まであとわずかという点が強調されているものの、イラク軍の作戦は全てにおいて順調というわけではない。モスルの南部まではまだ35キロもの距離があるという。
今回のモスル東部へ兵を進めたことについて、イラクのアバディ首相はかなり強気な発言をしている。「我々は蛇の頭を切り落とすようにあらゆる方面からISを包囲し、攻撃する。ISの兵士は事態を打開することも逃げることもできない。降伏するか、死を選ぶかのどちらかだ」。
アメリカ軍の調査によれば、モスル内には3000人から5000人、またその周辺には1500人から2000人の兵士がいるという。この中には1000人の外国人兵士も含まれており、今後イラク軍の侵攻によりこれらの兵士が徹底抗戦するか否かが注目されている。
同日付
『ザ・ガーディアン』(英)によると、今後数週間がモスル奪還への山場とみられるという。モスルは2014年にISに占拠され、以来ISの拠点とされてきた。モスル内にいる一般市民は100万人から200万人とみられ、今後はこれら一般市民が人間の盾として使われるのではないかが懸念されている。国連は今後数週間にわたり、大勢の一般市民がモスルから外へ流出するとみられ、その対応も問題となると指摘している。
同日付
『ロサンゼルス・タイムズ』(米)によるとイラク軍の関係者が、今後モスルの中心部奪還が、これまでの戦いの中で最も熾烈なものになるとみていると報じる。モスルはイラク国内でバグダッドに次いで大きな都市で、ISの拠点としての役割を果たしてきた。この地を奪われることは、ISにとって戦術的な側面のみならず、精神的、さらにはISの威信に対する大きなダメージになると考えられている。同記事によれば、ISの兵士は一般市民を人間の盾として用いるために拘束しており、地元メディアはモスル内の一般市民に対して、家から出ないよう呼び掛けているという。
2016年も残すところあと2か月だが、今年は「テロの年」といっても過言ではないほどテロ事件が世界で頻発した年だったといえよう。このような状況を少しでも打開すべく、IS拠点の奪還が切望される。
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オバマ大統領の主張する「火星計画」での民間企業とのタイアップ(2016/10/12)
オバマ大統領は先日2030年代までに火星で人類が一定期間滞在できるようにする計画を発表した。それ以前には2010年代に火星に人類を乗せたロケットを飛ばすことを目標にすると発表していた。オバマ大統領はこれらの目標実現のために民間企業と協力する必要があると主張しているが、これが議会から批判を浴びている。なぜ、議会は計画に反対なのか、今後の計画の動きはどうなっていくのか、各メディアは以下のように報じている。
10月11日付
『BBC』(英)は、オバマ大統領が火星に人類を送ることは、米国の宇宙開発の歴史の中で明らかに重要な目標となっており、そのためには民間企業との協力が必要と語っている。ただ、同記事は、民間企業との協力自体はさほど驚くべきことではないとする。地球から400キロ上空にある国際宇宙ステーションではNASA(アメリカ航空宇宙局)とスペースエックス社など、民間企業との協力関係が実現しているからだ。...
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10月11日付
『BBC』(英)は、オバマ大統領が火星に人類を送ることは、米国の宇宙開発の歴史の中で明らかに重要な目標となっており、そのためには民間企業との協力が必要と語っている。ただ、同記事は、民間企業との協力自体はさほど驚くべきことではないとする。地球から400キロ上空にある国際宇宙ステーションではNASA(アメリカ航空宇宙局)とスペースエックス社など、民間企業との協力関係が実現しているからだ。スペースエックス社は国際宇宙ステーションに物資の輸送を行っており、火星への進出にも意欲的だという。ただ、スペースエックス社の火星進出については、賛否両論で、批判的な意見としては「非現実的で、詳細の説明が不足している」といった声が上がっている。
スペースエックス社の火星進出計画があいまいなのは、NASAが主導している「火星への旅」計画自体が思うように進んでいないためだと同記事は続ける。この計画は6年前にオバマ大統領によって提案されたが、議会や専門家からは、計画の具体性が無いとの批判を受けている。ただ、これらの批判をものともせず、オバマ大統領自身は計画に対して大変意欲的だという。計画の実現のために、今週ピッツバーグで、科学者や技術者、発明家らを集めたフロンティア会議が開かれる予定だという。
同日付
『ロサンゼルス・タイムズ』(米)も、オバマ大統領が「火星への旅」計画の実現のためには、民間企業との協力が不可欠だと強く力説していると報じる。2週間前にはスペースエックス社の社長であるマスク氏は、今後40年から100年以内に100万人が火星に居住し、人類が地球のみならず複数の星に住めるようにしたいと発表している。
同記事によれば、NASAは国際宇宙ステーションへの物資の輸送につき、スペースエックス社のみならず、ボーイング社や宇宙輸送企業であるムーン・エクスプレスにも協力を仰いでいるという。火星への人類派遣の計画もこれらの企業が加わることが予想される。
市場調査会社フォーキャスト・インターナショナルのオストローブ氏は、民間企業は革新的なアイディアを数多く持っており、これを取り入れることがNASAにとってのメリットだとする。ただ、民間企業は宇宙開発にかかる巨額の費用という資金的な問題を抱えており、これを補うために米政府との協力が必要となる。商業宇宙飛行連盟の会長であるストルマー氏は、「火星への旅」計画からより大きな恩恵を受けるのは、まだ米政府と協力を行っていない、比較的小規模な新規事業だと語る。「第二、第三のスペースエックス社が出現すると思われる」。
「火星への旅」計画に名乗りを上げているスペースエックス社が火星への物資輸送システムを確立するのに必要な資金は100億ドル(約1兆円)だという。スペースエックス社は火星への飛行を、自社の有する着陸技術や航行技術を実践する絶好の機会ととらえており、これをNASAが技術的にサポートすることが計画されている。NASAはスペースエックス社のロケット航行によるデータを得ることができる。これらの実験をNASAが単独で行った場合、1兆ドル(約103兆円)が必要となるのに対して、民間企業との協力により、コストが抑えられることが見込まれている。また、ボーイング社も人類初の火星着陸は自社のロケットにより達成されるべきと意気込んでいる。
ただ、費用を抑えるといっても巨額の支出であることに変わりはなく、議会では様々な社会問題を解決することが優先されるべきとの主張も根強い。
大統領選を間もなく控え、オバマ大統領はホワイトハウスを去ることになる。クリントン氏はオバマ大統領の提案した「火星への旅」計画を支持することを明言し、トランプ氏も人類派遣には言明を避けたものの宇宙開発の重要性については認めている。
大統領が代わっても、宇宙開発が続行することは間違いないが、議会の反対により計画が大幅に遅れる可能性は否定できない。
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