東京オリンピックについては、開催そのものについて賛否が分かれていたが、国際オリンピック委員会(IOC)が大半の収入の拠り所とした米メディアとの放映権契約履行のため、強硬開催された感が否めない。開会式も、既報どおり演出チームのスキャンダル騒ぎや、無観客開催による盛り上がりの欠如等もあって、これも評価が分かれるところとなっている。そうした中、皮肉にも、肝心の米テレビ視聴率が33年前のソウルオリンピック以来の最低値であったことが判明している。
7月25日付
『ロイター通信』:「東京オリンピック開会式の米国内テレビ視聴者は1,670万人と33年振りの最低値」
米メディア大手のNBCユニバーサル(合併により2004年設立、前身は1926年設立)は7月24日、7月23日に行われた東京オリンピック開会式の米国内テレビ視聴者が1,700万人弱であったと発表した。
これは、同メディア傘下の地上波『NBC』(1938年開局、CBS・ABCと並ぶ米三大ネットワーク)、ケーブルTV『NBCスポーツ』等全ての視聴手段を加味したものである。
かかるテレビ視聴手段による視聴者は、2016年のリオデジャネイロオリンピック時より72%、また、2018年の平昌冬季オリンピック時より76%増えている。
しかし、今回の東京大会の開会式の視聴者は、2016年の開会式の視聴者数2,650万人より▼37%も少なく、更に、2012年のロンドン大会時と比較すると、4,070万人が視聴した当時より▼59%も減少したことになる。
また、ニールセン・データ(1923年設立のニールセン社が調査した視聴率等のデータ)によると、今回の東京大会の視聴者は1988年のソウル大会時の2,270万人よりも少なく、更には、1992年のバルセロナ大会時に記録した2,160万人をも下回っているという。
当該開会式が盛り上がらなかった背景には、折からの新型コロナウィルス(COVID-19)感染問題再深刻化に伴って一般入場者がゼロとなり、海外要人・関係者等含めて僅か1千人未満の出席者であったことがある。
更に、東京大会招致決定に貢献した安倍晋三前首相(66歳)の欠席もさることながら、市民からの強烈な開催反対の声を受けて、大方のスポンサー企業トップも出席を見合わせている。
かかる状況下にも拘らず、開催地東京と13時間の時差がある米東海岸において、『NBC』は平日金曜日の午前6時55分から生放送し、ゴールデンアワーである午後7時半から録画中継を放送した。
そして、『NBC』朝のニュース番組「トゥデイ(1952年放送開始)」の司会者サバンナ・ガスリー氏(49歳)は、“一般入場者がゼロということで、尚更思いが深まる”とし、“オリンピックの開会式ほど興奮させるものはない”とコメントした。
NBCユニバーサルは今回、傘下の放送網を総動員して“過去に類のない”7千時間も同大会を放送する予定である。
また、米国人が最も関心のある競技、例えば体操や男子バスケットボールなども含めて、『NBCスポーツ』等で5千時間余りもカバーするという。
ただ、オリンピックに限らず、音楽賞などやスポーツイベント等、最近のテレビの生放送の視聴率は減少傾向にある。
例えば、ニールセン・データによると、『CBS』(1941年開局)が今年2月に放送したスーパーボウル(米フットボールの優勝決定戦で米最大のスポーツイベント)の視聴者は約9,200万人と、2006年以来の最低値であったという。
また、『ABC』(1948年開局)が4月に放送したアカデミー賞授賞式(初回1929年、米映画芸術科学アカデミー主催)の視聴者も僅か1,040万人と最低記録となっていて、更に、エミー賞(初回1949年、米テレビ芸術科学アカデミー主催)もグラミー賞(初回1959年、ザ・レコーディング・アカデミー主催の音楽賞)も軒並み最低値を更新しているという。
しかし、NBCユニバーサルとしては、たとえ開催地の日本で開催意義に疑問の声が上がろうとも、2032年のオーストラリア・ブリスベンオリンピックまでの放映権を76億5千万ドル(約8,415億円)で取得している以上、東京大会を“(COVID-19の)癒し”の大イベントとして盛り上げていこうと努めている。
同社によると、今回の大会の放映に伴い、従来のオリンピック時より遥かに多い120社余りとスポンサー契約を交わしているとする。
同社広報担当は、2016年のリオデジャネイロオリンピックにおけるスポンサー収入が12億ドル(約1,320億円)を超えたとしているが、今回の東京大会については、延期決定前の昨年時点で12億5千万ドル(約1,375億円)に達したかどうかはコメントを控えている。
なお、視聴率は必ずしもメディアの収益に直結していない。
何故なら、2012年ロンドン大会より視聴率が下がったとは言え、2016年リオデジャネイロ大会を通じて『NBC』は、ロンドン大会より20%余りもスポンサー契約を伸ばしたこともあって、合計2億5千万ドル(約275億円)以上の収益を得た。
そして今年6月、NBCユニバーサルのジェフ・シェル最高経営責任者(56歳)は、東京大会は『NBC』史上最高益を得ることになろうとコメントしている。
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欧州委員会は23日、サイバー攻撃に対抗するため、防衛機関、警察、軍、関連当局の連携を強化するプラットフォームとなる、サイバーセキュリティ合同部隊を創設する計画を発表した。
ベルギー紙
『レコー』によると、欧州委員会は23日、欧州の公的機関や企業を標的としたサイバー攻撃への対策を強化するためのプラットフォーム「共同サイバーセキュリティ・ユニット」の創設を求める勧告を採択する見込みだという。EU各国と欧州議会で採択されれば、2022年までに欧州ネットワーク・情報セキュリティ機関(ENISA)が欧州刑事警察機構(Europol)と協力して設置することになる。この部署は、「欧州デジタルシールド」の構築の一環として設立されることになる。
サイバー攻撃は、近年ますます数が増え、巧妙になってきている。民間の団体だけでなく、外国の勢力が攻撃を仕掛けてくることもある。欧州対外行動庁(EEAS)によると、ロシア、中国、北朝鮮などが、スパイ活動または何らかの打撃を与えることを目的とした攻撃の発信源となっていることが多いという。
このような攻撃は、危機に直面している際ヨーロッパ全体に打撃を与え、状況を悪化させる可能性も考えられる。新型コロナウイルスのパンデミックの真只中でも、欧州医薬品庁(EMA)のファイザー社/バイオンテック社のワクチン文書が攻撃の標的となった。
仏『BFMTV』によると、23日にも、ベルギーのリエージュ市がランサムウェア攻撃の被害に遭い、ほとんどのサービスが麻痺したという。欧州加盟国のほとんどの国で、サイバー攻撃の専門機関を設けているが、国レベルでは対応しきれない状況が発生しており、今後さらに増加すると思われる攻撃に対して、より効果的に対処するため、欧州は一種のタスクフォースを提案している。
欧州委員会によると、欧州企業の8社に1社はすでにサイバー攻撃の対象となった経験を持っており、欧州のユーザーの5人に2人はセキュリティ問題を経験したことがあるという。2020年末の時点で、世界経済に対するサイバー犯罪の年間コストは5.5兆ユーロ(700兆円)と推定され、これは2015年の2倍にあたる。
新しく設立された部署は、欧州および各国のサイバーセキュリティ機関、さまざまな警察、軍、外交機関の間の調整や情報共有を促進し、攻撃への反撃力を高めることを目指すことになる。
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