米国では、兵役に就くことのできるアメリカ人の数が過去最低となっている今年、兵役に就く意思のある若者も減少しており、採用目標数の削減や奨励金にもかかわらず、米軍は深刻な採用難に直面している。
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『NBCニュース』によると、米軍のどの部門も、2022年度の新兵採用目標を達成するのに苦労している。NBCニュースが入手した数字では、兵役に就く資格を持つアメリカの若者の割合は過去最低で、兵役を考えている人はさらに少ないという。
米軍関係者によると、ロイド・オースティン国防長官とキャサリン・ヒックス国防副長官は、志願兵不足を深刻な問題と考えており、他の指導者たちと頻繁に会合を開いているという。...
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『NBCニュース』によると、米軍のどの部門も、2022年度の新兵採用目標を達成するのに苦労している。NBCニュースが入手した数字では、兵役に就く資格を持つアメリカの若者の割合は過去最低で、兵役を考えている人はさらに少ないという。
米軍関係者によると、ロイド・オースティン国防長官とキャサリン・ヒックス国防副長官は、志願兵不足を深刻な問題と考えており、他の指導者たちと頻繁に会合を開いているという。
米シンクタンク「ヘリテージ財団」の国防部門ディレクターのトーマス・スポーア退役中将は、ベトナム戦争後に徴兵制が正式に終了した1973年以来、軍隊がこれほど新兵の獲得に苦労したことはなかったと述べている。スポーア氏は、徴兵制の復活が差し迫っているとは考えていないものの、軍隊とって長期的な人材不足の始まりだと指摘しており、「2022年は、志願制の軍隊の持続可能性に疑問を呈する年である」と述べている。
軍隊に参加する資格のある人の数は減り続け、肥満や薬物使用、犯罪歴などで資格を失う若い男女がこれまで以上に増えているという。先月、ジェームズ・マコンビル陸軍参謀総長は議会において、17~24歳のアメリカ人のうち、入隊の免除を受けずに兵役に就く資格を持つ若者はわずか23%で、近年の29%から減少したと証言した。NBCニュースが入手した国防総省の内部調査によると、兵役に就く資格を持つアメリカの若者のうち、兵役に就く気がある若者はわずか9%で、これは2007年以来最低の数字であることがわかった。この調査結果は、アメリカ人の軍隊に対する見方が変わってきたことや、民間と軍隊の間の溝が広がっている可能性があることを示唆している。
9月30日に終了する会計年度まで3カ月余りを残し、陸軍は22年度の入隊者は採用目標人数の約40%にとどまっている。一方、空軍は、その約100倍の約5万人を採用しなければならないが、本来あるべき水準より4千人以上下回っている。米軍高官によれば、州空軍と予備兵の採用で目標を達成できそうにない一方で、現役兵は週単位で採用を続けているという。同高官は、「我々は現役兵に関しては目標を達成することを期待している。」と述べている。
米ニュースサイト『アメリカン・ミリテリー・ニュース』によれば、陸軍は23日、10月1日までに基礎訓練に参加できる新兵には高校卒業証書もしくは一般教育修了検定(GED)証明書の提出を要求しないことを発表した。1月、陸軍は、ミサイル防衛隊員、特殊部隊、無線諜報、射撃統制システムの専門家など、需要の高い特殊任務に就く新兵に対して、最大5万ドル(約680万円)のボーナスを支給することを発表した。6月17日には、4年契約を選択する志願兵に3万5000ドル(約470万円)のボーナスを支給することを明らかにした。また、現役陸軍で2年間勤務した後、陸軍州兵または陸軍予備軍でさらに2年間勤務する特別契約にサインする新兵に1万ドル(約136万円)のボーナスを支給することも発表した。さらに、入れ墨の種類に関する制限を緩和する方針も明らかにした。例えば、「陸軍は今後、兵士が両手に1インチ(約25ミリメートル)を超えない範囲で1つの入れ墨を入れる」ことが認められる。
なお、空軍の採用責任者であるエドワード・W・トーマス・ジュニア少将は、米『フォックスニュース』に対し、軍は好調な一般の雇用市場との「熾烈な」競争に直面していると指摘している。失業率はパンデミックの初期に急上昇したが、その後3.5%程度に戻ってきている。「国にとって良いことだが人材争奪戦がより一層熾烈になる。」と述べている。
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6月27日付
『ラジオ・フリー・アジア』(RFA、1996年に米議会出資によって設立された短波ラジオ放送局)は、「中国、NATO首脳会議開催前に非難声明」と題して、今週スペイン(マドリッド)でNATO首脳会議が開かれる直前、中国政府が“NATOは新たな冷戦構造を生み出す”との非難声明を出したと報じている。
中国外交部(省に相当)の汪文斌報道官(ワン・ウェンビン、51歳、2020年就任)は6月23日の定例記者会見で、“NATOは新たな冷戦構造を生み出そうとしている”とした上で、“米国主導の軍事同盟に他ならない”と非難した。...
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6月27日付
『ラジオ・フリー・アジア』(RFA、1996年に米議会出資によって設立された短波ラジオ放送局)は、「中国、NATO首脳会議開催前に非難声明」と題して、今週スペイン(マドリッド)でNATO首脳会議が開かれる直前、中国政府が“NATOは新たな冷戦構造を生み出す”との非難声明を出したと報じている。
中国外交部(省に相当)の汪文斌報道官(ワン・ウェンビン、51歳、2020年就任)は6月23日の定例記者会見で、“NATOは新たな冷戦構造を生み出そうとしている”とした上で、“米国主導の軍事同盟に他ならない”と非難した。
また、中国国営メディア『人民日報』に掲載された同報道官の声明文によると、“NATOは米国が覇権主義を維持するためのツールであり、欧州における軍事同盟が我が国への対抗手段として用いられようとしている”としている。
更に、同声明では、“NATOは既に欧州における安全保障を棄損している”とし、“拡大NATOとしてアジア太平洋地域まで及び、混乱に陥れることは慎むべきだ”と言及している。
この声明に先立つ6月20日、在パキスタン中国大使館の張清和参事官(チャン・へーチン、大使の次位)が、“ブリュッセル(NATO本部がある都市)では、数万人の抗議者が、NATOによるウクライナ戦争への加担で物価急上昇を招いているとして、NATOを非難するデモ行進を行っている”とツイートしていた。
しかし、ブリュッセル在のロシア・欧州・アジア研究センターのテレサ・ファロン代表は先週末、『RFA』のインタビューに答えて、“ブリュッセルの抗議デモはNATOとは一切関係がない”とし、“中国政府は、来週開催されるNATO首脳会議の前に、このような偽情報を流して政治的攻撃を仕掛けている”と非難している。
ただ、このような中国政府の主張に対して、NATO首脳会議の直前、呉紅波氏(ウー・ホンボ、70歳、2017年まで国連経済社会省事務次官)を特使として欧州諸国首脳との面談に派遣したことは矛盾する。
これに関し、外交政策シンクタンクの大西洋評議会(1961年設立、本部ワシントンDC)のフレデリック・ケンプ社長(67歳、2007年就任)は『CNBC』の寄稿文の中で、“特使を欧州諸国代表との面談のために3週間も派遣したということは、今秋予定されている中国共産党第20回大会(5年に一度の最高決定機関)までに欧州関係を修復するという大きな目的のためだ”と分析している。
同社長は、“習近平国家主席(シー・チンピン、69歳)指導の経済活性化は遅れ、主導する一帯一路経済圏構想(BRI)の資金繰りは悪化し、ゼロコロナ政策はうまく機能せず、更には、ウクライナ軍事侵攻を続けるウラジーミル・プーチン大統領(69歳)を支持していることで、欧米諸国から非難の的となってしまっている”と記した。
その上で同社長は、“このままでは党大会での3期目の国家主席就任が危うくなるとみて、呉特使を派遣して、欧州諸国との関係改善を図ろうと考えたと思われる”と言及している。
ファロン代表も、同社長の分析に同意している。
一方、米国の非営利シンクタンクの民主主義防衛財団(2001年設立、本部ワシントンDC)のクレイグ・シングルトン上級研究員は『RFA』のインタビューに答えて、“国際社会の中国支持は過去最低となっている上、習国家主席は他国首脳と会談するために外遊することを拒んでいる”とし、“しかし、中国の経済は長期低迷期に入っており、習国家主席の経済政策は失敗とする声が高まる一方である”とコメントした。
その上で同上級研究員は、“中国にとって、欧州は現下の景気低迷を脱するのに必要不可欠な市場であるから、これまでの戦狼外交(注後記)によって棄損された欧州との関係修復を最優先に捉える必要があると考えた”と言及している。
ところが、“欧州諸国は、中国が一向に、無謀なウクライナ軍事侵攻を続けるロシアへの支持を再考しようとしないことに不満を募らせ、ここ数ヵ月間では、(中国の意に反して)台湾との貿易や投資の話を積極的に進めようとしている”。
そこで、“この欧州側の姿勢に焦りを覚えた中国政府が、これまでの欧州外交政策を見直す必要に迫られているはずだ”と分析している。
(注)戦狼外交:21世紀に中国の外交官が採用したとされる攻撃的な外交スタイルのこと。この用語は、中国のランボー風のアクション映画『戦狼 ウルフ・オブ・ウォー』からの造語。論争を避け、協力的なレトリックを重視していた以前の外交慣行とは対照的に、戦狼外交はより好戦的である。
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