米
『Foxニュース』は2月13日、「
『NBC』、中国と他の国際社会との“複雑な”関係で北京冬季大会視聴率“混迷”に対応と表明」と題する記事の中で、オリンピック独占放映権を保有する米
『NBC』が、北京大会視聴率等についてのコメント記事を掲載している。
同メディアは、『ハリウッド・リポーター』誌(1930年発刊の週刊誌)による『NBCスポーツ』のピート・ビバクア会長のインタビュー記事を引用して、以下のように報じた。
すなわち、同会長は、今回の北京大会が前回2018年の平昌大会と比べて視聴率が低迷していることに対して、元々冬季大会の視聴率を稼ぐのは“難しい”もので、今回も予想どおりだとコメントした。
同会長は、“今回の北京大会はCOVID-19感染問題最中のものであり、かつ、半年前に東京夏季大会があったばかりという異例なスケジュールの影響もあって、苦戦を強いられることは予想していた”と言及している。
更に、“試技前後の代表選手は皆マスク着用であり、一般の観戦者も入れない状況下、視聴者の方も、本来なら選手が応援に駆け付けた家族・友人・ファン等と喜びを分かち合うシーンが見られないこともあって、興味が半減するだろうことは想像できる”とした。
ただ、同会長は、テレビ視聴率は低迷していても、同社のストリーミング・サービス『ピーコック』(注2後記)による視聴率増加に期待していると付言している。
同会長は、“東京大会と北京大会との視聴率の差について報じられているが、『ピーコック』契約者増及び当該視聴率の増加を目の当たりにして、『NBC』がオリンピック競技を様々な媒体を通して視聴者に提供できているはずだ”とも言及した。
また、同会長は、“次のパリ夏季大会(2024年)、イタリア冬季大会(2026年)、更にはロスアンゼルス夏季大会(2028年)を迎えるに当たって、その頃までにはCOVID-19禍も完全に治まっていると思われことから、視聴率増が見込まれる当社のみならず、世界の人々にとっても非常に望まれることであろう”とも表明している。
一方、『NBCスポーツ』のオリンピック放送全般のTVプロデューサー幹部のモーリー・ソロモン氏は、サバンナ・ガスリー報道記者とマイク・ティリコ司会者が北京大会開会式の放送時、“中国が他の国際社会との複雑な関係”にあることに焦点を当てて報じたことについて、“非常に誇り高く”思っていると評価した。
すなわち、ガスリー記者が、“習近平国家主席(シー・チンピン、68歳)が同開会式において、聖火点灯の最終ランナーにウィグル人選手を起用したことで、中国共産党政府はウィグル族の民族虐殺を行っていると非難している米国他西側諸国に対して、意図的に挑発したものと考えられる”とコメントした上で、“この問題は今後更に物議を醸すことになろう”と言及していたからである。
(注1)ストリーミング:主に音声や動画などのマルチメディアファイルを転送・再生するダウンロード方式の一種。通常、ファイルはダウンロード完了後に開く動作が行われるが、動画のようなサイズの大きいファイルを再生する際にはダウンロードに非常に時間がかかってしまい、特にライブ配信では大きな支障が出る。そこで、ファイルをダウンロードしながら、同時に再生をすることにより、ユーザーの待ち時間が大幅に短縮される。この方式を大まかに「ストリーミング」と称する。
(注2)『ピーコック』:定額制動画配信サービス。2020年立ち上げ。
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東京オリンピックについては、開催そのものについて賛否が分かれていたが、国際オリンピック委員会(IOC)が大半の収入の拠り所とした米メディアとの放映権契約履行のため、強硬開催された感が否めない。開会式も、既報どおり演出チームのスキャンダル騒ぎや、無観客開催による盛り上がりの欠如等もあって、これも評価が分かれるところとなっている。そうした中、皮肉にも、肝心の米テレビ視聴率が33年前のソウルオリンピック以来の最低値であったことが判明している。
7月25日付
『ロイター通信』:「東京オリンピック開会式の米国内テレビ視聴者は1,670万人と33年振りの最低値」
米メディア大手のNBCユニバーサル(合併により2004年設立、前身は1926年設立)は7月24日、7月23日に行われた東京オリンピック開会式の米国内テレビ視聴者が1,700万人弱であったと発表した。
これは、同メディア傘下の地上波『NBC』(1938年開局、CBS・ABCと並ぶ米三大ネットワーク)、ケーブルTV『NBCスポーツ』等全ての視聴手段を加味したものである。
かかるテレビ視聴手段による視聴者は、2016年のリオデジャネイロオリンピック時より72%、また、2018年の平昌冬季オリンピック時より76%増えている。
しかし、今回の東京大会の開会式の視聴者は、2016年の開会式の視聴者数2,650万人より▼37%も少なく、更に、2012年のロンドン大会時と比較すると、4,070万人が視聴した当時より▼59%も減少したことになる。
また、ニールセン・データ(1923年設立のニールセン社が調査した視聴率等のデータ)によると、今回の東京大会の視聴者は1988年のソウル大会時の2,270万人よりも少なく、更には、1992年のバルセロナ大会時に記録した2,160万人をも下回っているという。
当該開会式が盛り上がらなかった背景には、折からの新型コロナウィルス(COVID-19)感染問題再深刻化に伴って一般入場者がゼロとなり、海外要人・関係者等含めて僅か1千人未満の出席者であったことがある。
更に、東京大会招致決定に貢献した安倍晋三前首相(66歳)の欠席もさることながら、市民からの強烈な開催反対の声を受けて、大方のスポンサー企業トップも出席を見合わせている。
かかる状況下にも拘らず、開催地東京と13時間の時差がある米東海岸において、『NBC』は平日金曜日の午前6時55分から生放送し、ゴールデンアワーである午後7時半から録画中継を放送した。
そして、『NBC』朝のニュース番組「トゥデイ(1952年放送開始)」の司会者サバンナ・ガスリー氏(49歳)は、“一般入場者がゼロということで、尚更思いが深まる”とし、“オリンピックの開会式ほど興奮させるものはない”とコメントした。
NBCユニバーサルは今回、傘下の放送網を総動員して“過去に類のない”7千時間も同大会を放送する予定である。
また、米国人が最も関心のある競技、例えば体操や男子バスケットボールなども含めて、『NBCスポーツ』等で5千時間余りもカバーするという。
ただ、オリンピックに限らず、音楽賞などやスポーツイベント等、最近のテレビの生放送の視聴率は減少傾向にある。
例えば、ニールセン・データによると、『CBS』(1941年開局)が今年2月に放送したスーパーボウル(米フットボールの優勝決定戦で米最大のスポーツイベント)の視聴者は約9,200万人と、2006年以来の最低値であったという。
また、『ABC』(1948年開局)が4月に放送したアカデミー賞授賞式(初回1929年、米映画芸術科学アカデミー主催)の視聴者も僅か1,040万人と最低記録となっていて、更に、エミー賞(初回1949年、米テレビ芸術科学アカデミー主催)もグラミー賞(初回1959年、ザ・レコーディング・アカデミー主催の音楽賞)も軒並み最低値を更新しているという。
しかし、NBCユニバーサルとしては、たとえ開催地の日本で開催意義に疑問の声が上がろうとも、2032年のオーストラリア・ブリスベンオリンピックまでの放映権を76億5千万ドル(約8,415億円)で取得している以上、東京大会を“(COVID-19の)癒し”の大イベントとして盛り上げていこうと努めている。
同社によると、今回の大会の放映に伴い、従来のオリンピック時より遥かに多い120社余りとスポンサー契約を交わしているとする。
同社広報担当は、2016年のリオデジャネイロオリンピックにおけるスポンサー収入が12億ドル(約1,320億円)を超えたとしているが、今回の東京大会については、延期決定前の昨年時点で12億5千万ドル(約1,375億円)に達したかどうかはコメントを控えている。
なお、視聴率は必ずしもメディアの収益に直結していない。
何故なら、2012年ロンドン大会より視聴率が下がったとは言え、2016年リオデジャネイロ大会を通じて『NBC』は、ロンドン大会より20%余りもスポンサー契約を伸ばしたこともあって、合計2億5千万ドル(約275億円)以上の収益を得た。
そして今年6月、NBCユニバーサルのジェフ・シェル最高経営責任者(56歳)は、東京大会は『NBC』史上最高益を得ることになろうとコメントしている。
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