ウクライナ危機、ロシアによるサイバー戦争の可能性
ロシアのプーチン大統領が24日、ウクライナへの大規模侵攻に踏み切った。このロシアの軍事攻勢に加えて、サイバー戦争の始まりの可能性が懸念されている。
仏
『BFMTV』は、ロシアは長年、サイバー攻撃のための兵器を準備してきたと伝えている。ロシア政府に近いとされるハッカー集団は、国家や機関、大企業などを標的としたハッキングによって、定期的にその存在感を示してきた。
最近では、例えば、欧州医薬品庁へのサイバー攻撃でロシアに疑惑の目が向けられた。また、2017年のフランス大統領選では、第2回目の投票の2日前に、共和国前進党の内部メール2万通がハッキングされ、偽情報と関連付けて流布された事件で、ロシアのハッカーが疑われた。...
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『BFMTV』は、ロシアは長年、サイバー攻撃のための兵器を準備してきたと伝えている。ロシア政府に近いとされるハッカー集団は、国家や機関、大企業などを標的としたハッキングによって、定期的にその存在感を示してきた。
最近では、例えば、欧州医薬品庁へのサイバー攻撃でロシアに疑惑の目が向けられた。また、2017年のフランス大統領選では、第2回目の投票の2日前に、共和国前進党の内部メール2万通がハッキングされ、偽情報と関連付けて流布された事件で、ロシアのハッカーが疑われた。
ウクライナに対する攻勢の一環として、ロシアのハッカーたちは、紛争の激化に先立ち、すでに仕事に取り掛かっていた可能性も示唆されている。1月初旬、ウクライナの外務省や非常事態省など、複数のウクライナ政府機関のサイトが使用できなくなった。1月17日付けのルモンド紙では、犯人の目的としては、データの窃盗、脅迫の試み、ウクライナ人の指導者に対する信頼を損ねることなどの目的が考えられると伝えられていた。今回の紛争においては、例えばウクライナ軍の機密のやりとりを傍受するため、そして何よりも重要な場面で敵の通信を遮断するなどの目的があげられる。
サイバーセキュリティの専門家であるオリヴィエ・ローレリ氏は『BFMTV』の取材に対して、「このような攻撃は、即座に行われることはまずありえない。長期的にハッキングしてきたもので、休止状態のままにさせておいたスパイウェアを導入し、適切なタイミングで使用する。特に世界中の多くのサーバーに影響を与えるLog4Shellのようなものへの攻撃で、今後数カ月で流出が急増する可能性があると想定できる」と説明している。ロシアはおそらく中国と並んで、大規模なサイバー戦争に最も備えている大国だという。
2019年11月、ロシア国内では「インターネット主権」を支持する法律が施行され、国内ネットワークが他の地域から完全に独立した形でも動作できるようになった。アメリカやヨーロッパのサーバーへのアクセスが遮断されても、国内でのオンラインのやりとりを続けることができる。緊急時には、連邦通信監監督機関が全国のネット通信を一元管理する役割を担っている。ロシアのメディア「RBC」によると、これに関するテストが2021年の夏に実施されている。
米『ビジネス・インサイダー』によると、ロシアのサイバー攻撃に対して、ハッカー活動家たちの国際的ネットワーク「アノニマス」が現在進行中のロシア・ウクライナ戦争への介入をツイッター上で宣言した。ロシアがウクライナに対して攻勢をかけている中、アノニマスのハッカーたちは、ロシア政府のいくつかのウェブサイトと、国営テレビ局のウェブサイトをダウンさせたと主張している。
アノニマスによって停止させられたり、速度が低下したりしたサイトには、ロシア政府、下院、国防省のものが含まれる。ハッカー集団は、ロシアのインターネットサービスプロバイダーであるCom2Com、Relcom、Sovam Teleport、PTT-Teleport Moscowのウェブサイトに対する分散サービス妨害(DDoS)攻撃も行ったという。
一方、米『アクシオス』は、バイデン政権と米議会が、ウクライナ侵攻後のロシアによるサイバー戦争に備え、アメリカ企業に対する潜在的な攻撃に備えるよう警告していると伝えている。米当局は、プーチン大統領が米国に報復の責任があると考えた場合、サイバー紛争がエスカレートすることを懸念している。
ジョージタウン大学セキュリティ・新興テクノロジーセンターのカテリーナ・セドヴァ研究員は、ロシアのサイバー攻撃のターゲットとして、送電網やパイプラインなどの重要なインフラが考えられるとし、「必ずしも人命を危険にさらすわけではないが、米国の対ロシア活動に対する世論を揺るがすほどの不便をもたらすだろう」と語っている。
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欧州諸国、労働力不足に直面
新型コロナウイルスのパンデミックから経済回復の兆しを見せ始めているEUでは、失業率が6.4%まで低下しており、多くの企業が採用難に直面している。
仏紙
『ルモンド』によると、欧州連合(EU)では、労働力不足が叫ばれている。長年高い失業率に苦しんできた南部諸国でも、2021年12月時点でユーロ圏の労働力人口の7%と、少なくとも単一通貨誕生以来の最も低い水準となった。EU全体では6.4%となっている。
こうした背景には、ロックダウン政策による不況を緩和するための政府の支援のおかげで、パンデミックが当初心配されたような深刻な打撃をもたらさなかったことがあげられる。...
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仏紙
『ルモンド』によると、欧州連合(EU)では、労働力不足が叫ばれている。長年高い失業率に苦しんできた南部諸国でも、2021年12月時点でユーロ圏の労働力人口の7%と、少なくとも単一通貨誕生以来の最も低い水準となった。EU全体では6.4%となっている。
こうした背景には、ロックダウン政策による不況を緩和するための政府の支援のおかげで、パンデミックが当初心配されたような深刻な打撃をもたらさなかったことがあげられる。経済が回復するにつれ、2021年第3四半期の求人倍率は2.4%に達し、過去10年間の平均のほぼ2倍になった。ベルギー、オランダ、チェコでは、さらにその2倍を記録している。チェコは今、ウクライナやスペイン、さらにはフィリピンから労働者を呼び寄せ、人手不足を補おうとしている。
当初、労働力不足は、キャリアアップの見込みが立たない人々が、失望して労働市場から撤退したと思われていたが、そうではなかったことが分かってきた。欧州では、米国で見られたような「大量辞職」現象は起こっていない。実際、欧州の雇用率は2021年第3四半期に69.3%と、米国の62%に比べて、パンデミック前の水準に戻ってきている。欧州の労働市場は確実に良くなってきている。
ただし、国によってその様相は大きく異なっている。欧州北部の国々は完全雇用に近づいているのに対し、南部の諸国はまだ遠い。雇用率はドイツが77%であるのに対し、フランスは68%、スペインは64%、イタリアとギリシャは60%にとどまっている。このような状況に対処するため、企業も政府も、従業員、特に有能な人材を集めるための戦略を次々と打ち出している。
仏公共ラジオ放送局『RFI』は、EUでの労働力不足は長期的な問題であると指摘している。最新の研究によると、2050年までにヨーロッパでは労働者が9500万人減少し、大幅な人手不足に陥ることが予想されているという。特に情報技術や通信など、一部の分野ではすでに人手不足が顕著になり始めている。この人手不足に対応するため、アフリカ大陸で採用活動を行う取り組みが盛んに行われ始めているという。例えばリトアニアでは、ナイジェリアからの人材を採用するためのプログラムが実施されている。
IT系のスペシャリストが不足しているリトアニアでは、技術系の人材が豊富なナイジェリアからの優秀な社員を呼び寄せている。コンピューターソフトウェア開発会社「テレソフタス」の人事部長を務めるガビヤ・サルキテ氏は、「プログラミングは経験が必要なものであり、需要に対して供給が伸びていない。ナイジェリアには、優秀な人材を選ぶことができる巨大な人材プールがあり、採用することで、企業が大きく成長した。」と話している。
OECD開発センターの移民・技能部門の責任者であるジェイソン・ギャニオン氏は、ヨーロッパへの外国人労働者の助けは必要不可欠だと断言している。「労働力不足は予測されている。欧州委員会が作成した報告書では、欧州で不足する主な28の職業が明らかになった。アフリカは需要のある分野で最新技術を教えることに力を入れている。アフリカからの人材の供給が期待できる」と述べている。
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