ロシア版ダボス会議、フランスメディアが参加者の本音を報道(2022/06/21)
ロシアで開催されるロシア版ダボス会議とも呼ばれるサンクトペテルブルク国際経済フォーラムが、6月18日に終了した。ウクライナ戦争で欧米諸国がボイコットする中、フランスのメディアは参加者たちの本音を報じている。
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『ルモンド』紙によると、フォーラム最終日に登場したプーチン大統領は、「ロシアに対する経済制裁は失敗した」と繰り返し述べ、「ビジネス関係の破壊、欧米企業の強制撤退、国家資産の凍結、産業と金融への打撃によるロシア経済の崩壊は起こっていない。経済状況は一歩一歩正常化にすすんでいる。」と強調した。
大統領は、ウクライナでの「特別軍事作戦」後の欧米からの制裁は、特に供給、物流、特定の技術へのアクセスという点で多大な影響を与えていることを認めながらも、「これは生産、科学の面で我々の潜在能力を完全に実現し、主権を拡大するための刺激である。...
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『ルモンド』紙によると、フォーラム最終日に登場したプーチン大統領は、「ロシアに対する経済制裁は失敗した」と繰り返し述べ、「ビジネス関係の破壊、欧米企業の強制撤退、国家資産の凍結、産業と金融への打撃によるロシア経済の崩壊は起こっていない。経済状況は一歩一歩正常化にすすんでいる。」と強調した。
大統領は、ウクライナでの「特別軍事作戦」後の欧米からの制裁は、特に供給、物流、特定の技術へのアクセスという点で多大な影響を与えていることを認めながらも、「これは生産、科学の面で我々の潜在能力を完全に実現し、主権を拡大するための刺激である。私たちはそれを望んでいる人々、つまり世界の人口の大多数との関係を強化するのです。」と語った。
仏『レゼコー』紙によると、大統領の強気の演説に対して、フォーラムに参加した一人は、「プーチンの言うことを信じている人は1%にも満たない」と、大統領の演説を放映する巨大スクリーンの前で述べたと伝えている。同紙は、日中は公開討論会、夜はパーティー、近代的なブースが多く並ぶ、今年のこの「国際」フォーラムは、違和感を覚えるとも指摘。欧米人はほとんど見かけることなく、アフリカ、中国、エジプト、そしてタリバンの関係者などが主賓として参加した。
なお、プーチン大統領と主要な国際投資家との会談は中止された。ロシアとヨーロッパのこれまでの産業協力の立役者の一人であるセルゲイ・クラシニルコフ氏は、「今年は主要な投資家がフォーラムに参加しなかったからだ。残念ながら、この状態は今後も長く続くと思われる」と語った。ロシアのある大手企業グループの社長は、「我々は孤立しているのではなく、世界システムから切り離されている。古いつながりが消えていく中、新しいつながりをつくることに苦労している」と述べた。
フォーラムに参加したロシアの著名な国際関係専門家フィオドール・ルキアーノフ氏は、プーチン大統領がカザフスタンのトカエフ大統領と、ビデオ映像でエジプトのアッシーシー大統領、そして中国の習近平国家主席の3名だけと対談を行ったことに対して、「プーチンは孤独だ、いずれにしても、自らをピョートル大帝になぞらえ、もはや相手など必要ないという印象を与えている」と懸念を表明した。
あるロシア人の社長は、「今日は、実はほとんどロシア人同士なのです」と冗談を述べ、「内心、遠回しに(侵攻を)批判しています。しかし、一言でも余計なことを言えば、国外亡命への片道航空券を受け取ることになるのです。」と語った。冶金コンビナートの経営者は、10年前からフランスの企業と組んで仕事をしているものの、フランス企業が離れることになれば、質が下がる中国企業と組むしかないと述べた。
仏ラジオ局『RFI』によると、ロシア当局が欧米の経済制裁でより大きな被害を受けているのは、欧米自身だと主張していることに対して、経済フォーラムに参加したロシア連邦中央銀行総裁のエルビラ・ナビウリナは、プーチンの側近たちが提示するよりもはるかに暗い現状を描いた。総裁は、物価が18%近く上昇したインフレを指摘し、GDPの落ち込みに懸念を示した。ロシア政府がGDP5%減と発表しているのに反して、総裁は1年間で10%減になると予測している。また、ロシア経済が石油とガスに依存しすぎていることにも懸念を示した。
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ウクライナ戦争を背景に国際サイバーセキュリティフォーラムがフランスで開幕(2022/06/07)
サイバーセキュリティに関する欧州のビジョンを促進することを目的とした国際サイバーセキュリティフォーラム(ICF)が今日から3日間、フランスで開催される。今年は13000人以上の参加者が見込まれており、ロシアとウクライナの軍事衝突を背景に、サイバー脅威の状況やその対策について最新の情報が交わされる。
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『BFMTV』によると、ICFの共同主催者であるギヨーム・ティシエ氏はAFPに対し、「出展者は15%から20%増の約550社、講演者は500人近くと、かつてないほど多くの関係者が参加する」と述べている。
ロシアのウクライナへの軍事侵攻が始まった際、世界的なサイバー攻撃が懸念されたが、今のところ、ロシアとウクライナの間でおさまっている。フランスの仏国家情報通信システム安全庁のプパール長官は今週、「ロシアはウクライナを集中的に攻撃している」と指摘。...
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『BFMTV』によると、ICFの共同主催者であるギヨーム・ティシエ氏はAFPに対し、「出展者は15%から20%増の約550社、講演者は500人近くと、かつてないほど多くの関係者が参加する」と述べている。
ロシアのウクライナへの軍事侵攻が始まった際、世界的なサイバー攻撃が懸念されたが、今のところ、ロシアとウクライナの間でおさまっている。フランスの仏国家情報通信システム安全庁のプパール長官は今週、「ロシアはウクライナを集中的に攻撃している」と指摘。しかしウクライナ側は、ロシアのサイバー攻撃に対してよく準備していたことと、マイクロソフトなど国・民間を問わず欧米の協力のおかげで、ロシアからのサイバー攻撃を封じ込めるが出来ているという。プパール長官は、サイバー問題に関して「ウクライナ側に非常に強いレジリエンスが見られる」と述べ、サイバー防衛関係の人たちに「希望を与える」ことだと語っている。
IT関連の仏ニュースサイト『ルモンド・アンフォルマティーキュ』によると、欧州理事会と欧州議会は5月、欧州の主要インフラのセキュリティ強化を目的とした「NIS2」指令の改定について政治的合意に達している。EU全体で共通した高いレベルのサイバーセキュリティを実現したいという意向が強く、官民双方でレジリエンスとインシデント対応能力を向上していく。このために最大45億ユーロ(約6400億円)を目標にサイバーセキュリティへの投資を拡大していく。
なおこのプロジェクトの合意の数ヵ月前には、加盟国に対するサイバー攻撃の増加に対応する能力を向上させるために、EU-CyCLONeと呼ばれる欧州の合同サイバーセキュリティユニットの創設が発表されている。こうした新たなセキュリティ対策は欧州だけではない。米国でも連邦政府機関にゼロトラストセキュリティが課されるようになった。同様に英国でも、通信ソリューションやインフラのセキュリティを強化し、インターネットに接続可能な端末の輸入・販売業者にサイバーセキュリティ基準を課す法案を準備中である。
仏『ソリューション・ニュメリーク』は、ウクライナ戦争で見られたようなサイバー攻撃の将来的な可能性についてフランス中小企業に調査が行わられたところ、中小企業の59%はサイバー攻撃が急増すると予測している。調査対象企業の45%がサイバーセキュリティ対策の強化をすでに実施しているか、または実施中であると回答し、6%がそのつもりだと回答している。調査対象企業の51%がサイバー攻撃の脅威に対して具体的な対策をとっていることになる。
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