既報どおり、米ホワイトハウスが今月初め、北朝鮮が国連制裁を破って、ウクライナ戦争を続けるロシア軍に弾薬や砲弾を供給していると非難した。北朝鮮は全否定しているものの、今度は、冬に備えてウクライナ派遣のロシア兵用軍服等をロシアに密輸しているとの告発がなされている。
11月8日付
『ラジオ・フリー・アジア(RFA)』(1996年開局の米議会出資のラジオ短波局)は、「北朝鮮、国連制裁を無視してウクライナ派遣のロシア兵用軍服を密輸」と題して、北朝鮮が、国連制裁に違反して、ウクライナ派遣のロシア兵の冬用軍服等を密輸していると報じている。
北朝鮮在の情報提供者によると、北朝鮮が国連制裁に違反して、来るべき厳冬に備えて、ウクライナ派遣のロシア兵用の軍服等を生産してロシア向けに密輸しているという。
同事情通が『RFA』韓国支部の照会に対して、“平壌(ピョンヤン)北部の牡丹峰区域(モランボン)にある少なくとも3つの縫製工場で、ここ1ヵ月ほど、ロシア軍向けの冬用軍服・下着等を作っている”とし、“ロシアから供給された生地で作られたこれらの衣類は、ウクライナ派遣のロシア兵用のものである”と打ち明けた。
経済制裁に喘ぐ北朝鮮は、この密輸によってしっかり外貨を稼いでいるという。
ただ、『RFA』韓国支部は在北朝鮮ロシア大使館が11月4日に出したコメントとして、“ロシア政府は北朝鮮製衣類や靴を購入する意図を持っているが、国連制裁対象となっている禁輸製品には当たらない”との声明文を掲載している。
しかし、2017年9月に採択された国連制裁決議2375(注後記)は、北朝鮮の全ての繊維製品の輸出を禁じている。
同事情通の情報によると、これらの製品を積んだ貨物列車が11月2日から運送を始めたという。
同貨物列車は、北朝鮮豆満江(トゥメンジャン)~ロシア・ハサンを経て沿海州まで繋がる鉄道で、新型コロナウィルス感染流行問題で2年8ヵ月間輸送が中断していたものである。
更に、同事情通は、“ウクライナ・ロシア戦争が長引くに連れて、ロシア・北朝鮮間友好関係は深まっていき、かかるロシア兵用軍服等の貿易に繋がった”と語った。
その上で、同事情通は、羅先特別市(ラソン)在の羅津港(ラジン)にも、多くの繊維工場があり、今後そこからもロシア兵用軍服等が生産・輸出されるとし、近い将来、軍靴も生産・輸出されることになるという。
(注)国連制裁決議2375:2017年9月3日の北朝鮮による6回目の核実験に対する国連安全保障理事会決議。過去5回の核実験の際に採択された決議1718、決議1874、決議2094、決議2270、決議2321、弾道ミサイル発射に際して採択された決議2356、決議2371に引き続き、国連憲章第7章に基づく制裁行動として具体的に経済制裁に関する行動を定める第41条が言及された。この中で、繊維製品の全面禁輸、北朝鮮労働者の受け入れ停止等が付加されている。
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6月27日付
『ラジオ・フリー・アジア』(RFA、1996年に米議会出資によって設立された短波ラジオ放送局)は、「中国、NATO首脳会議開催前に非難声明」と題して、今週スペイン(マドリッド)でNATO首脳会議が開かれる直前、中国政府が“NATOは新たな冷戦構造を生み出す”との非難声明を出したと報じている。
中国外交部(省に相当)の汪文斌報道官(ワン・ウェンビン、51歳、2020年就任)は6月23日の定例記者会見で、“NATOは新たな冷戦構造を生み出そうとしている”とした上で、“米国主導の軍事同盟に他ならない”と非難した。...
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6月27日付
『ラジオ・フリー・アジア』(RFA、1996年に米議会出資によって設立された短波ラジオ放送局)は、「中国、NATO首脳会議開催前に非難声明」と題して、今週スペイン(マドリッド)でNATO首脳会議が開かれる直前、中国政府が“NATOは新たな冷戦構造を生み出す”との非難声明を出したと報じている。
中国外交部(省に相当)の汪文斌報道官(ワン・ウェンビン、51歳、2020年就任)は6月23日の定例記者会見で、“NATOは新たな冷戦構造を生み出そうとしている”とした上で、“米国主導の軍事同盟に他ならない”と非難した。
また、中国国営メディア『人民日報』に掲載された同報道官の声明文によると、“NATOは米国が覇権主義を維持するためのツールであり、欧州における軍事同盟が我が国への対抗手段として用いられようとしている”としている。
更に、同声明では、“NATOは既に欧州における安全保障を棄損している”とし、“拡大NATOとしてアジア太平洋地域まで及び、混乱に陥れることは慎むべきだ”と言及している。
この声明に先立つ6月20日、在パキスタン中国大使館の張清和参事官(チャン・へーチン、大使の次位)が、“ブリュッセル(NATO本部がある都市)では、数万人の抗議者が、NATOによるウクライナ戦争への加担で物価急上昇を招いているとして、NATOを非難するデモ行進を行っている”とツイートしていた。
しかし、ブリュッセル在のロシア・欧州・アジア研究センターのテレサ・ファロン代表は先週末、『RFA』のインタビューに答えて、“ブリュッセルの抗議デモはNATOとは一切関係がない”とし、“中国政府は、来週開催されるNATO首脳会議の前に、このような偽情報を流して政治的攻撃を仕掛けている”と非難している。
ただ、このような中国政府の主張に対して、NATO首脳会議の直前、呉紅波氏(ウー・ホンボ、70歳、2017年まで国連経済社会省事務次官)を特使として欧州諸国首脳との面談に派遣したことは矛盾する。
これに関し、外交政策シンクタンクの大西洋評議会(1961年設立、本部ワシントンDC)のフレデリック・ケンプ社長(67歳、2007年就任)は『CNBC』の寄稿文の中で、“特使を欧州諸国代表との面談のために3週間も派遣したということは、今秋予定されている中国共産党第20回大会(5年に一度の最高決定機関)までに欧州関係を修復するという大きな目的のためだ”と分析している。
同社長は、“習近平国家主席(シー・チンピン、69歳)指導の経済活性化は遅れ、主導する一帯一路経済圏構想(BRI)の資金繰りは悪化し、ゼロコロナ政策はうまく機能せず、更には、ウクライナ軍事侵攻を続けるウラジーミル・プーチン大統領(69歳)を支持していることで、欧米諸国から非難の的となってしまっている”と記した。
その上で同社長は、“このままでは党大会での3期目の国家主席就任が危うくなるとみて、呉特使を派遣して、欧州諸国との関係改善を図ろうと考えたと思われる”と言及している。
ファロン代表も、同社長の分析に同意している。
一方、米国の非営利シンクタンクの民主主義防衛財団(2001年設立、本部ワシントンDC)のクレイグ・シングルトン上級研究員は『RFA』のインタビューに答えて、“国際社会の中国支持は過去最低となっている上、習国家主席は他国首脳と会談するために外遊することを拒んでいる”とし、“しかし、中国の経済は長期低迷期に入っており、習国家主席の経済政策は失敗とする声が高まる一方である”とコメントした。
その上で同上級研究員は、“中国にとって、欧州は現下の景気低迷を脱するのに必要不可欠な市場であるから、これまでの戦狼外交(注後記)によって棄損された欧州との関係修復を最優先に捉える必要があると考えた”と言及している。
ところが、“欧州諸国は、中国が一向に、無謀なウクライナ軍事侵攻を続けるロシアへの支持を再考しようとしないことに不満を募らせ、ここ数ヵ月間では、(中国の意に反して)台湾との貿易や投資の話を積極的に進めようとしている”。
そこで、“この欧州側の姿勢に焦りを覚えた中国政府が、これまでの欧州外交政策を見直す必要に迫られているはずだ”と分析している。
(注)戦狼外交:21世紀に中国の外交官が採用したとされる攻撃的な外交スタイルのこと。この用語は、中国のランボー風のアクション映画『戦狼 ウルフ・オブ・ウォー』からの造語。論争を避け、協力的なレトリックを重視していた以前の外交慣行とは対照的に、戦狼外交はより好戦的である。
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