6月26日付米
『ユーラシア・レビュー』オンラインニュース(
『ラジオ・フリー・アジア』配信):「日本に続きASEANも、領有権問題で中国に対峙」
ASEAN首脳会議が6月26日、今年の議長国のベトナム主導でオンラインを通じて開催される。
主要議題は、現下の新型コロナウィルス(COVID-19)感染問題に対する協力関係の強化であるが、それと同じくらいの重要事項として、南シナ海における対中国領有権問題が挙げられる。
ベトナムメディア『トゥオイチェー』紙(1975年創刊、ホーチミン共産青年団発行の機関紙)によると、ファム・ビン・ミン副首相兼外相(61歳)が6月25日、ASEAN外相とのオンライン会議を通じて、“ASEAN加盟国は、南シナ海において平和、安定、安全保障かつ航行・飛行の自由が保障されるようにすることを最優先事項として対応していく”ことで同意したことを明らかにしているという。
アジア諸国がCOVID-19感染対策に取り組んでいる最中、その隙を狙って中国は、領有権争いのある海域での海底資源探査、一方的な行政区設置、更には他国船の進入を勝手に取り締まる等、制海権の既成事実化を促進している。
そこで同副首相兼外相は、“国際法に則って、有効なCOCの策定が必須”だと強調している。
インドネシアのルトノ・マルスディ外相(57歳)も6月25日の共同記者会見で、“COCは南シナ海における環境整備に非常に役立つことになる”と表明している。
元々ASEANと中国は2002年、南シナ海における行動原則を発表し、それに基づき強制力のあるCOC策定のための交渉に入るとしていたが、中々進展をみなかった。
そして2017年に漸く、2021年を期限として本格交渉が始められ、COC原案も作成・公開されたが、その後も余り進展がみられなかった。
更に2020年になっても、例えば4月に予定されていたASEANサミットがCOVID-19感染問題で延期されたりしていた。
一方、既報どおり日本も、中国側の東シナ海における一方的行動に対峙する姿勢をみせている。
河野太郎防衛相は6月25日、日本外国特派員協会での記者会見で、“中国の東シナ海における一方的な現状変更措置、また、インド国境や香港行政に関わる活動に大いなる懸念を抱いている”と表明した。
更に同相は、“日本周辺で起こっている事態、例えばほとんど毎日のように中国機の侵入に対してスクランブル発進していること等について、国際社会に訴えていく必要があると考えている”とも付言している。
ただ、これに対して中国外交部(省に相当)の趙立堅(チョウ・リーチアン)報道官は、“日本の一部の人が、「外国からの脅威」と一方的に煽って、軍事力増強に走ろうとしている”と非難した。
そして更に、“日本は歴史から学び、地域の平和維持・発展のために真摯に貢献すべき”だと強調している。
同日付マレーシア『マレー・メール』紙(1896年創刊):「ムヒディン首相、南シナ海は“平和で自由貿易の保障された海”とすると表明」
ムヒディン・ヤシン首相(73歳、2020年3月就任)は6月25日、翌日開催予定の第36回ASEANサミットに臨むに当たって、“南シナ海を、平和で自由貿易が保障された海とすることがマレーシアの明確な立場”だと強調した。
そして同首相は、“従って、1982年海洋法に関する国連条約(UNCLOS、注後記)を含めた国際法に則って、懸案事項を平和的に解決していくことが重要”だとも付言している。
(注)UNCLOS:海洋法に関する包括的・一般的な秩序の確立を目指して1982年4月30日に第3次国連海洋法会議にて採択され、同年12月10日に署名開放、1994年11月16日に発効した条約。通称・略称は、国連海洋法条約。国際海洋法において、最も普遍的・包括的な条約であり、基本条約であるため、別名「海の憲法」とも呼ばれる。168の国・地域と欧州連合が批准。
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沖縄県石垣市議会が今週初め、東シナ海の尖閣諸島を管理する行政地域に尖閣を字名にする条例を可決した。これに対して中国が、自国領土主権に対する深刻な挑発だとして反発した。そして更に、南シナ海においてと同様、東シナ海で50に及ぶ海底名称リストを新たに発表し、領有権の既成事実化に拍車をかけている。
6月25日付
『ユーラシア・レビュー』オンラインニュース(
『ラジオ・フリー・アジア(米議会出資短波放送局)』配信):「中国、東シナ海で50の海底名称発表」
中国の天然資源部(省に相当)は6月23日、東シナ海の50の海底地形に新たな名称を付けたと発表した。
これには、日中間で長い間領有権争いのある尖閣諸島海域も含まれる。
そして、中国が4月下旬、南シナ海にある55の海底地形に新たな名称を付けて自国の領海であることを既成事実化しようとしていることと同様の措置とみられる。
日中間の尖閣諸島領有権問題については、直近数週間で緊張が高まっている。
防衛省の公式発表によると、中国潜水艦が6月18日、日本の鹿児島県奄美大島北部の接続水域(注後記)を無断通航し、また、石垣市議会が尖閣諸島の字名を尖閣とする条例を可決した翌日の6月23日には、中国海警局の公船4隻が尖閣諸島周辺の領海内に侵入している。
また、海上保安庁の6月22日公表データによると、4月中旬以降、中国による尖閣諸島周辺で領海侵入や接近が継続的に起こっているという。
そして、2020年を通じて、中国公船が尖閣諸島沖合に495回も接近し、うち11回は領海侵入しており、過去最多の事態となっているとする。
一方、米海軍第7艦隊は6月23日、南シナ海で海上自衛隊と共同演習を実施した。
同艦隊のフレッド・カチャー少将は、“同盟国である日本の海上自衛隊と、複雑な海上作戦を協力して実行することで、自由で開かれたインド太平洋の維持に貢献することができる”と発表している。
中国は、南シナ海のほとんどの海域を“歴史的権利”と主張してきているが、2016年の常設仲裁裁判所によって中国の主張は退けられている。
しかし、中国は同裁定を一切認めようとはせず、人工島の軍事拠点化はおろか、行政区設置までして同海域の覇権を盤石化しようとしている。
そうした中での海底地形の中国名称公表であるが、国際司法裁判所は2001年、海底地形の名称付けは、同海域の領有権を決定するものではないと裁定している。
(注)接続水域:領海(海岸から12海里(約22キロメートル))の外縁にあり、基線から24海里(約44キロメートル)の範囲で沿岸国が設定する水域のこと。1736年に英国が密輸取り締まりのために徘徊法を制定し、関税水域を設定して以降、自国領海の外側の水域において適用される国内法令を制定する国々が現れるようになり、1790年には米国が、1791年にはフランスも関税水域を定めている。そして、1958年の第一次国連海洋法会議において採択された領海条約第24条で、沿岸から12海里の範囲内で沿岸国が規制権を行使することができる水域として、接続水域の制度を認めた。更に、1982年の国連海洋法条約で領海が12海里までとされたことに伴い、接続水域は24海里まで拡大された。
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