ウクライナ戦争をきっかけに、米国と欧州連合(EU)はより緊密な協力関係の構築に急いでいる。今日からフランスで開催される貿易技術評議会(TTC)では、貿易・技術の分野で欧米の民主主義の価値観を確認し、大西洋を越えた関係を強化するための新しい取り組みが発表される見込みとなっている。
仏
『ロピニオン』と
『レゼコー』によると、2021年9月29日に米国で開催された米国と欧州連合の第1回貿易技術評議会では、気候変動対策における新技術の役割から人工知能を管理する規範の標準化まで、10の部会が立ち上げられた。しかし、アメリカがオーストラリアと原子力潜水艦の供給に関する防衛協定を結んだため、それまで結ばれていたフランスとの協定に終止符が打たれ、中止になりかけていた。だが、ウクライナ戦争が、状況を一変させた。
フランスがEU理事会議長国の枠組みで開催した第2回目の貿易技術評議会は、海外投資、輸出規制、半導体のサプライチェーン確保など多岐に渡って議論が行われる。フランス政府は、「ウクライナの戦争は、我々の関係を一変させた。」とし、戦争の結果、例えば安全なサプライチェーンの確保のために、協力関係を強化していくと述べた。また、この協議会によってロシアに課された制裁措置の一環として導入された輸出管理措置についても合意することができたと述べた。
米欧産業界への半導体供給を確保するための協力に焦点を当てた協議も行われる。欧州委員会で、域内市場政策を担当するティエリー・ブルトン委員が協議に参加し、インテルのEUにおける800億ユーロの投資計画について話し合いが持たれる。米欧は、半導体不足を相互に通知するシステムの構築や、2国間の補助金競争を防ぐための半導体メーカーへの補助金の調整など、さらなる協力を行うことを予定している。
また、ロシアのウクライナ侵攻を受けて、欧州委員会の代表者は、「ウクライナに限らずアフリカやラテンアメリカにも及ぶロシアによる偽情報やメディア操作との戦いを強化するための構想を発表する」と述べた。
評議会では、不公正な貿易慣行に対する対応も協議される。中国に対抗するために、米国とEUは、人権の尊重と児童労働との闘いを推進し、6月12日に開催される世界貿易機関(WTO)加盟国の貿易相会合を前に、WTOの改革についても話し合いが行われるという。
ただし、米『ポリティコ』は、米国とEUは、世界における中国の役割の拡大については、どう対処するかについて、いまだに対立している、と伝えている。また、米国とEUは経済的に強固なライバル関係にあり、グローバルな貿易基準や権威主義的な政権に対する反発で、協力を強めていこうとしながらも、積極的に競い合っている仲であることを指摘。匿名希望で内部事情を話してくれた米国とEUの関係者によると、こうした緊張関係は、ロシアの西側隣国への侵攻に対して統一戦線を示すために、今回は棚上げされたという。しかし、この評議会の成功は未知数であり、結果は2022年後半に米国で予定されている次のTTC会議で決まるという。
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アメリカのニューヨークでは、アジア系女性が、列車が入ってくる寸前の地下鉄の線路に突き飛ばされた。また、あるアジア系の高齢者は顔を殴られ、その加害者は警察に対して中国人は「はしかのようだ」と言ったと報告された。さらに、別のアジア系女性はチャイナタウンのアパートで40回刺され、彼女をおぼえて建てられた記念碑は破壊された。ニューヨークのアジア系アメリカ人に対するこうした暴力事件は、パンデミックが始まって以来、急増しており、ある議員は知事に非常事態を宣言するよう求めている。
米
『ポリティコ』によると、非常事態を提案した下院議員のロン・キム(クイーンズ区選出)は、「地域住民は家を出るたびに、恐怖とともに多くの怒りを感じている」と述べている。キム議員をはじめとするアジア系アメリカ人の指導者や選出議員たちは、自分たちのコミュニティは限界に達していると訴えている。アジア系ニューヨーカーに対するヘイトクライムは昨年4倍に増え、その他の多くの攻撃は報告されなかったか、単にヘイトクライムとして分類されなかったという。
犯罪に厳しくすると訴えて当選した民主党のエリック・アダムス市長に、ニューヨーク市警の改革を期待する声もある。しかし、元ニューヨーク市警の警部でもあった新市長は、警察と地域社会の間の長年の信頼問題に直面している。アジア人コミュニティはニューヨーク市警がヘイトクライムを真剣に受け止めていないと指摘している。一方、ヘイトクライムには、加害者が中傷や露骨な人種差別的行動をとったという証拠が必要なため、法廷で証明しにくいことが問題視されている。地域社会のリーダーたちは、加害者の多くがホームレスであることから、ホームレスに対する支援の欠如も指摘している。
ニューヨーク市警の統計によると、ニューヨークでアジア人を狙ったヘイトクライムは、昨年131件あったのに対し、2020年は28件、2019年はわずか1件だった。今年も増加が続いており、昨年同時期の4件に対し、1月と2月には10件の犯罪が記録された。
しかし、多くのアジア系アメリカ人にとって、こうした統計は、自分たちのコミュニティを揺るがす暴力の真の範囲を捉えていないと感じている。アジア系ニューヨーカーは、見知らぬ人からのいわれのない攻撃に長い間直面しており、その多くはヘイトクライムに分類されていない。女性が線路に突き落とされてなくなった事件など、最も注目を集めた暴行・殺害事件でさえ、ヘイトクライムとは指定されていない。
警察は憎悪を潜在的な動機として排除するのが早すぎると批判されている。アダムス市長は、これに同意し、最近、ニューヨーク市警のヘイトクライム対策本部の責任者を更迭し、より積極的なアプローチを取りたいとしている。
なお、アジア系アメリカ人連盟が発表したアジア系の高齢者を対象とした調査によると、75%のアジア人が、アジア人に対する暴力の増加により、家を出ることを恐れていることがわかった。
米ニューヨーク大学の学生新聞『ワシントンスクエア・ニュース』は、2月にキャンパス内で7人の学生(うち少なくとも3人がアジア人)が相次いで襲われたことを受けて、学生自治会が3月23日に抗議イベントを開催し100人以上が集まった。
アジア人に対するヘイトクライムは、2020年から2021年にかけて全米で339%増加した。ニューヨーク市警察によると、ニューヨーク市における反アジア人ヘイトクライムは361%増加した。ニューヨーク大学イベントで演説した学生の有色人種女性担当のジジ・リーは、「私は夢と希望を持ってこの街にやってきたのに、このような悲惨な目に遭い、本当に自信をなくしてしまいました。アジア系コミュニティの多くのメンバーは、外に出るのを恐れ、外出時にはペッパースプレーを携帯し、地下鉄駅では階段の後ろに隠れ、時計を見ながら電車が来るのを確認し、恐怖の中で生活しなければなりません。」と語った。
米『NBCニュース』は2月に、「Center for the Study of Hate and Extremism」が発表したヘイトクライムの報告書について報じている。報告書によると、昨年の反アジアヘイトクライムは前年比339%増加し、ニューヨーク、サンフランシスコ、ロサンゼルスなどでは2020年に過去最多を更新したという。なお、アメリカの12の大都市では、警察に報告されたヘイトクライムの疑いのある犯罪が全体的に11%増加している。
報告書によると、ほとんどの都市で黒人が最もヘイトクライムの標的とされていることに変わりはない。一方ニューヨークでは、ユダヤ人コミュニティが昨年最も多くのヘイトクライムを報告し、シカゴでは、ゲイ男性が最も標的にされた。場所的には、ロサンゼルスが2021年だけで「今世紀の米国の都市の中で最も多くのヘイトクライムを記録」し、ニューヨークがそのすぐ後に続いている。
非営利の公民権団体「Asian Americans Advancing Justice」の会長であるジョン・C・ヤン氏は、アジア系アメリカ人のコミュニティがパンデミックに起因する人種差別に遭遇しやすくなっている中、他のグループもヘイトクライムに遭遇しており、このような時代には「連帯することが我々全員の利益になる」と述べている。
なお、擁護団体「ニューヨーク都市圏中国系アメリカ人市民同盟」の創設者であるワイ・ワウ・チン氏は、「犯罪という側面が憎しみという側面にそれてしまっている。犯罪ではなく、憎しみについて話すことに時間を費やしていては、犯罪を解決することはできない」と、ニューヨーク市民全員に対する街頭暴力を取り締まる政策に焦点を当てるべきだと指摘している。
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