米ハイチ特使が22日、国境に殺到したハイチ移民へのバイデン政権の送還扱いを「非人道的」だと批判し辞任した。西半球最貧国のハイチは大統領暗殺や地震、ギャングによる暴力が深刻化した「崩壊状態」にあり、送還された移民を支援できないとしている。
9月24日付
『ロイター通信』は「米ハイチ特使辞任、“崩壊状態”であるハイチへの移民送還を批判」との見出しで以下のように報道している。
米ハイチ特使がバイデン政権の移民対処を批判し辞任。7月に特使に任命されたダニエル・フット氏は水曜、ブリンケン国務長官に宛てた書簡で、メキシコ国境の難民キャンプから危機状態にあるハイチに難民を送還したことを抗議し、“崩壊状態”にあるハイチでは難民への支援ができないとしている。...
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9月24日付
『ロイター通信』は「米ハイチ特使辞任、“崩壊状態”であるハイチへの移民送還を批判」との見出しで以下のように報道している。
米ハイチ特使がバイデン政権の移民対処を批判し辞任。7月に特使に任命されたダニエル・フット氏は水曜、ブリンケン国務長官に宛てた書簡で、メキシコ国境の難民キャンプから危機状態にあるハイチに難民を送還したことを抗議し、“崩壊状態”にあるハイチでは難民への支援ができないとしている。
国土安全保障省(DHS)の発表によると、米国は1400人以上をテキサスのデルリオ難民キャンプからハイチへ送還。3200人以上を難民申請のためキャンプから出したという。今月18日時点では約1万5000人が収容されていた。移民の多くは米国への亡命申請を求めているが、コロナ禍のもとで排除政策が続いており、その望みは薄く、送還される人々や米国で移民訴訟を行う人々などに分かれる。
ハイチは西半球の最貧国で、最近は大統領暗殺、ギャングの暴動事件、大地震などに見舞われている。米国は送還移民への早期な支援と、ハイチの長期的情勢安定への責任があるとしている。国務省スポークスマンのネッド・プライス氏は特使の批判し、「解決に向けた政策プロセスに参加せず、移民への関心を寄せる機会を逃し辞任することで状況を見誤っている」とした。
今回の特使辞任を権利団体は政権の移民戦略への批判材料として好意的に受け取っており、人権や難民問題担当の弁護士は、「勇気ある決定」だとしている。バイデン政権の国境政策により今年は記録的な送還が行われており、トランプ前大統領による抑制政策が終わると期待した難民擁護者は失望の色を隠せない。他方では、民主党はバイデン氏が強硬すぎると批判し、共和党員からはトランプの政策を一部縮小するバイデン氏の人道的アプローチで不法移民が勇気づけられたとの意見もある。
ここ数日、リオグランデ川にかかる橋の下にあるキャンプ収容人数は、強制送還や釈放により約4千人減少。
DHS は移民申請が認められる送還となるかは、ケースバイケースだとしその数は明かしていない。デルリオの国境の反対側にあるシウダードアクニャのメキシコ当局は、木曜警戒態勢を強化し、移民が往来する川沿いに約20台のパトカーや多くの武装警官を配備している。
9月23日付米国『ポリティコ』は「移民強制送還を巡り米ハイチ特使が辞任」との見出しで以下のように報道している。
米ハイチ特使が水曜、国境に殺到したハイチ移民へのバイデン政権の扱いを批判し辞任した。「数千人を強制送還する米国の非人道的、非生産的決定を相入れない」とブリンケン国務長官への書簡で述べた。また、米国のハイチ政策を非常に欠陥があるものとし、「ハイチ政府は食料も住居も金も不足した状態で移民の支援は不可能だ。崩壊状態で安全や基本サービスも与えられず、移民が増えればさらなる惨状や犯罪が増える」としている。書簡には大統領暗殺の余波で政権に就いたハイチのアリエル・アンリ暫定首相に対するバイデン政権の友好政策を好まないとの表記もあった。
特使辞任を受けサキ報道官は、政策の実行には問題点もあるとしたが、特使には「移民への関心を向けるのに多くの機会があったはずだ」と苦言を呈した。
国境警備隊が馬に乗り鞭で移民を威嚇する強硬な姿勢が映像で流されたことで、マイアミでは100人以上が参加するデモが繰り広げられ、国会では批判が相次いだ。国土安全保障省によると、国境警備隊は今後、馬は使わない方針だという。
共和党のマキシーン・ウォーターズ議員は、政権と特使のコミュニケーション不足を指摘する。「特使は政権のハイチ移民対応を理解しておらず、この問題で国務省と意見が合わなかった」とし、国境での移民対応も批判した。
共和党はバイデン政権の移民政策は間違っており、効果がないことを示す新たな一例だとしている。
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バイデン米大統領は21日、初の国連総会一般討論演説に臨み、中国との競争が激化する中、新たな冷戦を伴わない活発な競争の新時代を描き、同盟国との協調を重視するとともに、新型コロナウイルスや気候変動などの問題に取り組む必要性を訴えた。しかし、この演説に対して厳しい評価が下されている。
シンガポールの
『ストレーツタイムズ』紙は、バイデン大統領は演説で、政治家としての必要条件をすべて満たし、国際社会が共通で直面している課題に対して一致団結することを呼びかけたと報じている。しかし、国連で政治家らしい発言をするのは簡単なことだと指摘している。同紙は次のように伝えている。「現実世界では、米国のリーダーシップとパートナーシップの約束は、国内外の一連の緊張と危機によってかげりを見せている。米国内では、デルタ株による感染が急増しており、ワクチンへの躊躇や懐疑的な見方から未だに感染が拡大しており、その抑制に苦慮している。アメリカ南部の国境には、絶望したハイチからの移民があふれている。民主党内の進歩的な人たちの落胆をよそに、バイデン政権は彼らを強制送還することにした。最近のポリティコ/モーニング・コンサル社の世論調査によると、有権者は移民問題への対応について、40%対45%と、民主党よりも共和党議員を信頼している。また、ロイター/イプソス社の最新の世論調査によると、バイデン大統領の移民問題への対応を評価している米国の成人はわずか38%に過ぎない。」
さらに、「民主党が分裂し、共和党が譲らないため、大統領が変革の遺産と称しているインフラや社会支出に関する法案が成立する見込みはますます低くなっている。海外では、アフガニスタンからの撤退、タリバン政権の政権復活、そして子供を含む罪のない民間人を誤って殺害した無人機攻撃は、アメリカの信頼性を高めてはいない。同盟国そしてパートナーという言葉を頻繁に使っているが、オーストラリアとイギリスとの安全保障条約であるAukusが、同盟国であるフランスを憤慨させている。」と現実との矛盾を指摘している。
米『ナショナルレビュー』によると、ニッキー・ヘイリー元米国連大使はフォックス・ニュースの番組で、「バイデン大統領のスピーチは、アメリカへの脅威と敵に関する現実と深刻さを無視していた。中国、ロシア、イラン、北朝鮮、ベネズエラ、アフガニスタン、そしてテロなどについてだ」と語った。そして「敵に対するバイデンの生ぬるい態度のために、同盟国は、前政権では明確に保証されていた支援を、もはや我々に信頼して求めることができなくなっている。バイデンが居眠りしているので、同盟国は我々を信用せず、敵は喜んでいる」と述べた。
『ニューヨークポスト』によると、トム・コットン上院議員は、バイデンの演説はアメリカの国際的な地位を傷つけるものであり、屈辱的な弱さを示すものだったと非難した。「大統領は、新たな冷戦を求めないと言った。しかし中国は何十年もの間、アメリカやアメリカの労働者、軍隊に対して冷戦を仕掛けてきた。だから、問題は冷戦を求めるかどうかではなく、それに反撃するかどうかなのだ。」と付け加えた。また、「バイデンは中国という言葉を口にしようとしない。世界の指導者たちに向けた演説で中国の名前を出すことを恐れているようだ。それは中国にどのようなメッセージを送っていることになるのか。今、中国の指導者達はバイデンを笑っている」と批判している。
コットン氏はまた、アフガニスタンの協力者たちは、米軍の撤退と国外退避が失敗に終わり、何百人もの人々が置き去りにされたことで、大統領の「裏切り」を忘れていないと述べた。
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