これまで何度か報じたとおり、ドナルド・トランプ氏は大統領在任時代、自己所有のリゾートやゴルフ場で要人接待等を頻繁に行い、全て大統領職の必要経費としてトランプ・オーガナイゼーション(TO、1923年設立の複合企業、大統領時代を除きトランプ氏が社長)の収入として取り込んできた。そして今度は、公的職務と無関係の、同氏次男のスコットランド私的旅行でかかったゴルフ代やシークレット・サービス宿泊代等がTO収入となっていることが判明した。
4月27日付
『ビジネス・インサイダー』オンラインニュース(2009年創刊):「トランプ・ファミリーが海外に所有するゴルフ・リゾートでかかった費用を全て税金に付け替え」
スコットランドの『ザ・スコッツマン』紙(1817年創刊)の報道によると、2017年にトランプ・ファミリーがスコットランド及びアイルランドに滞在した際にかかったゴルフ代やシークレット・サービスの宿泊代等が全て税金で賄われ、かつ、TOの収入になっていることが判明したという。
同紙は、米NPO法人のアメリカン・オーバーサイト(2017年設立、無党派の倫理監視団体)が入手した資料を基に報じている。一部抜粋は以下である。
<2017年8月14日付請求書>
・請求元:スコットランドのターンベリー・リゾート(TO所有、1906年開業、ゴルフ全英オープンが開催される名門ゴルフ場及び宿泊施設)
・請求額:7,500ドル(約81万円)、ゴルフ代及び宿泊代
・利用者:請求書に記載はないが、その当時、エリック・トランプ氏(トランプ前大統領次男、TO重役)がスコットランドを訪問し、ゴルフをした記録あり。
<2017年7月22日及び23日付請求書>
・請求元:アイルランドのドンベッグ・リゾート(TO所有、2002年開業)
・請求額:7,365ドル(約80万円)、シークレット・サービス宿泊代
・利用者:エリック・トランプ氏
<2017年4月の請求書>
・請求元:アイルランドのドンベッグ・リゾート
・請求額:9,300ドル(約100万円)、シークレット・サービス宿泊代
・利用者:エリック・トランプ氏
<2017年請求書>
・請求元:スコットランド及びアイルランド在のレンタカー会社
・請求額:数千ドル(数十万円)、高級車レンタル代
・利用者:エリック・トランプ氏
アメリカン・オーバーサイト創設者兼代表のオースティン・エバース氏は『ザ・スコッツマン』紙のインタビューに答えて、“トランプ・ファミリーがシークレット・サービスに護衛されることに誰も反対しないだろうが、国内外の滞在が全てTO所有のリゾートであり、税金から支出される多額の費用が全額TO収入となることは問題である”とコメントしている。
なお、これまで明らかになっている資料によると、トランプ大統領在任時、少なくとも810万ドル(約8億7,500万円)が税金より支出され、TOの収入に計上されている。
一例を挙げれば、トランプ氏が2018年4月に安倍晋三首相(当時)をフロリダ州のトランプ氏別荘マー・ア・ラゴで歓待した際、例えば1杯の水代として3ドル(約330円)も税金に付け替えていたことが分かっている。
また、政治紙『ポリティコ』(2007年創刊)報道では、米空軍所属将兵がスコットランドのターンベリー・リゾートに数日間滞在しているが、“トランプ大統領所有の同リゾートの売り上げに貢献するためと考えられる”と指摘されている。
更に、『ワシントン・ポスト』紙(1877年創刊)も、トランプ大統領在任時、シークレット・サービス宿泊代だけで100万ドル(約1億800万円)余りも税金から支出されてTO収入に付け替えられている、と報じている。
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欧州連合(EU)は19日、外相会議を開き、安全保障から健康分野にいたるまで自国の利益を守り、中国の台頭に対抗するためにインド太平洋地域での影響力を強化していくことで合意した。
『ロイター通信』によると、この新しい戦略構想は、インド、日本、オーストラリアなどの国々との関係を深めていく方針を最初に打ち出したフランス、ドイツ、オランダが主導し、この計画を通してインド太平洋地域における中国の独裁政治の拡散に反対する姿勢を示していく方針だという。
EUは今後、インド太平洋問題に対する外交的関与を強めたり、地域への人材派遣や投資を拡大したり、さらには安全保障面での存在感を強化するために、南シナ海に船舶を派遣したり、オーストラリアの海洋警備活動に参加することなどを検討していく。...
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『ロイター通信』によると、この新しい戦略構想は、インド、日本、オーストラリアなどの国々との関係を深めていく方針を最初に打ち出したフランス、ドイツ、オランダが主導し、この計画を通してインド太平洋地域における中国の独裁政治の拡散に反対する姿勢を示していく方針だという。
EUは今後、インド太平洋問題に対する外交的関与を強めたり、地域への人材派遣や投資を拡大したり、さらには安全保障面での存在感を強化するために、南シナ海に船舶を派遣したり、オーストラリアの海洋警備活動に参加することなどを検討していく。詳細は9月までに合意する見通しだ。
外相らは声明で、「民主主義、法の支配、人権、国際法の促進に基づいて、インド太平洋におけるEUの戦略的焦点、プレゼンス、行動を強化すべきであると考える」と述べている。そして、これは「反中国 」を意図しているものではないとも述べている。
米政治ニュースサイト『ポリティコ』は、安全保障面での存在感を強化していくために、EUはインド洋と太平洋に海軍のプレゼンスを強化していく方針を打ち出したが、欧州諸国が中国と敵対するリスクを冒すことをいとわないかどうかは不明だと報じている。
同ニュースサイトによると、EU加盟国の中で、現在インド太平洋地域に大規模な海軍力を配備できているのはフランスのみとなっており、米国が中国を世界的な安全保障上の大きな脅威と見なしていることから、他のEU諸国もその取り組みを強化する必要性に迫られているという。
しかし、長い間、インド太平洋地域の海洋警察官として、中国と北朝鮮に対抗してきた米国と違い、EUはこれまで非常に小さな役割しか果たして来なかった。むしろ、EU諸国にとって地球の反対側にあるインド太平洋地域での「軍事的冒険」に対しては消極的になる傾向がある。中国が台湾やフィリピンを軍事的に威嚇することに強い懸念を抱いている今の状況の中ではなおさらプレッシャーを感じることだろう。今後、形式的な海軍の任務以上とするのであれば、地政学的戦略上の方向性を大きく変えたことになる。
あるEUの外交官は、今回の合意は「転換点」だと表現した。キングス・カレッジ・ロンドンの戦争研究学科で東アジアの戦争を専門とするアレッシオ・パタラーノ氏も、EUにとって「目覚ましい拡大」であると述べている。ただし、ブレクシット後のEUが、核武装した英国海軍の筋肉なしで、どこまで実行できるかどうかは不透明だという。
パリに拠点を置くシンクタンク、戦略研究財団の東アジア専門家であるアントワーヌ・ボンダズ氏は、EUの弱点を考えると、EUはこの地域で新たなパートナーシップを築き、その範囲を広げるべきだと述べている。「EUの能力強化に取り組まない限り、EUは主要なステークホルダーにはなれない。現在、インド太平洋地域に本格的な安全保障戦略を持っているのはフランスだけ」であり、「スピーチを書くための戦略的自律性と、物事を実行して利益を守るための戦略的自律性は別物である」と指摘している。
インド太平洋地域の基本的権利を守るために「同様の志を持つパートナー」と協力していくことを目指している。
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