カナダとデンマークが領有権問題を平和的に解決(2022/06/15)
カナダとグリーンランド(デンマーク自治領)の間にあり、カナダとデンマークが長年領有権をめぐり紛争中だった小さな無人島に、国境がひかれる合意に至ったという。この島の領有権は、領海の資源などの国益にかかわるため、両国の軍隊が上陸し、国旗を立てたり、自国のリカーを置いていたことから「ウィスキー戦争」と呼ばれていたという。
6月14日付米
『ポリティコ』:「カナダとデンマークがボトルを交換し”ウィスキー戦争”終結」:
カナダとデンマークが14日、ロシアによるウクライナ侵攻に直面したことで、半世紀にわたる国境紛争に終止符を打った。
両国は、ヌナブト準州とグリーンランドの間に位置する1.2平方キロメートルの無人の岩礁「ハンス島」の領有権分割で合意。島の南北に伸びる自然の峡谷に沿って、島をおおよそ2等分するよう新たに国境が引かれる。...
全部読む
6月14日付米
『ポリティコ』:「カナダとデンマークがボトルを交換し”ウィスキー戦争”終結」:
カナダとデンマークが14日、ロシアによるウクライナ侵攻に直面したことで、半世紀にわたる国境紛争に終止符を打った。
両国は、ヌナブト準州とグリーンランドの間に位置する1.2平方キロメートルの無人の岩礁「ハンス島」の領有権分割で合意。島の南北に伸びる自然の峡谷に沿って、島をおおよそ2等分するよう新たに国境が引かれる。
ハンス島(イヌイット語でタルトゥパルク)は、1973年からカナダとデンマークにより国境が引かれたが、合意に至らなかった。その後、両国の軍艦が島を訪問し、領有権を示そうと、国旗やカナダ産ウィスキーのボトルまたはデンマーク産「シュナップス」を置いてきたことから、この領土紛争は「ウィスキー戦争」と呼ばれる様になった。
オタワで開かれた調印式後、カナダのメラニー・ジョリー外相は、「領土紛争が平和的に解決できるという前例を我々が世界に示した」、「対立を解決することは可能、常に両国が納得する方法で行うのがベスト」だとした。
デンマークのジェッペ・コフォド外相は、和平に向けた式典でリカーボトルを交換し粋な演出をみせた一方、ロシアによる戦争を念頭に、この合意は「紛争は、武力によらず法の力によって、国際法に基づき解決されなればならないという、プーチンを含む世界へのメッセージなのである」と強調した。
グリーンランドのムテ・エゲーテ首相は、この合意は二カ国をつなぐ足ががりとなる一方、ヌナブト準州やグリーンランドでのイヌイット族の自由は保たれるべきだとした。今回の合意では、イヌイットの族の島内での移動や狩猟、漁業などの権利は保たれるという。
政治学の専門家は、「西欧諸国で、ウクライナや台湾、南シナ海の領土紛争の解決の必要性が強調される中、この合意は領土権の平和的解決の代表例となる」とし、北極圏地域の緊張緩和を維持する必要性を強調している。
同日付カナダ『CTVニュース』:「大西洋の小島をめぐるデンマークとの”ウィスキー戦争”に和平合意」:
ハンス島は両国の領海問題にかかわるため、50年間にわたり外交紛争の火種となっていた。
カナダのジョリー外相は、この日を「歴史的な日」とし、26人の外相がこの紛争に関わってきたが、平和的解決により、国が領土問題を平和的方法で解決できることを示したと強調した。また、プーチンのウクライナ侵攻を念頭に、「デンマークの合意は、圧政君主が軍事的方法で国境をひこうとする歴史的に非常に重要なタイミングで行われた」と指摘した。
一方、この領土権合意を受け、ヌナブト準州とグリーンランドに住むイヌイット族との協議も行われているという。この地は数世紀に渡りイヌイットの狩猟地となっており、国境合意後も、彼らの狩猟権、島移動の自由は引き続き保障されることとなる。
カナダは史上初めてデンマークと国境を接することとなる。これを機に、カナダがユーロビジョン・ソング・コンテスト(ヨーロッパの歌の祭典)に出場するか聞かれ、ジョリー外相は、EUとの国境を接しているため申請するかもしれないとジョークで答えたという。
同島の領有権をめぐっては、1980年代から、和やかな紛争が続いていた。1984年カナダが島に国旗とウィスキーを置いた。同年、デンマークのグリーンランド担当相がヘリで島を訪問、基地にデンマークの国旗と国産スピリッツを置き「デンマークの島へようこそ」と書いたメモを残したと報じられた。
1988年、デンマークの北極海巡視艇が、島に国旗と石塚を立てた。2001年、カナダのエルズミア島の地図制作者がヘリで訪問。2005年、デンマークでのカナダ大使館前デモを受け、カナダ軍が島に国旗と盾を置き、防衛相が島を散策。デンマークのラスムッセン前首相が「国旗戦争をやめるときだ」と述べ、両国は島をめぐる交渉再開。今回の合意により、大陸棚の海洋境界紛争も解決している。
閉じる
食糧危機:穀物不足がアフリカ移民急増につながる可能性(2022/06/08)
地中海に面した欧州連合(EU)5カ国は、ウクライナ戦争と干ばつ、そして世界貿易に関連した様々な問題から生まれた世界的食糧危機により、ヨーロッパにおいて移民の急増につながる可能性があると警告している。世界食糧計画(WFP)のデービッド・ビーズリー代表も3月に、ヨーロッパがアフリカ大陸や中東の食糧不足を緩和するための行動を起こさなければ、「地上の地獄」のような移民危機に直面すると警告している。
米
『ABCニュース』の報道によれば、アフリカ大陸からの不法移民の玄関口となることが多いギリシャ、イタリア、キプロス、マルタ、スペインの移民担当大臣たちは6月4日ベニスで会談を行い、食糧問題がアフリカからの不法移民を急増させる可能性があるとし、EU全体に対して、この問題に対して行動を起こすよう呼びかけた。
5カ国は、EUにおいて移民受け入れの負担を再分配するためのより良い方法を求めた。キプロスのニコス・ヌリス内相は記者団に対し、移民問題には強固で共通のEU政策が必要であると述べた。...
全部読む
米
『ABCニュース』の報道によれば、アフリカ大陸からの不法移民の玄関口となることが多いギリシャ、イタリア、キプロス、マルタ、スペインの移民担当大臣たちは6月4日ベニスで会談を行い、食糧問題がアフリカからの不法移民を急増させる可能性があるとし、EU全体に対して、この問題に対して行動を起こすよう呼びかけた。
5カ国は、EUにおいて移民受け入れの負担を再分配するためのより良い方法を求めた。キプロスのニコス・ヌリス内相は記者団に対し、移民問題には強固で共通のEU政策が必要であると述べた。イタリアやギリシャなどの南岸に上陸した何十万人もの移民の一部を、加盟国が受け入れるという過去のEU政策は機能しなかった。また、密輸業者の船から救助された数十万人の移民のうち、適度な数を受け入れると約束した国もあったものの、実行には移されなかった。
一方、アフリカのサハラ砂漠のすぐ下に位置するサヘルでは、農家は過去10年以来の最悪の生産シーズンに直面しているため、推定1800万人が深刻な飢餓の危機に陥っているという。
米『ポリティコ』によると、欧州委員会のフォン・デア・ライエン委員長は、世界中で進行中の食糧不足は、プーチン率いるロシアが原因だと主張していると伝えている。しかしロシアのプーチン大統領は、穀物や肥料の世界的供給を妨げているのは欧米の責任であると繰り返し非難している。
フォン・デア・ライエン委員長は、「ロシア側からの完全な誤報だ。今、食糧危機で苦しんでいるのは、残忍で不当なウクライナに対する戦争のせいだ」と述べた。そして、「はっきりさせておきたいのは、我々は食料と農産物に対する制裁はしていないということである」と付け加えた。
一方、イタリアのドラギ首相は、プーチンのプロパガンダがアフリカで拡散される危険性に警鐘を鳴らした。「アフリカの食糧安全保障の戦いに勝利することは、戦略的な観点からも重要である。というのは、起こりうる飢饉は対ロシア制裁が原因だという説が広まっているからだ」と語った。そして、多くのアフリカ諸国は「西側の味方ではない。国連での彼らの投票を見ただろう、そのほとんどが棄権した。もし食糧安全保障の戦いに負ければ、これらの国が西側同盟の側に来ることは望めない。なぜなら彼らは当然裏切られたと感じるだろうから。誰のせいかというのは、彼らにとって関係のない問題なのだ」と説明した。
仏『フランスアンフォ』と米『ブライトバート』によると、アフリカ大陸のチュニジア、エジプト、スーダン、ベナン、セネガルが、ウクライナとロシアからの穀物の輸出に大きく依存しており、すでに不足と価格上昇に悩まされているという。こうした中、アフリカ連合のマッキー・サル議長は、食糧不足の責任はロシアではなくEUにあるという説がアフリカ大陸で広がっていると述べ、大陸の多くの人々がこの問題を「非常に深刻で憂慮すべきこと」と感じていると語っている。サル議長はまた、西側諸国によってロシアの銀行がSWIFT決済システムから外され、その結果、アフリカ諸国がロシアに輸入食料を支払う能力に支障が出ている問題を指摘している。
サル議長は先週プーチン大統領と会談し、「大統領は、ウクライナの穀物の輸出を促進する用意があることを我々に表明した。ロシアは、その小麦と肥料の輸出を確保する準備ができている 。私はすべてのパートナーに小麦と肥料に対する制裁を解除するよう呼びかける。」とツイートした。
閉じる
その他の最新記事