日中韓首脳会議と日韓首脳会談、期待感と悲観論(2015/10/29)
安倍首相と朴槿恵大統領による日韓首脳会談が、ソウルで開催される日本と中国、韓国による3ヵ国の首脳会議に合わせて、11月2日におこなわれる。日韓首脳会談は2012年5月以来3年半ぶりであり、安倍首相と朴大統領による正式な首脳会談は両氏の就任以来初めてとなる。日韓関係は、従軍慰安婦や竹島問題などをきっかけとして冷え込み、これまで首脳会談が開かれなかった。米国は、東アジアの重要な同盟国である日本と韓国の関係修復を強く望んでいるが、慰安婦問題が大きな障害となっており、今回の首脳会談によって関係改善が進むことには悲観的な見方も出ている。
一方、日中韓の経済分野での協力関係については、3ヵ国の自由貿易協定合意に向けての進展などが期待されている。
10月28日付
『ボイスオブアメリカ』は、日本と韓国の首脳会談は3年半ぶりに開催されると報じている。朴大統領と安倍首相は国際会議の場で会っているが、両国間の関係悪化によって首脳会談はおこなわれなかった。韓国政府は、慰安婦問題を含め両国間の様々な懸案について突っ込んだ意見交換をしたいと述べている。また、安倍首相は、日韓の亀裂を生んでいる諸問題を率直に話し合いたいと述べている。こうした問題の他、日本の自衛隊を朝鮮半島へ派遣する場合の条件、北朝鮮核問題、環太平洋パートナーシップ(TPP)加入などについて話し合われる予定である。...
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10月28日付
『ボイスオブアメリカ』は、日本と韓国の首脳会談は3年半ぶりに開催されると報じている。朴大統領と安倍首相は国際会議の場で会っているが、両国間の関係悪化によって首脳会談はおこなわれなかった。韓国政府は、慰安婦問題を含め両国間の様々な懸案について突っ込んだ意見交換をしたいと述べている。また、安倍首相は、日韓の亀裂を生んでいる諸問題を率直に話し合いたいと述べている。こうした問題の他、日本の自衛隊を朝鮮半島へ派遣する場合の条件、北朝鮮核問題、環太平洋パートナーシップ(TPP)加入などについて話し合われる予定である。
2012年12月に安倍政権が誕生し日韓関係が冷え込んで以来、米国政府はこれまで東アジアの主要同盟国である日韓関係が修復されることを期待し、両国間の関係については慎重に距離を保ってきた。安倍首相は戦時中の日本軍の残虐行為について隣国と意見の相違があり、歴代首相による侵略行為への陳謝は継承するが、それ以上の陳謝をおこなうことを拒んでいると報じている。
10月27日付
『ニューヨークタイムズ』紙は、今週水曜日、ソウル市の公園で韓国人と中国人の慰安婦銅像が新たに設置されたと報じる。慰安婦像自体は他にもあるが、中韓合同で造られたのは初めてである。銅像設置のタイミングが日中韓の首脳会談の直前となったのは偶然であるが、中韓両国は、安倍首相が戦時中の日本の虐待行為を歪曲しようとしていると非難している。
朴大統領は今月初旬、3ヵ国首脳会談開催時に安倍首相と日韓会談をおこなう意向を示したが、日本が慰安婦問題について対処することを求め、会談を有意義なものとするためには、韓国で存命している元慰安婦たちの苦悩を和らげる努力をすべきだと述べた。
日本がこの問題で譲歩するかは不明であるが、両首脳が昼食を共にしないことから、大きな進展はないものと観測される。韓国にとって慰安婦問題は日本の朝鮮植民地支配時代に由来する非常に感情的な問題の一つである。日本は、1965年の日韓基本条約で解決済みとの立場である。一方、韓国政府は、安倍首相は慰安婦の強制的募集に関する日本政府の責任を軽視していると非難している。
10月26付
『ザディプロマット』は、中国の李克強首相が3ヵ国首脳会談に出席のため韓国を“公式訪問”すると報じている。前回までは、当時の温家宝首相が出席していたが、一部に今回は首相ではなく習近平国家主席が訪韓し、習・安倍会談がおこなわれるとの見方があった。結局、従来通り首相の李克強が参加することになったが、李首相の訪韓は5年前の首相就任以来初めてである。今回の首脳会談は、中国にとって北東アジアで頓挫している日中韓の協力関係を推進するとともに、韓国の経済界や各界の首脳との関係強化をはかる好機である。
メディアは厄介な歴史問題や領土問題に焦点を当てると想像されるが、首脳会談では李克強首相が出席することになったことで、3国間の通商などの経済問題が中心に話し合われることになると思われる。そして、日中韓の自由貿易協定の合意に向けて、大きく進展する可能性がある。中国商務部は、「高い水準での自由貿易協定締結が3国共通の利益であり、また、アジア地域の発展と繁栄に資する」と3国の自由貿易協定合意に期待を示し、12月成立を目指して更に交渉を重ねると発表している。
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総選挙を控え亀裂が深刻化するトルコ(2015/10/26)
トルコでは本年6月に国会の任期満了に伴う総選挙が実施され、13年間単独政権を維持していた公正発展党(AKP)は、初めて国会で過半数を失った。その後の連立政権樹立に向けた協議が失敗したため、エルドアン大統領は再選挙を決定し11月1日に今年2度目の総選挙が実施される。危機感を深めるエルドアン大統領は、クルド系野党との対決姿勢を強めとともに、クルド武装勢力への爆撃やクルド市民への弾圧を強化しており、トルコ国内の政情は不安定さを増している。また、イスラミックステート(IS)などの外部勢力がこれに乗じて浸透しようとする動きも加わり、更なる混乱が危惧されている。
10月25日付の米国
『エクスプレス・トリビューン』紙は、再選挙を一週間後に控え、エルドアン大統領が率いるAKPは、議会での過半数獲得を目指し全力を挙げていると報じている。AKP党首のダウトオール首相は、先頃首都イスタンブールで同党への支持を訴える運動デモ行進をおこなった。何千人ものAKP支持者が参加したが、その数はむしろ以前より少ない。13年間もの間与党としてトルコ政界を主導したAKPは、親クルド族政党の躍進もあって、前回6月の選挙では40.6%の支持率しか得られず絶対多数を失った。...
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10月25日付の米国
『エクスプレス・トリビューン』紙は、再選挙を一週間後に控え、エルドアン大統領が率いるAKPは、議会での過半数獲得を目指し全力を挙げていると報じている。AKP党首のダウトオール首相は、先頃首都イスタンブールで同党への支持を訴える運動デモ行進をおこなった。何千人ものAKP支持者が参加したが、その数はむしろ以前より少ない。13年間もの間与党としてトルコ政界を主導したAKPは、親クルド族政党の躍進もあって、前回6月の選挙では40.6%の支持率しか得られず絶対多数を失った。エルドアン大統領は、米国型の強力な大統領権限を指向しますます威圧的になっていると批判されている。
同大統領は6月の選挙後組閣に失敗し、再選挙を実施することになったが、国内はこれまでになく二極化している。7月以降、トルコ政府治安部隊とクルディスタン労働者党(PKK)武装勢力との戦闘が激化し、3年前に開始した和平交渉は決裂している。最新の世論調査によると、AKPは40~43%を獲得するに止まると予想されており、550議席の過半数に達しないため連立政権を樹立するか再選挙をするしか道はない。
AKPは選挙戦で、最大野党である国民民主主義党(HDP)をPKKテロリストと共謀していると攻撃している。一方、アンカラでの自爆テロで多くの死傷者が出たHDPは、当局の警備の手落ちやIS武装勢力の拘束失敗を糾弾するとともに、政府はクルド族との紛争を再燃させたと非難している。こうした状況を物語るように、先の日曜日には東京のトルコ大使館に国外投票に来たクルド人とトルコ人数百人が衝突し、12人が負傷したと同紙は報じている。
10月23日付
『ボイスオブアメリカ』は、トルコ検察当局が内務大臣他数名の政府高官に対し、自爆テロに関する対応について調査を開始したと報じている。全野党が政府および治安当局の怠慢を非難しているが、政府はこの批判を強く否定するとともに、ISだけが攻撃の首謀者ではないと主張している。エルドアン大統領は、シリア情報当局、PKK武装グループ、およびシリアのPKK分派が11月の総選挙を妨害するために仕組んだものであると発言したが、野党はその主張を否定している。
どの世論調査でも、今回の選挙で過半数を得る政党はおらず、連立政権樹立を目指すことになりそうである。識者は、連立政権を組むことがトルコ国内を深刻な対立から救う最も良い方法であると述べている。
10月22日付
『ヤフーニュース』はAFP電として、クルド人地域での緊迫した治安状況を報じている。それによると、シリアとイラク国境に近いトルコ南東部のシズルという都市では、PKKとトルコ治安部隊との激しい衝突が発生したため、夜間外出禁止令が敷かれ、街頭のいたるところにバリケードと治安部隊を配置し総選挙に備えているが、こうした状況は民主主義を否定することに繋がりかねない。
政府は夜間外出禁止令の9日間で32人のクルド人武装勢力を殺害したと発表したが、人権団体はそのうち21人は民間人であったとして政府を非難している。政府批判者は、政府はPKK党員を逮捕し、市民にAKPへ投票するか投票を棄権するよう脅そうとしていると語る。また、HDPは、政府がこの町の親クルド派市長を“テロ行為の教宣活動”をおこなったとして職務を停止し、妨害行為をしていると非難している。
同市の裁判所長は、政府は先の選挙敗北から教訓を得て、「市民に投票させないように脅しており、ここでの投票は安全が保たれないことを理由に無効とされる可能性もある」と憂慮している。
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