ウクライナでのマレーシア機撃墜最終報告(2015/10/14)
オランダ政府安全委員会は、2014年7月17日ウクライナ東部で墜落し、搭乗者298名全員が死亡したマレーシア航空機MH17便についての調査報告を公表した。
10月13日付
『ロイター通信』は、MH17便の墜落原因調査で、オランダ政府安全委員会は、ロシア製のブークミサイルにより撃墜されたとする最終報告をおこなったと報じた。しかし、委員会は誰がミサイルを発射したかについては言及しなかった。
報告書は、「9N314M型弾頭がコックピット左外側で炸裂した。この弾頭はブーク地対空ミサイルに搭載されている」とし、ミサイルの軌道のシミュレーションによると分離派勢力がほぼ支配しているグラボブの南東約320㎞辺りから発射されたと述べている。...
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10月13日付
『ロイター通信』は、MH17便の墜落原因調査で、オランダ政府安全委員会は、ロシア製のブークミサイルにより撃墜されたとする最終報告をおこなったと報じた。しかし、委員会は誰がミサイルを発射したかについては言及しなかった。
報告書は、「9N314M型弾頭がコックピット左外側で炸裂した。この弾頭はブーク地対空ミサイルに搭載されている」とし、ミサイルの軌道のシミュレーションによると分離派勢力がほぼ支配しているグラボブの南東約320㎞辺りから発射されたと述べている。また、同報告書は、航空会社間で紛争地域に関する情報共有の在り方について再検討を行う必要性について指摘している。調査委員会は、ウクライナ政府は紛争地域の空域を閉鎖すべきであったし、そこを通過する航空会社61社は潜在的な危険性を認識しておくべきだったと述べている。
10月13日付
『FOXニュース』は、ウクライナ政府は、MH17便が撃墜される前に紛争の只中にあるウクライナ東部の空域を閉鎖すべきであったと報じている。
それによると、2014年4月から7月にかけて、ウクライナ軍のヘリコプターや軍用機少なくとも16機が同地域で撃墜されている。オランダ政府安全委員会の調査報告は、「ウクライナ政府軍機を撃墜した兵器は、民間航空機の巡航高度まで到達可能で民間機が攻撃を受けるリスクがあったが、それを守るための措置は何ら講じられなかった。ウクライナの航空管制は軍事面に偏り過ぎていた」と指摘している。
誰が撃墜したかについては、オランダ政府安全委員会ではなく、オランダ検察当局が主導する合同捜査委員会による犯罪捜査に委ねられる。オランダ検察当局者は、捜査は2016年まで続くだろうが、犯罪として立件することは非常に困難が伴うと述べている。本年7月、ロシアは、MH17便を撃墜した責任者を裁く国際司法裁判を設ける国連安全保障会議の決議に対し、拒否権を発動している。
10月13日付
『ボイスオブアメリカ』は、MH17便撃墜に関し、ロシアのミサイルメーカーがオランダ政府安全委員会の報告に異議を唱えたと報じている。それによると、ブークミサイルを製造しているロシアの軍事企業アルマズ・アンテイ社はモスクワで記者会見し、撃墜したのは確かにブークであるが、旧型のブーク9M38型でありロシア軍はもはや使用していないと発表した。また、同社の調査では、ミサイルはウクライナ政府軍が支配する地域から発射されたと述べている。
10月13日付
『ヤフーニュース』はAFP電として、ロシア政府はオランダ政府によるMH17便撃墜調査報告に、重大な疑問を持っていると報じている。ロシア外務省の報道官は「オランダ調査委員会はアルマズ・アンテイ社の調査結果を無視した。真相を真摯に追及せず、すでに結論ありきの調査結果であるように疑われる」と批判している。また、「ロシアの専門家はこれから調査報告書について詳細に検討するが、調査した証拠品などを見ておらず原因調査は継続すべきであり、ロシアはいつでもその用意がある」と述べている。
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トルコの爆弾テロとその背景(2015/10/13)
トルコで総選挙を前に凄惨な爆弾テロ事件が発生し、誰による犯行かを巡り様々な憶測が流れている。
10月11日付
『ロイター通信』は、トルコ政府は128名が犠牲となったアンカラでの自爆テロで、イスラミック・ステート(IS)への捜査を開始したと報じる一方、エルドアン大統領の政敵は、テロ事件の責任は大統領にあると非難していると伝えている。トルコ国内全域でISを対象とする捜査がおこなわれ、43人が拘束された模様である。
トルコ政府は、親クルド人活動家や市民団体の選挙運動への攻撃の危険が大きいにもかかわらず、11月の総選挙は延期しないことを明言しており、エルドアン大統領は6月の選挙で失った公正発展党(AKP)の絶対多数を取り戻すことに執念を燃やしている。...
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10月11日付
『ロイター通信』は、トルコ政府は128名が犠牲となったアンカラでの自爆テロで、イスラミック・ステート(IS)への捜査を開始したと報じる一方、エルドアン大統領の政敵は、テロ事件の責任は大統領にあると非難していると伝えている。トルコ国内全域でISを対象とする捜査がおこなわれ、43人が拘束された模様である。
トルコ政府は、親クルド人活動家や市民団体の選挙運動への攻撃の危険が大きいにもかかわらず、11月の総選挙は延期しないことを明言しており、エルドアン大統領は6月の選挙で失った公正発展党(AKP)の絶対多数を取り戻すことに執念を燃やしている。当局は、今回の自爆テロの背後にISが関係している形跡があり、7月にシリア国境付近のスルクで発生した自爆テロと似ていると述べる一方で、イスラム過激派の関与についても否定していない。また、捜査関係者の話として、爆弾のタイプや攻撃対象の選び方から、トルコ南東部のアディヤマン州のISグループが関与しているとの情報もある。ダウトオール首相は、「IS、クルド人武装勢力または極左過激派のいずれも爆弾テロ犯行の可能性がある」と述べた。しかし、一部には、現政府との繋がりの有無は別として、クルド人の権利拡大を一切認めない国家主義武装勢力による犯行を疑う者もいる。クルド系国民民主主義党(HDP)のデミルタス党首は、スルクでの爆弾テロや6月の選挙期間中に起きた同様の事件が未解決であることを非難するとともに、今回のテロ事件は政府の仕業であると述べている。
10月11日付
『ニューヨークタイムズ』紙は、未だ連続爆弾テロの犯行声明は出ていない中で、トルコ政府はテロをおこなった可能性があるISとPKKに対し行動を開始したと報道している。同政府はISのメンバーと疑われる複数人を拘束した模様であるが、事件との関連性は不明である。また、トルコ空軍は、約30年もの間トルコと紛争状態にあるPKK武装集団の拠点に対し空爆をおこなった。PKKは自爆テロの数時間後、一方的な戦闘停止を宣言し、11月1日に予定されている総選挙に先立ち攻撃を停止すると誓約した。しかし、トルコ政府が戦闘を継続しているため、停戦は続きそうにない。HDPのデミルタス党首は、遊説の中でテロ事件の背後にはトルコ政府がいると現政権を非難する一方、「暴力は暴力を生む。我々は復讐をおこなわない。11月の選挙での勝利を目指す」と述べた。
10月10日付
『ボイスオブアメリカ』は、自爆テロ事件はトルコに内在する深刻な問題を表していると指摘する。
それによると、テロ事件は、トルコの政治的不安定化が進み、3週間後に総選挙を迎える時期に発生した。今年6月に実施された総選挙で、エルドアン大統領率いるAKPは2002年以来初めて議会で過半数を失った。その後、同大統領は連立政権樹立に失敗し、再選挙を選択した。6月の選挙以降、政治的不安定が深刻化するに従い、暴力事件も増大した。クルド人の文民活動家が拘束され、デミルタス党首やクルド人党員がPKK武装勢力と繋がっているという容疑で党員が逮捕されている。
オーストリアのグラツ大学ケレム・オクテム教授は、1970年代および1990年代にトルコが深刻な政治不安に陥った時期に言及し、そのとき発生した暴力事件の一部は政府が黒幕であったことが後になって判明したと語っている。
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