気候変動対策に肉の消費量の大幅な削減が必要、欧米では90%の削減を提言:英研究(2018/10/12)
英科学誌「ネイチャー(Nature)」は10日、地球の壊滅的な気候変動を回避するため、肉の消費量を大幅に削減することが必須であるなどとして、人類の食が環境に及ぼす影響の大きさを示す研究結果を公表した。2050年までに100億人に達すると見込まれる世界人口を持続的に養うためにも、欧米諸国では肉の消費量を90%削減するよう提言している。
ネイチャーに掲載されたオックスフォード大学の研究員らによる論文は、集約農業が地球環境にいかに影響を及ぼすかについて、最も包括的な見方を提供している。論文で科学者らは、植物性食料中心の食生活への「世界的な移行」、食品廃棄物の削減、環境への負荷に対処するための先進技術の活用による農業慣行の改善などの対策を求めた。
食料生産は気候変動に繋がる大きな要因となっている。特に畜産業は、地球環境への三重の脅威であり、家畜が温室効果ガスのメタンガスを大量に排出し、CO2を吸収する森林が放牧地を確保するために伐採されて失われ、さらには家畜を維持するために大量の水が消費される。...
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ネイチャーに掲載されたオックスフォード大学の研究員らによる論文は、集約農業が地球環境にいかに影響を及ぼすかについて、最も包括的な見方を提供している。論文で科学者らは、植物性食料中心の食生活への「世界的な移行」、食品廃棄物の削減、環境への負荷に対処するための先進技術の活用による農業慣行の改善などの対策を求めた。
食料生産は気候変動に繋がる大きな要因となっている。特に畜産業は、地球環境への三重の脅威であり、家畜が温室効果ガスのメタンガスを大量に排出し、CO2を吸収する森林が放牧地を確保するために伐採されて失われ、さらには家畜を維持するために大量の水が消費される。500グラムの牛肉の生産には、約7,000リットルの水が必要であるという。
論文では、肉の消費量を大幅に削減しなければ、食品業界が既にもたらしている環境への多大な影響が、今世紀半ばまでに最大90%増大すると警告している。世界人口の急激な増加が見込まれる一方、発展途上国の人々が豊かになり、欧米のような肉の多い食事をすると、人類全体が効果的に食料を得られなくなるとともに、地球温暖化が抑制不能となる可能性がある。
専門家らは、肉の消費量を削減することが、一般市民が気候変動への対処に明らかに貢献できる1つの方法であるとして、世界的に植物性の食料をさらに多く摂取する食生活に移行するよう呼び掛けている。
食品廃棄物の削減について、論文は、ずさんな管理によって無駄になったり、捨てられたりする食料を半減するだけでも、環境への負荷を16%削減できると説明している。そのための解決策として、教育や農業・畜産産業の改革、効率化などを挙げた。
研究を主導したオックスフォード大のマルコ・スプリングマン氏は、「いかなる単独の解決策も、地球の限界を超えることを避けるためには不十分だが、複数の解決策が同時に導入されれば、増加する人口を持続的に養うことができるかも知れない。」と述べた。
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新しい研究:特定の年齢以降では死亡のリスクは増加しない(2018/06/29)
【28日付
『ニューヨークタイムズ』『STAT』など】 ヒトには一定の寿命があるのだろうか、それとも無期限に生きられるのだろうか。「サイエンス」に発表された新しい研究によると、ヒトは寿命の限界にまだ達していないことが示唆された。
人口統計学者らは、105歳以上の約4000人のイタリア人のデータを検証し、特定の年齢を過ぎると、その年齢に達する前より死亡が少なくなることに気づいた。つまり、ある年齢以降は、死亡リスクが横ばいとなる。
カリフォルニア大学バークレー校の人口統計学科教授であり、研究を率いたケン・ワッチャー教授は、「超高齢層においては死亡率がわずかに減少する。これは人間の寿命に限界があるわけではないことを意味する。...
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人口統計学者らは、105歳以上の約4000人のイタリア人のデータを検証し、特定の年齢を過ぎると、その年齢に達する前より死亡が少なくなることに気づいた。つまり、ある年齢以降は、死亡リスクが横ばいとなる。
カリフォルニア大学バークレー校の人口統計学科教授であり、研究を率いたケン・ワッチャー教授は、「超高齢層においては死亡率がわずかに減少する。これは人間の寿命に限界があるわけではないことを意味する。」
今回の研究では以下のことがわかった。人が死に至るリスクは、80歳に達するまでは統計的に高くなる。ダーウィンの考えに基づくと、不健康な人はその年齢に到達する前に亡くなるが、80歳まで生存した者は、時間の経過とともに死亡する可能性が低くなる。80歳以降、死亡率は実際に低下し始め、105歳以降横ばいになる。
110歳という超高齢まで生存した者は、何歳か年下の人と死亡率が変わらない。つまり遺伝的に最も頑健な人が老齢に生き残ることができれば、技術の進歩が許せば、無期限に生き続ける可能性があると考えられる。
これに対し、ニューカッスル大学高齢化研究所の老化学准教授トム・カークウッド氏は、論文は高齢化の傾向を指摘するものの、なぜ長寿の人がいるのかを科学的に証明していない、と述べた。
また2016年に「ネイチャー」に論文を発表した、アルバート・アイシュタイン医科大学の遺伝学のジャン・ヴィジグ教授は、技術の進歩にもかかわらず、人間の寿命は115歳が上限であると主張している。「たまたまあなたが非常に幸運で、良い遺伝子を持っていて、病気を避けることができたら、他の者より少しだけ長く生きる可能性が高いでしょう。しかしそれは自然の淘汰である。死亡率がもはや上昇しないので長く生き続けられるというのとは違う。」と言う。
人類は数千年にわたって徐々に寿命を延ばしてきたが、この100年で急速に長寿となった。今後「遺伝子、行動、環境、毒素、医薬の相互作用を理解することで、広く寿命を延ばすことができればよいと思う」とワッチャー教授は述べた。
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