科学誌「ネイチャー」に掲載された米海洋大気局(NOAA)の研究報告によると、オゾン層を破壊する可能性のある化学物質トリクロロフルオロカーボン(CFC11)が増加傾向にあり、その発生源として東アジアの可能性があるとした。CFC11はもともと冷蔵庫やエアロゾル缶、脱脂汚れを取るためのクリーニング用物質など広い範囲で一般的に使用されていた。しかし、フロン類が地球を保護するオゾン層を破壊するとわかったため、1987年に制定されたモントリオール議定書で禁止物質に指定された。CFC11は2007年以降生産の確認がされていなかったが、2013年から再び増え始めていることがわかったと研究者らは発表している。
調査報告書によると、物質の数値は中国やモンゴル、韓国のあたりから出ているようで、他の化学物質を生成する際の副産物として検出されたのではないかと考えられるというが、明確な原因ははっきりしない。ただ、もしその場合でも、本来は外へ出ないよう取り囲み、リサイクルされるようにしなければならない。
NOAAの化学研究者であり、今回の論文の主執筆者であるステファン・モンツカ氏は「27年に及ぶ私の研究の中で、最も驚くべき、予期していなかった結果だ」と述べた。国連環境計画の事務局長を務めるエリック・ソルハイム氏は「このまま勢いが衰えなければ、オゾン層の修復が遅くなる可能性がある。そのため排出量が増えた原因を正確に特定し、必要な措置を講じることが必要である」とした。現在、南極大陸上空のオゾンホールは確実に縮小傾向にあるというが、これに影響が出かねない状況だという。
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オーストラリア政府は29日、同国東部沖にある世界最大のサンゴ礁地帯「グレートバリアリーフ」の回復・保護のため、5億豪ドル(約413億円)超の資金を投入し、壊滅的な状態に陥った世界遺産の現状を改善させる方針を発表した。
グレートバリアリーフは1981年ユネスコの世界自然遺産に登録され、多くの観光客が訪れるが、気候変動に関連した海水温の上昇のためにサンゴが白化する現象が拡がり、大きな問題となっている。同地帯にはまた環境汚染や、サンゴを餌とするオニヒトデの大繁殖などの脅威もあり、早急な対策が求められている。
今月科学者らは、2016年の長期に及んだ熱波期間中に、グレートバリアリーフのサンゴは壊滅状態に陥ったとして、以前指摘されていたより広範囲のサンゴ礁が脅威に晒されていると警告していた。...
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グレートバリアリーフは1981年ユネスコの世界自然遺産に登録され、多くの観光客が訪れるが、気候変動に関連した海水温の上昇のためにサンゴが白化する現象が拡がり、大きな問題となっている。同地帯にはまた環境汚染や、サンゴを餌とするオニヒトデの大繁殖などの脅威もあり、早急な対策が求められている。
今月科学者らは、2016年の長期に及んだ熱波期間中に、グレートバリアリーフのサンゴは壊滅状態に陥ったとして、以前指摘されていたより広範囲のサンゴ礁が脅威に晒されていると警告していた。科学誌ネイチャーにも掲載された同研究によって、2,300キロにわたるサンゴ礁群で、30%のサンゴが死滅したことが明らかにされている。
サンゴ礁はオーストラリアにとって重要な国家資産であり、国内経済に年間64億豪ドル(約5,290億円)もの貢献をしているという。同国のマルコム・ターンブル首相は29日、5億オーストラリアドル超の拠出を行い、水質の改善や、捕食動物への対策を打ち、サンゴの回復に向けた措置を拡大していく方針を表明した。
ターンブル首相は、今回の決定は「サンゴ礁を保護し、その生育能力とサンゴ礁に依存している6万4,000人の雇用を確保するための、史上最大規模の単一の投資である。」と説明した上で、「我々は全てのオーストラリア人、特に生活がサンゴ礁に依存している人々のために、サンゴ礁の将来を確かなものとしたい。」と語った。
オーストラリア政府は以前にも、10年間にわたってグレートバリアリーフを保護するために20億豪ドル超の拠出を約束したが、インドの採掘会社の巨大な石炭プロジェクトを支援するものと批判された。オーストラリアは石炭の火力を多用する一方、相対的に人口が少なく、1人あたりの温室効果ガス排出量が、世界で最も多い国の1つとされている。
オーストラリアは、気候変動の世界的な脅威に対処するために強力な措置を講じていると主張しており、2030年までに温室効果ガス排出量を、2005年時の水準から26-28%削減するという意欲的な目標を設定している。
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