近年の様々な研究では、農業を全てオーガニック(有機農業)に変えると、生産性が落ち、その補てん分を輸入に頼らざるを得ないため、温室効果ガス排出量が増加するという。先進国での肉食需要が変わらない前提で、効果を上げるには食生活の見直しが必要となるという。
10月22日付
『AFP通信』は「オーガニック農業でイギリスの炭素排出量増加との研究」との見出しで以下のように報道している。
ネイチャー コミュニケーションズ(オンライン学術雑誌)に掲載されたクランフィールド大学の研究チームによる新たな研究によると、イングランドとウェールズで農業を全てオーガニック(有機農業)に変えると、食物生産量の減少が食物輸入に繋がるため、イギリス全体の温室効果ガス排出量が増加するという。...
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10月22日付
『AFP通信』は「オーガニック農業でイギリスの炭素排出量増加との研究」との見出しで以下のように報道している。
ネイチャー コミュニケーションズ(オンライン学術雑誌)に掲載されたクランフィールド大学の研究チームによる新たな研究によると、イングランドとウェールズで農業を全てオーガニック(有機農業)に変えると、食物生産量の減少が食物輸入に繋がるため、イギリス全体の温室効果ガス排出量が増加するという。
オーガニックへの変更で、食品あたりの排出量は減少(穀物で最大20%、家畜で4%)するが、化学肥料を使用することで成長が促進されるため、農業の効率は落ち、生産量は40%減少してしまうという。
損出分を補填するためにより広大な牧草地や農地が必要となるためだ。そのため地球全体でみると温室効果ガスの増加につながってしまうのである。
「オーガニック農業は、土壌内の炭素貯留や、農薬使用の減少、生物多様性の向上などで、地域の環境には恩恵があるのは間違いないが、その代償として別の場所での生産性に頼らざるを得ないのである。」とクランフィールド大学のガイ・カーク土壌システム学教授。
地球の人工的炭素排出量の4分の1が農業セクターから排出されている。近年様々な研究により、持続性のない大量農業によりパリ条約が危機を迎えていると言われる。窒素肥料は排出量が多く、家畜もメタンガスを出すため、先進国各国での肉の消費を見直すべきとの意見も上がっている。
今回の研究では、完全オーガニック化農業により、牧草地の増加に伴い家畜牛や羊の頭数が増加する一方、濃厚飼料の減少により、豚、家禽(鳥)、卵は減少するとしている。研究者は、食生活見直しを前提に全オーガニック化することで、はじめてイギリスの温室効果ガスの総排出量が減少すると述べている。
同日付英国『BBC』は「環境:100%オーガニックの農業で排出量が増加する」との見出しで以下のように報道している。
最新の調査によると、イングランドとウェールズで食物生産を100%オーガニック生産に変えると、総炭素排出量が増加するという。有機転換により従来の農法よりも直接排出量が抑えられるのは事実だが、食物生産量が減ってしまうのが問題だとされている。その結果食物輸入量が増え、外国で5倍の農地が必要となってしまうのである。
オーガニック農業では従来型農業に比べ、全排出量は21%増加する。イギリスの温室効果ガス排出量の約9%が農業由来とされている。これは人工肥料の使用や、家畜や土壌状態の変化により発生するメタンガスによる。
研究はイングランド地方とウェールズ地方における食糧生産が全てオーガニック化された場合の温室効果ガスの影響を調べたもので、穀物生産量が20%、家畜の4%が減少、また食物の生産量が40%も減少するとの試算を打ち出した。小麦や大麦などの穀物の生産が大きく減少するとみられる。
家畜については、羊、牛の頭数が増加するが、オーガニック経営による家畜の体重減少や生育期間の延長から、生産される肉の量が減少するとみられ、需要を満たすには不足分を輸入に頼らなくてはならなくなり、その結果国外での土地使用を拡大することになる。
著者の一人でレディング大の研究者は、「食の需要に変化が無ければ、今よりも600万ヘクタール多くの土地が必要となる。その多くはヨーロッパが対象となるだろう。環境にも直接影響し、フードマイレッジや温室効果ガス排出量が増加する結果となる。」としている。
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インターネット通販最大手の米アマゾン・ドット・コムは19日、2040年までに同社の事業活動に伴う温室効果ガスの排出量を実質ゼロにする「カーボンニュートラル」を達成すると発表した。気候変動対策の国際的枠組み「パリ協定」の目標について、同社は10年前倒しの達成を目指すという。
『AFP通信』や
『ロイター通信』『CNN』、技術紙などが報じたアマゾンの同方針は、ジェフ・ベゾス最高経営責任者(CEO)が首都ワシントンでの記者会見で発表した。ベゾス氏は他社にアマゾンと同様の対応をするよう呼びかけた。
アマゾンは19日、自社の「気候誓約(Climate Pledge)」の取り組みを発表した。誓約は主に、パリ協定で定められた2050年にカーボンニュートラルを達成する目標に沿って温室効果ガス排出量を削減するものだが、目標達成を10年前倒しして2040年としている。...
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『AFP通信』や
『ロイター通信』『CNN』、技術紙などが報じたアマゾンの同方針は、ジェフ・ベゾス最高経営責任者(CEO)が首都ワシントンでの記者会見で発表した。ベゾス氏は他社にアマゾンと同様の対応をするよう呼びかけた。
アマゾンは19日、自社の「気候誓約(Climate Pledge)」の取り組みを発表した。誓約は主に、パリ協定で定められた2050年にカーボンニュートラルを達成する目標に沿って温室効果ガス排出量を削減するものだが、目標達成を10年前倒しして2040年としている。
ベゾスCEOは、「当社は自社の領域と規模を利用し、先陣を切っていきたい。」と決意を表明した。同社は環境問題で後れを取っていると批判されており、こうした評判を払拭する狙いがあるとみられる。今回の発表は、9月23日の国連気候行動サミットに先立ち行われたが、同社は事業活動の環境への影響に対応するよう、大きな圧力を受けており、1,000人以上のアマゾン従業員が、20日に気候変動に関するストを予定している。
ベゾス氏は、「もし1年に100億超の品目を扱うアマゾンと同様の物理的インフラを持つ会社が、パリ協定の目標を10年前倒しで達成可能であれば、どの会社も達成できる。」と述べ、他社の追随を促した。同氏は既に他のグローバル企業のCEOらから、アマゾンの誓約に加わっても良いとの感触を得ていることを明かした。
アマゾンは、取り組み強化の一環として、温室効果ガス排出量の削減のための商品配送用の車両として、10万台の電気自動車(EV)の商用トラックを、新興自動車企業の米リビアン(Rivian)から購入することに合意した。アマゾンは以前、リビアンへの4億4000万ドル(約475億円)の出資について発表している。トラックは2021年から稼働し、2022年に1万台が、そして2030年に10万台すべてが配備される見通しだ。
アマゾンはまた、再生可能エネルギーの使用割合を現在の40%から2030年までに100%とすること、米自然保護団体のザ・ネイチャー・コンサーバンシー(TNC)と協力し、森林再生の取り組みに1億ドル(約108億円)を投資することなども約束している。
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