<ハイライト>(7月9日午後5時現在の総感染者数順)
●国連他:(1)アントニオ・グテーレス事務総長(72歳、元ポルトガル首相、2017年就任)は、COVID-19死者が400万人の大台を突破したことから、ワクチン配布が追い付いていないことと感染収束にはまだ程遠いと強調。
(2)フランスのパスツール研究所(PI、注1後記)が英国の週刊科学ジャーナル『ネイチャー』(1869年創刊)に発表した論文によると、米ファイザー製や英国アストラゼネカ製ワクチンの2回接種によって、蔓延拡大中のデルタ株ウィルス(インドで発見された変異株)にも十分効果ありとの研究結果。
●米国:疾病予防管理センター(CDC、1946年設立)のロッチェル・ワレンスキー長官(52歳、医師科学者、2021年就任)は、ワクチン接種率向上によって、非常に多くの米国民に免疫性が備わったが、ワクチン接種率が十分でない中西部の州ではデルタ株蔓延によって入院患者数が再上昇していると警鐘。
●インド(印):政府は、31億ドル(約3,410億円)を投じて、今後9ヵ月以内に、野外病院・集中治療室・小児科病院・医療用酸素ボンベ保管庫等の施設を設営すると発表。
●英国:グラント・シャップス運輸大臣(52歳、2019年就任)は、都市封鎖措置解除の7月19日以降、ワクチン接種済みの英国居住者に対して、旅先のどの国から帰国しようとも検疫や自主隔離は不要となると表明。
●カナダ(加):当局発表では、ラムダ株ウィルス(南米ペルーで昨年発見された変異株)の感染者が40人近く発見されているが、同変異株が同国で接種されているワクチンの効果に影響を及ぼすか依然不詳。
●ポルトガル(葡):政府は、デルタ株ウィルス感染拡大中の首都リスボンやリゾート地アルガルベのサービス産業支援のため、ワクチン接種済みの国民が欧州連合ワクチンパスポート(EU Digital Covid Certificate)を取得して、週末や連休の期間にホテル・レストラン等を訪れるよう推奨。
●韓国:感染拡大が最悪のペースとなってきたため、当局が来週(7月12日の週)よりこれまでで最も厳しい行動制限措置導入を決定。
●オーストラリア(豪):ニューサウスウェールズ州当局は、シドニーでの一日当たりの感染者が44人と最多記録を更新したことから、当初7月9日までとしていた都市封鎖措置を更に延長することを示唆。
●台湾:日本が提供した2度目のアストラゼネカ製ワクチン113万回分が到着。米国提供分と併せて500万回分。
<国連他>
(1)アントニオ・グテーレス事務総長は7月8日、COVID-19死者が400万人の大台を突破したことから、ワクチン配布が追い付いていないことと感染収束にはまだ程遠いと表明。同事務総長は、“このままいくと、感染は山火事のように際限なく広がり、また、新たな変異株も生ぜしめることになり、更に多くの犠牲者を生む”として、“世界が協力してワクチン配布にもっと全力を尽くすことが必須”と強調
(2)フランスのPIが7月8日、英国の週刊科学ジャーナル『ネイチャー』に発表した論文によると、米ファイザー製や英国アストラゼネカ製ワクチンの蔓延拡大中のデルタ株に対する有効性について、1回接種の場合は“辛うじて”だが、2回接種によって十分効果をもたらす、との研究結果報告。
<米国>(感染者3,387万9,911人、死者61万1,249人、致死率1.8%)
・CDCのロッチェル・ワレンスキー長官は7月8日、ワクチン接種率向上によって、非常に多くの米国民に免疫性が備わったが、ワクチン接種率が十分でない一部の州ではデルタ株蔓延によって入院患者数が再上昇していると警鐘。
・数週間前、デルタ株は新規感染者の25%程度であったが、現在は50%まで上昇し、中西部では80%を占めるまで蔓延。
<インド>(感染者3,075万2,108人、死者40万5,967人、致死率1.3%)
・保健省のマンスク・マンダビヤ大臣(49歳)は7月7日の就任会見で、31億ドル(約3,410億円)を投じて、今後9ヵ月以内に、50の野外病院、2万床の集中治療室、700の小児科病院、及び700の医療用酸素ボンベ保管庫を設営すると発表。
・同大臣によると、医療用酸素ボンベを備えたベッド数は既に、今年3月現在の5万床から40万床超まで増設済み。
・なお、一日当たりの新規感染者数は5月に40万人を突破して以降、徐々に減少傾向。
<英国>(感染者502万2,893人、死者12万8,336人、致死率2.6%)
・運輸省のグラント・シャップス大臣は7月8日、都市封鎖措置が解除となる7月19日以降、ワクチン接種済みの英国居住者に対して、旅先のどの国から帰国しようとも検疫や自主隔離は不要となると表明。
・また、18歳以下の子供に対する自主隔離も不要で、更に、米国やスペイン等これまで“黄信号国”とされていた国々への渡航制限も解除。
・但し、インドや南アフリカ等、“赤信号国”とされている国々からの帰国者は、依然検疫と自主隔離が必要。
<カナダ>(感染者141万9,196人、死者2万6,405人、致死率1.9%)
・カナダ公衆衛生局のテレサ・タム局長(55歳、医師、2017年就任)は7月8日、ラムダ株ウィルスの感染者が11人に上ったと発表。
・一方、ケベック州の公衆衛生研究所は、今年3月及び4月に既にラムダ株感染者が27人発生していると発表。
・ただ、同局長は、“情報収集を急ぐ必要はあるが、今現在ではまだラムダ株感染者が少ないため、現在投与されているワクチンの効果に影響を及ぼすか依然不詳”とコメント。
・なお、ニューヨーク大(1831年設立の私立大学)が7月2日に発表した研究結果によると、米ファイザー製やモデルナ製のRNAワクチン(注2後記)ではラムダ株への効果が若干下がる可能性があるが、“深刻なレベルまで効果が減退する”ことにはならないとの結論。
<ポルトガル>(感染者89万9,295人、死者1万7,135人、致死率1.9%)
・政府は7月8日、デルタ株ウィルス感染拡大中の首都リスボンやリゾート地アルガルベ(同国南端)のサービス産業支援のため、ワクチン接種済みの国民が欧州連合ワクチンパスポートを取得して、週末や連休の期間にホテル・レストラン等を訪れるよう推奨。
・同パスポート保有者は、検疫・自主隔離が不要の国々への渡航も許容。
<韓国>(感染者16万5,344人、死者2,036人、致死率1.2%)
・韓国疾病管理庁(2003年発足)は7月7日、一日当たりの感染者数が前日の最多記録だった1,275人を上回って1,316人に上ったと発表。
・そこで当局は7月8日、感染拡大が最悪のペースとなっているソウル等大都市圏において、7月12日より2週間、これまでで最も厳しい行動制限措置導入を決定。
・具体的には、午後6時以降3人以上集まることや病院・介護施設への訪問禁止、ナイトクラブ・教会の閉鎖、結婚式・葬式は家族のみに限定、デモ禁止、そしてショッピングモールは午後10時以降閉店。
・同国のワクチン接種率は低く、全人口約5,200万人のうち約70%がワクチン未接種。
・批評家は、政府が経済再活性化のために行動制限緩和を急ぎ過ぎたためと非難。
<オーストラリア>(感染者3万905人、死者910人、致死率2.9%)
・ニューサウスウェールズ州のグラディス・ベレジクリアン首相(50歳、2017年就任)は7月7日、シドニーでの一日当たりの感染者が44人と最多記録を更新したことから、当初7月9日までとしていた都市封鎖措置を更に延長することを示唆。
・その場合、行動制限もより厳格化し、戸外で一緒に運動する人は2人まで、かつ自宅付近でのみとし、更に、不要不急の外出も禁止。
・なお、行動制限措置遵守を見張るため少なくとも100人の警察官が巡回。
<台湾>(感染者1万5,149人、死者718人、致死率4.7%)
・日本が提供した2度目のアストラゼネカ製ワクチン113万回分が到着。
・5月に感染者急増を受けて、日本だけでなく米国からもワクチン提供がなされ、併せて500万回分。
・当初、2,900万回分余りのワクチン購入契約を締結していたが、世界的ワクチン供給ひっ迫と契約先の生産遅延に遭い、5月の感染急増時、僅か70万回分しか入手できていない状況。
・なお、現在では1回目のワクチン接種を受けた人が、全人口約2,400万人の11%まで改善。
(注1)PI:パリにある、生物学・医学研究を行う非営利民間研究機関。細菌学者のルイ・パスツール(1822~1895年)が狂犬病ワクチンを開発し、1887年に開設。微生物、感染症、ワクチンなどの基礎・応用研究の他、高等教育も行う。伝統的に微生物学や病原微生物研究が盛ん。
(注2)RNAワクチン:メッセンジャーRNA(mRNA)と呼ばれる、天然化学物質の人工複製物を使用して免疫反応を起こすワクチンの一種。
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新たな遺伝学研究によると、一卵性双生児のうちの一人にのみ存在する突然変異が発見された。これまで一卵性双生児は遺伝的に同一であると仮定され、その違いは遺伝要因が大きく影響していると考えられていたが、胎芽の初期段階での突然変異により、ゲノムが変化すると考えられるという。
1月8日付米国
『ABC』は「一卵性双生児は完全なクローンではないとする研究」との見出しで以下のように報道している。
新たな研究によると、一卵性双生児のDNAの違いは受精後の最初の2週間で現れるという。双子の兄弟にそっくりだと言われるのに抵抗がある人にとっては、遺伝子が同じではないのだから、それが一理あるということになる。
アイスランド大学とdeCODE社の遺伝学者Kari Stefansson氏は、7日「ネイチャー・ジェネティクス」に掲載された論文で、387組の一卵性の双子とその親、子どもや配偶子のDNA配列を解析、初期の胎芽が二つに分裂する前に突然変異が生じることを突き止めた。一方の細胞に変異が見られ、もう一方には全く見られない。しかし、時に、双子の第二番目には、一部の細胞(全部ではない)に変異が見られたという。
一卵性双生児は初期遺伝の違いが平均5.2あるが、15%、一部には100%までに相違が見られることが分かったという。これらの変異は初期の遺伝コードでは小さな量だが、背の高低が似ていない双子や、一定のガンのリスクがより高い双子がいるという現象を説明できるものである。
これまで多くの研究者が、一卵性双生児の身体的な相違点は殆どが栄養状態やライフスタイルなどの環境的要因だと考えてきた。カリフォルニア州立大学で双子の研究をするNancy Segalは、この研究を非常に高く評価。「これは遺伝子学と環境の影響について新たな見地を切り開くもの。双子は良く似ているが完全に同じではない。」としている。
同日付英国『ガーディアン』は「一卵性双生児はそれほど似ていないとする論文」との見出しで以下のように報道している。
一卵性双生児について、生まれつきか、生育環境の影響かを巡る議論に新風を巻き起こす新たな研究。一卵性双生児の双子は、分裂した一つの受精卵を持つが、「ネイチャー・ジェネティクス」誌に掲載された研究によると、初期の胎芽発達で遺伝的相違が始まるという。これは、一卵性の双子は遺伝的相違点が最少減だと考えられていたため、重要な発見となる。
身体的、行動的な相違が生じた場合、環境要因が大きな原因だと想定されていた。典型例は、離れて育った一卵性双生児で、双子のうちの1人が自閉症を発症すれば、環境が原因だと解釈されてきたが、これは非常に危険な結論つけである。疾患は双子の一方(反対側ではない)の初期遺伝変異によるものである可能性があることになる。
この研究では、胎芽の成長過程で起きる突然変異を解析。突然変異とはDNA配列の変異であり、遺伝的に善悪両方の微小な変化、身体的特徴や一定の病気への感受性を決定付ける。そして一卵性双生児は初期の発達変異は5.2と示され、双子の15%においては、分岐変異がより高い割合で見られたという。双子一方にのみ、もう片方の双子の細胞から派生した遺伝変異が生じたと考えられる。
著者は、ツインの発達を考える上でこの変異は興味深いという。遺伝子が異なるという前提だと、「一卵性でそっくりなという言葉自体が双子の誤解を生む事に繋がるだろう」と述べている。
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