第21回国連気候変動枠組み条約締結国会議(以下COP21または気候変動会議)に参加した195ヶ国全てがパリ協定に合意した。温度上昇の抑制幅を「2度以内」ではなく、より厳しい「1.5度」と明記した事や、対立していた先進国と発展途上国を問わず全てが合意した事は、各国メディアが「歴史的合意」と形容する通り、歴史的快挙と言える。一方で罰則がありながら一切適用されなかった京都議定書の教訓や、経済への悪影響を懸念する声も根強く、削減への強制力を巡り激しい攻防が繰り広げられ。合意文書の第4条第4節で置き換えられた“should”と“shall”がその攻防を象徴する。
『ルモンド紙』は「もう少しで合意を頓挫させるところだった単語」と見出しをつけて「パリ協定における最も重要な文言は“shall”であると述べた
『ニューヨークタイムズ紙』の見解は正しかった」と195ヶ国の合意を振り返る。英語の合意文書や契約においては、助動詞“shall”が使用されると法的強制力が発生する。「ルモンド紙」によると「パリ協定の合意文書最終版に表記された“shall”が合意発表の数時間オバマ政権を動転させた」のは、「最終版の一つ前の合意原稿の第4条で用いられていた強制力の弱い“should”が最終版では“shall”に置き換えられていた」からだという。...
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『ルモンド紙』は「もう少しで合意を頓挫させるところだった単語」と見出しをつけて「パリ協定における最も重要な文言は“shall”であると述べた
『ニューヨークタイムズ紙』の見解は正しかった」と195ヶ国の合意を振り返る。英語の合意文書や契約においては、助動詞“shall”が使用されると法的強制力が発生する。「ルモンド紙」によると「パリ協定の合意文書最終版に表記された“shall”が合意発表の数時間オバマ政権を動転させた」のは、「最終版の一つ前の合意原稿の第4条で用いられていた強制力の弱い“should”が最終版では“shall”に置き換えられていた」からだという。問題の文章は「各国が温室効果ガスの排出量削減の各々の計画を先導するように、先進国が最前線に立ち続ける」事を義務づける内容だったが、ケリー米国務長官は「私が最終原稿を見た時、米国は第4条通りには出来ないし、オバマ大統領と米国はそれを支持できる状態ではない」と批准後に述べた。この微妙な問題は今回のパリ協定の有効性について法学者の間でずっと議論が盛んにおこなわれていると「ルモンド紙」は伝える。
仏経済紙
『レゼコー紙』も“shall”と“should”が混在する事に触れ、「文書の言葉が含む範囲と効力はニュアンスで決まる」ので、「各国が提出した“削減への貢献計画”は何の拘束力もない自主的なもので、厳密には合意の一部をなさない」と見るが、「パリ協定の第3条と前述の4条が5年毎の上方修正を義務付けている」事に一定の効力を認める。この第4条の意味を考慮すると“shall”への変更の影響は大きい事が伺える。
また「北(先進国)と南(発展途上国)間の不信」が常にあり、「協定案は完全にアンバランス」と見る「レゼコー紙」は「予約草案とよばれる(INDC)自主目標で割をくうと思っている発展途上国には協定案は不評だった」と報じる。「米国が発展途上国支援に1000億ドルに出す事を拒否して危うく全てが頓挫するところだった」経緯もあり、第4条で「条件法の”should”から直接法で断定的な“Shall”に変える」事で「なんとかバランスに辿り着く」と南北対立の観点からも後押しする。
5年毎に各国の貢献の進捗によって上方修正の義務づける事が強制力の攻防の落としどころとなった。大きな前進であるが、「パリ協定の第4条は国際的な法的義務を新たに創らない事を1992採択の国連気候変動枠組み条約第4条は含む」とする米国からも、最難関の米上院が通過したのは強制力のない“should”のままの合意原稿だった事を「ルモンド紙」は示唆するように、今後も強制力の攻防は続くようだ。
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軍事政府による批評家や活動家の拘束はここ数か月で増え続けている。病院から連行されたり、米大使までもがその発言で取り調べられている。そんな中、健康が心配された国王は誕生日式典、政府行事にともない公の場に姿を見せた。一方で巷では国王の愛犬についての映画が劇場で人気となっている。ところがその愛犬をネット上で侮辱したとして”侮辱罪”が言い渡されるなど、些細な事でさえ許されない状況となってきている。
12月15日付け
『The Guardian』他海外メディアによると、政府への”反逆罪”で37年の禁固刑を言い渡されている工場員が国王のペットの犬に関する侮辱の容疑がかけられていると報じている。タイでは王家への批判、名誉棄損、侮辱行為には最高で15年までの禁固刑が科せられる。
タナコーン・シリパブーンは国王が拾った雑種犬ペット”トンデーン”をネット上で”皮肉を込めて”コメントしたとして起訴されている。国王は2002年この愛犬に関する本を出版、今年アニメ映画化(題名”トンデーンさん;インスピレーション”)され劇場2位の人気である。
タナコーンの弁護士アノン・ヌンパ氏は「インターナショナル・ニューヨークタイムズ」紙を通して「具体的に愛犬の何を侮辱したのか詳細が明らかにされていない。まさか国王の愛犬が法に関わるとは予想もつかなかった。」と述べている。当愛犬不敬事件に関するニューヨークタイムズ紙の記事は火曜、現地印刷会社の意図により掲載されなかった。このような措置はタイ不景気についてのみ書かれていた記事を含め今回で4回目となる。昨年5月の当政権発足以来不敬罪で男性一人がフェイスブックに王室への侮辱を投稿したとして30年の禁固刑となっている。
タナコーンも公園記念碑の建設に関する軍の腐敗をフェイスブックで扇動したとして先週起訴され、今週月曜まで拘束されていた。
軍事政府は、批評家に対する不敬罪を行使するが、多くのタイ人は2005年国王が誕生日の演説で彼が人間であり反対意見も受け入れると述べた事を振り返る。
現在88歳となった在位世界最長プミポン国王は、第二次世界大戦終戦以来影響力を持っており、流血と反乱の政治的分裂になくてはならない重要な存在感を示してきた。しかし、王の体調不良による皇太子への王位継承問題や、軍による暫定2年とした時間枠での民主主義への復帰に国民の不安が高まっている。
最近着任した米国大使グリン・デイヴィス氏も不敬罪で取り調べが行われている。タイ警察によると、大使は演説の中で、軍事政府を称賛しつつも軍事裁判所による前例のない長期実刑判決を批判したとのことである。タイ警察は大使の外交特権は保障されるとしている。
12月15日付け
『ロイター』は次のように報道している。
反政府活動家シラウィット・セリチワット氏は、ラチャダー刑事裁判所が火曜日、25歳の活動家サネット・アナンタウォン氏解放の懇願書を拒否したと述べた。
報道関係者の裁判所法廷での取材は許可されていない。ヒューマン・ライト・ウォッチ(*注)によるとサネット氏は日曜、手術を待っている病院で覆面警官らにより連行された。ヒューマン・ライト・ウォッチ アジア支部長ブラッド・アダムス氏は「タイ軍部は病床から活動家を連行するほど非情な手段に出始めた」と述べる。対する軍スポークスマン、コロネル・ウィンチャイ氏は「サネット氏の拘束時の容体は安定しており、健康診断後病院の支払いを済ませている所だった。ともかく、我々は容疑者の健康に留意しており医師による検診を行い、彼の病状に異常がない事を確かめた。今後も適切な処置を受ける予定である。」と述べている。
警察によるとサネット氏は軍関係者が過去の王を称えるために軍によって建てられた公園の資金調達に関わる不正疑惑を裏付けたとされる画像をフェイスブックに再投稿したとの嫌疑が掛けられた。アダム氏は、「タイはクーデター以来、軍事政権を批判し投獄されることが日常茶飯事となった。我々が出来ることがあるとすればフェイスブック上で「いいね」を押すことだ。」と述べている。
(*注);ニューヨークを拠点とする国際的な人権NGO。世界各地の人権侵害と弾圧を止め、人権を守ることを目的とし、世界90か国で人権状況をモニターしている。
12月15日付け
『CBS NEWS』は別の女性逮捕につき、次のように報道している。
6月に政府への反対をフェイスブック投稿したことで7年の刑が言い渡された女性の名は、弁護士によるとチャヤパー・Cという名であることが分かった。人権擁護タイ弁護士グループによると、刑が確定したことで当初の14年の刑から減刑となった。
12月15日付け
『Thai PBS』は国王について次のように報道している。
国王が軍事裁判所の裁判官と地方検事の就任宣誓式典に出席した。式典は午後5時過ぎ、国王の入院先の病院に隣接した14階のホールで行われた。
式典には憲法裁判所所長、防衛大臣、防衛省の事務次官、国軍の最高司令官、陸海空軍司令官、検事総長が出席した。
12月15日付け
『BBC』によると、王室により放送されたテレビ映像でプミポン国王は9月以来元気な姿を国民に見せた。国王は肺感染症等の様々な治療を受けているが、健康の詳細について皇室当局は明らかにはしていない。ここ数年間は入退院を繰り返しており、胆嚢除去手術と水頭症の治療を受けている。6月には退院直後バンコクのシリラート病院に再入院した。12月5日の誕生日には恒例だった演説が2年連続して中止となったが、ワチラロンコン皇太子が主催する誕生日を祝うサイクリングイベントが11日に行なわれた。
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