米メディア、ロシアに続き中国の台頭を懸念するNATOが日本との連携強化に期待、と報道(2023/04/07)
ウルズラ・フォン・デア・ライエン欧州委員会委員長(64歳、2019年就任、首相に相当、元ドイツ国防相)は訪中して、台湾海峡の現状変更に反対する旨直接訴えた。それを後押しするかのように、訪欧中の林芳正外相(62歳、2021年就任)が北大西洋条約機構(NATO、1949年設立)との連携強化を表明しており、NATO側も、中国を牽制するために日本の支援は必要不可欠と強調している。
4月6日付
『ワシントン・ポスト』紙他複数のメディアが、
『AP通信』報道を引用して、NATOが中国牽制のため日本に期待していると訴えていると報じている。
NATOのイェンス・ストルテンベルグ事務総長(64歳、2014年就任、元ノルウェー首相)は4月5日、NATO及びパートナー国外相会議の席上、欧州の安全保障はインド太平洋の安定と切っても切れない関係にあるため、NATOとしては、ロシアや中国の軍事的台頭に対峙していくため、“益々パートナー国との連携が重要になる”と訴えた。...
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4月6日付
『ワシントン・ポスト』紙他複数のメディアが、
『AP通信』報道を引用して、NATOが中国牽制のため日本に期待していると訴えていると報じている。
NATOのイェンス・ストルテンベルグ事務総長(64歳、2014年就任、元ノルウェー首相)は4月5日、NATO及びパートナー国外相会議の席上、欧州の安全保障はインド太平洋の安定と切っても切れない関係にあるため、NATOとしては、ロシアや中国の軍事的台頭に対峙していくため、“益々パートナー国との連携が重要になる”と訴えた。
同事務総長は更に、その中でも日本とNATO間の相互協力が益々深まっており、“インド太平洋における中国牽制のため、日本との連携は不可欠だ”とも強調した。
これに先立って、同会議に出席した林芳正外相は、NATO自身も中国の台頭を懸念していることから、“日本としても、インド太平洋地域の安定強化のため、中国が関わる事象に積極的に関わっていく”と表明している。
同相はまた、“ロシアのウクライナ侵攻という暴挙を止めさせるため、厳しい対ロシア制裁を継続していくことが必要だ”、と強調した上で、“(中国を念頭に)世界の他地域でもかかる暴挙が行われないよう、民主主義の価値を共有する国々が一致団結して対応していくべきだ”と訴えている。
日本のNATOへの直近の関わりは顕著で、3月には地震被害に遭ったNATO加盟国のトルコに対して、NATO主導で編成された災害救助部隊に航空自衛隊機が初めて加わっている。
また、同時期に岸田文雄首相(65歳、2021年就任)がウクライナを電撃訪問した上で、NATO基金を通じて、ウクライナ側に非致死性兵器を提供する旨表明している。
ただ、ある外務省高官は、“NATO加盟国と違って、パートナー国としてできることは限りがある”と吐露している。
何故なら、NATOは軍事同盟であり、ある加盟国に軍事攻撃が加えられたら、NATO加盟国全体への攻撃と捉えて、全加盟国で当該攻撃に反撃することが義務付けられているからである。
そこで、同高官としては、情報共有、サイバー空間や宇宙分野、更には偽情報の撃退等で協力していくことは可能である、と了解している。
また、元航空自衛隊中将で欧州安全保障専門家の長島純氏(62歳、2019年退官)も、“NATOとしては中国を理解するのは難しいことであるので、日本の中国に対する洞察力を必要としている”とコメントしている。
特に同氏は、もし中国による台湾軍事侵攻が起こった場合、偽情報による攪乱やサイバー攻撃が頻発することが懸念されることより、この点での日本・欧州の相互協力がより効果を発揮することになる、と分析している。
なお、NATOとパートナー国外相会議には、日本の他、韓国、豪州、ニュージーランドが参加している。
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イギリスがTTP加盟へ(2023/03/31)
イギリスが2年の交渉期間をへて、CPTTP(アジア太平洋地域経済連携協定)への加盟を表明した。TPP発足メンバー以外で加盟が認められるのは初めてで、EU離脱以来最大の貿易協定と期待されるが、経済的利益は小さいとの予測もある。
3月31日付
『Yahooニュース』(BBC):「アジアとの貿易協定で0.08%成長予測」:
EU離脱から3年となる英国は、アジアと太平洋地域11カ国の貿易協定に参加する。
英国政府は、チーズ、車、チョコレート、機械、ウィスキー等の関税撤廃による輸出の伸びに期待する一方で、TTPへ加盟しても英国の経済成長は0.08%にとどまるとの予測を立てている。
同経済圏は世界で5億人の市場規模となるCPTTP(アジア太平洋地域経済連携協定)で、2018年に発足、現在11カ国、豪州、ブルネイ、カナダ、チリ、日本、マレーシア、メキシコ、ニュージーランド、ペルー、シンガポール、ベトナムが加盟している。...
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3月31日付
『Yahooニュース』(BBC):「アジアとの貿易協定で0.08%成長予測」:
EU離脱から3年となる英国は、アジアと太平洋地域11カ国の貿易協定に参加する。
英国政府は、チーズ、車、チョコレート、機械、ウィスキー等の関税撤廃による輸出の伸びに期待する一方で、TTPへ加盟しても英国の経済成長は0.08%にとどまるとの予測を立てている。
同経済圏は世界で5億人の市場規模となるCPTTP(アジア太平洋地域経済連携協定)で、2018年に発足、現在11カ国、豪州、ブルネイ、カナダ、チリ、日本、マレーシア、メキシコ、ニュージーランド、ペルー、シンガポール、ベトナムが加盟している。貿易商品において加盟国間の関税制限を緩和している。加盟国全体で世界の所得の13%となる。
21ヶ月の交渉を経て欧州諸国として初めて加盟することとなった英国政府は、「EU離脱以来最大の貿易協定」だとしている。一方、加盟による効果は小さいとみられる。
英国はブルネイ、マレーシア以外の加盟国と既に自由協定を結んでおり、利益としては、10年で経済成長の0.08%と予測されている。英予算責任局(OBR)は21年、EU離脱による長期的な成長はマイナス4%と予測していた。
スナク首相は、今回の合意は「EU離脱による自由がもたらした真の経済的利益だ。CPTTPへの加盟で、英国は雇用、成長、革新機会を得るための世界経済の中心的立場となり、ビジネスは類を見ない市場アクセスが可能となる」と称賛している。
政府はその他の「利益」として、サービス部門の成長をあげており、現地法人を置かずに現地企業と同等の条件でサービスを提供できるとしている。
同日付英『Guardian』:「英国が日本や豪州も加盟するアジア環太平洋貿易圏CPTTP加盟へ」:
英国は2年の交渉を経て、日本や豪州が加盟するアジア太平洋貿易協定に加盟することを決めた。
労働組合は、法や規制改正により、企業の利益が損なわていると認められる場合、非公式に大企業が英国政府を提訴することが認められている点で、合意内容を批判している。
ノバク首相は、この合意により、「労働組合結成が禁止されているベトナムやブルネイの労働者搾取」や、「難民労働者が強制労働を強いられているマレーシア」への制裁が可能となるとする。
初の創設メンバー以外となる英国には、コスタリカやウルグアイ等、今後の申請国の見本となることが求められる。中国は、英国の数ヶ月後となる2021年に加盟を申請、国際ルールに従わない限り中国の加盟を許可しないとする加盟国側からの抵抗にあうとみられる。
専門家の間では、CPTTPとの貿易ルールに英国側が合わせることにより、EUとの間に亀裂が生じ、「EU再加盟への道を阻害する」との指摘がある一方、EU時代の古い規制を変えない場合には、「EUとCPTPPの共通点」が浮き彫りになるともいわれる。
英国は豪州、ニュージーランド、日本を含む多くの加盟国と2カ国間協定を結んでおり、今回の合意による利益は大きくはない。しかし、政府は、11兆ドル規模の市場へのアクセスが可能となる今回の合意は、ますます重要性が増してくると期待する。
CPTPP加盟国と英国との間の貿易紛争に、仲裁制度を置くことを認める点については、2016年EUと米国との間のTTIP(大西洋横断貿易投資パートナーシップ)交渉が破棄されたのと同様に、批判の声が上がるとみられる。当時は欧州議会が、海外投資家の権利を保護する目的で、非公開の国際法廷での紛争調停の承認に反対したため、TTIP交渉は決裂した。
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