日本はこれまで、欧米諸国に倣って対ロシア制裁措置を行ってきたが、中古車の輸出については大目に見ていた。更に、トヨタ等大手自動車メーカーによるロシア内生産工場の閉鎖を追い風に、2022年は20万台と、前年比+33.5%も中古車輸出台数が急増し、この傾向は2023年になっても衰えることはなかった。そこで日本政府としても看過できず、今年8月初めに中古車輸出の追加規制(注後記)に踏み切ったと、その顛末について欧米メディアが詳報している。
10月2日付
『ロイター通信』は、日本政府はロシア産原油・天然ガス等の輸入に関して、対ロシア制裁で弱腰と捉えられているが、これまで大目に見ていた中古車のロシア向け輸出について漸く厳しい措置を講じることになったと報じている。
日本は、これまで数十年間も有数の中古車輸出大国となっている。
日本の自動車メーカーが、新車販売を促進するため低金利等を提示している一方、中古車については国内法に基づく検査義務等でむしろ割高になっていたため、中古車ディーラーとしては輸出に注力せざるを得なかったからである。
実際、メインテナンスが良く故障の少ない日本の中古車は、数百万台もマレーシア、モンゴル、パキスタン、タンザニア等向けに輸出されてきた。
ロシア向けも同様で、右ハンドル(左側通行)にも拘らず、多くの日本車がロシア極東向けに輸出されてきた。
しかし、日本政府としても、ウクライナ軍事侵攻を契機に、欧米諸国に追随すべく対ロシア制裁を厳格化してきた。
自動車関連で言えば、2022年4月に高級車、6月以降は大型トラック等の輸出規制を行っている。
ただ、中古車については輸出規制対象外となっていたこと、更に、対ロシア制裁の影響で、トヨタ、日産、マツダ等大手自動車メーカーがロシア国内生産工場を閉鎖せざるを得なくなったことから、ロシア向け中古車輸出台数が大幅に伸びてきていた。
(編注)2019年12万2,500台、2020年12万6,400台、2021年15万3,300台、2022年20万4,700台。
すなわち、ロシア民間データ分析機関Autostat(2005年設立)のデータによると、2022年のロシアの中古車総輸入台数のうち日本製中古車が25%以上も占めており、2020年時の15%より大幅増となっている。
また、平均販売価格も8,200ドル(約120万円)と、2020年比倍増している。
更に、2023年においてもこの勢いは止まらず、7月までのロシアの中古車輸入台数30万3千台のうち、半分以上が日本製中古車で占められ、取引額も19億ドル(約2,780億円)と最高値となっている。
しかし、かかる事態が看過できなくなったのか、日本政府は8月初め、中古車に対する輸出規制を厳格化することになった。
経済産業省製造産業局自動車通商政策担当の菊池孝憲企画調査官は、“今回の輸出規制でどのような影響を及ぼすことになるのか注視している”とコメントしている。
ただ、ロシア向け中古車輸出業に深く関わってきた日本海側の輸出業者や埠頭関係者(主に、富山県伏木港、北海道小樽港等)にとって死活問題になる恐れがある。
伏木港から極東ウラジオストック向けに中古車を輸出してきたA社は、今年7月まで毎月平均6,500台取り扱ってきたが、“約70%減収となっており、社員の何人かは解雇せざるを得ない”と吐露している。
また、新潟県のディーラーB社は、依然小型車は規制対象外だが、ロシア向け輸出高はこれまでの全社の50%超から20%弱まで落ち込んでいる、という。
今後多くの中古車輸出業者は、右ハンドルの車が受け入れ可能なニュージーランド、東南アジア、及びアフリカ向けに、ロシア向け適用価格を下回るレベルででも、代替販路を見出さざるを得なくなっている。
(注)中古車輸出の追加規制:2023年8月9日に実施した規制で、1900cc以上の乗用車やハイブリッド車の輸出を禁ずる措置。2022年4月に贅沢品輸出禁止措置の一環で600万円超の高級車の輸出規制、また、6月に産業基盤に圧力を加えるためとしてトラック・ダンプカーやブルドーザー等の建設機械の輸出を規制。ただ、今回の追加規制後も、1900cc未満の小型車は規制対象外。
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ニュージーランドのクリス・ホプキンス首相は、国内の安全保障に対する脅威は特にないものと判断し、ニュージーランド、オーストラリア両国共同開催の女子サッカーワールドカップは木曜日から予定通りに開始すると発表した。
ホプキンス首相によれば、国の安全保障警戒レベルは特に変更がないと語った。さらに、警察当局が銃撃犯を殺害し、それ以外の銃撃犯協力者も見つかってないと付け加えた。ニュージーランド政府は国際サッカー連盟FIFAと銃撃事件について説明し、その後ワールドカップの継続を決定している。
サニー・パテル警察署長代理によると、容疑者は木曜日の朝、建築工事現場の中を移動しながら、拳銃を発射したという。建物の最上階に着いてから容疑者がエレベーターの中に立てこもったので、警察官が容疑者との対話を試みたという。その後、容疑者により銃撃が再開され、しばらくしてから容疑者の死亡が発見されたと語った。
警察によると容疑者以外に2人が死亡した。警察当局は被害を最小化するため多人数で対応し、銃撃区域を包囲し、ヘリコプターも出動させたと説明した。
地方局のニュースでは負傷した警察官が救急車に運ばれる様子が映し出されていた。
オークランドに滞在している各国の女子サッカー代表選手や係員たちは、ニュージーランド対ノルウェー戦の開始前には銃撃事件が幕を閉じ、ほっとした模様である。
なお、ニュージーランドでは2019年クライストチャーチのモスクでの51人の犠牲者を出す銃撃事件が発生した後、銃所持に対する規制を厳しくしたことで銃撃事件が少なくなってきた矢先に今回の事件が起こった。容疑者の銃撃目的の究明が急がれる。
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