米ホワイトハウスは24日、全ての連邦政府機関に対し、ニューヨーク・タイムズとワシントン・ポストの主要2紙の定期購読を更新しないよう指示する準備をしていると明らかにした。トランプ大統領はこれまで両紙の報道を「フェイクニュース」と度々攻撃してきたが、ウクライナ疑惑などで強い批判にさらされるなか、メディア批判を強めている。
購読中止の対象となった
『ワシントン・ポスト』のほか、
『ロイター通信』や
『CNN』など多くのメディアが報じた。ホワイトハウスのステファニー・グリシャム報道官は、この措置が政府経費を縮減できるとの声明を発表し、「全政府機関で購読契約を更新しないことにより、納税者にとって数十万ドルもの多額のコストを節約できる。」と説明した。
トランプ大統領は21日夜、テレビ番組のインタビューで、2紙はフェイクであり、ホワイトハウスは定期購読を中止する可能性が高いと発言していた。トランプ氏はフォックス・ニュース・チャンネルのニュース番組「ハニティ(Hannity)」で、「ニューヨーク・タイムズはフェイクな新聞であり、ホワイトハウスではもう必要ない。我々はおそらくそれとワシントン・ポストの購読を打ち切るだろう。彼らはフェイクだ。」と述べた。
トランプ大統領は、こうして気に入らない報道については「フェイク」という言葉を用いる。自身や政権を批判する記事をしばしばこの言葉で批判し、特に自分のスキャンダルを積極的に報じている2紙をやり玉に挙げてきた。選挙遊説でも米メディアへの批判を演説の定番にしている。
ホワイトハウスは既に両紙の購読を中止した。連邦政府機関への指示の発令や発効の時期については明らかにされていない。ウォール・ストリート・ジャーナルは、他メディアに先立ち、22日にホワイトハウスの方針を伝えた。但し、トランプ氏は2紙の熱烈な購読者であり、指示が出された後もその習慣を止めそうにないとも報じている。
米政府機関が2紙をどのくらい定期購読しているのかについては不明だ。ワシントン・ポストは、有効な政府のメールアドレスを保有する連邦政府職員に対し、電子版を無料提供することも行っているという。
トランプ大統領は、ホワイトハウスで特定新聞の購読を止めた唯一の大統領ではない。1960年代初め、ジョン・F・ケネディ元大統領は、政権の不正を扱ったニューヨーク・ヘラルド・トリビューン紙の報道が偏向していると批判し、同紙の購読を一時取り止めた。
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ドナルド・トランプ大統領が、メキシコ国境壁建設費用捻出のために無謀にも打ち出した非常事態宣言は、野党・民主党が牛耳る米下院であっさり否認され、与党・共和党が多数派の上院でも、議会無視は許されないとして反対される可能性が高い。そして、同大統領が壁建設を急ぐ理由として掲げた、中米から大挙押し寄せた移民キャラバンについて、同政権側は、それらを擁護したり支持したりしたジャーナリスト、人権活動家らを監視対象としてリストアップしたという暴露報道がなされた。これによって、益々トランプ政権に逆風が吹くことになるとみられる。
3月7日付
『シカゴ・トリビューン』紙(
『AP通信』配信):「米政府、移民キャラバンを支持したり擁護したジャーナリスト、活動家及び支援者の個人情報収集」
昨年発生した、中米からの移民キャラバンがメキシコ国境に押し寄せた問題について、米政府が、この移民活動を擁護するような行動を取ったジャーナリスト、活動家及び“扇動者”の情報収集を行っていたことが暴露された。
『サンディエゴTV』は3月6日、同メディアが入手した、米連邦税関・国境警備局(CBP)の地方支部である1月9日付「サンディエゴ対外活動支部:2019年度移民キャラバンにおける首謀者、支援者、扇動者及びメディア」なる文書を暴露報道した。...
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3月7日付
『シカゴ・トリビューン』紙(
『AP通信』配信):「米政府、移民キャラバンを支持したり擁護したジャーナリスト、活動家及び支援者の個人情報収集」
昨年発生した、中米からの移民キャラバンがメキシコ国境に押し寄せた問題について、米政府が、この移民活動を擁護するような行動を取ったジャーナリスト、活動家及び“扇動者”の情報収集を行っていたことが暴露された。
『サンディエゴTV』は3月6日、同メディアが入手した、米連邦税関・国境警備局(CBP)の地方支部である1月9日付「サンディエゴ対外活動支部:2019年度移民キャラバンにおける首謀者、支援者、扇動者及びメディア」なる文書を暴露報道した。
同情報によると、CBPがリストアップした中には、10人の米国人ジャーナリストや弁護士らが含まれ、パスポート番号・写真・生年月日等の個人情報の他、移民キャラバン活動においてどういった行動を取ったかが記録されているという。
更に、リストアップされた人たちのほとんどに、“扇動者”という注釈がつけられている。
昨年暮れには、メキシコ国境に到着した数千人の移民キャラバンを支援するため、多くの人権弁護士や移民支援グループの活動家らが、米国とメキシコ国境を何度も行き来していた。
そして、CBPのリストに挙げられた活動家や支援者の中には、メキシコへの出国が差し止められたり、ビザを無効化されたりしている。
そこで、この暴露報道によって、多くのメディアや人権活動家は、言論の自由に対する悪質な侵害行為だと強硬に非難している。
ただ、CBPのアンドリュー・ミーハン副広報理事は、CBPには訪米旅行者を差別することを固く禁じるとの規範が整備されており、また、ジャーナリストへの対応に当っての特別規約も制定しているとコメントした。
一方、CBPのある高官によると、昨年11月25日にサンディエゴで発生した、移民キャラバンの一部による不法入国事件に伴い、国境の安全対策を強化する必要となったことから、再発防止のための情報収集が行われることになったという。
これに関し、同副理事は、CBPは今後とも、メディアや世論に対して、説明責任を果たし、また、透明性を持って対応していくと強調した。
しかし、トランプ政権とジャーナリストとの間は、ドナルド・トランプ大統領が、一部メディアを“国民の敵”だとののしったこともあって、非常な緊張状態にあり、政権側によるかかる情報収集によって、益々状況が悪化するとみられる。
更に、『ザ・ネーション』誌が情報公開法に基づいて入手した文書によると、米連邦国土安全保障省傘下の米連邦移民税関捜査局が昨年、移民の権利擁護の活動家を含む、ニューヨーク在住の反トランプ派の人たちを追跡調査していたことが判明している。
一方、メキシコの対外関係省及び国家安全・市民保護省は連名で、同政府はスパイ活動や“違法な監視”を行う来訪者の入国を拒絶するが、同国内法に則って行動する旅行者やジャーナリスト等の入国は歓迎するとの声明を発表した。
また、両省は、この一環で米国政府に、危険人物や被疑者等の情報について開示協力を求めていることを認めている。
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