4月7日付
『AP通信』は、「中国・SI間安全保障協定によって太平洋地域に警報」と題して、近々締結の運びとなる両国間協定に基づき、中国による南太平洋地域の海外軍事拠点創りによって、西側諸国にとって同地域の安全保障が危うくなると報じている。
中国とSIの間で、まもなく「安全保障に関わる協定」が締結されることとなり、南太平洋地域に脅威をもたらす恐れがある。
すなわち、中国が同協定を梃に大規模軍事拠点の構築を着々と進めることになるのか、あるいは、西側諸国が同協定に敵意を示すことが中国側にうまく利用されてしまうかも知れないからである。
仮に中国がSIに軍事拠点を築くことになると、それは至近距離にある豪州やNZの安全保障のみならず、米国の主要海外基地のひとつであるグアム基地にとっても問題視されることになる。
中国は2017年、ソマリア沖海賊対策の名目で、アフリカ北東部のジブチ(1977年フランスから独立、紅海・アデン湾を繋ぐ海峡に面する重要拠点)に初となる海外軍事基地を設営しており、その後も海外拠点開設に向けて動いていた。
SI政府は先週、当該協定の原案の作成に取り掛かり始めていて、“最終文案”が固まり次第署名の運びとなると発表した。
これまで明らかになった原案によると、中国軍艦が“兵站”のためにSIに寄港することが認められ、また、SIの求めに応じて中国が、“SIの国内秩序を安定させるため”に警察・兵隊やその他治安部隊を送るとされている。
更に、当該協定の内容に関し、メディア対応含めて、中国の同意なしに公表することはできないとされている。
SI政府は、2019年に4回目の登場となるマナセ・ソガバレ首相(67歳)が就任するや否や、台湾と断交して中国との国交を回復すると決定している。
ただ、野党勢力含めて中国依存度の高まりに不満を持った住民らによって、2021年11月に大規模デモが引き起こされ、SIと友好関係にあった豪州政府が警察や軍人を送って鎮静化させている。
かかる状況もあって、SI政府は今週、“国内において何度も発生する暴動で、多くの政府施設等が破壊されていることに辟易している”と表明し、中国及びSIともに、今回の協定締結によって中国の軍事基地開設の取っ掛かりとなるものではなく、あくまでSIだけでは暴動を鎮圧できないので、中国の支援を仰ぐためのものだ、と強調した。
しかし、豪州・NZ及び米国も、当該協定の締結に強い懸念を表明している。
NZのジャシンダ・アーダーン首相(41歳、2017年就任)は、“非常に問題となる”と改めて強調している。
また、SI近隣のミクロネシア連邦(1986年米国より独立)のデビッド・パヌエロ大統領(57歳、2019年就任)は、ソガバレ首相宛に書簡を出し、当該協定締結を思い止まるよう訴えた。
同大統領は、第二次大戦時にSIやミクロネシアが旧日本軍と米軍等の連合軍との間の激戦地になったことを例に挙げ、再び大国間の戦略拠点になることを懸念すると強調した。
しかし、SI警察相は、SIの協定のことより、ミクロネシアの環礁島が気候変動に伴い海底に沈んでしまうことの方を心配した方が良い、と嘲るコメントを出している。
一方、豪州国防軍統合作戦部長のグレッグ・ビルトン中将(57歳、2019年就任)は記者団のインタビューに答えて、もし中国軍艦がSIを拠点として活動するようになったら、“状況を一変させる”ことになると懸念を表明した。
同中将は、“SIは豪州本土至近であることから、豪州軍の日々の対応、特に領空や海上において特別警戒が必要となるからだ”と付言した。
しかし、豪州シンクタンク、ローウィ・インスティテュート(2003年設立)太平洋諸島問題研究部門のジョナサン・プライク部門長は、首脳らは少々過剰反応気味だとし、特に豪州は5月に総選挙を控えていることから尚更だとコメントした。
同部門長は、“西側諸国にとっては非常に気にかかり、かつ、緊急事態とみられるが、(軍事基地化等)事態がそう簡単に動いていくことはないと思う”と言及した。
更に、“注意警報を鳴らし過ぎると、反ってSIに中国寄りに追い込んでしまうかも知れない”とも付言した。
一方、同日付豪州『スカイニュース豪州』テレビは、「豪州情報部門幹部、中国と安全保障協定締結予定のSIを訪問し同国首相と緊急会談」と題して、SIが同協定を締結する前に豪州政府の懸念を伝えたと報じている。
豪州の情報部門の幹部2人が4月7日、同国が中国と締結しようとしている「安全保障協定」について討議するため、急遽SIを訪問した。
豪州秘密情報局(ASIS、1952年設立)のポール・サイモン局長(61歳、2017年就任)及び豪州国家情報会議(ONI、1977年前身設立)のアンドリュー・シアラ―議長(2020年就任)で、SIのソガバレ首相と直接会談し、豪州政府の懸念を伝えた。
しかし、同首相は会談後、当該協定締結を諦める意思がないとの声明を発表した。
同首相は、“両者との会談において、SIが中国のみならず他国と幅広い安全保障協定を締結していくとの意思について、両国間での理解を深めることに重点が置かれた”と言及した。
その上で同首相は、“中国は豪州・SI双方にとって重要な貿易相手であり、また、SIとしても、豪州との二国間安全保障協定を高く評価しており、かつ、豪州は今後もSIにとっての最適なパートナーだ”とも付言した。
なお、同首相は会談前日の4月6日、3月にリークした当該協定草案に関し、国際社会から反発を受けたことについて憤っていると述べている。
何故なら、当該協定草案には、中国に基地を提供するなどという条文は一切言及されていないからだ、と強調した。
そして同首相は、“SIがある国に基地を提供するということになれば、他国から軍事上の標的にされる恐れがあるので、そのような事態を招くことは全く望んでいないからだ”とも付言している。
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ドイツのようにロシアのガスに依存している英国は、ガスの輸入量を減らし、高騰する価格に対処するために、原子力と洋上風力発電を中心とした新しいエネルギー戦略を推し進めていくことが明らかになった。
仏
『レゼコー』によると、クワシ・クワルテング産業エネルギー相はサンデーテレグラフ紙のインタビューで、2050年までに英国で6から7基の原子炉を新たに建設することが検討されており、既存の原発の延命や、小型原子炉(SMR)への投資も計画されていることを明らかにした。
大臣は、発電量の80%を原子力発電で賄っているフランスのモデルを強調した。「大金を要したが、そのおかげで、ドイツやイタリアなど、大陸の人々がうらやむようなエネルギーの独立を手に入れることができた。」と述べ、英国のエネルギー供給に占める原子力の割合を15%から25%に増加することを目指すことを明らかにした。
ジョンソン首相は3月、英国の供給量の4%を占めるロシア産ガスから脱却するための新たなエネルギーロードマップを発表した。しかし、資金調達をめぐる財務省との意見の相違から、発表は何度も延期されていた。インデペンデント紙によると、1000億ポンド(約16兆円)の官民投資が必要だという。
また、採用する技術をめぐっても意見が分かれている。産業エネルギー相は、2015年に当時のキャメロン首相がモラトリアムを決定した陸上風力発電に注力したいと考えているが、ジョンソン首相は慎重な態度を取っている。当時、地元住民からの苦情や高額な補助金に対する批判を招き、保守派の政治家の反発を招いた。
米『ハフィントンポスト』によると、今回もグラント・シャップス運輸相が陸上風力発電所の増設計画を公に批判したことで、英国の将来のエネルギー戦略をめぐる内閣の分裂が勃発しているという。
エネルギー計画を担当しているクワシ・クワルテング産業エネルギー相は、陸上風力発電の大規模な拡大を可能にする方向で動いていることを示唆した一方で、運輸大臣は、3日にスカイニュースの番組に出演した際、陸上風力発電の拡大計画に強く反対していることを明らかにした。「丘の上に設置されるため、地域社会にとって目障りであり、騒音の問題も発生します。環境保護の観点から、陸上風力発電の大部分は洋上であるべきだと考えています。本当にやるべきことは他の方法を開発することです。原子力発電、洋上風力発電もあるでしょう。理にかなった場合もあるかもしれないが、陸上風力発電の大幅な拡大は望めないと思います。洋上風力発電は非常にうまく機能しており、すでに多くの電力を供給しています。」語った。
洋上風力は英国が得意とする分野である。木曜日に発表されるエネルギー戦略では、この分野の拡大も期待されている。
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