インド人プロボクサー、中印間緊張緩和を願って敗者の中国人ボクサーにチャンピオンベルト返上を申し出【米・英・ロシア・インド・中国メディア】
8月1日付Globali「習主席、中国固有の領土・領有権は“1ミリたりとも”譲らないと決意表明」で触れたとおり、中国の習近平(シー・チンピン)国家主席は、今秋開かれる「中国共産党第19回党大会」を控え、国内における統率力の基礎固めを意図して、強い決意表明を行った。同指導部の意思の固さを反映してか、長い間国境問題を抱えているインドのヒマラヤ地方で6月に発生したインド軍との睨み合いは、これまでになく一歩も引かない状況である。そしてこの程、中印間の緊張を苦々しく思っていたインド人プロボクサーが、ダブル・タイトル戦において僅差の判定で破った中国人ボクサーに対して、両国間の平和を願って、二つのうちひとつのベルトを返上したいとの申し出を行った。海外メディアが挙って称賛している。
8月6日付米
『ワシントン・ポスト』紙:「“平和へのメッセージ”:中印間が国境問題で揺れる中、インド人プロボクサーが判定負けの中国人ボクサーにベルト返上を申し出」
インド人プロボクサーのヴィジェンダー・シン選手(31歳)は8月5日、中国人ボクサーのズルピカー・マイマイティアリ選手(23歳)と世界ボクシング機構(WBO、注後記)のアジア太平洋スーパー・ミドル級王者防衛戦及び同東洋スーパー・ミドル級王者決定戦のダブル・タイトル戦を行った。...
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8月6日付米
『ワシントン・ポスト』紙:「“平和へのメッセージ”:中印間が国境問題で揺れる中、インド人プロボクサーが判定負けの中国人ボクサーにベルト返上を申し出」
インド人プロボクサーのヴィジェンダー・シン選手(31歳)は8月5日、中国人ボクサーのズルピカー・マイマイティアリ選手(23歳)と世界ボクシング機構(WBO、注後記)のアジア太平洋スーパー・ミドル級王者防衛戦及び同東洋スーパー・ミドル級王者決定戦のダブル・タイトル戦を行った。
結果、僅差の判定でシン選手の勝利となり、二つのタイトル保持者となった。しかし、6月末からインドのヒマラヤ地方で両国間の睨み合いが続いていることから、“平和を望むメッセージ”として、これまでマイマイティアリ選手が保持していた東洋スーパー・ミドル級のチャンピオンベルトを返上したいと申し出た。
中印間では、1962年に起こった国境紛争以来、中印国境2,174マイル(約3,480キロメーター)の主だったところで緊張状態が続いている。そして中国は、インドの好敵手のパキスタンと同盟強化した上で、武器も供給していることから、中印間国境問題は益々混沌としてきている。
同日付英『ザ・テレグラフ』紙:「インド人プロボクサー、平和の象徴として、中国人ボクサーから奪取したWBOチャンピオンベルト返上を提案」
ムンバイ(インド)で行われたダブル・タイトル戦で勝利した後、元北京オリンピック銅メダリストのシン選手は、“中印友好の印”として、WBO東洋スーパー・ミドル級チャンピオンベルトをマイマイティアル選手に返したいと申し出た。
インドのヒマラヤ山麓のドクラム(インド北東部のシッキム州の東、北は中国、西はネパール、東はブータンに挟まれた地域)におけるインド・中国両軍の睨み合いは、ほぼ2ヵ月が経過する。そもそも、中国軍が国境付近の道路の拡幅工事を一方的に進めたもので、インド側は、安全保障が脅かされるとして一歩も引かない構えである。
シン選手の申し出に多くのメディアが称賛したが、インド国粋主義者はこれを支持せず、ヨガのババ・ランデヴ尊師は、ボクシングのタイトル戦だけでなく、ドクラムの攻防でもインドが勝利することになるとツイートしている。
同日付ロシア『スプートニク・インターナショナル』オンラインニュース:「インド人プロボクサー、敗者の中国人ボクサーにチャンピオンベルトを返すと申し出」
8月5日にムンバイのナショナル・スポーツ・クラブで行われたタイトル戦は、3人の審判の判定が、96:93、95:94、95:94と非常に僅差の勝負であった。
なお、『インディアン・エクスプレス』紙によると、シン選手の申し出は、WBO本部に判断が委ねられることになり、どうなるか明らかではないという。
8月7日付インド『デカン・ヘラルド』紙:「ヴィジェンダー選手にとっては国境での緊張緩和が重要」
ヴィジェンダー・シン選手にとって、WBOアジア太平洋スーパー・ミドル級及び同東洋スーパー・ミドル級二つのタイトルを獲得したことより、ヒマラヤ山麓国境付近で揉めている中印間の緊張が緩和することの方が重要だとする。
なお、両選手はお互いのファイトを称え合い、両者の間にはわだかまりも何もない。
8月6日付中国『チャイナ・ナショナル・ニュース』:「ヴィジェンダー・シン選手、中印緊張緩和のため“アジア激戦区”の勝利を捧げると表明」
ヴィジェンダー・シン選手は、2016年7月からWBOアジア太平洋スーパー・ミドル級王者となっている。キャリアは30ラウンド(デビューは2015年6月)で、これまでのタイトル戦は9戦全勝。一方、マイマイティアル選手は24ラウンド(同2015年4月)で、キャリアではシン選手が一歩先んじていた。
(注)WBO:プロボクシングの世界王座認定団体の一つ。世界ボクシング協会(WBA、1962年設立、本部はパナマ)から分裂して1988年に設立された。本部はプエルトリコのサンフアン。その他、世界ボクシング評議会(WBC、1963年設立、本部はメキシコシティ)、国際ボクシング連盟(IBF、1983年設立、本部はニュージャージー州スプリングフィールド)がある。
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中国の軍事力アピール;陸軍がインド国境付近で実弾演習し、海軍はバルト海でロシアとの合同海上演習【米・英・ロシア・インドメディア】
7月12日付Globali「日米印共同海上演習の仮想敵は中国の潜水艦」の中で、“日米印共同軍事演習には初めて米軍空母打撃群が参加し、インド洋に潜伏・航行する中国潜水艦の脅威に対抗することに焦点が当てられている”と報じた。仮想敵とされたことに激怒したためか、中国は、かねてから国境紛争で揉めていたインド国境付近で実弾演習を実施したかと思えば、昨年に引き続いて今年も、バルト海においてロシアとの合同海上演習を実行して、西側諸国にその軍事力をアピールしている。
7月18日付米
『NYSEポスト』オンラインニュース:「中国、インド国境付近で“敵国の航空機”を標的とした実弾演習を実施」
7月17日の中国国営メディア報道によると、中国人民解放軍が、インドと長らく国境問題で揉めているチベット自治区のヤルンツァンポ川(チベット内呼称、インド内ではブラマプトラ川)流域で、兵員4,000~7,000人の規模で実弾演習を展開したという。
更に、中国メディアは、インド軍は、中国と国境問題でもめている地域に20万人近くの部隊を駐留させており、今年の6月18日に起きたシッキム州(インドの北東部で、西がネパール、東がブータン、北が南チベット)国境付近での小競り合いは、インド軍兵士の中国領への侵入が引金になったものと報じている。...
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7月18日付米
『NYSEポスト』オンラインニュース:「中国、インド国境付近で“敵国の航空機”を標的とした実弾演習を実施」
7月17日の中国国営メディア報道によると、中国人民解放軍が、インドと長らく国境問題で揉めているチベット自治区のヤルンツァンポ川(チベット内呼称、インド内ではブラマプトラ川)流域で、兵員4,000~7,000人の規模で実弾演習を展開したという。
更に、中国メディアは、インド軍は、中国と国境問題でもめている地域に20万人近くの部隊を駐留させており、今年の6月18日に起きたシッキム州(インドの北東部で、西がネパール、東がブータン、北が南チベット)国境付近での小競り合いは、インド軍兵士の中国領への侵入が引金になったものと報じている。
なお、同州での中印部隊の睨み合いは、5週間経った現在も続いている。
7月17日付英『インターナショナル・ビジネス・タイムズ』オンラインニュース:「中国、緊張が高まる中でチベットのインド国境付近で実弾演習実施」
『中国中央テレビ』は7月14日、中国人民解放軍が南チベットのインド側アルナチャル・プラデシュ州(インド北東端で、西がブータン、東がミャンマー、北が南チベット)国境近辺で、11時間に及ぶ実弾演習を実施したと報道した。
同メディアは、いつ実弾演習が行われたかを明らかにしていないが、敵航空機に見立てた飛翔体をレーダーで捉え、地対空砲で撃墜する映像を流している。
中国は、インド側アルナチャル・プラデシュ州のほとんどの部分を、南チベット(チベット自治区)として中国領土と主張しており、インド側と絶えず紛争問題を起こしている。
(編注;インドと中国が接する国境は約3,540キロメーターに及ぶが、その4分の1がアルナチャル・プラデシュ州と南チベットとの間にあり、未だに国境が確定していない。)
同日付インド『デカン・ヘラルド』紙:「中国陸軍がチベット高原で実弾演習」
中国国防部は7月17日、チベット自治区のインド側と国境紛争が続いている地域で、チベット地区駐留部隊による実弾演習を11時間実施したと発表した。今回の演習は、5,000メーターを超える高地で行われた、初めての大規模訓練であり、中国側が、インドとの実戦に備えるとともに、インド政府への警告的意味合いがあるとみられる。
なお、6月中旬に発生した、インド側シッキム州の中国国境付近で発生した中印間の睨み合いは、依然一触即発の事態が継続している。
一方、7月18日付ロシア『RT(ロシア・トゥデイ)テレビニュース』:「中国の最新鋭駆逐艦、バルト海でのロシアとの合同海上演習に参加」
ロシア国防省は7月17日、バルト海において7月21日から、中国と合同海上演習を実施すると発表した。両軍から、戦闘機やヘリコプターに加えて、艦船10隻以上参加するといい、中国側は、2年前に就役したばかりの、最新鋭のミサイル駆逐艦を1隻参加させるという。
同省によると、ロシア海軍と中国人民解放軍海軍部隊との友好及び連携強化が目的だという。
なお、中国軍艦隊は先週、バルト海への航海途上、地中海で実弾演習を実施している。
なおまた、ロシアと中国は今年9月、中ロ合同軍事演習第2弾として、日本海とオホーツク海でも合同海上演習を実施する予定である。
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