米国;米中関係悪化の中、どこまで真剣に台湾支援?【米・中国メディア】(2020/08/22)
既報どおり、米中関係は、香港問題、相互の総領事館閉鎖事態、中国製移動通信機器排除問題等で緊張は高まるばかりである。そうした中、もし中国が武力で以て台湾制圧に動いた場合、米国はどこまで真剣に台湾支援に回るかが取り沙汰されている。
8月21日付米
『ボイス・オブ・アメリカ(VOA)』:「米国は本当に中国から台湾を守る?」
米国はほぼ70年間、もし中国が台湾を侵略してきた場合、台湾を擁護するのか明確に表明して来なかった。
しかし、米中関係が最悪のレベルとなり、また、中国による台湾への武力侵攻の懸念が高まる中、状況は変わりつつある。
すなわち、多くの軍事評論家から米議会議員に至るまで、今こそ米国は台湾政策に関わる“曖昧な戦略”を再検討すべき時期だと考えるようになっている。...
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8月21日付米
『ボイス・オブ・アメリカ(VOA)』:「米国は本当に中国から台湾を守る?」
米国はほぼ70年間、もし中国が台湾を侵略してきた場合、台湾を擁護するのか明確に表明して来なかった。
しかし、米中関係が最悪のレベルとなり、また、中国による台湾への武力侵攻の懸念が高まる中、状況は変わりつつある。
すなわち、多くの軍事評論家から米議会議員に至るまで、今こそ米国は台湾政策に関わる“曖昧な戦略”を再検討すべき時期だと考えるようになっている。
これまで米国は、公式な外交関係がないにも拘らず、台湾向けに数十億ドル(数千億円)レベルの武器提供を行っていた。
ジョージ・メイソン大学(1972年創立のバージニア州立大学)行政学部のマイケル・フンゼカー教授は『VOA』の取材に応えて、“習近平(シー・チンピン)国家主席率いる中国共産党政府は、仮に台湾に武力行使しても、米国は傍観したままだろうとみている”とコメントした。
一方、元国防総省次官補代理でトランプ政権の国防政策に関わったエルブリッジ・コルビー氏は今週初め(8月17日の週)、『ニューヨーク・タイムズ』紙に寄稿して、“今こそ従来の曖昧な政策を終わりにして、台湾に対して明確な対応を取る時期である”とし、“そのためには、軍事体制を見直し、台湾擁護の立場を明らかにして抑止力を利かせる必要がある”と強調している。
中国による台湾侵攻については、これまで米国内で余り深刻に取り沙汰されていない。
しかし、2人の米高官が、早ければ来年早々にも中国の台湾侵攻がなされる恐れがあると言い出している。
米中央情報局(CIA)のマイケル・モレル元副長官と統合参謀本部のジェームズ・ウィルネフェルド元副議長が、今月発行の米海軍研究所機関紙に連名で投稿し、このまま曖昧な戦略を続けると、中国軍による台湾武力侵攻を止められない恐れがあると警鐘を鳴らした。
また、議会の台湾支持派の議員も、トランプ政権下でのアレックス・アザー厚生長官の台湾訪問や、F-16戦闘機の台湾向け提供という積極政策を評価している。
ただ、一部の議員は、更に明確な台湾擁護方針を打ち出すべきだと主張している。
先月にはテッド・ヨーホー下院議員(フロリダ州選出共和党員)が、中国が台湾侵略を行った場合に米軍出動を認める“台湾侵攻防止法案”を議会に提出すべく準備中だと述べている。
同議員は、“米国による曖昧な台湾政策では、中国の武力侵攻を止められない”と付言している。
なお、これに先立って、ジョシュ・ホーリィ上院議員(ミズーリ州選出共和党員)が6月11日に“台湾防衛法案”を、また、マイク・ギャラハー下院議員(ウィスコンシン州選出共和党員)が7月1日に同様の法案をそれぞれ議会に提出している。
一方、同日付中国『新華社通信』:「中国、米国に対して台湾問題は慎重に扱うよう警告」
中国外交部(省に相当)は8月21日、米国の両政党に対して、一つの中国原則、及びこれまで合意した米中3つの共同コミュニケ(注後記)に基づいて、台湾問題については慎重に扱うよう警告した。
この背景には、8月20日に開催された米民主党全国大会において、今後一つの中国原則を是認しないとの方針が決定されたこと、また、米共和党も、対中国強硬政策を取っていくと表明していることがある。
同部の趙立堅(チャオ・リーチアン)報道官は、“台湾問題は最も重要かつ慎重を要する事項である”とした上で、“一つの中国原則は、米中関係の基本であり、かつ、国際社会においての共通認識でもある”と強調した。
(注)米中3つの共同コミュニケ:1つ目は1972年2月、リチャード・ニクソン大統領(1913~1994年)が訪中した際、周恩来首相(チョウ・エンライ、1898~1976年)との間で交わした“一つの中国原則を確認した上海コミュニケ”。
2つ目は、1978年12月の“米中の外交関係樹立(これに伴う台湾との外交断絶)に関する共同コミュニケ”。
3つ目は、1982年8月の“米国による台湾向け武器輸出を漸減させることを約したコミュニケ”。
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反中国運動;かつて中国と蜜月関係にあったチェコも米国との連携に大きく舵切り【米メディア】(2020/08/20)
トランプ政権の対中国強硬政策が威力を増している。それに呼応するかのように、ほんの数年前まで中国と蜜月関係にあった東欧のチェコ(1993年にチェコスロバキアから分離して成立)が、やはり民主主義の方が重要だとして米国との連携に大きく舵を切っている。
8月19日付
『ボイス・オブ・アメリカ(VOA)』:「プラハでのポンペオ国務長官歓迎がチェコの中国離れを象徴」
マイク・ポンペオ国務長官(56歳)は先週、訪問先のプラハ(チェコ)で熱烈歓迎を受けた。
これは、チェコが、かつて蜜月関係にあった中国と袂を分かち、米国資本及び民主主義の価値の方を選択したことを意味する。
ほんの数年前までは、チェコ・中国間は双方の首脳が頻繁に行き来する等、大変な友好関係にあって、習近平(シー・チンピン)国家主席(67歳)が2016年3月に同国を訪問した際には、21発の礼砲(注1後記)で異例の歓迎を受けている。...
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8月19日付
『ボイス・オブ・アメリカ(VOA)』:「プラハでのポンペオ国務長官歓迎がチェコの中国離れを象徴」
マイク・ポンペオ国務長官(56歳)は先週、訪問先のプラハ(チェコ)で熱烈歓迎を受けた。
これは、チェコが、かつて蜜月関係にあった中国と袂を分かち、米国資本及び民主主義の価値の方を選択したことを意味する。
ほんの数年前までは、チェコ・中国間は双方の首脳が頻繁に行き来する等、大変な友好関係にあって、習近平(シー・チンピン)国家主席(67歳)が2016年3月に同国を訪問した際には、21発の礼砲(注1後記)で異例の歓迎を受けている。
そして、これを契機に、中国投資会社トップの葉簡明氏(イェ・チャンミン、43歳、民間企業大手の中国エネルギー・ファイナンス創始者、同社は2020年3月倒産)がプラハの大統領府ビル内に事務所を構える等、両国間は蜜月関係にあった。
しかし、葉氏が国際的スキャンダルを引き起こし、プラハから撤退するようになってから、両国間関係は悪化の一途を辿っている。
先週、アンドレイ・バビシュ首相(65歳)はポンペオ長官との共同記者会見に臨んだ際、中国は“自身が期待した程には全くチェコに投資しなかった”と非難した上で、“それに引き換え、米国からは2,500社余りが実際に投資し、当国に5万5千人以上の新規雇用を生み出してくれている”と称賛した。
一連の動きに関し、駐米チェコ大使館のハイネック・クモニチェック大使(57歳)は『VOA』のインタビューに答えて、“チェコは中国による投資が不十分で不満に思っている”とし、“目下は米国との連携強化方針で進んでいる”と明言した。
同大使によれば、チェコも米国も、“民主主義と人権は大原則、かつ外交政策において重要な柱のひとつ”と捉えているとした上で、“チェコのビロード革命(注2後記)を主導し、後に投票によって選出された最初の大統領に就任した故バーツラフ・ハベル氏(1936~2011年、人権擁護を求めた憲章77(反体制運動を象徴する文書)を起草)の遺産が脈々と伝え継がれている”と強調した。
これを象徴するかのように、バビシュ首相は会見で、ベラルーシで起こった不正選挙でアレクサンドル・ルカシェンコ大統領(65歳、1994年から長期政権)が再選された件に触れて、“チェコ近隣国でかかる事態が発生していることは遺憾である”とした上で、“ベラルーシ市民がチェコ市民と同様の自由の権利を堅持できるよう、欧州連合(EU)に具体的対応措置を求める”とも断言した。
これとは対照的に、中国は、欧州最後の独裁者と言われるルカシェンコ大統領を擁護しているとみられ、国営メディア『中国中央テレビ』が今週、反体制派のデモ行動の映像を流し、同大統領支持の姿勢を見せている。
また、同じく国営メディアの『環球時報』は、欧州の国々がこれまでの中国の貢献を蔑ろにして中国をのけ者扱いにしている、と嘆く記事を掲載した上で、同メディア主筆は、欧州各国は米国による“外交上の盾や戦略上の隷属者”になることを拒むべきだと要求している。
この主張に対して、クモニチェック大使は、“このような話はチェコ共産党々首からしか聞いたことがない”と一蹴した。
なお、同国共産主義者は、30年前の旧ソ連崩壊とともに発生したビロード革命を契機に一掃されており、チェコ共産党は上院議会では一席も獲得しておらず、また、下院においても近年は議席を大きく減らしている。
(注1)礼砲:国際儀礼上行われている、大砲を使用した軍隊における礼式の一種。空包を発射し、敬意を表明する。かつての大砲(前装砲)は連射ができず、再装填するには砲身の清掃や砲薬の充填などの作業が必要であったため、空砲の発射によって予め実弾が装填されていないことを証明し、敵意のないことを示すために行われたのが起源といわれている。礼砲の数は、受礼者の等級によって異なり、一般的には、元首・皇族;21発、副大統領・首相・国賓;19発、閣僚・特命全権大使・大将;17発等々、受礼者の等級によって異なる。
(注2)ビロード革命:1989年11月17日にチェコスロバキア社会主義共和国で勃発した、当時の共産党支配を倒した民主化革命。この革命は、1ヵ月後のルーマニア革命のように、大きな流血に至る事態は起こらなかったことから、軽く柔らかなビロード(ベルベット)の生地にたとえて名付けられた。
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