ボリス・ジョンソン首相(57歳)はこの程、2019年末の総選挙時の公約を破って、増税案を議会に提出すると発表した。同首相は、誰も予想し得なかった世界的に流行した新型コロナウィルス(COVID-19)感染問題で、高齢者福祉や医療サービスに大きな負担が生じたことから、止むを得ない政策転換だと強調した。
9月7日付米
『AP通信』:「英国ジョンソン首相、高齢者福祉対策のため増税の賭け」
ボリス・ジョンソン首相は9月7日、英国における高齢者人口比率上昇の中、昨年総選挙時の公約である、長期的な高齢者福祉政策に取り組んでいく決意を述べた。
しかし、同首相は同時に、この実現のために増税を行う考えを表明したが、こちらは、増税はしないとした公約違反の政策となる。
同首相が庶民院(注1後記)議会で述べたもので、社会福祉と国民保健サービス(NHS、注2後記)のために今後3年間で360億ポンド(500億ドル、約5兆5千億円)を捻出する必要があり、保守党政権として“難しいが止むを得ない”決定だと訴えた。...
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9月7日付米
『AP通信』:「英国ジョンソン首相、高齢者福祉対策のため増税の賭け」
ボリス・ジョンソン首相は9月7日、英国における高齢者人口比率上昇の中、昨年総選挙時の公約である、長期的な高齢者福祉政策に取り組んでいく決意を述べた。
しかし、同首相は同時に、この実現のために増税を行う考えを表明したが、こちらは、増税はしないとした公約違反の政策となる。
同首相が庶民院(注1後記)議会で述べたもので、社会福祉と国民保健サービス(NHS、注2後記)のために今後3年間で360億ポンド(500億ドル、約5兆5千億円)を捻出する必要があり、保守党政権として“難しいが止むを得ない”決定だと訴えた。
同首相は更に、“これまでの政権は、この問題を何十年間も放置してきた”とした上で、社会福祉改革はこれ以上“ためらうことも、また先延ばしすること”もできないことだと付言した。
英国における高齢者、傷病者、及び身障者は、ほとんどが自助に頼らざるを得ない状況にあり、貯金を取り崩したり家を売却したりを余儀なくされている。
政府資料によれば、平均7人に1人(約14%)が10万ポンド(13万8千ドル、約1,520万円)を捻出しなければならなくなっており、これは“壊滅的で誰にも前以て予想できない”事態である。
同首相は具体的に、社会保険料を1.25%上げることを提案しており、就労者や経営者にとって“必要不可欠かつ公平な”措置であると付言した。
この政策が議会承認されて来年4月から実施されることになると、年に2万1千ポンド(2万7,500ドル、約303万円)負担してきた人にとって+180ポンド(248ドル、約2万7千円)の負担増となり、高所得者で年に6万7千ポンド(9万2千ドル、約1,010万円)支払ってきた人にとっては3倍以上の負担増となる。
ただ、同首相は、就労者のみへの負担増だとの非難をかわすため、配当収入に関わる所得税も1.25%増税すると表明している。
最後に同首相は、公約破りなど“軽々にできることではない”とし、“COVID-19の世界的流行問題は、誰にとっても予め予想して公約に織り込めるものではない”と強調した。
多くの介護組織は首相の表明を歓迎しているが、経営者等の専門組織「経営者協会(1903年設立)」は、“COVID-19感染流行問題から立ち直ろうとしている最中、事業推進や雇用促進に追加の負担増”となると非難している。
同日付英国『メール・オンライン』:「ジョンソン首相の社会福祉改革案反対の保守党議員は腰砕けに」
ボリス・ジョンソン首相が掲げた社会福祉改革政策に関し、反対の意を表明している与党・保守党議員の目論見は破綻する見通しである。
何故なら、同首相が昨晩、今週に取り沙汰された内閣改造を取り止めることはないと明言したからである。
先週末、同首相の社会福祉改革案の話が表面化した際、保守党の中には、公約違反となる増税案には(議会承認の際)反対票を投じるとまで表明する議員もいた。
庶民院のジェイコブ・リース=モグ院内総務(52歳)は9月5日、米国のジョージ・ブッシュ氏がかつて、増税しないとの厳粛な公約を破ったことから大統領選で敗北している、と懸念を表明した。
しかし、保守党の院内幹事(重要法案決議の際に議員の出席を促す責任者)は、庶民院の後方席(若手議員の席)の投票前の謀反は抑え込めるとの自信を覗かせている。
何故なら、同首相が9月6日に当該改革案詳細を議会で説明した際、同首相が反対派とみられる閣僚含めて、今週中にも内閣改造を断行するとの思惑が広がったためである。
特に、反対派と思われるゲイビン・ウィリアムソン教育相(45歳)及びドミニク・ラーブ外相(47歳)の更迭は必至とみられている。
(注1)庶民院:英国議会の下院に相当。議席数650で、2019年末の総選挙で、与党・保守党365、第2党・労働党203、第3党・スコットランド国民党48となっている。
(注2)NHS:英国の国営医療サービス事業で、患者の医療ニーズに対して公平なサービスを提供することを目的に1948年に設立された機関。英国の国家予算の25.2%が投じられている。公費負担医療によるユニバーサルヘルスケアに位置づけられ、利用者の健康リスクや経済的な支払い能力にかかわらず、臨床的必要性に応じて利用可能であり、自己負担金額は無料か極めて少額である。
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既報どおり、敗北を認めようとしないドナルド・トランプ大統領(74歳)は、特に外交問題をめちゃくちゃにしたままジョー・バイデン次期大統領(77歳)に押し付けようとしている。ただ、盟友であるムハンマド・ビン・サルマーン皇太子(35歳)の顔を立ててか、サウジアラビアが議長国となっている主要20ヵ国首脳会議(G-20サミット)には出席した。しかし、新型コロナウィルス(COVID-19)感染流行問題からオンライン会議となっていることを良いことにして、COVID-19感染対策セッションには参加せずゴルフ場に直行している。
11月21日付米
『CNBCニュース』:「トランプ大統領、任期の最後となるG-20サミットに出席も、感染症対策セッションは欠席」
ドナルド・トランプ大統領は11月21日、サウジアラビアが議長国となってオンライン上で開催されたG-20サミットに出席した。
しかし、同サミットで最も重要事項のひとつとされるCOVID-19対策セッションには参加せず、大統領選敗北後、ほとんど毎週末過ごしたバージニア州のトランプ・ナショナル・ゴルフクラブに直行して、ゴルフに興じている。
ただ、ホワイトハウスがリリースした声明によると、同大統領はG-20サミットの冒頭、COVID-19対策のためのワクチン開発や経済の早期回復に注力していると(いつもの自画自賛の)演説をしている。
G-20首脳の何人かは、世界保健機関(WHO)が主導している共同開発ワクチンについて、世界に公平に配布するよう求めている。
しかし、自国第一主義を標榜するトランプ政権は今夏、WHOから脱退すると宣言したばかりか、WHOが推進しているCOVAXファシリティ(注後記)にも参加しないと表明している。
フランスのエマニュエル・マクロン大統領(42歳)は、当該システムの下、まず最も後進国向けにワクチンがわたるよう国際社会が協力していくことが重要だと訴えた。
また、ドイツのアンゲラ・メルケル首相(66歳)は、“感染爆発を抑えるためには、各国が一致協力してワクチン開発・供給体制を構築することが肝要”とした上で、“そのために十分な基金を準備する必要がある”と強調した。
一方、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領(68歳)は、既に開発を終えたスプートニクⅤワクチンを他国に提供する準備を進めており、更に2つ目、3つ目のワクチンも開発中だと同サミットで説明した。
また、中国の習近平国家主席(シー・チンピン、67歳)も、現在5つのワクチンが最終臨床試験となるフェーズ3に進んでおり、その開発及び供給体制構築に努めていると表明した。
11月22日付英国『メール・オンライン』:「トランプ大統領、G-20サミットの“感染症対策セッション”を欠席してゴルフ場直行」
トランプ大統領は11月21日、オンライン上で開催されたG-20サミットの冒頭部分に参加しただけで、同サミットにおける最も重要課題のひとつである感染症対策セッションを欠席し、ゴルフ場に直行した。
COVID-19は、世界中の感染者が5,700万人を超え、また、死者も130万人超となっており、その中にあって米国は感染者・死者とも世界最悪となっている。
にも拘らず、当該セッションに加わらなかったばかりか、早速ツイッターで、“バイデン体制下では、これ程早期にワクチン開発を達成することはあり得ない”と主張するばかりである。
更に同大統領は、“「フェイクニュース」をばらまくメディアは、COVID-19は米国ばかりか世界に蔓延しているのに、米国を悪くいうニュースのみを流している”とした上で、“COVID-19感染者の中で、米国における致死率が低いことも報道しようとしない”とメディアを一方的に責めるツイートをしている。
(注)COVAXファシリティ:開発されたワクチンを、途上国含め世界が公平に配分できるようにするワクチン国際共同購入システム。日本含め186ヵ国が参加していて、現在5種類のワクチンが最終臨床試験段階に進んでいる。
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