2月24日にロシアがウクライナに侵攻を開始して以来、ロシア政府は公共の自由に対する引き締めを図っている。メディアへの検閲を強化し、戦争に反対する者に制裁を加えてきた。しかしここに来てロシア政府は、さらに一歩踏み込んだ弾圧を行おうとしている。下院に提出された法案によると、ロシア連邦保安庁(FSB)はタクシーの乗客データにリアルタイムにアクセスできるようになる。
『AFP通信』によると、ロシア政府はこれまでも、インスタグラム、フェイスブック、ツイッターへのアクセスをブロックし、ロシア人に対する「殺害の呼びかけ」を広めたとして、メタ(旧称フェイスブック)を起訴していた。また、国内の独立系メディアに対する統制を強化し、軍の「信用失墜」や軍に関する「虚偽の情報」を発表した者を重い罰金や実刑で罰するための立法手段を強化した。
その取り締まりが今、一段と進んでいる。11日夜、下院のウェブサイトに掲載された政府文書では、ロシアで非常に人気があり、モバイルアプリを介して利用されているタクシーサービスに対し、保安当局へサービス依頼状況のリアルタイムアクセスを許可することが義務づけられると規定されている。下院の治安・反腐敗委員会は、国家の「安全」の問題であることを強調している。
タクシー地域発展市民協議会のイリーナ・ザリポワ会長によると、現在は、ロシア治安当局が各社に正式な要請を行えば30日以内に情報を得ることができるようになっている。同会長は3月末、ロシア運輸省がこの法案について最初に言及した際、「ロシア連邦保安庁が乗客の情報をいつでもリアルタイムで受け取れるようになることを恐れている人は多い。」と述べた上で、「しかし、国家の安全保障となると、何かが起こったときに、治安当局が犯罪を解決したり、防止したりするために、実質的に1時間以内にこのデータを必要とする状況が非常によくある」と説明し、「朝から晩までこのデータが監視されることはない」、とロシアのラジオ局で語った。
『ロイター通信』によると、この法案は下院で承認をされれば、最終的には上院に、そしてプーチン大統領に承認される。なお、ソ連時代のKGBの役割を多く引き継いでいるFSBが乗客データにアクセスする必要性については、この法案には書かれていない。法案には、「タクシー予約サービスは、ロシア連邦政府が定めたタクシー予約依頼の受信、保存、処理、転送に使用する情報システムおよびデータベースへの自動的なリモートアクセスを連邦保安局に提供する義務がある」と述べている。
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欧州連合(EU)は4月23日、デジタルサービスの全利用者の基本的権利を保護する一環で、グーグル・フェイスブック等法巨大プラットフォームの規制強化を目的とする「デジタルサービス規制法(DSA)」を制定することを決定した。これによって、超巨大プラットフォームを含めたグローバル・プロバイダーは、ヘイトスピーチ、虚偽情報等を排除し、適正な取引のための公正性・透明性・説明責任を強く求められることになる。
4月23日付米
『AP通信』は、「EU、ヘイトスピーチ・虚偽情報等を規制する画期的な法案制定」と題して、EUがこの程、大手IT企業に対してヘイトスピーチ・虚偽情報及びその他有害な投稿等を自ら監視して排除する義務を強化する規制法案を制定することを決定したと報じた。
4月23日午前のEU幹部が制定に同意したDSAで、フェイスブックやグーグル等超巨大プラットフォーム企業含めて、世界のプロバイダー自らがユーザーの人権等を脅かす投稿を排除することを義務付け、違反した対象者には数十億ユーロ(数千億円)の罰金を科すこと可能としている。...
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4月23日付米
『AP通信』は、「EU、ヘイトスピーチ・虚偽情報等を規制する画期的な法案制定」と題して、EUがこの程、大手IT企業に対してヘイトスピーチ・虚偽情報及びその他有害な投稿等を自ら監視して排除する義務を強化する規制法案を制定することを決定したと報じた。
4月23日午前のEU幹部が制定に同意したDSAで、フェイスブックやグーグル等超巨大プラットフォーム企業含めて、世界のプロバイダー自らがユーザーの人権等を脅かす投稿を排除することを義務付け、違反した対象者には数十億ユーロ(数千億円)の罰金を科すこと可能としている。
EUの当該法制定意図は、世界に先駆けて、オンラインにおける消費者とその基本的権利を保護することや、オンライン・プラットフォームに対する強力な透明性と明確な説明責任の枠組みを確立していこうとするものである。
欧州委員会(EC、1967年設立のEU政策執行機関)のティエリ―・ブルトン域内市場総局長(67歳、フランス人実業家・政治家、2019年就任)は、“DSA制定によって、今後オンライン・プラットフォーム大手企業は、「巨大すぎて統制できない」という言い訳ができなくなる”と表明した。
また、ECのマルグレーテ・ベスター副委員長(54歳、デンマーク人政治家、2019年就任)も、“今回の法制定に伴い、社会や市民に有害を及ぼしかねないリスクが発生した場合にプラットフォーム企業に責任追及ができるようになる”と強調した。
今回のEU対応と反対に、米国ではシリコンバレー(IT大手企業の本拠)の利益を代弁するロビーイストの暗躍で、連邦議員が規制法制定の動きができないようコントロールされてしまっている。
米司法省及び連邦取引委員会(1914年設立の独占禁止当局)はグーグルやフェイスブックに対して独占禁止法違反行為で提訴しているが、連邦議会の方は、自由な競争・オンラインプライバシー保護・競技情報禁止等を規制する法案策定に関しては政策が分断されたままの状態である。
一方、ECのブルトン総局長は、“今回の法案によって、違反したプラットフォーム企業に対して、総売上高の最大6%相当の罰金を科すことが可能となり、また、違反行為が繰り返された場合にはEU市場からの退場も命令ができることになる”と言及している。
2016年大統領選時のヒラリー・クリントン候補のIT政策顧問であり、現在は権利擁護団体リセットの代表であるベン・スコット氏(44歳)は、“DSAは現在のIT分野における画期的な政策である”と絶賛している。
なお、EUがDSAを施行するに当たって、200人余りの取り締まり担当専門職を新たに雇用することになるが、当該費用は、グローバルIT企業の年間純利益の0.1%相当の“監督手数料”を徴収して賄うことを考えている。
また、EUは先月、「デジタル市場法(DMA)」を制定することも決定していて、これによってデジタル・プラットフォーム大手企業に対して、中小企業の競争を阻害して自社サービスを優先利用させることを禁止することが可能となる。
同日付英国『ザ・ガーディアン』紙は、「EU、巨大IT企業に対して、違法コンテンツを自ら取り締まらない場合に莫大な罰金賦課が可能な新法を制定」と題して、世界に先駆けて巨大IT企業を取り締まる法案策定を決定したと報じている。
DSAが施行されることになると、フェイスブック・グーグル・ツイッター等の大手IT企業は、自社プラットフォーム上の違法コンテンツをもっと厳しく検閲する義務が生じ、これに違反すると最大数十億ユーロの罰金が科されることになる。
想定される罰金額は、総売上高の最大6%が科されることになり、フェイスブックの場合であると、70億ドル(59億ポンド、約8,820億円)にも上ることになる。
更に、当該違反が繰り返されると、EU市場における事業展開が禁止される恐れがある。
DSAは今後具体的な手続きや公布期間を経て、2024年に施行されることになる。
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