カンボジア首相は先週、当国で開催された東アジアサミット(東南アジア諸国連合ASEAN10ヵ国+日米中ロ等8ヵ国)において各国首脳と直接会談していた。その首相が今週初め、新型コロナウィルス(COVID-19)の陽性が認められたため、インドネシアで開催中の主要20ヵ国(G-20)サミットを途中退席した。そこで懸念されるのは、同首相と握手したり会議・晩餐会を共にした各国首脳が感染していないかどうかである。
11月15日付
『AP通信』は、「カンボジア首相、COVID-19陽性でG-20サミットを途中退席」と題して、先週自国で東アジアサミットを主催したカンボジア首相が、G-20サミットが開催されるインドネシア到着時にCOVID-19感染が認められたため、途中退席を余儀なくされたと報じている。
カンボジアのフン・セン首相(71歳、1998年就任)は11月15日、自身のCOVID-19陽性が認められたのでバリ島(インドネシア)で開催中のG-20サミットを途中退席すると表明した。
同首相は先週、首都プノンペンでホストを務めた東アジアサミットにおいて、ジョー・バイデン大統領(まもなく80歳、2021年就任)他各国首脳と面談していた。
同首相は『フェイスブック』に投稿して、インドネシアに到着した11月14日晩、検査で陽性が認められ、更にインドネシア医師も11月15日朝に陽性であることを確認したと言及した。
その上で同首相は、G-20サミットを途中退席するだけでなく、11月18・19日にタイで開催されるアジア太平洋経済協力会議(APEC、1989年設立)も欠席すると付言している。
ホワイトハウス発表によると、バイデン大統領は11月15日朝の検査で陰性であったとし、また、米疾病予防管理センター(CDC、1992年設立)基準による濃厚接触者にはなっていないという。
カンボジアは先月、COVID-19に伴う観光客入国制限を緩和していたが、ASEANサミット及び東アジアサミット出席の各国首脳に感染防止基準を守るよう要請していた。
しかし、サミット開催中、ほとんどの首脳や代理出席者はマスクを着用しておらず、また、長時間の会議中も間隔を空けずに着席していた。
同首相は、インドネシア到着が11月14日晩となり、フランスのエマニュエル・マクロン大統領(44歳、2017年就任)他首脳との晩餐会に出席できなかったことは幸いだったと表明した。
ただ、同首相は、11月13日に終了した東アジアサミットを主催するに当たって、来訪したバイデン大統領の他、岸田文雄首相(65歳、2021年就任)、カナダのジャスティン・トルドー首相(50歳、2015年就任)、ロシアのセルゲイ・ラブロフ外相(72歳、2004年就任)、中国の李克強首相(リー・クーチアン、67歳、2013年就任)等と握手したり個別会談を持ったりしていた。
また、同首相は11月13日、ニュージーランドのジャシンダ・アーダーン首相(42歳、2017年就任)、オーストラリアのアンソニー・アルバニージー首相(59歳、2022年就任)他とも二ヵ国会談を持っていた。
アーダーン首相側近は、11月15日の検査で同首相は陰性だったと発表している。
更に、フン・セン首相は11月13日、G-20サミットを主催するだけでなく、2023年のASEANサミットの議長国となるジョコ・ウィドド大統領(61歳、2014年就任)と引継ぎをかねて会合を持っていた。
なお、G-20開催のインドネシアでは、来訪する代表団やメディア全てに陰性証明の提出及び毎日の検査を求めているとされているが、首脳陣にも同様の要請がなされているのかは不詳である。
閉じる
ロシアは、ウクライナ軍事侵攻以来、ウクライナが“汚い爆弾”を製造しているとか、化学・生物兵器を開発している等、根拠なく主張して自国の正統性を訴えているが、国連総会での非難決議採択等、段々と支持国を失っている。そうした中、東南アジアの途上国カンボジア(国内総生産が2021年度世界108位、日本の約0.5%)が、ロシア軍が軍事侵攻の最中にウクライナに埋設した地雷を撤去するための専門家をウクライナに派遣すると発表している。
11月2日付米
『AP通信』は、「カンボジア、ウクライナに地雷撤去専門家を派遣」と題して、ロシア軍がウクライナ内に埋設した地雷撤去のため、専門家を派遣することを決定したと報じている。
カンボジア(1953年フランスより独立)のフン・セン首相(71歳、1998年就任)は、ロシア軍がウクライナ軍事侵攻の最中、同国内に埋設した地雷を撤去するため、専門家を派遣してウクライナ人を指導することに同意した。
同国外務省が11月2日に発表したもので、同首相がウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領(44歳、2019年就任)と11月1日に電話会談をした際、日本と協力して、地雷撤去専門家を派遣すると確約したという。
カンボジアは、1998年に内戦が終結するまでの30年近くの間、特に農村部において、とてつもない数の地雷が埋設されてしまい、市民生活が大きく支障をきたす結果となっていた。
以降、他国の支援も受けて、非常に多くの地雷や不発弾を撤去してきた。
この過程で、地雷撤去の専門家が多く育成され、国連主導の支援活動の一環として、直近10年間で数千人のカンボジア人専門家がアフリカや中東に派遣されてきている。
カンボジア地雷対策センター(CMAC、注後記)のヘン・ラタナ総裁は『フェイスブック』への投稿文の中で、日本側パートナーと打ち合わせた上で、今年12月初めに第一段を、次に第二段を来年の第一四半期(1~3月期)にウクライナに派遣することになった、と言及した。
なお、米国やドイツ等複数の国が、既にウクライナに地雷撤去支援者を派遣している。
一方、同首相は、かつて社会主義国の仲間であったロシアや中国と態度を別にして、“カンボジアは他国を侵略しようとする如何なる行為にも反対する”として、ロシアによるウクライナ軍事侵攻を非難している。
カンボジアは今年3月、国連総会におけるロシア非難決議案について100ヵ国近くの共同提案国になっているが、同じく社会主義圏の隣国ベトナムとラオスは棄権していた(編注;賛成141ヵ国、反対5ヵ国、棄権35ヵ国)。
また、先月国連総会で採択された、ロシアが一方的に宣言したウクライナ東・南部4州の併合を無効とする決議案にも積極的に賛成票を投じている(編注;賛成143ヵ国、反対5ヵ国、棄権35ヵ国)。
11月3日付カンボジア『プノンペン・ポスト』紙(1992年創刊の英字紙)は、「カンボジアとウクライナ、双方大使派遣で合意」として、両国間の連携が強化されつつあると報じている。
カンボジアとウクライナはこの程、両国間連携強化の一環で、双方に大使を派遣し合うことで合意した。
その際、フン・セン首相は、ゼレンスキー大統領からの“適切な時期が到来したら”ウクライナを訪問するようにとの招待を受諾している。
カンボジア外務省発表によると、両首脳が11月1日に電話会談した際に協議し、合意したという。
同首相は、ウクライナがまだソ連邦の一部だった1981年に訪問しており、同省によると、“会談の最後に、ゼレンスキー大統領から、ウクライナへの訪問の話が出され、フン・セン首相が応じた”としている。
首脳会談の際、同大統領からは、カンボジアが国連総会におけるロシア非難決議等に賛成したことを称賛する旨の発言がなされた。
同首相はその際、カンボジアは国連憲章及び国際法に則り、他国による如何なる侵略にも反対する旨強調している。
また、同大統領は、東南アジア諸国連合(ASEAN、1967年設立)サミットの今年の議長国となっているカンボジアが、ASEANによる3つのウクライナ支援声明採択に尽力したことも称賛すると表明した。
なお、同大統領は同首相に対して、11月にカンボジアでASEAN首脳会議が開催される際、オンライン方式にてウクライナ・ASEAN会議を設定して欲しい旨依頼しており、同首相は、前向きに他加盟国と協議すると回答している。
(注)CMAC:国連開発計画の支援で1993年に開校した、地雷撤去専門家を養成する学校。地雷・不発弾汚染大国と言われる同国では、全農村の40%、約500万人の農民が脅威に曝され、かつて毎年800人以上が犠牲。そこで、主として国連及び日米独からの支援で、CMAC卒業の専門家の人海戦術で、2015年までに「汚染影響ゼロ」を目指して活動。
閉じる