米黒人解放運動指導者暗殺共謀犯に仕立て上げられ20年余り服役した黒人イスラム信者らとNY州・市が3,600万ドルの補償金支払いで和解【欧米メディア】
黒人解放運動指導者として活動していたアフリカ系米国人のマルコムX(享年39)は1965年、袂を分かったイスラム運動組織「ネーション・オブ・イスラム(NOI、注後記)」の信者3人によって暗殺された。その際、犯行後にその場で取り押さえられた実行犯とは別に、共謀犯として逮捕・起訴された2人の黒人信者は、20年余り投獄されていたが、1980年代に漸く仮釈放された後、冤罪を訴えて裁判を起こしていていて、昨年11月に漸く無実であることが証明された。そしてこの程、冤罪によって投獄されたこと等への補償金がニューヨーク州及び市から当事者に支払われることになった。
10月30日付
『ロイター通信』は、「マルコムX殺害の犯人とされた黒人2人にニューヨーク州・市が補償金支払いで和解」と題して、1965年に発生したマルコムXの殺害事件に関し、無実の罪で20年余り投獄された黒人イスラム教徒らに対して、NY州及び市が補償金として計3,600万ドル(約54億円)を支払うことで和解したと報じている。
1965年に発生した黒人解放運動指導者マルコムXの暗殺事件に関し、共犯に仕立て上げられて20年以上服役した後、昨年11月に漸く無罪を勝ち取った黒人イスラム教徒及び遺族に対して、NY州・市が合計3,600万ドルの補償金を支払うとの和解が成立した。...
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10月30日付
『ロイター通信』は、「マルコムX殺害の犯人とされた黒人2人にニューヨーク州・市が補償金支払いで和解」と題して、1965年に発生したマルコムXの殺害事件に関し、無実の罪で20年余り投獄された黒人イスラム教徒らに対して、NY州及び市が補償金として計3,600万ドル(約54億円)を支払うことで和解したと報じている。
1965年に発生した黒人解放運動指導者マルコムXの暗殺事件に関し、共犯に仕立て上げられて20年以上服役した後、昨年11月に漸く無罪を勝ち取った黒人イスラム教徒及び遺族に対して、NY州・市が合計3,600万ドルの補償金を支払うとの和解が成立した。
双方の代理人デビッド・シェイニーズ弁護士(冤罪・公民権裁判が専門)が10月30日に明らかにした。
一人目のムハンマド・アジズ氏(84歳、妻及び子供6人)は、冤罪で20年以上投獄されていただけでなく、1980年代半ばに仮釈放後も殺人犯として世間から非難される日々を55年以上も送ったことから、刑事司法制度における黒人差別が冤罪の原因だったとして、4千万ドル(約60億円)の賠償金を申し立てていた。
また、二人目は、無罪判決が出る前の2009年に死去していた故カリル・イスラム氏(享年
74)で、同じく20年以上服役したことから、同氏の遺族が同様4千万ドルの賠償金請求をしていた。
今回の和解成立に関し、シェイニーズ弁護士は『ロイター通信』のインタビューに答えて、NY市が2,600万ドル(約39億円)、NY州が1千万ドル(約15億円)支払うことで和解していて、アジズ氏及び故イスラム氏遺族に均等に支払われるとコメントしている。
同弁護士は、“アジズ氏及び故イスラム氏にとって、冤罪のために人生のほとんどが奪われてしまったので、当該補償金は当然の酬いだ”とも言及した。
一方、NY市法務部のニック・パオルッチ広報担当は10月30日、『ニューヨーク・タイムズ』紙のインタビューに答えて、“今回の和解は、何十年も投獄された挙句、長い間殺人犯との汚名を着せられた人たちへの公正な措置だ”とコメントしている。
ただ、NY州当局からのコメントは得られていない。
1950年代、マルコムXはNOIの広報担当であったが、その後NOI幹部と対立するようになって1964年にNOIから脱退した上で、別のイスラム運動組織を立ち上げたことから、NOIの反感を買って、NOI信者3人によって1965年2月に銃殺されてしまっていた。
この暗殺事件の実行犯であり、現場で取り押さえられたムジャヒド・ハリム(81歳)は、アジズ及びイスラムは無実だと証言していたが、マルコムX殺害に加わった2人の共犯者のことを明かさなかったため、アジズ・イスラムが共犯者として裁かれていた。
なお、ハリム自身も2010年に仮釈放されている。
10月31日付『AP通信』は、「マルコムX殺害犯にされた黒人らが3,600万ドルの補償金を勝ち取る」として、詳報している。
殺害犯とされた黒人らの賠償金請求訴訟を代理していたシェイニーズ弁護士は10月30日、NY市が2,600万ドル、NY州が1千万ドルの補償金を払うことで和解が成立したと表明した。
同弁護士は、“アジズ氏、故イスラム氏及びその家族は、50年以上も殺人犯として責められる堪えがたい日々を過ごしてきたので、この代償として当然の酬いだ”と語った。
同弁護士は更に、“州及び市当局とも、昨年11月の無罪判決が出るまで非常に長い時間を浪費していたことから、高齢となった被害者らに可及的速やかなる補償が必要ということで対応してくれた”としながらも、“今回の事件を契機に、警察も検察も冤罪を出さないよう、慎重かつ念入りな捜査等が重要であることを肝に銘じるべきである”とも強調した。
(注)NOI:世界恐慌中の1930年にデトロイトで創始された、アフリカ系米国人のイスラム運動組織。黒人の経済的自立を目指す社会運動であり、白人社会への同化を拒否し、黒人の民族的優越を説く宗教運動でもある。
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米司法省、トランプ前大統領の機密文書等隠蔽容疑に関わり側近従者を更に審問【米メディア】
既報どおり、ドナルド・トランプ前大統領(76歳、2017~2021年在任)は、2021年1月6日発生の議事堂乱入事件を扇動した嫌疑や、退任後に不当に機密文書等を私邸に持ち込んだ容疑で取り調べられている。そしてこの程、米司法省が、同前大統領から直接指示を受けて、押収前の秘匿文書等を保管庫から別の場所に移したとされる側近を更に審問することになった。
10月24日付
『AP通信』は、「米捜査当局、トランプ別邸マー・ア・ラゴの家宅捜査に続いて側近を更に事情聴取」と題して、連邦捜査局(FBI、1908年設立の司法省傘下の捜査機関)がドナルド・トランプ前大統領のフロリダ州在の別邸を家宅捜査した事態に関し、同前大統領から事前に、機密文書等の一部を別の場所に移動するよう直接指示を受けたとする従者について、FBIが更に事情聴取することになったと報じている。
FBIは今年8月初め、ドナルド・トランプ前大統領が退任後、不当に機密文書等をフロリダ州の別邸に持ち出した嫌疑で、同邸を家宅捜査した上でかなりの数の機密文書等を押収した。...
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10月24日付
『AP通信』は、「米捜査当局、トランプ別邸マー・ア・ラゴの家宅捜査に続いて側近を更に事情聴取」と題して、連邦捜査局(FBI、1908年設立の司法省傘下の捜査機関)がドナルド・トランプ前大統領のフロリダ州在の別邸を家宅捜査した事態に関し、同前大統領から事前に、機密文書等の一部を別の場所に移動するよう直接指示を受けたとする従者について、FBIが更に事情聴取することになったと報じている。
FBIは今年8月初め、ドナルド・トランプ前大統領が退任後、不当に機密文書等をフロリダ州の別邸に持ち出した嫌疑で、同邸を家宅捜査した上でかなりの数の機密文書等を押収した。
同捜査の事情通によると、司法省が更に、同邸において機密文書等を移動させている姿が監視カメラに捉えられた側近を事情聴取することになったという。
同事情通は匿名を条件に『AP通信』のインタビューに答えて、当該人物は既に一度審問されていた従者のウォルト・ノータ氏(39歳、2017年より雑用係として勤務、2021年フロリダ州私邸に異動)で、FBIは更に、家宅捜査前に当該文書等を移動させようとした経緯について事情聴取する意向であるという。
本件について、司法省はコメントすることを控えているが、これまでの報道によると、同省は、前大統領による国家防衛に関わる情報の不当な所有や捜査妨害等違法行為の嫌疑について、捜査を進めている。
捜査妨害容疑については、FBIが今年の8月初め、裁判所からの家宅捜索許可証を得た上でフロリダ州在の別邸を捜査した際、機密文書等が同邸の保管庫から別の場所に“移動されて隠されようとした”疑いがあることが判明していた。
同省は今年5月、トランプ側に対して、ホワイトハウスから持ち出した機密文書等を返還するよう求める召喚令状を提出した。
これに基づき、FBIが6月3日にフロリダ州別邸を訪れ、38種類の文書等が入った封筒を回収したが、その際トランプ弁護団に対して、次の通知があるまで、同邸に残された機密文書等を納めた箱を保管庫で厳重に保管しておくよう指示していた。
しかし、FBIは後に、更に隠匿した機密文書等があるとの嫌疑が高まったとして、8月8日に同邸を家宅捜査することとなり、その結果、超極秘と記された機密文書等を含めて100余りの文書等を押収している。
なお、『ワシントン・ポスト』紙が今月初め、ノータ氏の名前を初めて記載して、トランプ従者である同氏がトランプの明確な支持に従って文書が入った箱を移動させた旨FBIに証言したと報じている。
また、『ニューヨーク・タイムズ』紙も10月24日、捜査当局がノータ氏に再び事情聴取する旨報じている。
同日付『ニューヨーク・タイムズ』紙は、「捜査当局、機密文書等の取り扱いでトランプ側近を厳しく取り調べ」と報じている。
連邦捜査局は目下、トランプ前大統領が不当に持ち出した機密文書等の取り扱いについて、国家安全保障に反する行為があったことを立証すべく総力を挙げている。
具体的には、まず、フロリダ州別邸の保管庫にあった当該文書等を、同前大統領の指示で移動させようとした側近の証言を取ろうとしている。
その対象となっているのが、ホワイトハウス及びフロリダ州別邸で同前大統領の身の回りの世話をしていたノータ氏(グアム出身の元海軍兵)で、別邸の監視カメラに彼の行動の一部始終が映っていることから、同前大統領を裏切ることになっても真実を証言させようとしている。
もう一人が、強烈なトランプ信奉者であるキャッシュ・パテル氏(42歳、弁護士)で、トランプ政権下で、クリストファー・ミラー国防長官代行(57歳、2020~2021年在任)の首席補佐官を務めていた人物である。
同氏は現在、トランプ前大統領から指名されて、前大統領の保有文書等の取り扱いについて、米国立公文書記録管理局(NARA、1935年前身設立)と種々遣り取りする代理人になっている。
従って、同氏は、同前大統領がホワイトハウスから別邸に持ち出した文書の詳細や、NARA及び司法省から文書返還を求められた際の対応について、深く関わっている人物である。
同氏は、8月初めにFBIが家宅捜査に入った際、同前大統領が、文書の機密性を解除した上でホワイトハウスから文書類を持ち出している、と公に表明していた。
司法省としては、ワシントンDC連邦地裁の大陪審の場で、証言させようと努めているが、目下のところ同氏は、米憲法修正第5条自己負罪拒否特権(注後記)に基づき、証言を拒んでいる。
そこで同省は、同地裁裁判長に対して、同氏を大陪審の前に出廷させる暫定命令を出すよう申し立てている。
(注)自己負罪拒否特権:米憲法修正第5条の4項の条項で、「何人も、刑事事件において自己に不利な証人となることを強制されることはなく、また法の適正な手続きによらずに、生命、自由または財産を奪われることはない」と定められている。
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